国が熱中症対策を罰則付きで強化するとの報道。であれば、国は放課後児童クラブに対して2つの対応が必要です!
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。熱中症に関して、国が企業に対して罰則付きで対応を義務化するとの報道がありました。仮に、放課後児童クラブの運営事業者も対象となるのであれば、罰をちらつかせる前に、2つの当たり前の対応、措置を国は講じるべきです。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<報道では>
きょう3月13日は、関東地方では気温が20度を超える地域もあるなど、春本番。4月下旬並みだそうです。来週はまた冷えるようですが。季節外れの高温は決して珍しくありません。5月に夏日、6月に真夏日だってあります。そうなるとやはり熱中症が怖いのです。地球沸騰時代に大変気になる報道がありました。
国が企業に熱中症対策を求めるという報道です。3月13日午前8時の時点において、ヤフーニュースで共同通信と読売新聞オンラインの、2つの報道機関による記事が確認できます。3月12日19時24分に配信された読売新聞オンラインの「企業の熱中症対策、厚生労働省が罰則付きで義務化へ…初期症状の放置で重症化と判断」という見出しの記事を一部引用します。
「職場での熱中症の重症化を防ごうと、厚生労働省は12日、企業に環境整備などの対策を罰則付きで義務づける方針を決めた。」
「同省は労働安全衛生法の省令を改正し、6月には義務化を始めたい考えだ。」
「要綱などによると、気温や湿度などから算出する「暑さ指数」(WBGT)が28度以上、または気温31度以上の環境で連続1時間以上か1日4時間以上の作業をするケースについて、義務化の対象とする。」
「対策を怠った場合、法人や代表者らに科される罰則は、6月以下の懲役または50万円以下の罰金。厚労省は4月にも改正省令を公布し、6月の施行を予定している。」(引用ここまで)
報道では、業種や、事業者の規模について言及がありません。とすると、あらゆる業種、あらゆる規模を網羅した新ルールになる可能性があります。
さて放課後児童クラブは、この新ルールに該当するのかどうか。おそらく圧倒的多くの事業者では「冷房がある施設内で子どもを過ごさせるので、問題ないです」と適用外であるとするでしょう。わざわざ「うちの児童クラブは熱中症になる恐れがある環境で子どもを受け入れています」と表明して、新ルールに対応した新たな業務を増やすことは考えにくいことです。
しかしそれは、事業者、つまり経営者の机上の判断です。現場を知っている者としては、夏場、常に熱中症の恐怖と向き合って日々、子どもの安全を守るのに必死な現場があることを承知しています。そういう現場を無視して、事業者が「エアコンは付いているから大丈夫」と安易に判断してしまう結果がもう容易に想像できてしまいます。
児童クラブでも、小学校建物内など公の施設の一部を利用して開設された施設や、熱中症対策でエアコンを意図的に強化しているような施設であれば心配不要です。しかし、全国あちこちの児童クラブでは、古い民家を利用していたり、古いビルにテナントとして入居していたりと、エアコンの能力に不安があり、実際にこれまでの夏場に苦労しているクラブがあるのです。また、北日本や北海道のように、かつては夏場の冷房は不要だったものの、近年の猛暑の影響で、とてもエアコンがないと快適に過ごせないという児童クラブもあります。
まず国や行政については次のことを「大前提」として求めます。地域にて児童クラブを運営している事業者の本部の言い分だけを信じずに、しっかりと現場を視察して、エアコンの有無、エアコンの稼働能力、昨年までの夏場の実態を現場職員から聞き取るといった、具体的な調査を行ったうえで、実際に熱中症の危険性があるかどうかを判断するようにしてください。まして市区町村がこの新ルールに無関心であってはなりません。
児童クラブ事業者も、法令順守を絶対的な最優先事項として、新たなルールができたならそのルールの意図することを正確にくみとり、職員および子どもの安全のために必要であれば、新ルールによって求められることになる「対応の厳格化」に取り組んでください。そもそも、労働安全衛生法や労働契約法によって、事業者には、従事する労働者の健康を守る責任が課されています。どういう法令があって、どのようにすることが必要なのかについては、ぜひ社会保険労務士や弁護士など専門家にご相談ください。
<国に望むこと、その1>
熱中症対策の新ルールが実際に実施されるのであり、放課後児童クラブもその対象となるのであれば、弊会は国に2つのことを求めます。まず1つは、何度も繰り返すのですが、「エアコンの緊急整備に関する補助金」です。児童クラブの環境整備の補助金ではなく、エアコンに特化した補助金です。国の10分の10、の補助金である必要があります。
前に記したように、全国の児童クラブの多くがエアコンの能力が万全である、とは限りません。家庭用の壁かけエアコンを何台も同時に稼働させて室温をギリギリ30度までもっていっている児童クラブだってあります。(その壁掛けエアコンは、保護者が寄付してくれたもの、という場合も結構あります)
電気代がもったいないからとスイッチのオンオフを頻繁に繰り返さざるを得ない児童クラブだってあります。
十数年前に建てられた、建物としてはまだまだ十分に使える施設でも、エアコンについては、メンテナンスの費用(維持費)が捻出できないために、せっかくの「天井埋め込み式(天井カセット、いわゆる天カセ)」や「天井吊り下げ式」の強力エアコンであっても能力が落ちてしまっている、という例がごまんとあります。(私の知人にエアコン清掃を請け負っている人がいます。児童クラブのエアコンもよく点検、清掃していますが、メンテナンスが行き届かず能力が半減しているケースがごく当たり前にある、と言っています)。冷房能力が高いエアコンがあるからといって、しっかりと空調が効いているとは限らないのです。
