令和5年版の放課後児童クラブの実施状況から学童保育の状況を読み取ろう。データの活用のために国に要望あり

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 引き続き国(こども家庭庁)が昨年末(12月25日)に公表した、令和5年5月時点の放課後児童クラブ運営状況(以下、「運営状況」と表記。)を見てみます。今回も、様々な調査項目を確認しましょう。
令和5年(2023年)放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況【令和5年12月25日:公表】 (cfa.go.jp)
 推移をみるために、2018年(平成30年)と、2022年(令和4年)、そして最新の2023年(令和5年)の値を比較します。
<平日の終了時刻>※半角で表示
      17:00まで/17:01 ~ 18:00/18:01 ~ 18:30/18:31 ~ 19:00/19:01以降
2018年 172 (0.7%)/5,542 (21.9%)   /5,626 (22.2%)   /12,109 (47.8%)   /1,866 (7.4%)
2022年  97 (0.4%)/4,585 (17.2%)    /5,782 (21.7%)   /14,174 (53.1%)   /2,042 (7.7%)
2023年 82 (0.3%)/4,544 (17.6%)   /5,556 (21.5%)   /13,755 (53.3%)   /1,870 (7.2%)
 私の考え=平日のクラブの閉所時刻は、保護者の利便性に関わる要素です。学童保育で働く側、運営する側としては、なるべく早い時間に閉所したいと思っているでしょう。私は反対です。当然、適正な賃金を職員に保障した上で、保護者の子育て生活を支援するために、通常で午後7時30分の閉所を目指すべきです。いまだに午後6時から6時30分までに閉所するクラブが2割あることに驚きです(その多くは別料金で午後7時ごろまで受け入れているとは予想しますが)。
 フルタイムで働く保護者の生活を支援(それは保護者の稼得能力の保障でもある)のため、午後7時までは通常料金で子どもを受け入れ、プラス30分は毎月2,000円前後の追加料金程度の負担で子どもの受け入れを実施するべきです。私が残念に思うのは、閉所時刻を遅くする、あるいは開所時刻を早めるにあたって、学童業界側でよく使われる「言い訳」に「子どもが家庭で親と過ごす時間が短くなる。それは育ちによくない」というものがあります。「は?自分たちの職務の専門性を自分で否定するの?」と私は呆れます。本音は、「朝早く出勤するのが嫌。帰りが遅くなるのが嫌」なんでしょう。実は。それを、子どもの育ちを表向きの理由とすることが多い学童保育業界の悪弊は、本当に嫌気がさします。「給料が安いから、やれない」「行政が補助金を十分に確保してくれない」という理由であれば、それは正当な理由です。ですから、適正な賃金を保障する必要は当然、あります。子どもを言い訳に使うことが、ダメなのです。そんなことを言う学童業界の底の浅さは、とっくに一般社会に見透かされていますよ。だから、「ヘリクツ」をいう業界には手厚い支持が集まらないと、自覚しましょうね。

<長期休暇等の開所時刻>※半角で表示
      6:59以前/7:00 ~ 7:59/8:00 ~ 8:59  /9:00 ~ 9:59/10:00以降
2018年 14 (0.1%)/7,581 (30.0%)  /17,201 (68.2%)  /371 (1.5%)   /66 (0.3%)
2022年  15 (0.1%)/9,441 (35.6%)  /16,746 (63.1%)  /287 (1.1%)  /59 (0.2%)
2023年 20 (0.1%)/9,221 (35.9%)  /16,062 (62.6%)  /290 (1.1%)   /69 (0.3%)
 私の考え=これも保護者の利便性向上を左右する要素です。利便性向上という語句にも、学童業界側には嫌悪感を感じる向きが多いですね。「私たちはサービス業じゃない!」という学童業界側の意見もよく聞きます。もうそれがすでに間違いです。学童業界はサービス業です。当たり前のことを誤解している時点で、見識を持てない業界だと社会に理解されておしまいです。公共の児童福祉という役務を行うサービスです。
 子育て支援のために学童保育が生まれたことを考えてください。原点は保護者の就労支援です。その上で、子育てをする保護者の代わりとして、育成支援を行うことが児童の健全育成です。保護者と子どもとの特別な関係と異なり、学童で働く職員は、育成支援という専門性をもって親の代わりに子どもの成長に関わっていく仕事です。その仕事は、社会から、保護者から、必要であるというニーズがある限りにおいて存在できます。言い換えれば、ニーズが無くなれば存在無用の仕事です。これが分かっていない。「我々は育成支援を行うとても素晴らしい専門職だ。社会は我々を必要としている」と学童業界は思いがちですが、間違いです。「育成支援を行うとても素晴らしい専門職だ」は私も同意です。その先です。「社会が我々を必要と考えてくれるように、社会のニーズに応じていくことが必要だ」が正解です。
 長期休み中の開所は、午前7時30分が当然です。できれば午前7時から7時30分の間に設定したいですね。7時からの30分は多少の追加料金を請求することは構わないと私は考えます。よって、こども家庭庁には、この調査項目、7:00~7:29の時間区分と、7:30~7:59の時間区分が必要です。そうすることで、きめの細かいサービス実施状況が判定できます。過去3年ぐらいは遡って事業者に実施状況を報告させることも必要ですよ。

