令和5年版の放課後児童クラブの実施状況を読む。不可解な現象があります。どうしてなのでしょう?

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 引き続き国(こども家庭庁)が昨年末(12月25日)に公表した、令和5年5月時点の放課後児童クラブ運営状況(以下、「運営状況」と表記。)を見てみます。今回は、大規模問題を考えていきましょう。
令和5年(2023年)放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況【令和5年12月25日:公表】 (cfa.go.jp)

推移をみるために、2018年(平成30年)と、2022年(令和4年)、そして最新の2023年(令和5年)の値を比較しましょう。
・71人以上の支援の単位数 2018年 1,355単位(全部で31,643単位)
              2022年 1,221単位(全部で36,209単位)
              2023年 1,349単位(全部で37,034単位)
                  

・71人以上のクラブ数   2018年 4,023クラブ(全部で25,328クラブ)
              2022年 5,207クラブ(全部で26,683クラブ)
              2023年 6,109クラブ(全部で25,807クラブ)
             
 上記のデータから、あれこれ想像してみましょう。
・71人以上の支援の単位数、2018年と2022年の比較では130単位ほど減っていたのに、2022年と2023年では128単位も増えてしまった。大規模学童の解消の取り組みが退行している。
・過去のブログでも書いていますが、放課後児童クラブは右肩上がりで増えているのに、2023年のクラブ数は市区町村の数え間違いから前年と比べて大幅に数を減らした(マイナス876クラブ)。このことを考慮しても、「71人以上のクラブ数」が902クラブも増えていることを、どう考えるか。全体がマイナス876で、大規模の71人以上のクラブが902も増えている(ちなみに、他の人数区分のクラブはほぼ減少)ことは、支援の単位として間違って算定していたのは他の人数区分であって、大規模クラブはものすごい勢いで増えているのでは。

 クラブ数の数え間違いによって数値データを単純に組み合わせて比較することができなくなったのですが、支援の単位数でいえば、「51~60人」の支援の単位が617単位も増え、「41~50人」の単位も409増えています。なお、「31~40人」のクラブ数も751クラブ減少と、大きな変動となっています。

 これらを総合的に考えると、適正規模と言える40人以下のクラブは大きく減っているので大規模化は進行していることは間違いないでしょう。50人台の支援の単位数の急増ぶりから、それまで1クラブ2単位でどちらも30人台の支援の単位(この場合、クラブとしては61~70人台の区分に入る)だったのが、待機児童を出さない等の理由で受け入れ児童数を増やしていった結果として40人台と50人台の支援の単位となり、2単位合わせて71人以上のクラブとなったケースが激増した、と想像できます。
 また、71人以上の増加は、全児童対策事業のうち放課後児童クラブとしても届け出ている施設の増加も影響している可能性があります。全児童対策は支援の分割はほぼないようですから、じゃんじゃん子どもを入所させれば必然的に71人以上のクラブが増えます。例えそれが午後5時、6時までであっても、大規模施設には変わりありません。

 つまり、国の要請、社会的な要請もあって、小1の壁解消に向けて、とりあえず児童は入れます。全児童対策も待機児童が出ないので歓迎されますし、コスト的に有利なので増えます。その結果、大規模の単位、クラブともに増えていきました、ということなのでしょう。入所の児童数増に、施設の整備がまったく追い付いていない状況が、このデータから読み取れると私は考えます。

 待機児童を出さないことは重要です。私は待機児童をゼロにすることこそ最重点にするべきだと考えます。待機児童の発生は、その家庭の生活を大きく変えてしまうからです。よって、その結果、クラブが一時的に大規模状態になるのはやむを得ないと考えます。しかしその一時的というのはせいぜい半年間であって、行政は直ちに児童の居場所となる単位増やクラブ増に取組み、年度内に支援の単位分割ができるように取り組むべきです。単位が分割されるまでの間も、2単位分の予算を組んで職員数増を可能とするべきです。

 大幅に増えた大規模状態の支援の単位、クラブ数ですが、1月6日の当ブログでは、株式会社のクラブが急増していると紹介しました。急増した大規模クラブが、株式会社のクラブで、もしあったとしたら、いったい、どんな支援が実施されているのでしょうか。入れ替わりの激しい、慢性的な職員不足の株式会社クラブでの大規模状態は、おそらく、徹底的な管理主義、規制主義の運営をしないと、何をするにしても最低限度の統制すらできないので、子どもにとっては過酷な環境となっているのではないかと、勝手に推測します。ため息が出てしまいますね。

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その策定のお手伝いをすることが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

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