人手不足に苦しむ学童保育の世界。人手不足を解消するには構造的な問題に取り組まなければなりません。その2

 

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。

 学童保育(本稿では、放課後児童クラブのことを指します)の世界は継続的に慢性的な人手不足状態です。低賃金ゆえなかなか働き手が確保できない。働き手が少ないことや、学童保育の仕事は(なかなか知られていませんが)とても業務量が多く、働き手が少ないと当然、長時間労働に迫られます。待遇が良くないので離職者も多いです。また、これは言いにくいことですが、低賃金ゆえ質の高い人材の確保が難しく、事業の質の向上もまた難しい。人手不足が、学童保育の世界を長年にわたって厳しい業界、つまりブラック業界に追い込み続けているのです。

 前回のブログでは、補助金の負担割合を変えて市町村の負担を減らすこと、補助金と受益者負担の目安となる負担割合を変えること、この2つをすぐに実行するべきだと訴えました。今回はその2つを実行する上で障害となりそうな、構造上の問題の除去について考えてみましょう。

 市町村、そして保護者に対しても補助金の負担割合を変えることにしましょう、となった場合、それがすぐに実現するかどうかです。実は、なかなか、そうはならないことが考えられます。自治体の財政負担が減るのだからうまくいきそうと思いますし、私もそう期待しているのですが、仮に、「子ども?ああ、いずれ少子化でどんどん減るから、学童保育に投資しなくてもいいよ。数年間、現状のままでいればいいんだ」という考え方の自治体があったとしたら、たとえ補助金の負担割合が自治体に有利な方向に進んでも、学童保育の整備に消極的な自治体にとっては、学童保育の整備を後押しする要因には、なかなかならないことが考えられます。(その背景には、施設を整備してしまうと、その後の固定経費がずっと続くため財政上の負担が増えるという心配が必ずあります)

 消極的な自治体が存在するのには、理由があります。それは、「学童保育(=放課後児童クラブ)は、やるもやらないも、市町村の判断に任されている」ということが定められているからです。児童福祉法第34条の8には「市町村は、放課後児童健全育成事業を行うことができる」と、規定されています。つまり、学童保育は、市町村が、やるやらないを決められる、どこまでやるかも市町村の考え方次第なのです。

 保育所はどうでしょう。児童福祉法第24条1項には「市町村は、この法律及び子ども・子育て支援法の定めるところにより、保護者の労働又は疾病その他の事由により、その監護すべき乳児、幼児その他の児童について保育を必要とする場合において、次項に定めるところによるほか、当該児童を保育所(認定こども園法第3条第1項の認定を受けたもの及び同条第11項の規定による公示がされたものを除く。)において保育しなければならない」と、保育実施義務が定められています。つまり、保育所は市町村が絶対にやらねばならないものであって、それゆえ、必要な補助金も必ず交付されるという性質になります。

 この、子どもの受け入れの義務があるかどうかは、とても大きな差異です。「実施することができる」という学童保育の場合は、子どもの受け入れをしなくてもいいのですから、どこまで熱心に学童保育という地域子ども子育て支援事業を実施するかどうかは、完全に、自治体任せなのです。

 ここを、変えなければなりません。学童保育も、保育所と同じように、「育成支援を必要とする場合において、支援を行わなければならない」と、法令に記されるべきなのです。
 つまり、学童保育は、地域子ども子育て支援事業ではなく、保育所同様の「児童福祉施設」として、その位置付けを変えるべきなのです。

 ツイッターで雑木林琢磨さん(私のリアルでもお知り合いです)が提示されたデータでは、2022年度において公立小学校に通う1年生が学童保育を利用している割合が44.54%になり、低学年では37.67%という数値になっています。このデータからすると、多くの子どもたち、子育て世帯が学童保育を必要としていることが一目瞭然であり、学童保育は、「子育て世帯にとって欠かせない、重要な子育て支援事業であり、子育て支援インフラ」という理解が必要です。

 国は、次元の異なる子育て支援をこれから相次いで実施します。そして、こどもまんなか社会の実現に向けて種々の政策を実施していくでしょう。この、こどもまんなか社会の実現に欠かせないことは学童保育の構造上の問題の解消による、学童保育の質的向上です。そのためにも、児童福祉法上における学童保育の位置づけの見直しを、早急に実現させていただきたいと、弊会は強く訴えます。

 次回以降も、学童保育を苦しめる「人手不足」の解消についてさらに考えていきます。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の世界の発展と質的な向上のために種々の提案を発信しています。積極的に学童保育の現状や理想について社会に発信をしていきます。また、育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供できます。学童保育業界が抱える種々の問題や課題について、具体的な提案を行っています。学童保育所の運営について生じる大小さまざまな問題について、取り組み方に関する種々の具体的対応法の助言が可能です。個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

 (このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば、当ブログの引用はご自由になさってください)