夏休みなど短期利用ができない放課後児童クラブがあるのですか?

 放課後児童クラブ(児童福祉法に規定されている放課後児童健全育成事業を実施する施設のこと。学童保育所もその多くが該当します)については、市区町村ごとに利用できる期間が決められています。どの期間、児童クラブを利用できるかを市区町村が自由に決めることができます。よって、夏休みや、あるいは任意の1日だけの利用(短期利用、スポット利用)を認めている市区町村がありますし、通年利用しか認めない市区町村もあります。

 短期利用、スポット利用ができない場合は次のような事情が隠されている場合があります。
・制度上は利用できるが、通年利用の児童数が多すぎて短期利用枠として追加で受け入れる児童数を確保できない。
・放課後児童クラブは、継続的に子どもと関わることで子どもの成長を支援、援助するため短期間の利用では放課後児童クラブの本来の目的を達成できないため。

 前者は、要は受け入れ人数の問題です。夏休みを前にして児童クラブに入れないことを「夏休みの壁」と呼びますが、その夏休みの壁を回避するために結局、あまり必要のない4月から子どもを児童クラブに入所させる家庭が大変多いのです。その結果、ますます夏休みだけの児童クラブ利用が難しくなる悪循環に陥っています。
 国は、夏休み開所の児童クラブ(いわゆるサマー学童)の制度の充実に向けて動き出しました。数年来に解決の糸口が見つかる可能性があります。

 後者は、放課後児童クラブの存在理念に関わる問題ですから大変難しいものです。とりわけ、保護者運営由来の児童クラブを運営する事業者や、そのような児童クラブを多く抱える市区町村に多い姿勢です。確かに児童クラブの本旨である児童の健全育成は児童に継続的に関わることを重視しています。しかし、児童クラブの存在意義はそもそも就労等で家庭が留守となる世帯の子どもを受け入れることですから、当然ながらそこに短期も長期もありません。短期だからといって受け入れないのは、児童クラブの本旨ということを盾にして、「短期利用は周りの子どもとなじめないからトラブルが多い。受け入れるこちらが大変」という本音を隠して、都合よく断っているだけです。子どもの育ちを支えるのは1日でも1年でも同じです。要は、「子どもを受け入れることの重要さ」を理由に自分たちが都合よく振るまっているだけです。

 もちろん、環境面の配慮は重要ですので、60人在籍のクラブに夏休みだけ10人受け入れるのと、30人のクラブが2つあって、それぞれ5人ずつ受け入れるのでは、圧倒的に30人の2クラブでの受け入れの方が、受け入れる側にとって負担は少ないです。必要な施設の整備や職員数の増員を行わず、「あと10人追加で入れますから」という行政や事業者の姿勢は、児童クラブの現場で働く者の過重労働を軽視しており、問題です。

 夏休みの壁の一刻も早い解消のために、市区町村は、施設数を増やし、職員数を増やす(=人件費に使える予算を増やす)ことに本気で取り組むべきでしょう。

 (運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)