こども家庭庁の「30秒弱無言会見」は役所も記者も残念すぎた。放課後児童クラブ(学童保育所)は問題山積なのに。
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする社労士「あい和社会保険労務士事務所」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
さて、こども家庭庁の記者会見がSNSで大炎上しました。2025年10月17日の三原じゅん子大臣の記者会見が、大臣からの報告無し、記者からの質問も無しということで30秒足らずで終わったことに「仕事してない!」「不要だ!」との罵声がSNSで飛び交っています。元新聞記者のわたくしとしては、悔しいですね。役所も記者も。こども家庭庁はこの逆注目を奇貨として存在意義を伝える広報戦略を練り直しましょう。記者はもっと頑張りましょうよ!
(※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
<圧倒的な再生回数>
まずわたくし萩原から指摘申し上げますが、こども家庭庁は広報はとても頑張っているとわたくしは感じます。こども性暴力防止法関連のいわゆる日本版DBS制度の資料はこども家庭庁のホームページから入手しますが、HPの掲載タイミングも、掲載される資料の量においてもわたくしは不満がありません。第一、広報資料を見つけやすい。その点、他の省庁よりはるかに公開される資料を見つけやすい省庁だとわたくしは評価します。
その上で、今回話題になった10月17日の三原大臣会見は、とても残念ですね。YouTubeで三原大臣の会見動画を見ることができますが、この30秒弱の会見(30秒とか27秒とか28秒とか、報じるメディアが様々な秒数を用いて報じていますよ)の動画再生回数は、10月21日午前8時50分時点で「51,746回視聴」となっています。ではその前の10月14日に行われた大臣会見の動画再生回数といえば、2,439回視聴です。10月3日の大臣会見の動画再生回数は968回です。ちなみにこの3回の会見とも、大臣からの報告事項はありません。悪い意味でバズってしまいました。
今回の騒動を伝えるネットニュースを1つ引用して紹介しましょう。ヤフーニュースに2025年10月21日6時に配信された、女性自身の「「楽な仕事」三原じゅん子 “報告ゼロ”でたった27秒の大臣会見に批判噴出…高市総裁発言にも“クギ”で危うい今後」との見出しの記事です。
「問題となっているのは、10月17日に開かれた三原氏による閣議後の会見でのこと。幹事社から冒頭の発言を促された三原氏は「はい、みなさんおはようございます。冒頭、私からご報告は特にございません」と報告。加えて、質疑応答では記者からも一切質問が出ず、会見はわずか27秒ほどで終了したのだ。」
「巨額の予算の割に成果が見えにくいこともあり、かねてから存在意義が疑問視されがちな同庁。報告も質問もゼロという会見に、Xでは批判が噴出している。」
(引用ここまで)
<時期は時期、ですけれどねぇ>
タイミングが良くなかったのは確かです。新たな自民党総裁が決まり、石破内閣は確実に店じまいするので、大臣に今後の取り組みを質すことはあまり意味がないので、大臣に関する質問は無い。一方で役所側から記者に対して常に必要な資料や情報は別途、記者レクチャー(記者レク)で行っていれば、会見の場で丁々発止となることも起こらない。
でもねぇ、わたくしは残念です。先に引用紹介した女性自身の記事にあるように、こども家庭庁には、そもそもいわれなき誤解が理由や根拠であっても、とりわけネット世論から厳しい視線が向けられていることを、役所の中の人が知らないわけはあるまいに。世論は中身はどうあれ、盛り上がったらその流れで変わるのです。こども家庭庁への不条理な批判であってもそれを賛同する人が多数派になったら、それが正義になるのです。この世の中の正義は、多数派が作ることが多いのですからね。であれば、こども家庭庁の広報担当者は、このような「誰から見ても仕事をしていないとツッコミを入れられる」ような会見を避けるような最低限の配慮をすればよかったのです。役所側から、たとえ以前に記者レクで説明したことであっても、記者レクには一般の方は出られないのですからあえて大臣から説明させるとか、小さなことでいいから発表させるとか、事情をよく知る記者に「ぜひあの件を質問してみてはいかがですか」と水を向けるとか、いろいろできたでしょう。
そして元記者としていいたいのは、記者側のだらしなさですね。こども家庭庁が取り扱う分野は、いまの日本社会が頭を抱えている難題ばかりです。先の高市早苗自民党総裁のワークライフバランス発言も、多くの国民が興味関心を持っているテーマだからこそ、いっときではありますが様々な意見が飛び交った。ワークライフバランスは、子育てと仕事の両立が大きなテーマとして含まれるものです。こどもまんなか社会の司令塔としてのこども家庭庁の役割がさっぱり見えないのは、こども家庭庁の行政施策を調べ、質問し、時には追及する記者たち、メディアの力量不足であることも原因であると、わたくしは考えます。