児童クラブのエアコンについては、「古くからある児童クラブは、十数年以前のエアコンを使用していたり、または保護者からもらい物のエアコンを使用していたりすることもあって冷房能力がとても足りない」、「行政の予算で建てられた施設に、しっかりとしたエアコンが付いていても、その後の維持費を捻出できない厳しい財政状況ゆえメンテナンスが行き届かず、せっかくの冷房能力が落ちてしまっている」、そして「北日本や北海道など、エアコンが無い施設が多い」という実情があります。
エアコンの買い替え、また整備に必要な補助金を国、こども家庭庁は準備してください。罰則付きで熱中症対策を企業に迫っても、先に述べたように「うちはエアコンがあるから」という現状を無視した机上の論理で新ルール適用外とする児童クラブ事業者が続出することが容易に予想されるのです。それは「現場のクラブのエアコンの能力が不足していることを事業者は知っているから、わざわざ罰則に該当するような状態を認めるようなことはしない」ということでもあります。
ですので、容易にエアコンを買い替え、更新、整備できる、国の100パーセントの補助金が必要です。いいじゃないですか、それで経済が回るのですよ。なんなら、「購入先、整備の依頼先は地元の事業者に限る」としてもいいのです。地域経済にとっては万々歳です。いろいろなところで税金を無駄にばらまくより、子どもに、職員、保護者に、地域経済に感謝されます。
<学校施設等の優先利用について強い指導を>
これはカネを用意しなくてもできます。ただし、組織の壁、縦割り行政の壁、慣行の壁、教育界の壁などいろいろな障害があって、国会で予算を通す方が実は楽かもしれません。要は、エアコンが十分ではない児童クラブにおいては、子どもと職員を熱中症から守るため、それ以上に、夏場の、子どもの過ごす場、ことに遊びの場を確保するために、小学校等のエアコンが完備された施設を児童クラブ側が優先して利用できるようにする措置を確保してほしい、ということです。
これも以前から何度も指摘しています。
例えば夏休み期間中、午前中に小学校の図書館を児童クラブが利用できるようにする、特別教室を使えるようにする、あるいはエアコンが効いている体育館があるならそれを借りられるようにして子どもの体を使った遊びができる時間を確保できるようにする、といった措置を、国及び都道府県の強い指導をもって、市区町村に措置を講じるようにしていただきたいのです。都道府県が教育委員会に対して働きかけることが良いでしょう。市区町村の教育委員会では実のところ、現場の職員に対してさほど強い効果は望めません。
小学校等の公共施設にエアコンが完備されていないのであれば、大至急、学校などにエアコンを整えてください。また、地域においてエアコンが完備しているスポーツクラブを一時的に児童クラブが利用できるように市区町村が単独で補助するなどの施策を講じることでもよいでしょう。
とにかく、夏場の児童クラブにおいて、子どもと職員を、熱中症の恐れから遠ざける施策が必要です。罰則をちらつかせて事業者に対応を求めても、児童クラブの事業者は正直、予算も権限も無いのですから何もできません。強い措置を国が打ち出すのであれば、その措置に対応できる材料を合わせて提示することが当然です。それが臨時のエアコン整備の補助金であり、エアコンが整った施設を児童クラブが利用できるような措置を講じる指示です。
<政治家のみなさん、政党が議会で声を上げてほしい>
放課後児童クラブは子育て支援に欠かせない社会インフラです。小学1年生の2人に1人、すべての小学生の4人に1人が児童クラブを利用しています。小学1年生はいま、ざっと90万人います。小学生は580万人です。この小学生には保護者や養育する人がいます。そういう人たちは有権者ですね。
そういえば、夏には参議院選挙があります。「わたしたちは、児童クラブや学童保育に通う大事な子どもと、その子どもたちを支える職員たちの健康を守るために、エアコン整備の臨時の補助金創設を求めます!冷房が効いた施設を学童の子どもたちが利用できるような仕組みを整えます!」と訴えれば、多くの保護者たちから支持を得られそうですよ。「熱中症の危険から、子どもを守る」というアピールは無条件に有権者たる保護者の理解と共感を得られるでしょう。また、補助金創設による経済効果は地域の事業者に支持されるでしょう。エアコンは単価が大きいですから、経済効果も相当、期待できるでしょう。
ぜひ、政治家、政党におかれては、「放課後児童クラブにおける夏場の熱中症対策に関する緊急対応」を国に求めてください。子どもと、子どもを支える職員を守ってくださいね。
<おわりに:PR>
弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。
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弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。
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放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。
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放課後児童クラブを舞台にした小説「がくどう、序」を出版します。3月10日の発売を予定しています。埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。リアルを越えたフィクションと自負しています。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子どもたちの生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描けた「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ご期待ください。
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「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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