学童保育の無償化はできない?

 学童保育所(放課後児童クラブのことを指している場合がほとんどです)は、ほとんどの地域で利用料、保育料や手数料、保護者負担金と呼ばれるものを支払うことで利用ができます。その金額は地域によって異なります。また、減免の制度が設けられていることがほとんどです。生活保護を受けている世帯の利用料は無料となる、就学援助を受けている世帯の利用料は数千円が軽減される、ということです。

 では、学童保育所、放課後児童クラブの利用料はまったくの無料、無償化にはならないのでしょうか。答えは、極めて難しく現実味はなかなかないが、それでも無償としている自治体があるのだから決して不可能ではない、というものです。

 例えば北海道小樽市は、2024(令和6)年から児童クラブの利用料(小樽市では手数料と称しているようです)を無償としました。その理由として公開資料には「世帯の所得状況などに関わらず、就労等により子どもの放課後の預かりが必要な全ての子育て世帯を支援するとともに、安全で安心して過ごせる子どもの居場所の確保を図るもの。」と説明しています。安全で安心な子どもの居場所を確保するための費用を公費ですべて担うことに合理的な理由があると判断したのでしょう。

 この小樽市の考え方は、小樽市だけで通用する考え方ではないでしょう。全国どこでも通用する合理的な考え方ではないでしょうか。むろん、公費で担うことは結局は税金であり、納税者たる市民、住民、国民が納める貴重な税金が充てられるということです。つまり、児童クラブ利用者だけが負担するのではなくて国民全体で子育て支援の仕組みを支えましょう、ということです。

 現状において国は、児童クラブの運営費用について利用する保護者が全体の2分の1、つまり5割を負担するように求めることを基本的な考え方としています。こども家庭庁の予算に関する報道発表資料に、図の形で明示されています。つまりそれは受益者負担、ということです。確かに受益者負担というのはきわめて合理的な考え方です。しかし、児童クラブは今や小学生全体の4人に1人が利用する社会インフラであり、小学1年生に限れば2人に1人が利用するというほど、小学生児童の過ごし方に大いに関わっている子育て支援施設です。そこに大幅に公費を投入することは決して不合理ではないはずです。

 学童保育の無償化はなかなか困難な問題ですが、決して不可能ではないし、禁止されているわけでもありません。実費負担など必要最小限の受益者負担は当然残しつつも、公費で児童クラブを支えていくことと、その公費が適切に子どもの支援や職員人件費に充てられ、過度に事業者の利益とならないような仕組み(=過度でなければ事業者の努力として利益を確保することもまた当然)を整えていくことが、国や地方自治体に求められているのではないでしょうか。

 (運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)