児童クラブを保護者が運営するって本当ですか?
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所も一部が含まれます)を保護者が運営している場合があります。国の調べでは、2023(令和5)年において児童クラブを保護者会(または実質、保護者が運営している地域運営委員会も含む)が運営しているクラブは3,929クラブとなります。これはクラブ数全体の25,807のおよそ15.2%になります。
また、児童クラブをを運営する事業者にはNPO法人も多いですが、児童クラブを運営するNPO法人は、もともとが保護者会を由来とする法人が多く、NPOの役員も児童クラブを利用する保護者が強制的に参加する仕組みがある場合が珍しくありません。児童クラブの運営においてNPO法人は2,869クラブ(全体の11.1%)ありますから、保護者会・地域運営委員会のクラブと合わせると、全体の3割近い児童クラブの運営に、何らかの形で保護者が関わる仕組みがあるといえるでしょう。
ただ、児童クラブの例にもれずその実施内容については地域差が大変大きく、保護者がまったく運営に関わらない形態の児童クラブばかりの市区町村は多いです。その地域に住んでいない人にとっては、児童クラブに関する保護者の負担について実感することはほとんどないでしょう。児童クラブに保護者が関わることが多いクラブは1つの地域にまとまって集中していますから、そのような地域に住んで児童クラブを利用する保護者にとっては、PTAや子ども会とならんで児童クラブの保護者会や役員会に関する負担の重さにへきえきしている場合も多いでしょう。
実のところ、放課後児童クラブという仕組みは、学童保育という名称のもと、子どもたちの放課後の時間を過ごす場所が必要と考えた保護者達が自らお金と時間を出し合って確立した仕組みです。つまり、保護者運営が当たり前だったのです。もちろん大変な負担ですから、学童保育の公営化を重要な目標として含めて保護者達は学童保育の整備を求めていました。いわゆる「つくり運動」と呼ばれるものが1970年代から80年代にかけて展開されていました。つまり児童クラブのルーツは保護者運営ともいえるのです。
保護者が児童クラブを運営することによるメリットとして、子どもたちと職員に、よりよい児童クラブを「自分たちの手で」運営できることが挙げられます。いまもその考えを大事にして運動している組織もあります。一方で、児童クラブ運営も1つの事業運営でありビジネスにほかならないのでプロの運営者、経営者に事業運営を任せる方が効率的な事業運営が可能であるという考え方が広まっています。保護者による非常勤、無償労働では、種々の法令に適合した事業運営を確実に行うことには限界があります。いずれにしても、子どもの育ちに保護者が関わることは、子育ては一義的に保護者の責務と法的に位置づけられている以上、避けられないものですから、その関りの程度をどこまで保護者に理解して引き受けてもらうのかは、大事な観点だと言えるでしょう。保護者運営が必ずしも児童クラブにとって完全に最善ではない、ということは忘れてはならない観点です。
(運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)