令和8年度の、放課後児童クラブ(学童保育所)に係るこども家庭庁予算案を確認しましょう。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
 令和8年(2026年)度の、こども家庭庁の予算案が公表されました。ところが急な解散風が吹き始めたので、予算審議がどうなるのかまったく分かりませんね。国民の生活、社会の安定を大事とするなら今の時期の解散にメリットがあるのでしょうかいささか疑問です。この予算案の放課後児童クラブに関するところをチェックしましょう。
 ※2026年1月15日(木曜日)のブログ更新は、山梨県での研修実施のため投稿を休みます。
 (※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)

<何度でも言いますが、直ちにとりやめるべし>
 令和8年度予算案の31ページに「放課後児童クラブ関係予算のポイント①」が掲載されています。冒頭にやはり運営費負担の考え方が掲載されています。毎年のことですが、何度でも言います。「この考え方を直ちに廃止してください」。なお、運営費とは「放課後児童クラブの運営に必要な経費に対する補助」です。人件費が中心ですが水光熱費などすべての経費を含みます。この運営費ですが、「運営費(基本分)の負担の考え方」として、保護者が2分の1で、残りの2分の1を、国と、都道府県と、市区町村で3分の1ずつ分け合って負担します。(なお、国の負担分は全体の6分の1となりますが、「事業主拠出金財源」が充てられています。この事業主拠出金とは税金であり、国が事業者から厚生年金保険料と併せて徴収し、事業主のみが負担するものです。)
 この保護者が2分の1を負担するという考え方は強制されてはいませんし、現実的に多くの基礎自治体では2分の1を大きく下回る負担額を保護者に求めています。であれば、その現実に即して負担割合の考え方の数値は引き下げるべきです。なぜなら、結局のところ、保護者が負担する利用料等を引き上げるとき、この国の示す考え方が根拠として「利用」されるからです。最近では姫路市の保護者負担金引き上げでこの理屈が使用されていました。
 いまや小学1年生の2人に1人が利用する放課後児童クラブであり重要な社会インフラです。保護者の負担割合をぐんと引き下げるべきです。全体の8分の1ぐらいには引き下げるべきでしょう。児童クラブの整備の中心となる市町村(あえて「区」を抜きます)の負担割合も下げ、国の負担割合を大きく引き上げるべきです。そうでもないとこの先の少子化時代をじっと見据えている市町村の児童クラブ整備拡充への意欲は沸き上がりません。
 国が本当に児童クラブの充実を求めるなら、まずはここから考え方を改めるべきです。これは何度でも繰り返し訴えていきます。

<総額は増えたようです。喜ばしいですね>
 ページの右上に、令和8年度予算案について「2,755億円の内数(2,615億円の内数)」と表記されています。カッコ内は前年度ですから140億円も増えたことになります。すごいですね、ありがとうこども家庭庁。しかし、不思議なことがあります。令和7年度の予算案の概要、つまり1年前の同じような資料をみると、「令和7年度予算案 1,296億円(1,398億円)」とあるんですね。令和8年度の資料では令和7年度が2615億円となっています。令和7年度の補正予算で1,000億円以上も増えたはずはないので、いったいどうなっているんでしょう。

 まさか、額を大きく見せるために今までは計上していなかった数字を令和8年度の公表資料に盛り込んだというわけではないでしょうね。こういう大きな変動について、資料でしっかり注釈をしていただきたいですね。ただでさえ、こども家庭庁の予算に対しては、その百パーセントが単なる誤解や誹謗中傷とはいえ、逆風が強いのですから。

