人手不足に苦しむ学童保育の世界。人手不足を解消するには構造的な問題に取り組まなければなりません。その1
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。
学童保育(本稿では、放課後児童クラブのことを指します)の世界は継続的に慢性的な人手不足状態です。低賃金ゆえなかなか働き手が確保できない。働き手が少ないことや、学童保育の仕事は(なかなか知られていませんが)とても業務量が多く、働き手が少ないと当然、長時間労働に迫られます。待遇が良くないので離職者も多いです。また、これは言いにくいことですが、低賃金ゆえ質の高い人材の確保が難しく、事業の質の向上もまた難しい。人手不足が、学童保育の世界を長年にわたって厳しい業界、つまりブラック業界に追い込み続けているのです。
昨日のブログでは、「低めに設定された補助金」が元凶となり、かつ、国が示す「学童保育の運営は補助金と保護者からの徴収分(受益者負担分)が5割ずつ」という方針から、収入を安易に増やせるわけでもない固定された収入構造が、人件費に回す予算を圧迫していると説明しました。その構造的問題を、どう解消したらよいのかをこれから考えていきます。
「国が補助金の額を増やせばよい」のは確かにその通りなのですが、国が補助金を仮に増やしたとしても、それで問題解決とはならないと、わたしくは考えています。先に挙げた国の方針、これは法令ではなくあくまで厚生労働省が掲げている方針に過ぎないのですが、地方自治体はやはり国の意向を気にします。補助金が増えた、ではそれに見合う保護者からの徴収分を増やそう、とはなりません。保護者(住民)の反発が大きく、徴収分を増やすのが難しいからです。となると、現実的に保護者から毎月集める金額に見合った補助金の交付額を設定せざるを得ません。
よって、単に国が補助金の交付額を引き上げたところで、すぐに自治体がもっと多くの補助金を得ようという結論にはならないのです。しかしこれは、あくまで「その他の1つ」でしかありません。5割ずつでなくても、保護者4割、補助金6割程度なら実際に多くの自治体で実施しているでしょう。これを保護者2割、補助金8割という割合まですぐに達成できない程度の問題です。
学童保育に対する補助金が増えないのは、「地方自治体の予算が厳しい」からです。税収がよほど恵まれている自治体は全国でもわずかです。ほとんどの自治体も、結構厳しい財政事情にあります。その中で、「実情に応じてやってください。やり方は市町村に任せます」という、地域子ども子育て支援事業である学童保育に優先的に予算を回すということは、なかなか行われていません。それは、学童保育に関する補助金の多くが、「国:県:区市町村の負担割合が3分の1ずつ」(いわゆる「サンイチ」)であるためです。
3分の1ずつというのは、例えばある自治体が学童保育の運営費について9億円の予算設定をした際に、市と都道府県と国が3億円ずつ負担する、ということです。「なんだ、3分の1で済むなら市町村の負担は、それほど多くないね」ではないのです。その3億円も、市町村によっては予算に回せない厳しい財政事情のところが多いのです。
学童保育に対して市町村がこれまで以上に予算を確保するには、この「3分の1ずつ」の補助金設定を、市町村の負担を軽減するような割合に変えることが、絶対に必要だとわたくしは考えています。例えば、市町村で6分の1(つまり現行のさらに半分)、都道府県も6分の1とすれば、3分の1が地方公共団体の負担になります(6分の1+6分の1=6分の2=3分の1)。残り3分の2を、国が出す。こうなれば、先の運営費の予算が9億円のところ、市町村の拠出分は1.5億円で済むのです。
学童保育は保育所や認定こども園と違い、区市町村が絶対にやらねばならない事業とされていません。ですが、今は多くの国民が利用している、重要な子育て支援のシステムです。国が少子化対策として種々の施策を実行する中で、少子化による労働力の減少を補うために子育て世帯の労働力を労働市場に回すためには、学童保育の充実は絶対に欠かせないはずなのです。よって、国の少子化対策の重要な1つの施策として、学童保育(放課後児童クラブ)に対する補助金の構造を、今こそ、大至急、変えるべきなのです。それは時限措置であっても良いでしょう。
同時に、国は、補助金と保護者負担(受益者負担)の目安とする割合を、国が7割5分、保護者が2割5分、というように変えるべきです。こうすれば、保護者負担の増額を気にすることなく、補助金の交付額を増やすことにためらいがなくなります。
これらのことは、やろうと思えば、すぐにできることです。全国学童保育連絡協議会(全国連協)の「日本の学童ほいく」誌7月号によると、2023年度の国の放課後児童クラブに関する予算は総額1205億円、中核となる運営費等に対しては1046億円が計上されています。全国連協のまとめでは2022年の学童保育所はおよそ3万5000施設。1施設に対して約300万円の運営費等になります。それでは、とても足りません。1施設に1000万円の運営費等の補助金が設定されるとしたら、およそ3500億円となります。それがとてつもなく多い額でしょうか?いえいえ、十分に可能でしょう。次元の異なる子育て支援策を国が掲げているのです。これまでよりプラス2000億円ちょっとの増加は、実現可能なはずです。
補助金の負担割合を変えること、補助金と受益者負担の目安となる負担割合を変えること、この2つをすぐに実行していただきたいと私は考えます。これこそ、劇的な特効薬の1つなのです。
次回以降は、学童保育を苦しめる「人手不足」という不治の難病の治療法についてさらに考えていきます。
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の世界の発展と質的な向上のために種々の提案を発信しています。積極的に学童保育の現状や理想について社会に発信をしていきます。また、育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供できます。学童保育業界が抱える種々の問題や課題について、具体的な提案を行っています。学童保育所の運営について生じる大小さまざまな問題について、取り組み方に関する種々の具体的対応法の助言が可能です。個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。
子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。
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