国会で「朝の小1の壁」が取り上げられました。放課後児童クラブの質問は大歓迎です!もっともっと質問攻めに!
放課後児童クラブ(学童保育)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。立憲民主党の議員が国会で放課後児童クラブに着いて質問を行った様子が、旧ツイッター(X)に投稿されました。何はともあれ、放課後児童クラブが国会で取り上げられることは運営支援として大歓迎です。この質問について運営支援が論評します。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<主訴は朝の小1の壁>
小学校の授業がある日、つまり登校日に、保護者の出勤時刻の方が、子どもの登校時刻より前である場合、保護者が出勤後、子どもの居場所をどうするかが今、解決を急がれている問題となっています。これを「朝の小1の壁」と呼んできましたが、これも含めて諸々の問題をまとめて「小1の壁」に含めて取り扱うようになってきています。
(なお、保護者の方が子どもより先に家を出ていくことは、何も令和の時代の問題ではなくて、私が子ども時代だった昭和はごく当たり前だったのではないでしょうか。その時代は、「親が先に家を出て子どもが家に取り残され、それから子どもは自分で学校に向かうのが、別に違和感なく行われていた」だけです。かつては問題視されていなかったことが今の時代は問題となる、ということは珍しくありません。その1つでしょうね)
その、朝の小1の壁が国会で取り上げられたのですね。旧ツイッターで、「立憲民主党 国会情報+災害対策」(アカウントは @cdp_kokkai)が、参議院予算委員会で田島麻衣子議員と、三原じゅん子こども政策担当大臣との質疑を投稿しています。国会でのやりとりという公益性が高いものですから、当ブログにそのまま転載します。投稿は2024年12月13日午後5時26分から数度に分割されて行われていました。
(ここからXのポスト)
田島麻衣子議員
朝学童についてです。朝の小1の壁これは非常に大きな問題であると。私8歳の息子を育てながら国会議員をやっていて感じます。朝ですと学童が開いてないんですね。保育園は開いていましたけれども小学校に上がると朝学童というものがなくなってしまう。
自治体にもよりますけれども、それは非常に少数派であると思います。お父さんもですね、娘を見送るために大手企業を退職すると。そして女性の方々も働き方を変えることを検討している。このような声が多数聞かれているんです。この学童の根拠になっている法律というのは、
児童福祉法第6条の3、2項ですね。この定義というのが、授業の終了後と書かれているんです。これ終了後ですから、授業の前にと書けばですね、この法律の根拠ができるということなんですけれども、ぜひともですね、朝学童について、男性女性困っていますから、
政府のご見解のほうを伺いたいというふうに思います。
三原国務大臣
早朝に勤務されている方々をはじめ、朝の居場所確保というのは、非常に重要だということを認識しております。これまでもですね、自治体に対して、居場所づくりの取り組みを支援するモデル補助事業等を紹介してまいりました。
現在ですね、預かる場所ですとか、学校なのか放課後クラブなのか、さまざまな時間帯に関することも、保護者のニーズ調査というものを行っておりまして、これ年内に取りまとめようというふうに思っております。田島委員は児童福祉法の改正で、
授業の終了後ということに指しているものと思いますけれども、こちらのほうも今、朝の居場所確保は放課後児童クラブに限らずですね、学校や児童館など、さまざまなニーズがあるということもありますので、委員の問題意識しっかりと共有しながら、引き続き居場所確保、努めてまいりたいと思います。
田島麻衣子議員 ありがとうございます。質問をこれで終わらさせていただきます。
(・941 件の表示)(引用終了)
<かみ合っていませんね>
この質疑はかみ合っているようでかみ合っていません。まず田島議員が挙げた児童福祉法の条文ですが、こうなっています。
「この法律で、放課後児童健全育成事業とは、小学校に就学している児童であつて、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業をいう。」(児童福祉法第6条の3二の②)
ここに確かに「授業の終了後」とありますから、議員の質問の趣旨としては、「朝の授業前に放課後児童健全育成事業は行えないということですよね?だから法律を変えればいいと思うのですよ」ということでしょうか。法の趣旨に沿って事業が行えないのであれば国が補助金を交付する根拠もないので、朝の学童保育の事業が成り立たない。法律を変える意向はありますか?ということを尋ねたのでしょう。