 さて、基本的な補助である運営費ですが、「子ども・子育て支援交付金」として、令和8年度予算案2,163億円の内数が充てられます。令和7年度は2,013億円の内数でした。150億円の増額となりますね。このすべてが運営費に振り向けられることではないですが、中核的な交付金が増えるのはありがたいですね。
 なお、予算案の資料には、赤い文字で「「こども未来戦略」における加速化プラン(令和6年度から継続実施)」と印字されています。これは前年度には無かったものです。内容は令和6年度から始まった、常勤職員2人配置の場合の運営費増額のことです。「補助を継続する」とあるので令和8年度も続くということで安心できますね。もちろん、急に無くなっては困りますが、だいたいにおいて国や行政の「手のひら返し」というのはよくあることです。明確に文字や文書で、これまで続いていたことの存続が明記されることで、やっと安心が担保されますし、書いてあってもちゃぶ台返しに遭遇することだってありますからね。

 他、前年度になかった事項が追加されているものはありません。内容も同一です。ただ令和8年度の予算案の資料では、処遇改善三銃士(①放課後児童支援員等処遇改善等事業、②放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業、③放課後児童支援員等処遇改善事業(月額9,000円相当賃金改善))の文字がちょっと大きくなって目立っています。国としてはもっと活用してほしいのでしょうか。いずれブログに投稿しますが、自治体の3割程度しか使わないこれら三銃士は引退させて運営費の額を大きく増やすべきです。もしくは、この三銃士を活用することを実質的に強制してそれでも活用しない自治体には何らかの圧力をうんとかけてください。

<キャリアアップ補助金に変化が!>
 予算案資料の次のページ(32ページ)は「放課後児童クラブ関係予算のポイント②」として、前年度にはなかった「拡充」の印が付いています。アピールしていますね。何が拡充されたのか。
 施設整備等(子ども・子育て支援施設整備交付金により実施)は1項目で、「放課後児童クラブの施設整備に必要な経費に対する補助」です。内容は前年度と変わりありません。これをもっと拡充しないと民設民営児童クラブは増えません。施設の新設、新造についても補助を拡大するべきでしょう。
 職員確保・研修関係(こども政策推進事業費補助金により実施)には新規事業が追加されています。これが拡充の1つでしょう。「放課後児童クラブ待機児童対策実証等事業【新規】」で、「待機児童が生じている都道府県・市町村において新たに放課後児童クラブで勤務する職員を確保するために事業の魅力発信等に係る経費を補助」というものです。こういう側面支援の事業も大切です。埼玉県は積極的に活用に取り組んでいるようです。
 他、こどもの居場所の確保や育成支援の質の向上に係る項目は、令和8年度と前年度で違いがありません。

 もっとも大きな変化は全部、赤い文字で記されている「令和8年度予算案における拡充内容(子ども・子育て支援交付金により実施)」です。オールレッドですから気合が入っていますね。ここには3項目あり、「①運営費における一時的な登録児童数区分の弾力化【拡充】」と、「キャリアアップ処遇改善加算に新たな区分を設定【拡充】」と、「放課後児童クラブ等におけるICT化推進事業【新規】」の3つです。
 このうちのキャリアアップ処遇改善加算の新区分設定は、運営支援も大いに評価します。これは、今までの「放課後児童支援員」と「5年以上」「10年以上」という3区分に、新たに「3年以上」を追加するものです。放課後児童支援員は年額13万1千円、5年以上は年額26万3千円、10年以上は39万4千円の処遇改善加算なのが、3年以上で19万8千円、月額にして約1.5万円のアップを図るものです。
 なお、キャリアアップ処遇改善加算は交付要綱にて「1支援の単位当たりの基準額は、919,000円を上限とする」と定められています。予算案資料にはここに関する記載がないので変更になっていないかもしれませんが、若干の引き上げがあって当然でしょう。期待します。
 児童クラブで働く人はすぐに辞めてしまう人が多くてなかなか5年以上も続かないので、3年以上になった支援員が対象となるこの制度はありがたいですね。放課後児童支援員の資格を有する限りもらえる交付金ですから分かりやすい。あとは、多くの自治体がこの制度を活用するよう国が強力に指導することです。2026年度に、勤続3年以上の放課後児童支援員がいる児童クラブ運営事業者は、いくら増額になるか計算してみてはどうでしょう。

