令和7(2025)年の放課後児童クラブ実施状況の内容を順次確認していきましょう③ 職員の配置はどうなっている?

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 令和7年版の放課後児童クラブ実施状況についての概要報告の3回目です。今回は、放課後児童クラブの中核的な事業である「育成支援」の質の良しあしを左右すると考えられる職員の配置の状況を確認していきましょう。児童クラブの育成支援の高いレベルを目指そうと真剣に考えていない地域ばかりだということが常勤職員配置の状況から一目瞭然です。
 (※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)

<常勤職員の配置はひどすぎる状況が継続中>
 まず前置きです。児童クラブにおける常勤職員という定義がそもそも難しいのですね。こども家庭庁によるFAQ(令和7年度)の57番以降に常勤職員に関するQ&Aが多数掲載されていること自体、国と地方自治体の理解の共通水準が確保されていないことを示しているといえるでしょう。
 放課後児童健全育成事業としての常勤職員=「原則として放課後児童健全育成事業を行う場所(以下「放課後児童健全育成事業所」という。)ごとに定める運営規程に記載されている「開所している日及び時間」のすべてを、年間を通じて専ら育成支援の業務に従事している職員」
 常勤職員を対象にした交付金に関する意味での常勤職員=「運営規程どおりに開所した場合の1週間(週の開所日数が6日間以上の場合は6日間を上限とする。)の総開所時間数(40時間を超える場合は40時間を上限とする。また、長期休業期間以外の学校休業日(土曜日や日曜日等)に8時間以上開所している事業所において、週4日以上育成支援の業務に従事する者については、「平日の平均開所時間数に週の開所日数を乗じた時間」で算出することも可能とする。)の8割以上を育成支援の業務に従事する職員」
(大雑把に言えば児童クラブがこどもを受け入れている総時間=上限40時間=の8割以上を勤務していればOK。もっともFAQの58番に示されているように総開所時間そのものを短く算定できる仕組みです。なお1年以上の雇用を前提としています。つまり1年の雇用契約でもOKということ。)
 まず運営支援として言いたいのは「定義を統一するべきだ」ということです。常勤職員を対象にした各種の交付金と、放課後児童健全育成事業としての常勤職員の定義が異なっているからややこしいのです。(もっとも常勤職員に対する補助金の場合の常勤職員に関する定義が緩やかになっているため支給可能対象を広げている=恩恵を受けられる職員を増やしている=という温情的な側面があるとわたくし萩原は考えます。それはありがたいのですが、結果として、常勤職員としては社会一般の理解とは遠い勤務条件の労働者も常勤職員として含むことで低位安定の状況を招いてしまう嫌いがあります。)

 常勤職員が大事なのは言わずもがな、育成支援には継続性が求められるからです。単純に言えば、こどもと関わりをもてる時間が長ければそれだけ育成支援遂行に利点があるからです。常勤職員が多い児童クラブ事業者はそれだけ育成支援を大事に考えている可能性がそれなりに高いだろう、と推測できます。常勤職員0人で非常勤(それが例え週5日の週所定労働日数であっても)5人のクラブより、常勤職員2人で非常勤職員3人のクラブの方が、運営支援としては「より安定した育成支援ができている」と判断します。

 常勤職員であれば、育成支援の記録(いわゆる児童票、こどもの成長の記録)を当然に付けるでしょうし(これは後で触れます)、育成支援討議を行って、こども個人又はこどもの特定の集団に対する援助、支援の方策を検討したり実践した援助、支援の振り返りを行うことでしょう。研修も定期的に受けているでしょう。そもそもこどもと関わる時間を継続して確保できることで、こどもの様子を把握することが非常勤職員よりより容易となることでしょう。
 そんなわけで長々と前置きをしましたが、要は「常勤職員の配置が少ない自治体はアカンで」ということです。では、令和7年の実施状況を見てほしいのですが、相変わらずひどい状況です。ここでは都道府県と、指定都市、中核市で、常勤職員の配置の割合が高い、低いのそれぞれ5番目まで抽出して紹介します。
・常勤職員の配置の割合が低いところ
 都道府県          指定都市        中核市
 愛媛県  12.3%   相模原市 6.9%   長野市  0.0%
 富山県  13.4%   堺市   11.9%  一宮市  0.7%
 神奈川県 18.2%   横浜市  15.5%  豊田市  6.2%
 愛知県  20.1%   浜松市  17.6%  鹿児島市 8.3%
 山口県  20.9%   北九州市 19.2%  姫路市、松山市 9.2%
・常勤職員の配置の割合が高いところ
 都道府県          指定都市        中核市
 青森県  61.6%   仙台市  72.8%  八尾市  96.3%
 福島県  60.1%   福岡市  62.3%  福山市  90.2%
 秋田県  58.9%   京都市  49.8%  越谷市  88.8%
 山梨県  57.0%   千葉市  36.3%  甲府市  85.8%
 宮城県  51.3%   静岡市  35.0%  青森市  83.4%

 都道府県合計34.9%  指定都市合計25.4% 中核市合計33.8% 総合計32.8%

 依然として長野市は常勤職員0%です。ぜひ研究者の方には、長野市と八尾市における放課後児童クラブでの育成支援について様々な比較をして発表してほしいですね。八尾市は公営クラブ(放課後児童育成室)が多く社会福祉法人による民営クラブも数か所あります。放課後児童育成室の職員は会計年度任用職員のようです。長野市は市の外郭団体運営による放課後子ども総合プランとして運営されているようですね。
 指定都市でも相模原市や堺市の常勤職員の割有の低さはとても褒められたものではありません。仙台市の7割超で「もうあと一歩」ですから。せめて8割超の常勤職員配置を自治体には強く求めたいですね。

