こどもと保護者が放課後児童クラブ(学童保育所)を「選べる」時代を早く迎えたい。環境が整った地域から始めよう。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
 放課後児童クラブはとりわけ公設のクラブの場合、居住地や通学する小学校によって利用できる施設が決まっています。それはそれで良いのですが、こどもまんなか社会を掲げるのであれば、利用できる児童クラブを選択できるように環境を整えることが国と自治体に求められる、というのが今回のブログの趣旨です。環境が整っているなら、利用したい児童クラブをこどもと保護者側が選択できるように早く踏み出してほしいのです。
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 (※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)

<地味ですがなかなか大事な報道>
 中日新聞が、愛知県豊川市に新規開所する児童クラブについて記事を掲載しています。2026年3月4日13時9分に更新配信している、「児童に安全安心の放課後を 愛知県豊川市、校区越え通える拠点クラブ新設」の見出しの記事です。なお有料記事です。見出しの通り、校区外のこどもでも利用できる児童クラブを整備した、という内容です。

 特に児童クラブ界隈で盛り上がっている記事ではなさそうですが、わたくし萩原は、なかなか大事な記事だと感じました。もっと早く当ブログで取り上げたかったのですが、ブログ更新ができない日々が続いたので後回しになってしまったのですね。

 何が大事かといえば、校区(児童クラブの場合は、小学校の学区)を越えて通える児童クラブ、ということです。ところがわたくしの感想とは別に、校区外のクラブ利用についてほとんど世間様の興味関心は向かなかったようです。

<校区外の児童クラブの存在事由と必要性>
 さて校区を越えて通える児童クラブというのはどういう状況で存在しえるのか。わたくしが考えるに、次のような状況があるでしょう。
1 待機児童対策のため。校区内のクラブがギュウギュウ詰めなので校区外で受け入れに余裕がある施設に通うことを認める。
2 校区に縛られないことを了承して市区町村が設置を認めている児童クラブ。典型例が民設民営の児童クラブで、一般的な放課後児童健全育成事業のほかに自主事業として各種のサービスを提供している場合。市区町村の了承のもとに設置運営される。
3 保護者の利便性などを重視して市区町村が校区外の児童クラブ利用を認めている場合。

 待機児童の存在、または待機児童が生じやすい傾向にある、という環境は重要です。なにせ待機児童は百害あって一利なしですから、待機児童解消のためにいろいろな手を打たねばなりません。国も自治体に期待しています。A校区の児童クラブは定員を超えてもう入所児童を増やせせないが隣接のB校区の児童クラブは定員に達するまでまだまだ余裕があるというなら、B校区の児童クラブをA校区のこどもも利用できるようにするのは、手っ取り早い待機児童解消策になります。
 上記の2の場合は、待機児童解消の効果を期待しつつ、さらに、こどもと保護者、そして事業者それぞれのニーズや要望を満たす方策になります。これは運営支援も推奨したい方策です。なぜなら、放課後や長期休業期間中の児童クラブにおける過ごし方について、こどもの希望は様々ですから、なるべくこどもが「過ごしたいと思う」時間と空間を整えることが、こどもまんなか社会で必要だと、運営支援は考えるからです。保護者の希望はたいてい「もっとお勉強を!」という学習支援、学力向上支援に傾きがちですが、人間は十人十色、自分のペースで勉強したいと思うこどももいるかもしれませんね。事業者にしても、こどもと保護者の多彩なニーズをくみ取ってサービスを提供できる児童クラブを展開することで、収益源の1つとして児童クラブ運営を期待できます。もっとも、こうした事業形態の児童クラブは比較的利用料金が高めになるので、児童を受け入れる地域を広げないと、事業の継続に欠かせない入所児童数を上回ることが難しくなるという現状もあります。
 なお、上記の1と3は公設クラブに考えられるでしょう。

 高市早苗総理は、民間活力を導入してのこどもの居場所整備を進めたい方針のようです。これもまた、校区外の児童クラブ整備の流れを後押しするでしょう。上記でいえば2のパターンに近い形になるからです。民間事業者がそれぞれの事業方針に即した施設を整備するとしたら設置場所がある校区に縛られることなく、当たり前に越境通所とするでしょう。

 必要性については、多種多様な放課後と長期休業期間中の過ごし方を提供できることがあります。また、児童クラブの「行き渋り」対策として非常に重要です。居住地と同じ校区の児童クラブに、こどもが何らかの事情で行きたくないという意志を示した場合、他に放課後のこどもが過ごす場所がなかったとしたら、保護者は社会経済活動の従前どおりの継続が困難になります。公設クラブはギュウギュウ詰めだったり職員数が不足していたりと、職員とこどもとの関わりがなかなか丁寧にしたくてもできない事態がありがちです。そういうとき、疎外感を感じたりこども同士のトラブルに巻き込まれたりして、こどもがクラブに行きたがらない、ということがあります。校区外の児童クラブがあれば、行き渋りになったこどもの居場所として機能できます。これはとても重要です。

