台風など自然災害発生の恐れがある場合の学童保育所はどうするべきか。開所又は閉所の基準を策定しておこう。
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。
台風7号が上陸しました。被害ができる限り少なく収まることを願います。日本は台風や集中豪雨、豪雪、また地震と、気象災害や自然災害がとても多い国です。最近では、新型コロナウイルスによるパンデミックというようなケースもあります。そのような事態に直面したときの学童保育所はどうするべきか、様々な意見があります。
働く側にとって、あるいは保護者の中にも「当然、台風などのときは閉所するべきだ。働く人の身の危険を守るために当然だ」という意見が多いのは当たり前でしょう。私もそう思います。しかし一方で、東日本大震災のような社会活動がストップしてしまうほどの大災害に発展してしまった場合はともかく、そうでない場合は、ライフライン関係に勤める人、医療や福祉の世界、公務に携わる家庭が出勤を免除されるケースは少なく、そのような世帯にいる子どもの安全を確保するための学童保育所が必要となる場合もまた、多いのです。
自然災害発生時、あるいは自然災害の発生が想定される事態において、学童保育所の開所、閉所をどうするか。利用する側も、運営する側にも、悩ましい問題です。この問題を考えるにあたって重要な要素は、純然たる民営学童保育所(営利企業が受益者負担だけで運営する施設)を除いて、市区町村から運営を任されている以上、自治体の意向が常に大きく反映されるということです。そして自治体の意向は、往々にして「基本的に開所」という判断になるケースが多いように見受けられることです。
つまり、学童保育で働く人にとっては「危険だから閉所が当たり前」という考え方が多い中で、施設設置者である自治体は「できる限り開所」と、判断が分かれることが多いのです。なぜ、できる限り開所なのかは、「基本的な公共サービスである」「学童保育の利用が必要な人がいる限り、開所する」という考え方に沿っていると理解できますが、私の想像では「閉所によって不利益を被る方々からのお叱り、つまりクレームを受けるとその対応に困る」から「だったらギリギリまで開所しておこう」という判断に落ち着く、つまりは「面倒くさいことにならないようにしておきたい」という意向があるものだと、感じています。
考え方の差で結論が分かれる限り、意見の集約は難しいでしょう。よって、平時において、様々な状況を想定して「このような場合は閉所、このような場合なら開所」という「自然災害時における開所、閉所の基準」を、学童保育の組織運営者は行政と協議し、明確な基準を設定しておくべきだと考えます。
その場合、例えば台風の接近に伴う基準の策定にあたっては、一概に「台風が来たら、必ずこうする」という程度の緩い基準ではなく、気象警報の発令状況、予想進路と予想される雨量や風速、時間帯、最接近時における学童保育所運営地域の気象予報、当該地域の学校や、他の公共施設の運営状況などを勘案して判断できる基準が必要です。また、決定のタイミングと、一度決めた方針の見直しや変更を行えるとしたらその実施基準など、刻々と変化する状況に対応できる程度の基準を設けるべきでしょう。
また、大災害時でない限り勤務が無くならないエッセンシャルワーカーの世帯の子どもに限定して臨時に受け入れを可能とする施設の設置を検討することも必要です。洪水やがけ崩れなどによる災害のリスクがほぼゼロと考えられる立地にあることは当然でしょう。この場合、出勤して子どもの対応にあたる職員が誰なのかを事前に指定しておくことが重要です。おそらく管理職的な立場の方になるでしょうが、危急時にも出勤することを雇用労働契約に盛り込んでおけばよいのです。もちろん、それなりに手当を用意することは当然です。利用できる世帯は事前申請制度にしておくことも必要でしょう。(本来は、子育て世帯者の出勤を免除するような仕組みが、各々の企業に備わっていればいいのですが、なかなかそうもいかないでしょう)
そして、学童保育所を利用する人には、上記にような基準をしっかりと紹介した上で、それに同意する限り、入所を許可するということにすればいいのです。
「行政が開けろというかぎり、従わざるを得ない」という意見を聞きますが、何でもかんでも委託者や、指定管理をする側の意向が絶対的に優先されるわけはありません。仮に、行政が開所を命じてその方針を譲らないとしたからといって、学童保育所を開所した結果、不幸なことに自然災害に巻き込まれた場合、実際に運営している学童保育所側も当然として、行政側の開所の判断の違法性もまた問われることになります。運営を行う側は、安全に子どもを受け入れなければならない義務を負っており、また雇用する職員に対しても安全な労働環境を提供する義務を負っています。法的な考え、また責任論的な考えをもって、受任者であっても「どうしてもできないものは、できない」と、堂々と主張することも大事です。(その結果、行政の機嫌を損ねてしまい、次の指定管理者から外されたらどうする?という声が上がりそうです。そういう意趣返しをするようであるなら、それはそれでそのことを大々的に世論に訴えて対峙することになります)
子どもの安全を守るために、どのような対応が良いのか。職員の安全確保も必要。一方で、学童保育の利用が欠かせない世帯もいる。それら複数の、どれも大事な「希望」を、全てを完全にかなえることはできないとしても、ギリギリであらゆる希望の最小限度を満たせるだけの「基準、ルール」を、策定しておくこと。それを利用者は当然、職員にも行政にも周知しておくこと。これで、よほどのことが無い限りは、「どうしよう」と慌てる局面は回避できるでしょう。
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の世界の発展と質的な向上のために種々の提案を発信しています。自然災害への対応についても、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った基準の策定についてお手伝いすることが可能です。
育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。
子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。
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