夏休みの放課後児童クラブを支える短期非常勤職員(アルバイト)。働く人、働かせる側、これだけはやっておこう。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。多くの地域で夏休みが始まっているようです。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)は特に働き手が足りなり夏休みはアルバイト職員に頼ることが多いでしょう。基本的なことを改めて運営支援からお伝えします。
 ※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。

<働く人へ>
 この夏が初めてのアルバイト、初めての児童クラブでのアルバイトという人から、もう何年も夏休みに児童クラブでアルバイトをしている方と、立場や経験はいろいろでしょう。働く人本人、あるいは自分の息子や娘が児童クラブで働く人には、ぜひ次の事を理解して仕事に臨んでください。
 これから記載する基本的なことをしっかり確認して仕事に励みましょう。「アルバイト」というと気楽なイメージがついてまわるかもしれませんが、「雇用契約に基づいて働く」わけですから、定められた契約に従う立場です。そして、労働時間の対償として賃金を受け取ることになります。その賃金は、税金だったり保護者が支払った利用料だったりします。働いて賃金を受け取るということは、社会経済に組み込まれた存在になるということです。社会の歯車の1つになるということですよ。「アルバイトとして働く時間は社会人。遅刻や無断欠勤は最低最悪ことと受け止めなさい」と、まずお伝えします。これはもう、児童クラブだろうがファストフードだろうが働く上ですべてにおいて基本です。時間にルーズな人は、アウト。それは「人間として信用できない」と判断されるからです。
 児童クラブで実際に働くにあたっては次の事を心がけましょう。雇ってくれる会社、事業所がこの点をしっかり指示しているかどうかは分かりませんが、えてして児童クラブの世界は特に高校生のアルバイトに「大丈夫大丈夫、子どもと楽しく遊んでくれればいいから」と気楽なことを話しがちですが、決してそんなことはありませんよ。
・何かトラブルや分からないことがあったら正規(常勤)職員に報告する。伝える。→自分勝手に判断してはだめ、ってこと。
・自分が対応している子どもが「親が怖い」「家にいると怖い」「いつも怒鳴られる」「生きていても楽しくない」というような、生命身体に何らかの影響が及んでいるようなことを話しているのを聞いたら、すぐに正規(常勤)職員に報告すること。
・子どもの肌の露出している部分に「あざ」「打撲によると思われる内出血」などがあったら、すぐに正規(常勤)職員に報告すること。
・他のアルバイト職員は言うに及ばず、正規(常勤)職員であっても、つまり職場にいるすべての職員の行動、言動に留意すること。仮に自分の目でみてあきらかに違和感を覚える行動や言動が他の職員から感じられるときは、職場の他の正規(常勤)職員や、運営本部に連絡、相談すること。違和感を覚える行動とは、「やたら体にさわる」「特定の子にベタベタと執着したり、逆に極端に嫌って声を荒げることが多い」というもの。
・目の前の子どもの命を「守る」責任があることを常に自覚しよう。目の前で子どもがけがをしそうな行動に及んでいる、あるいは及びそうになったら制止しなければなりません。それを怠ると刑事と民事との責任を問われる可能性があります。アルバイトだからって責任は軽い、見逃してくれる、ってことはありませんよ!

 上記の事だけでもしっかり心得てアルバイトができるなら、上出来です。もう勤務経験が何年もある、慣れてきた大学生や専門学校生、あるいは学校を出ている社会人アルバイトでしたら、「正規(常勤)職員に指示を仰ぎながら、子どもとの関りを、遊びだけではなくその他の部分においても広げてみる」ことにも挑んでみるのがいいでしょう。