<問題も当然ある>
 1 こどもの登所時の安全確保
 校区を越えて登所する場合でも比較的、学校と施設との間の距離が近ければ徒歩での登所となるでしょう。その登所ルートにおけるこどもの安全確保が気になるところです。なお距離については校区外だから一概に児童クラブまでの距離が遠くなることではないことは当然です。すぐ近くに学校があるのに校区の範囲が複雑な形なので自宅から遠い学校に通う必要がある、ということと同じです。
 2 こども登所にかかるコスト増
 校区外のこどもを迎えに行くことにした場合、それが徒歩による職員の迎えなのか車両を使った送迎なのか、それもまた様々でしょう。しかし徒歩だろうが車だろうが、コストがかかります。やや遠くの学校まで職員が迎えに行くとなればその間、児童クラブで従事する職員が少なくなるのでその補充としての人員配置が必要になるでしょうし、送迎については国の補助金が活用できるとはいえ必ず自治体が補助金を出してくれるとは限らず、なんだかんだで事業者の送迎コスト持ち出しもあるでしょう。
 3 児童クラブにおけるスケジュールのずれ
 A学校とB学校からこどもを受け入れているとした場合、A学校とB学校の時間割、スケジュールが違う  ことはごくごく普通であり当然です。開校記念日だって違うでしょう。A学校のこどもは早帰りだけれどB学校は下校が遅い、という場合、児童クラブでのこどもたちの過ごすスケジュールがどうしても変わってきます。児童クラブ側の職員数が恵まれていて、複数のこどもたちの過ごし方を職員が統率できるならいいのですが、せいぜい4~5人の職員で40~60人のこどもたちとかかわっている児童クラブが当然ですから、時間軸が異なるこども集団の対応は児童クラブに対する重い負荷となります。これが理由で複数の学校からのこどもの受け入れに消極的になる現場もまたごく普通の反応です。責められません。
 4 こども同士の関係性
 保護者や行政側の都合で校区外のクラブに通っているこどもの場合、自分が通っている小学校のこどもより他の小学校のこどもが多いこともあります。こどもの誰もが「誰とでもなかよし」になれるわけではありません。あまりコミュニケーションが得意ではないこどもには、児童クラブでしか顔を合わせないこどもとの関係性を構築するのがうまくいかない場合もあるでしょう。そういう状況では、いじめ、いじめに近い関係が固定化されるおそれも排除できないところです。

<それでも、希望する場合は希望できるように>
 上にあげた問題は、ほとんどがカネで解決できます。カネつまり予算があれば、職員をもっと増員できます。職員が増えれば、こどもと関わりをもてる時間が増えていきますし、複数の学校の異なるスケジュールにも対応できます。また、送迎支援の補助金がしっかり出れば、ある程度の送迎に関する出費の手当てができるようになります。そもそも現状の児童クラブは予算不足による低い待遇水準と職員不足による職員1人あたりの業務量過多によって、なかなか職員が定着せず人手不足がしみついています。カネつまり児童クラブに投入される補助金が増えれば解決できることが多いでしょう。

 放課後児童健全育成事業の軸である育成支援は、とてもすばらしいこどもとの関わり方です。ただ、育成支援に関する捉え方や理解そして実践の方法は、育成支援という対人ケア労働としての専門性の奥深さと、いろいろなこどもに対応が求められるというとても広い間口があるがゆえに、事業者ごとに大いに異なる事業内容として提供されます。つまり児童クラブは千差万別であるということです。A校区に住むこどもはA校区内の児童クラブに通わねばならないとして、でも実際は隣のB校区内にある児童クラブの雰囲気や様子がとてもぴったり自分に合う、ということもあるでしょう。そういう場合、児童クラブを選ぶことができるのであれば、このこどもは自分が過ごしやすい児童クラブを選んで通うことができます。

 なんでもかんでもこども(特に保護者)の希望に従う必要はない、というのも児童クラブ側の本音として、目に見えないところに隠されているのですが、いろいろな児童クラブがあって、それら特色が異なる児童クラブをこどもと保護者が相談して選ぶことができることは、こどもの充実した放課後の時間を確保することにつながるものと、わたくしは考えます。あまり横文字は使いたくないのでこどものウェルビーイングとは言いませんが、そういうことを重視するなら、「過ごせる場所、育っていく場所」を選択できるようにすることは、当然だとわたくしは考えます。
 要は、今のナイナイ尽くし(職員がいない、予算が無い)ではできないだけで、児童クラブの役割の重要性を国と自治体が認識して、児童クラブ選択制を実施したい場合には、それが実現できるだけの予算を用意すればいいだけです。

<選択制でない現状でもできることがあるはず>
 現状では待機児童がいる、あるいは待機児童を出さないために定員をはるかに超えてこどもを受け入れている、職員数はとても足りない、職員数は足りていても育成支援を主導して実施できるだけの技量のある基幹職員が足りない、といういろいろな状況があるでしょう。それらは児童クラブの現場は当然、児童クラブ運営事業者だけの努力ではとても解決できない問題です。