相変わらず報道が続く児童虐待、こどもへの性暴力について、いわゆる日本版DBS制度ひとつとっても、記者から大臣に質問することはいくらでもあるでしょう。それこそワークライフバランスについてだってあるでしょう。育児休業制度は年々拡大していますが、では多くの労働者が就労している中小規模、零細規模の事業者で実行性を担保するにはこども家庭庁としてどのような施策を打ち出していこうと考えているのか、いくらだって省庁側に質すことがあるでしょう。
記者側にそれがないということは、今なお記者クラブ的な弊害(記者が配布資料だけで記事を書いてしまう。記者レクの内容だけで記事を書いてしまう。自分の頭で問題意識を持って取材して取材の結果でつかんだ疑念や疑問を会見でぶつけようとしない)が、今の時代になってもなお中央省庁記者クラブにまだ残っているのかなぁと、呆れた次第です。
なお、大臣質問ですが、行政の施策に関することであればおそらく(少なくともわたくしが現役記者だったころはそうでしたが)事前に役所の事務方に質問内容を伝えておき、その回答を役所事務方が準備して大臣に事前にレクしたり回答ペーパーを渡したりします。そうじゃないと、いろんな資質の大臣がいますからね。動画公開される記者会見で答えに窮した大臣の姿を世間に見せることは「大丈夫か? この大臣、この役所」という不安をかきたてますからね。その当たり前のことを、任期もそろそろ終わるという緊張感のゆるみのなかで、しでかしてしまったのが今回の30秒弱会見なのでしょう。
しかし、こども家庭庁はただでさえ、厳しい見方をされていることは忘れてはなりません。あけすけに申せば「しっかり仕事をしている」ことを国民にアピールして民意をつかんでおかねばなりません。こどもまんなか社会という果てしない遠くにある険しい高山に登るには、地道に一歩一歩でも進んでいかねばなりません。そういかなければ、人気取りにご熱心の政権によって本当にバラバラにされかねないですよ。担当していた施策は厚生労働省などに付け替えて、浮いた大臣ポストを、人気取りに目が無いバカ政権が作る「外国人不法取締庁」なんて馬鹿げた新設の役所に充てるなんてこと、この国の政治家どもはやりかねませんよ。なにせ、政権を取るため、総理大臣の座に就くため、政権という権力に近づくことができるためなら、どんなことでもやってしまう政治家たちの姿を、今まで散々掲げてきた政策をひっこめて権力にスリスリする政治家たちの姿を、今まさに目の当たりにしているではありませんか。
<放課後児童クラブに関してなら質問したいことはたくさんあるのに>
放課後児童クラブは、こども家庭庁が所管する分野では決して主要な分野ではないでしょう。とはいえ、こども家庭庁が公表した予算の使い道を示す円グラフでは、保育所と並んで放課後児童クラブの運営費補助が予算の多くを占めているとして紹介されています。小学1年生の2人に1人が児童クラブを利用する時代になったのですから、国民を対象に「こども家庭庁の予算は、あなたのお子さんが利用する保育所や児童クラブの補助金としても使われていますよ。だから大事な予算なんですよ」と知らしめることに役立つ(と役所が期待している)程度の重要さは、あるわけです。
放課後児童クラブの状況がよく分からない記者ばかりかもしれません。ぜひ当運営支援ブログを時々でいいのでお読みください。記者たちにはぜひとも次のことを聞いてくださいと期待します。
・放課後児童クラブは育成支援の連続性を重視すると運営指針にあるが、ではその連続性を損なう要因となりえる3年や5年という期間での業務委託契約や指定管理者制度との整合性はどう考えるのか。
・放課後児童支援員の配置義務化を求める考えやその方向性は無いのか。
・児童クラブの登録率が年々上昇している中で、多くの国民が利用する仕組みとなってきたことに鑑み、国民が運営費の負担を等分する考え、つまり受益者負担を2分の1とすることを軽減する考えについてはどうか。児童福祉施設への変更を考える方向性はないのか。
・いわゆる日本版DBS制度と放課後児童クラブとの関わりにおいて、これまで資格制度がなく、資格制度ができてからも基礎資格の所持に関して厳密な確認をしてこなかった児童クラブにおいては、特定性犯罪の前科がある者が一定数、従事していると想定されるが、児童クラブ事業の特質である「こどもと関わらない職場が極めて少ないか、存在しない」状況において、制度によって特定性犯罪の前科が確認された制度対象者に関するセカンドキャリアプログラムの準備について行政として積極的に関わる考えがあるのか。
・児童クラブでのスポットワーカー利用に関する調査を実施する考えは無いのか。
大臣会見で大臣が答える内容は、その質問内容が省庁の施策に関する限り、大臣個人の感想や意見ではありません。三原大臣は、あす22日までの任期やもしれませんが、新しいこども担当大臣に誰が任命されたとしても、こども家庭庁が手掛ける児童福祉行政は続くわけです。ですから記者さんたちには遠慮なく、任期が間もなく終わる大臣だとしてもどんどん質問すればよかったんです。省庁詰めの記者が普段から役所の中で官僚たち相手に情報を取ったり質問をしたりする仕事をしているであろうことは分かりますから、ぜひとも「国民の目に見える」仕事もして、「眠れる獅子」になってしまっているこども家庭庁のケツをしっかりと叩いてください。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)