こども家庭庁の令和7年度当初予算案が公表されました。放課後児童クラブの予算が増えていないようです。
放課後児童クラブ(学童保育)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。こども家庭庁が、来年度、令和7年度の当初予算案を公表しました。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所の中核的存在)の予算は前年度より減っているようです。残念です。どうしたのでしょう。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の実施状況(その年の5月1日時点の状況)の4回目は、後日改めて投稿します。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<当初予算案>
こども家庭庁による「放課後児童クラブ関係予算のポイント①」は資料の39ページにあります。ページの右上に予算額が記載されており、令和7年度予算案1,296億円(1,398億円)とあります。カッコは、令和6年度の予算額です。これを見る限り、減っています。不思議です。令和5年度は1,290億円でした。
運営支援ではとりわけ、運営費への補助を重要視しています。運営費は子ども・子育て支援交付金により実施されますが、子ども・子育て支援交付金の額は、令和7年度予算案では1,174億円となりました。令和6年度は1,223億円でしたから、やっぱり減っています。残念です。
なお、児童クラブの施設を増やすために重要な施設整備等に必要な経費を補助するためには、「子ども・子育て支援施設整備交付金」が使われます。こちらは令和7年度予算案で87億円となり、前年度の143億円から大幅に減っています。
<どうしてだろう?>
解せない事ばかりです。どうしてそうなったのかの報道が無いですし、これからも無いでしょう。どうしてそうなったのか、後日、業界団体等がこども家庭庁に直当たりして理由を聞いて公表していただきたいです。
運営支援の勝手な推測は次の通りです。先日に公表された「放課後児童対策パッケージ2025」に、気になる文言があってずっと私は心中にひっかかっていました。それは「パッケージ 2025 における新規・拡充事項のポイント」の中に記載されています。ちょっと長いですが引用します。
「自治体において、補助事業を十分に活用できていない状況が見られる。国ではこれまで、待機児童縮減に向け、職員の処遇改善、職員配置に係る運営費補助、ICT 化の支援等、累次の事業を行ってきたところだが、自治体において必ずしもこうした事業の活用方法が理解されておらず、結果として補助事業の活用に至っていない例が散見される。このため、国が個別自治体の状況を詳細に把握した上で、活用できる補助メニューを案内する等の取組を更に進める必要がある。さらに、自治体の中には、待機児童の状況に鑑み、望ましい定員数を一時的に超過して児童を受け入れている状況が見られることから、安全対策のための定員管理について改めて整理する必要がある。」
(引用ここまで)
この文章から、国の地方自治体に対する戸惑いや文句が浮かび上がってきたのです。「補助金を用意したけれど、自治体が使ってくれなきゃどうしようもないんだぞ」ということです。なお、この引用部分の最後の文章は大注目ですね。定員を超えて受け入れているのは安全上で問題だからこれからチェックするぞ、という警告と等しい内容です。
つまり、国が補助金を用意しても市区町村が活用しないから、だから令和7年度は予算を減らしたよ(というか、使われなかったので減らすしかなかった、減らされちゃった)ということではなかろうか。予算は使われなかったら減らされますからね。だとしたら、地方自治体が放課後児童クラブへの投資に後ろ向きだった結果が招いた当初予算の減額ということになります。
<しかしですよ>
地方自治体だけを責めるのはいけません。毎年同じようにこの予算案の資料の冒頭に、相変わらず、放課後児童クラブの費用負担に関する考え方が掲載されています。あの、保護者が全体の経費の半分を負担することを国は基本的な姿勢としているよ、というひどいものです。ここに市区町村の負担分が全体の6分の1(国と都道府県との負担割合でいえば3分の1)となっています。これを「出せない」自治体がいっぱいあるでしょう。大多数の市町村(もちろん特別区は外します)は財政的に窮乏していますから、全体としては6分の1、行政側としては3分の1の補助金を活用した児童クラブ予算ですら組めないということです。
国は、「自治体が予算を組まないから減らしたんだ」ともし思っているのであれば、児童クラブの待機児童が解消する期間限定で構わないので、市区町村の負担をさらに減らすように特別の予算措置を検討するべきです。当然、保護者が全体の2分の1を負担するというひどい割合を見直すべきです。
いまや小学1年生の2人に1人が児童クラブを利用するのです。立派な社会インフラです。であれば、受益者負担を5割分も、求めるのではなく、まずはその半分、全体の4分の1ぐらいまで減らせませんかん?そうでもしないと、児童クラブに支払う経済的負担で子育て世帯はさらに疲弊しますよ。
<ここにもケチをつけたい>