ところが現実にはすでに夏休みなどの小学校の長期休業期間中でも、この放課後児童健全育成事業を行っています。児童福祉法の授業の終了後ではありませんが、国は「放課後は土曜日や長期休業期間中も含む」としていますから、小学校の開校日の朝であっても何ら問題はないはずでしょう。よって、「授業の終了後」という文言があるから朝の子どもの受け入れ、居場所作りが進まない、何か障害になっていることではないと、私は考えます。
(もちろん、法律を分かりやすいように変える必要はあります)
居場所作りが進まないのは「予算がない。カネがない」からです。カネがないから、場所も、従事する人も見つからない。場所も人も見つからなければお役所以外、やろうとする人はいない。それだけの話です。いやだからカネがないのは予算を出す根拠がないわけだからその根拠を作ろうよ、ということになるのでしょうが、それはその通りですが、児童福祉法の解釈次第で何でもありの現状ですから、現状において朝の居場所をどう増やすかは、国と役所のやる気次第である、と言いたいのです。
こども家庭庁はすでに、朝の子どもの居場所をどうするか政策的な課題を図ろうとしています。もう1年前ですが、2023年12月25日に公表した「放課後児童対策パッケージ」の中に、「朝のこどもの居場所づくりの推進(好事例周知等)」と明記されています。また、「NPO等と連携したこどもの居場所づくり支援(モデル事業)」の中に想定される事例として朝の居場所を例示しており、モデル事業に予算を組んでいます。
つまり国としては、放課後児童健全育成事業ではない枠組みで、朝の子どもの居場所作りを考えて、非常にゆっくりですが対応を始めています。
今回、議員側は、放課後児童健全育成事業、つまり児童クラブ、学童保育の枠組みでの朝の子どもの居場所作りを暗に求めていますが、三原大臣の答弁は「朝の居場所確保は放課後児童クラブに限らずですね、学校や児童館など、さまざまなニーズがあるということもありますので、委員の問題意識しっかりと共有しながら、引き続き居場所確保、努めてまいりたいと思います。」とあります。放課後児童クラブに限らず、居場所作りは進めていく姿勢ですから、質疑がかみ合わないのは当然でしょう。
<ここまで当然、質問するべきだったでしょう>
仮に立憲民主党が、小学校開校日の朝の子どもの居場所を放課後児童健全育成事業に該当することを政府に求めたいのであれば、次のような質問をするべきではなかったでしょうか。
「現状は、就労等で昼間、保護者が家庭に不在の児童を対象とすることが放課後児童健全育成事業となっているが、小学校の登校時間帯における子どもを含めて、保護者が、家庭以外における子どもの安全安心な居場所が必要であるとする場合に同事業の対象とするように、同事業の定義を変更してはどうか。その結果、朝の登校時間帯前の子どもの居場所や、育児休業中における保護者の休息(レスパイト)の確保、また子育てに不安がある家庭に寄り添って育児を支援できる総合的な子育て支援を行うことが可能となる、児童健全育成事業として内容を強化拡充することが適切と考えられるが、どうか」
つまり「シン・児童クラブ」を誕生させる考えはどうか?ということです。この考えを取り入れれば、現行の、「放課後児童」なのに夏休みもOKなのはなぜ?という、文字面と実態が乖離していることによる素朴な疑問も雲散霧消しますね。
私自身は、小学校開校日における朝の子どもの居場所については、現行の放課後児童健全育成事業では種々のコスト面から、よほど補助金をじゃふじゃぶ交付してくれる市区町村は別として、この事業の適応は難しいと考えます。場所、施設として小学校内あるいは小学校敷地内にある児童クラブを利用することは問題ないですが、「従事する職員と、経費」を児童クラブ事業者に負担させる(あとで補助金を交付するとしても)のは、事業者の運営の体力を考えるとおいそれとできないでしょう。
市区町村が民間団体、地域、あるいは自ら人を集めて雇って行うことが最も良いでしょう。朝の短時間であっても、「子どもである限り」、何が起こるか分かりません。トラブルによるけが、事故、あまりに急激な体調の異変、急変などで子どもの生命身体が必ず絶対に守られる保障はありません。よって、本来なら、事業者としてその事業遂行能力がしっかりとした組織に任せるべきでしょう。そういう点では、地域の社会福祉協議会が適切なのでしょうが、仮に児童クラブの事業者に任せるとするなら、潤沢に補助金を交付して、短時間でも子どもたちの安全をしっかり確保できる優れた人材を確保できるように十分に配慮する必要があります。
仮に、児童福祉法が改正されて、保護者の留守要件、不在要件を無くして、保護者が必要とするときに児童健全育成事業の対象とする、となれば朝の子どもの居場所事業も、新制度の「シン・児童クラブ」の対象とすることができるでしょう。その場合はしっかりと国が補助金を用意して安全に朝の居場所事業を実施できるようにすればいいのです。シン・児童クラブ側は社会のニーズに向き合って朝の事業も展開することが求められます。このようになれば素晴らしいとは、私も思います。