 だからといって「よその学校を受け入れる? ちゃんちゃら御免だ」と切り捨ててしまっては、それはこども本位ではなくて、職員だけの都合を考えているだけです。自治体と保護者と相談しながら、できることはあります。
 例えば、従事している職員数の範囲でこどもの過ごす環境や時間の性質を変えていくことです。いまでも外遊び組と室内遊び組でこどもの集団を分けることは行っているでしょう。同じような方向性で、伝統的な育成支援~遊んで遊んで集団の中で社交性や規律をも学んで育っていく~重視グループと、育成支援の理念を踏まえた新サービス~遊ぶ日や何もしない日もあればホームラーニングで自主的に学んだりダンスやプログラムを講師から学んだりする日もある~で過ごすグループが、同じ施設にあっていいのです。
 あるいは、同じ学校でクラブ利用者数が多い場合は複数の施設、複数の支援の単位を設けていることが多いでしょうが、ある施設や支援の単位は「自主学習重視タイプ」にする代わりに若干、料金を高めに設定する。別の施設や支援の単位は、伝統的な育成支援を重視して宿題などもあくまでこどもの自主性に任せる、というようなことで、こどもと保護者が選択できるようにすることで、行き渋り対策ができたり、こども(保護者も)の過ごしたい場所の希望を少しはかなえられたり、ということが可能となるでしょう。
 児童クラブの側にも、実はいろいろな考え方や方向性の職員が従事しています。「もっと丁寧に宿題を見てあげて、学校の授業でのつまづきを解消させたい」と考える職員がいれば、「学童ではとにかく集団で過ごして集団の中で個性を確立することが大事」と考える職員もいます。運営事業者が掲げる育成支援の理念や事業目標は当然にあるでしょうが、個々の職員の育成支援観念は本音では案外とバラバラなものです。それは児童クラブの職員の基礎資格の違いも影響しているでしょう。教員出身、保育士出身、教員でも幼稚園出身、社会福祉畑、そしてたたき上げの保護者出身。その多様性がまた児童クラブの面白いところなのですが、教員出身の児童クラブ職員が、学力重視タイプの施設や支援の単位で従事することは学んできた専門性を活かせることであって仕事のやりがいを感じられやすくなるでしょう。

 まだまだ学区選択制の導入は難しい、という地域であっても、小さな「選択制」は取り入れられる余地はあるものです。あとは児童クラブ側、行政側の考え次第です。市区町村によっては「地域内の児童クラブは特別に個性を出してもらっては困る」という考え方の地域もあるようですが(さいたま市は、そういう方向性だという話を聞きます)、わたくしには理解に苦しみます。それはこども本位ですか? 保護者の思いを考えていますか? とわたくしは感じるのです。100人のこどもの100通りの希望を全部叶える必要はありませんし不可能ですが、1つの過ごし方しか提示できないより、2つ、3つの過ごし方を提示できるほうが、よほどこどもと保護者の満足につながります。それがひいては「その地域の子育て支援」に対する感謝と共感にも、つながるのです。

 また、6~7年後をピークに急激な少子化がやってきます。そのとき「どうしよう、こどもが集まらない!」とあわてても遅いのです。児童クラブは公共の児童福祉ですが、こどもを受け入れて職員を雇って給料を支払っている以上、それはビジネスそのものです。ビジネスであれば5、6年先の展望を視野にした事業継続計画をもっていて当然です。少子化でクラブが減ると雇用している職員の処遇が大問題となる。そういうところで、多種多様な児童クラブの存在を社会に提示することで、今の「小学生4人に1人が児童クラブを利用」するところを「小学生3人ないし2人に1人が、児童クラブを利用」と需要を拡大することで、事業としての安定と継続が望めます。市区町村といえども今の時代、行政経営を重視しているでしょうから、数年先を見据えた児童クラブの多様化に児童クラブの安定と発展がある、という理解をもって、行政経営の点で児童クラブを考えてほしいと、わたくしは望みます。

<まとめ>
児童クラブはとりわけ公設クラブは、居住地する校区内にある児童クラブしか通えない。
入所する児童クラブを利用者側(こども、保護者)が選択できるような環境を目指すべきだ。それこそこどもまんなか社会にふさわしい。
公設クラブの行き渋りを防ぐためにも校区外児童クラブの利用ができることが望ましい。
複数の学校のこどもを受け入れるには児童クラブの事業の負荷がかかるので国と自治体は予算に手厚い配慮が必要。
6年程度先から急激に進行する少子化の波に直面する児童クラブが事業存続の面で多彩な事業展開をしておくことが大切。
 

(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 New! 日本版DBS制度について相談したい事業者さんにぜひともお勧めします。さいたま市南区の「エリーネ行政書士事務所」(https://www.eri-ne.com/)さんのご紹介です。行政書士の入澤えりな先生が、日本版DBS制度を中心に児童福祉施設や児童福祉の事業者様からのご相談に対応してくださいます。日本版DBS制度以外にも遺言作成・相続、介護タクシー等をメインにご相談に応じているとのことです。営業時間は平日9:30~17:00で、土日祝は応相談とのこと。ぜひ、困り事がありましたら頼ってくださいね。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

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萩原和也