令和7年度予算における拡充内容として、「夏季休業期間中における放課後児童クラブの開所支援」が掲載されています。いわゆる「サマー学童」への対応でしょうか。短期間のクラブ運営費として、「既存の放課後児童健全育成事業所が小学校の夏季休業期間中に同一市町村域内に所在する本体の事業所外の分室において、一時的に放課後児童健全育成事業を実施する場合に必要な運営費等の補助を行う。」としています。しかし、その補助基準額安は、1分室=1支援の単位あたり、年額にして74万7千円です。夏休みの1か月半の分ということでしょう。しかし、その額で、夏休みにわざわざ手間ひまかけて分室を設置する事業者が現れると国は本気で思いますか?その額で、夏休み分に働いてくれる人を集められるだけの予算がまかなえますか?断言しますが、無理です。けたが1つ違います。それぐらいのカネがないと、短期限定で働いてくれる人なんて確保できません。
なお場所を整備するためには「上記に基づく放課後児童健全育成事業を実施するために必要な開設準備経費の補助を行う。」として分室に設置する1支援の単位当たり60万円が年額で補助されます。これもまた、あまりにも、世間の実情を知らなさすぎます。この程度のカネでなんとか分室を開所できる条件が整っている事業者や地域ならすでに学校側の協力を得て開所しています。短期間限定で受け入れ場所を容易に増やせるということはそれだけコストがかからないからということです。いま、できないのはカネがない、カネがないから場所も容易できない(又は、学校側が場所を貸してくれない)ということです。
人件費分74万円、場所代60万円で、サマー学童がじゃんじゃか誕生するとは、私には想像できません。すでに多くの自治体で実施している短期スポット受け入れについては、ありがたい補助金になるのでしょうが。
<最後に、これは要注意!>
この予算案の最後に、事業者には要注意の記載がありますよ。極めて重要です。来年度の事業計画を立てる際に忘れてはならないことです。引用します。
「長時間開所加算(平日分)の要件変更【拡充】
保育所の開所時間を踏まえ、遅い時間まで開所する放課後児童クラブを支援するため、長時間開所加算(平日分)の要件を見直し、18時半を超えて開所する場合の加算とする。
(見直し前)1日6時間を超え、かつ18時を超えて開所する場合
(見直し後)18時半を超えて開所する場合」(引用ここまで)
つまり、平日の長時間開所についての加算は、午後6時30分を超えて(つまり午後6時31分以降)閉所する場合になって対象となるということです。これは午後7時ごろまでの開所を促す施策です。それ自体はまったく問題ないでしょう。むしろどんどんやるべきです。今は午後6時30分以前の閉所クラブはだいぶ少なくなっています。
しかし、「1日6時間を超え」という文言が消されています。これはダメですね。午後2時開所でも国は認めるということです。ここにも、国の、放課後児童健全育成事業の軽視姿勢が透けて見えますね。国が、放課後児童クラブを子どもの居場所の1つに過ぎず、その居場所はつまり預かり場であるということを事実上、認めているということです。その姿勢が、放課後児童健全育成事業のさらなる拡充を本気で地方自治体に求めていないことの土台になっていると私は感じてしまいます。
この「1日6時間を超え」の文言は復活させねばなりません。こども家庭庁さん、真剣に、児童の健全育成に必要なことは何かを考えてみるべきです。優れた資質の支援員がじっくりと子どもと向き合うことが必要なのです。そのために支援員の業務時間はそれなりの長さが必要。子どもが登所する時間のちょっと前にクラブに来ていれば間に合うよね、ではありませんから。いい加減、目を覚ましてください。このままでは児童クラブが機能不全を完全に起こして制度として崩壊します。
<おわりに:PR>
弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。
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弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。
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放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。
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放課後児童クラブを舞台にした小説を完成させました。いまのところ、「おとなの、がくどうものがたり。序」と仮のタイトルを付けています。これは、埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子ども達の生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。出版にご興味、ご関心ある方はぜひ弊会までご連絡ください。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ぜひご連絡、お待ちしております。
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「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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