 やってはいけないことを最後に挙げておきます。
・叩く、殴る、蹴るといった暴行行為。犯罪です。アウトです。
・「うっせーよ」「シネ」「わけわかんね」という乱暴な言葉遣いも、してはダメです。子どもから挑発的な言動を受けることは当たり前によくあります。そこで先にアルバイトがキレたらダメ。子どもは、乱暴な言葉遣いや振る舞いで、相手の「許容範囲」を試すのです。「ふふー出たなーお試し行動」と、あわてず堂々と、子どものお試しを受け止めてくださいね。
・誰かをえこひいきして相手することもダメ。その逆に誰かを避けてばっかりではダメ。遊ぶ子を選ぶのはアルバイト側ではない。子どもから選ばれる側であることを肝に銘じよ。
・写真や動画を取ってSNS、ネットにアップロードすることは厳禁。これも法令違反又は権利侵害になります。勤務内容を具体的な固有名詞を挙げてネットに書き込むこともダメです。
 要は「自分が、誰かにやられたら、嫌だな」ってことはやらないように。

<働かせる側へ>
 アルバイト職員といえども、放課後児童クラブとしてその事業活動を行うことが契約上、義務づけられている中で業務に従事する存在ですから、アルバイト職員の不祥事が事業活動全体に大ダメージを与える可能性があることを、常に留意することが必要です。

 「こどもと遊ぶだけの仕事だよ」という誘い文句でアルバイトを募集するのは、やめましょう。児童クラブの仕事は、そんな軽い気持ちで取り組めるものではありません。いや児童クラブという仕事だけが厳正な存在ではなく、コンビニだって飲食だってファストフードだって、どんな仕事だって責任を負って取り組む必要があるのですから。これは短期アルバイトだけではなく、年間を通じて働いてもらう非常勤職員に対しても同様です。非常勤は責任が軽いということは、少なくとも子どもとの関り、施設整備の維持管理については正規職員との差はありません。

 しっかりと「重大な不注意によって子どもや施設に損害をもたらしたら、あなたにも責任は必ず及びます」と伝えなければダメです。緊張感をアルバイト職員の意識の片隅に残させるためにも、きっぱりとした指示は必要です。どういうことは許されないのか、しっかりと書面で説明しましょう。勤務において守るべき事柄を記した短期従事者向けの手引き、マニュアルを作成して交付しましょう。

 よく、アルバイト職員について「言われたことしか、やってくれない」と残念がる正規職員がいます。が、それは非常に浅はかです。「言われたことを、やってくれる」ことがどんなにありがたいことか。「言われたことすらやらない」とか、「指示していないことを勝手にやってしまって後始末が大変」な職員より、どれほど使い勝手が良いことか、考えてみてください。言われたことをやってくれるなら、指示内容を徐々に広げていけばいい。つまり、アルバイト職員を使う側の問題です。言われたことをしっかりやってくれるよう、指示は明確に伝え、アルバイト職員が指示をこなしたら直ちに評価=褒める、ことを忘れないようにしましょう。

 1クラブ1法人のような単独、個別運営はそのクラブの正規職員が経営者や運営者を兼ねることになるので分かりやすいのですが、そうではなく多数のクラブを運営する事業者は、しっかりと運営本部にて雇用契約を締結してください。現場職員に採用や勤務における条件を任せては絶対にダメです。運営本部で履歴書を管理し、雇用契約書兼労働条件通知書を必ず作成し、交付しましょう。時給や勤務時間、シフトの作成方法については口頭と書面の双方で伝えることが肝心です。「伝えた」で安心せず「伝わった」ことを確認しましょう。

 連絡先。これはとても大事です。どうしてもアルバイト職員は、突然休んだり遅刻したりということに対する抵抗が薄いのか、朝になっても来ないということはありがちです。「連絡先」は必ず、複数の連絡先を書き出してもらいましょう。なにはともあれ、時間を守ることはイロハのイで守らせることが大事ですね。

 可能ならば、アルバイト職員向けに動画を作成し、それをネットに関係者だけが見られるようにアップロードするなりクラブのパソコンで視聴できるようにしておき、最初の勤務に入る前にアルバイト職員に見てもらうことが良いでしょう。社会人としての心得や、子どもと関わる時に注意するべきことを簡潔に伝える内容の動画です。

<短期非常勤職員の可能性>
 児童クラブでは、子どもの命を直接的に守るという業務を重く考えてアルバイト職員に応募できる年齢を限定していることも珍しくありません。高校生不可、というものです。私は高校生でもアルバイトをして構わないと考える立場です。どのような仕事であっても責任はあり、目の前の子どもの命を守ることだけが格別に難しい仕事ではないと考えています。まあこれは事業者の考え方それぞれですから、どれが正しい、正しくないという次元ではありません。