 残る2つのうちの1つ、「登録児童数区分の弾力化」は、児童クラブの運営者にはありがたい施策ですが、児童クラブの現場にとっては諸刃の剣でしょう。運営費は、登録児童数によってその額が設定されていますが、「おおむね40人」という基準省令が求める要件に該当する適正規模とされる36~45人が最も高い額に設定されています。それを上回った人数分だけ交付額が減らされるようになっており、つまりは政策的に最も高い交付金を得られるような誘導がなされています。予算案の資料には「一定の要件を満たした上で45人を超えた児童を受け入れた場合にも、特例的に登録児童数区分36~45人を維持できるようにする。」とあり、要は待機児童解消のために定員数を上回るなど臨時に行った措置に対して、運営費の減額をしないという措置です。
 要件がいくつか示されており、あくまで一時的な措置であることと、支援の単位数を増やしたくてもすぐにはできない場合であることに加え、「追加の児童1人当たりの専用区画面積に十分な余裕がある」、さらに「放課後児童支援員又は補助員を基準に加えて1名追加配置する」という条件を備えた場合、最も交付額が多い登録児童数の区分を適用するということです。待機児童解消のためにこどもを無理して受け入れた結果、運営費が削られるというのは、わたくしも何度も煮え湯を飲んできたことですし、今回の新施策のようなことを渇望していたので、「ようやく、ですか」の思いです。とりわけ職員の追加配置を要件としたことは重要で評価します。
 ただし当然、こどもの過ごす環境としては悪化が避けられません。前提の要件にはこども1人当たりのスペースが確保されていることはありますが、現実には、40人いるクラブと55人いるクラブを比べたら、その「落ち着きのなさ」は比べようがないほど差があります。現場クラブの育成支援の条件を悪化させる可能性があることは留意の上で、市町村が適切にこの施策を活用することを期待します。

 もう1つの施策、「放課後児童クラブ等におけるICT化推進事業【新規】」は、まあこの時代ですから必要でしょう。「業務のICT化を推進するとともに、オンライン研修対応、翻訳機等に係る必要な経費を補助する」とあります。翻訳機、今後は日本語を母国語としない職員が勤務することをにらんでの措置になるかもしれませんね。

 しかし、本当に児童クラブの役割を理解しているなら、補助の額は全然足りません。児童クラブに関する社会問題は待機児童が真っ先に挙げられますが、いわずもがな、「施設数が足りない=収容人数が足りない」ことと「施設が増えたとて働いてくれる人がみつからない=労働力不足」です。いずれもカネで解決できることです。カネがふんだんにあれば施設を増やせますし、時給を高くしてかつ多くの人を雇えられれば、増えた施設で働いてくれる人を確保できます。何より、時給を高くして多くの人が従事するようになれば、おのずと、事業の質=育成支援の質も上がります。優れた人材が長く従事してくれるようになるからです。
 いわゆる日本版DBS制度をにらんで、「いままで児童クラブでまじめに勤務しながら、特定性犯罪の前科があって再出発をしてきた人」が徐々に現場から去ることも考えると、現場の人員不足により拍車がかかる可能性すら、あるのです。

 社会インフラたる児童クラブです。こども家庭庁は、もっともっと頑張って児童クラブの予算をぶんどってください。運営支援は応援します。

 
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

New! いわゆる日本版DBS制度を専門分野の1つとして事業者の取り組みを支えたいと事業活動を始めた新進気鋭の行政書士さんをご紹介します。「行政書士窪田法務事務所」の窪田洋之さんです。なんと、事務所がわたくしと同じ町内でして、わたくしの自宅から徒歩5分程度に事務所を構えられておられるという奇跡的なご縁です。窪田さんは、日本版DBS制度の認定支援とIT・AI活用サポートを中心に、幅広く事業所の活動を支えていくとのことです。「子どもを守り、あなあたの事業も守る。」と名刺に記載されていて、とても心強いです。ぜひ、ご相談されてみてはいかがでしょうか。お問い合わせは「日本版DBS導入支援センター | 行政書士窪田法務事務所」へどうぞ。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

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萩原和也