<放課後児童クラブにおける月額利用料>※半角で記載
    2,000円未満/2,000~4,000円未満/4,000~6,000円未満/6,000~8,000円未満/8,000~10,000円未満
2018年 373 (1.7%)/3,915 (17.5%)   /6,076 (27.1%)   /4,738 (21.1%)   /3,234 (14.4%) 
2022年 372 (1.4%)/4,247 (16.5%)   /7,093 (27.5%)   /5,398 (20.9%)   /3,958 (15.3%)
2023年 357 (1.4%)/4,014 (16.1%)   /6,982 (27.9%)   /5,105 (20.4%)   /4,046 (16.2%)

    10,000~12,000円未満/12,000~14,000円未満/14,000~16,000円未満/16,000円以上
2018年 1,661 (7.4%)    /599 (2.7%)      /369 (1.6%)     /1519 (2.3%) 
2022年 2,077 (8.0%)    /780 (3.0%)       /478 (1.9%)     /(ナシ)
2023年 1,986 (7.9%)    /872 (3.5%)      /446 (1.8%)     /(ナシ)

    16,000~18,000円未満/18,000~20,000円未満/20,000円以上    /おやつ代等のみ
2018年 (ナシ)      /(ナシ)      /(ナシ)       /932 (4.2%)
2022年  225 (0.9%)    /167 (0.6%)      /281 (1.1%)      /734 (2.8%)
2023年  219 (0.9%)    /190 (0.8%)      /306 (1.2%)      /464 (1.9%)
 私の考え=たくさんデータを貼り付けましたが、このデータはあまり使い勝手がよくありません。なぜなら、運営主体ごとにデータが分けられていないからです。コストを少なくすることが当然の公立公営と、コストに見合ったサービスを提供する非営利法人系の公立民営まで、両極端のクラブが全部ひとくくりにされて紹介されているデータだからです。こども家庭庁には、「公立公営」「公立民営」「民立民営」は当然、民営は運営主体の区別ごとに、利用料の分布が分かるデータを作成し、毎年公表する必要があります。
 もちろん、全体的に言えば、保護者の負担額は少ない方が良いのは当然です。ただし、職員の雇用条件が悪化しない限りの前提条件は必要ですが。保護者負担を軽減し、補助金の割合を増やす努力を国にはしていただきたい。このデータでは、4,000~6,000円の区分が圧倒的に最多になるようになってほしいものです。なお、12,000~14,000円の区分と、18,000円~20,000円や、20,000円以上の区分が、わずかながら増加傾向にあることは注目です。種々の付加サービスを行う民営クラブの増加によるものでしょう。

 せっかく毎年、全国すべてのクラブを対象に行う調査です。いろいろな角度から現状を読み取れるよう、調査項目にも工夫をしていただきたいと、こども家庭庁に期待します。また学童業界も、しっかりとこのデータを活用しましょう。今後も引き続き機会を見つけて実施状況を見ていきます。

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その策定のお手伝いをすることが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

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