なお、夏休みなど長期休業期間中における朝の居場所は、これはもう現在でも放課後児童健全育成事業の守備範囲ですから、児童クラブ側が保護者のニーズも踏まえた上で、朝の開所時刻と、夜の閉所時刻を設定する必要があります。朝、保護者の出勤時に児童クラブが開いていないと確かにそれは問題です。保育所は午前7時開所ですが、児童クラブは少なくとも午前7時30分開所は最低限の目標として設定するべきでしょう。私が行っている全国市区町村データーベースでは、案外と午前7時30分開所は多いです。むしろ、東京都内の自治体の方が午前8時、午前8時30分開所と遅い。通勤に必要な所要時間を考慮した開所時刻となっているのでしょうが、これがもう時代遅れです。午前7時台に児童クラブが開所していない地域の住民は、「私たちの地域は遅れてますよ」と、声を上げていいのです。
(またこういうことを主張すると、児童クラブで働く人たちから「私たちを追い詰めるのか」と批判を受けるのですが、あまりにも短絡的な意見です。私は、時間を長く開所するならば必要な職員数を確保することを大前提としています。そういうことができるよう自治体がしっかりと補助金を交付することを大前提としています。)
<何はともあれ大歓迎>
国会の場で放課後児童クラブが取り上げられることは私は大歓迎です。議員であれば与野党問わず、ぜひ、放課後児童クラブを取り上げてください。いま、放課後児童クラブはもう何でもありの世界です。茨城県つくば市の放課後児童クラブが典型例です。民間事業者はすでに伝統的な放課後児童健全育成事業をとっくにとびこえた事業展開をしています。何でもありになってしまった児童クラブの世界を、国はどういう方向性で取りまとめていくのか。あるいは、もう自由になるがままにするのか。根本的な姿勢からぜひ、問うてほしいと私は願います。その他にも次のことをぜひ国会で論議していただきたい。
・児童福祉施設への格上げの考えは?
・放課後児童支援員の資格の強化拡充の考えは?新たな国家資格制定の可能性は?指定養成校制度の導入は?
・補助金交付を受けた事業者が利益に転嫁してよい上限の設定の考えは?
・公募プロポーザルまたは指定管理者の選定による審査基準、評価項目における考え方における指針制定の意向は?
もちろんですが国会だけでなく都道府県議会、市町村議会でも、どんどんと児童クラブを取り上げてください。「取り上げたいが、どのような視点を持てばいいのか」というご相談をいただければ、運営支援では僭越ながらご助言をお送りいたします。いろいろややこしいのでこういう相談には一切、報酬を求めておりません。見返りはまったく不要です。まあ可能な範囲で「学童保育運営支援アドバイザーの萩原和也氏によると」ぐらい言っていくれればいいです。よろしくお願いいたします。
<おわりに:PR>
弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。
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弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。
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放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。
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放課後児童クラブを舞台にした小説を完成させました。とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子ども達の生き生きと遊ぶ姿や様子を描いた作品ではありません。例えるならば「大人も放課後児童クラブで育っていく」であり、そのようなテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。出版にご興味、ご関心ある方はぜひ弊会までご連絡ください。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ぜひご連絡、お待ちしております。
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「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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