 常勤職員が増えてほしいのは育成支援の質の水準アップもさることながら、安定した収入を得られることにつながるからです。非常勤より常勤の方が雇用が安定していることは言うまでもありません。生計において安心できる仕事、収入が安定して(二馬力生活前提としても)家族で安心して日々の暮らしが過ごせるだけの収入を得るには、常勤職員でなければなりません。ここが改善されない限り、いつまでたっても児童クラブ界隈の人手不足、人材不足は解消しません。安定した職ではない仕事に、有能な人材がこぞってやってくるはずはありまえん。安定した職こと、常勤職員です。

<育成支援の記録の状況>
 当然、100%かそれに近い割合でしょうと毎回思うのですが、残念ですがそうなってはいません。育成支援の記録をしているのは23,060クラブで、全体の88.9%です。これは前年より568クラブ増えました。早く9割を突破しなければなりません。わたくしには、「こどもへの育成支援の記録を取ってない? はぁ? うそでしょう?」としか思えません。

<配置職員数は増えていて、良し>
 「一の支援の単位あたりの放課後児童支援員等の数の状況」を見てみましょう。
5人以上、となっているのが20,487支援の単位で全体の52.0%となり半数を超えています。前年から1,463増えました。前年は19.024単位で49.9%でした。単純に、職員数が多いクラブが増えることは良いことです。減ったのは「2人配置」で、690単位の減少で3,869単位、全体では9.8%でした。
 ただ、何か釈然としないのですが、実施状況の調査には登録児童数ごとに配置職員数を記録しているものがあるのですが、その調査項目で配置職員数5名以上の支援の単位の増減を見ていても、1,463単位が増えたようには読み取れないのですね。よく分かりません。

<支援の単位ごとの時間別の職員配置の状況>
 この調査が実に気になります。以前(2025年12月29日)投稿でも取り上げましたが、平日の、こどもが学校に行っている日の場合、13時59分以前の開所時間外に配置が0人、つまり誰も出勤していた職員数がいない支援の単位は1,663の増加で14,513単位、全体の36.8%でした。つまり、国が開所時間の定義を変えたので、多くの自治体が「開所時間になってから職員が出勤すればよろしい」ということにしたことが影響しているのだろうと、運営支援は推測します。これまでも、こどもが登所する前の時間帯こそ育成支援の質を支える時間帯であるという理解が自治体に少なく、配置職員数が0人の支援の単位が多かったところ、改悪によってさらに開所時間前の時間帯に職員の勤務が無い支援の単位が増えてしまったのです。
 本来ならば育成支援を十分に行うためには、国が決めたモノサシによる開所時間より前の時間帯に出勤して、育成支援の準備をしたり研修をしたりすることが必要です。配置職員数が3人や4人の支援の単位はさほどではないですが増えていますから、この動きを拡大することが必要でしょう。

 何度も訴えますが、児童クラブの中核である育成支援は、こどもに関して職員がしっかりと分析、討議して援助、支援の方針を決めたり振り返ったりすることが必要です。それはこどもが登所する前の時間帯にしかできないことです。つまり、こどもが登所する前の時間帯こそ育成支援の質を左右するのであって、それこそ職員の重要な勤務時間となるのです。こどもが登所する時間帯を中心に、ちょっとした準備の時間があればいいでしょう、では全く違うのです。
 よって、国には、いまの開所時間を「児童受入時間」と改称し、「開所時間」の定義を「育成支援を実際に行っている時間と、育成支援のための準備及び研修として職員が勤務に要する時間」と変えるべきです。そして、児童受入時間を中心に職員を勤務させているクラブと、新たな開所時間=シン・開所時間=を基に職員を勤務させているクラブにおいて、交付金の額に差を付ければいいのです。児童受入時間のみの勤務中心の支援の単位には500万円、シン・開所時間で勤務させているクラブには800万円というように。カネを出さねば、事業の質は上がりませんが、そのカネはもちろん職員に届いてこそ効果が発揮されるのですからね。

 なお、平日で18時31分以降の時間帯に配置数が0人、つまり開所時間外としている支援の単位も19,144単位、全体の48.6%となっておりなんと339単位の増加でした。これはどういうことでしょう。保護者の就労を支える社会インフラとしては、逆行する動きのように運営支援には感じられます。

 次回も実施状況の調査結果の概要を取り上げます。利用料やその他の調査を主に取り上げる予定です。
 
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

New! いわゆる日本版DBS制度を専門分野の1つとして事業者の取り組みを支えたいと事業活動を始めた新進気鋭の行政書士さんをご紹介します。「行政書士窪田法務事務所」の窪田洋之さんです。なんと、事務所がわたくしと同じ町内でして、わたくしの自宅から徒歩5分程度に事務所を構えられておられるという奇跡的なご縁です。窪田さんは、日本版DBS制度の認定支援とIT・AI活用サポートを中心に、幅広く事業所の活動を支えていくとのことです。「子どもを守り、あなあたの事業も守る。」と名刺に記載されていて、とても心強いです。ぜひ、ご相談されてみてはいかがでしょうか。お問い合わせは「日本版DBS導入支援センター | 行政書士窪田法務事務所」へどうぞ。

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萩原和也