 ただ私が大事にしているのは、その時々の労働力確保が少しでも容易になるのであればという考え方と同時に、数年先の労働力確保を考えると、特に学生アルバイトは大事にすることが事業の安定につながるという考え方です。高校生で初めて夏休みに児童クラブでアルバイトをしてくれた。夏休みや冬休みといった期間限定でも、高校生の間は毎年、バイトをしてくれた。そのときは単に子どもの遊び相手にしかすぎなかった。それでもいいんです。

 そういう人が大学や専門学校に進んで、「将来、子どもに関わる仕事がしたい」と思うようになったら、それはもう大事にしたい存在に昇華します。夏休みといった長期休業中だけでなく、平日であっても授業の合間を縫って勤務をしてもらうことを提案しましょう。ただ単に子どもの遊び相手として期待するのではなく、徐々に徐々に、その仕事の幅を広げるような働き方を意識して提案していくことです。
 「こんど、こういうイベントを計画しているんだけど、〇〇くんと〇〇さんは、どういう役割を担っていけそうかな?見ていてどう思う?」と意見を求めてみることや、「あなたからみて、〇〇くんは親との関係性、どうかな?」と聞いてみること。その答えの内容が大事なのではなくて、そういったことを考える機会を与える事が大事なのです。子どもと関わる仕事は楽しい事ばかりではなく、地道で実はしんどい事が多い仕事だということも伝えられます。

 そうして手塩にかけて育てた将来の放課後児童支援員をしっかりと入職させること。この仕組みが機能するようになると、正規職員として採用した後の職員教育も割とスムーズにいきます。児童クラブにインターンシップで大学生が来てくれる機会はあまり期待できないので、こうしたアルバイトを長期的に正規職員として採用できるよう、密かに「仕組んで」置くことは、人材確保として実施しておきたいことです。もちろん、学生だけではなく、育児や介護を終えて社会復帰したいと考える有資格者の大人にも十分あてはまることです。

 考えてみてください。かつての児童クラブはそういった「たたき上げ」の職員が多かったのですよ。子育てを終えた女性や、学校を出たけれどなんとなく就職先が見つからず漫然と児童クラブでバイトをしている人や、会社を退職して次の仕事が見つかるまでの時間つぶしで児童クラブでアルバイトをしているうちに正規になったとか、そういう方々が多く働いていた職場です。もともと非正規職員が人材供給源であった職種です。無資格者であっても、事業者が研修や外で学ぶ機会を積極的に確保する方策を確立すればいいのです。出来れば通信教育で保育士を取得することを費用補助を含めて事業者が応援する姿勢を打ち出して応募者を集めることができればいい。そうすれば、資質はあるけれど無資格の非常勤職員を将来の正規職員として確保できることになります。とにかく深刻な人手不足。人手不足を解消するには雇用労働条件の改善は必要としても、「この職場で働いてみたい!」と思わせることこそ重要です。つまり「動機づけ」です。動機づけこそ職員を呼び寄せ、定着させることができる重要な要素なのですから。

<おわりに:PR>
※書籍(下記に詳細)の「宣伝用チラシ」が萩原の手元にあります。もしご希望の方がおられましたら、ご連絡ください。こちらからお送りいたします。内容の紹介と、注文用の記入部分があります。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。1,900円(税込みでは2,000円程度)です。注文は出版社「寿郎社」さんへ直接メールで、または書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。お近くに書店がない方は、アマゾンが便利です。寿郎社さんへメールで注文の方は「萩原から勧められた」とメールにぜひご記載ください。出版社さんが驚くぐらいの注文があればと、かすかに期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。
(関東の方は萩原から直接お渡しでも大丈夫です。なにせ手元に300冊ほど届くので!書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかぜひ、ご検討ください!また、事業運営資金に困っている非営利の児童クラブ運営事業者さんはぜひご相談ください。運営支援として、この書籍を活用したご提案ができます。)

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

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