学校には行きたくないが学童なら行けると子どもが言っています。でも学童には断られました。どうすればいいのでしょうか。

 夏休みが終わると、いろいろな理由で子どもが小学校に登校できなくなることがあります。無理やり学校に行かないでいいんだよ、という呼びかけも徐々に増えています。では、学童保育所(放課後児童クラブのことを指している場合がほとんどです)になら行けるという子どもが、学童保育所を利用できるかといえば、現在はほとんどその可能性はありません。

 なぜなら、学童保育所が放課後児童クラブである場合、その放課後児童クラブの設置の目的が、放課後(この場合の放課後とは、小学校の休みの期間については朝からの時間を含んでいます。つまり、平日の午後と土曜日を含み、学校に登校する必要が無い日曜日と祝日以外の時間帯のことです)に、仕事などで家庭に不在の子ども、つまり留守家庭の児童を受け入れてその成長の場とする、と法令で定められているからです。不登校状態の子どもを受け入れる施設として、放課後児童クラブは位置付けられていません。よって、そのために必要な事業の目的も定められておらず、職員の配置も考慮されていません。そもそもそのために使える予算が確保されていません。

 仮に、不登校の子どもを受け入れている児童クラブがあるとしたら、その児童クラブは半ば善意でやっているといえます。

 現状では、不登校の子どもの受け入れを児童クラブ側が拒むのは無理もないのです。しかし、いつまでもそれではダメだという考えも徐々に芽生えてきています。いまは制度上、不登校の子どもを受け入れるための制度ではなく、受け入れるために必要なお金も補助金ではまったく用意されていません。しかし、現在の放課後児童クラブは小学生の4人に1人が利用する社会インフラです。児童クラブを利用しようと登録している児童の中にも不登校状態になる子どもは決して珍しくありません。まずは児童クラブに登録している児童が不登校となったとき、その子の居場所とすることができるように制度を変えたり運用を変えたりする必要性を、もっと社会が認識することが必要です。そのためには、不登校の子どもを持つ保護者はもちろん、子ども自身の声として、「学校は今は無理だけど、学童でなら過ごせる。過ごしたい」という願いや要望を、もっと社会に広く発信していくことが欠かせません。

 そうして、児童クラブに登録していない子どもであっても、不登校となったときに過ごせる数少ない居場所の選択肢の1つとして児童クラブが挙げられるようになっていくことが、こどもまんなか社会における児童クラブの新たな重要な使命の1つとなるのです。保護者にしても、子どもが児童クラブで過ごせる時間を仕事などで有効に使うことができます。仕事をしなければ収入を得られないのですから、不登校の子どもをもつ保護者に就労の時間を確保することは極めて重要です。「子どもが不登校なんだから親は働いている場合じゃないだろう」という世間の無理解、無神経な声をはねのけられることもできます。まさに保護者の就労機会を保障するという放課後児童クラブのそもそもの使命の1つを果たすことにもなります。

 学童保育所、放課後児童クラブは制度上、不登校の子どもを受け入れる能力や役割を確かに今は持っていません。ところで全国各地で意外に多くの地域で、児童クラブで受け入れる子どもを小学3年生や4年生までとしていますが、児童福祉法では児童クラブは小学生が対象です。一方で、地域の実情に応じて実施する、ともなっています。だから、児童福祉法では小学生までが対象となっていても小学3年や4年生までの受け入れも可能となる理屈です。この理屈からいえば、不登校の子どもを受け入れる児童クラブを運営することも、何ら問題が無いはずです。

 つまり、不登校の子どもを受け入れる能力を与えて実際に運営をすることは、実はそれほど難しいことではないはずです。「うちの地域は、こうする」と市区町村が理解し、その理解の下でクラブ運営事業者が踏み切ればいいだけのこと。そうなるためには、不登校の子どもたちやその親が安心できる環境が整う可能性を高めることを児童クラブに発揮してもらうことを社会全体が求めるようになればいいのです。

 ですから、どんどん発信していきましょう。不登校状態の当事者にある人の声を行政や議員、メディアに届けて、状況を変えていきましょう。それは決して不可能ではないはずです。

 (運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)