夏休みの間、ずっと学童に子どもを行かせることはかわいそう?

 「かわいそう」という感情が、どういうことを対象にして浮かび上がってくるのかを考えてみましょう。「子どもが、自分のやりたいことを自由に出来ないことがかわいそう」というのであれば、朝から夜まで放課後児童クラブ(放課後児童健全育成事業を行っている施設であり、いわゆる学童保育所)に無理やり行かされている場合、確かにかわいそうなのかもしれません。ですが、児童クラブ、学童に「行かされている」子どもが、そのクラブや学童で楽しく過ごせているならば、かわいそうとはならないのではありませんか?「いや、それでも子どもが自分のしたい時にしたいことをできないので、かわいそう」と思うのであれば、それはかわいそうでしょう。そう思わないようにするには、自宅で子どもを好きなように過ごさせることしか解消法はありません。

 一方で、防犯面だったり生活規律面での心配がある保護者にとっては、夏休みの児童クラブや学童は頼みになる存在です。不審者が家に侵入したらと思うと不安で仕事が手につかないとか、朝からずっとゲームばかりして夏休みの宿題にまったく手を付けないことに困っている保護者ならば、児童クラブや学童で設けられている宿題や学習の時間を使って夏休みの課題を片付ける、ということができます。ゲーム三昧の過ごし方を防止することもできます。その点に効果を感じるのであれば、かわいそう、という感情は気にならなくなるでしょう。

 もっともこれらはすべて保護者、大人の側からの考え方です。子ども本人はどうでしょう?それは子どもそれぞれである、としかいいようがありません。仲良しの友達が同じ学童っ子であれば、児童クラブや学童に行きたいという子どもがいるでしょうし、家でのんびり、気ままに過ごしたい子どもにはどうしたって夏休みの間の学童は、行きたくない場所になります。結局のところ、児童クラブは現在、保護者の就労等を支える仕組みとして存在しているのであって、利用するしないは保護者の意向によるところが大変に大きい。保護者が、児童クラブや学童を利用するかどうかを考えるにあたって、「子どもの気持ちをどこまで判断基準として重きを置くか」で導く結論は大きく異なってしまいます。

 児童クラブ側は、子どもが児童クラブに行きたいと思い続けるような支援、援助をしましょうと、その仕事の内容に組み込まれています(放課後児童クラブ運営指針)。夏休みに子どもが朝から夜までずっと児童クラブ、学童でかわいそうというのでしたら、児童クラブの職員と事前に相談したり話し合いをするなりして、「子どもたちが、家にいるよりも、これなら児童クラブで過ごしてもまあ良かったかな、と思えるような時間と空間にするために、何ができるだろうか」を構築することも大事なことです。夏休みの児童クラブ、学童が、子どもにとってかわいそうな時間と場所と思えるのであれば、「どうしたら、かわいそうな場所から楽しくて毎日、行きたいと思うような場所になるのか」を考えることが、より大事なことなのです。そこが、保護者がもっと児童クラブ、学童に関心を持って関与していくことの重要性でもあるのです。

(運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)