おやつは、放課後児童クラブ(学童保育所)の重要な要素。だからこそ常に細心の注意で提供しよう。失敗例を紹介。
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おやつは、放課後児童クラブにとって欠かせない要素だと、わたくし萩原は信じて疑っていません。放課後児童クラブ運営指針にも明記されていますね。だからこそ、おやつの提供には細心の注意が必要です。わたくしが直面したおやつに関する失態を紹介します。
(※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
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<おやつ=お楽しみだけでは、ない>
放課後児童クラブ運営指針には、「こどもにとって放課後の時間帯に栄養面や活力面から必要とされ、こども同士や放課後児童支援員等とのコミュニケーションの機会となるおやつ等を適切に管理し、提供する。」と記載されています。(第3章 放課後児童クラブにおける育成支援の内容)
栄養面、活力面から必要で、コミュニケーション能力を伸ばす機会を作れるのが、おやつです。単に、甘いもの、糖分があるもの、お口をいやせるものを食べて一息ついて、気分的に満足するだけの役割ではありません。それは大人の「3時のおやつ」の感覚ですね。児童クラブを考えるとき、大人は大人のモノサシを使って考えてはなりません。おやつもそう、あそびもそう。
このように大事にされているおやつですが、わたくしが手掛けている全国市区町村データーベースで各市区町村の児童クラブの運営実態を公開情報から確認していると、おやつについての外部への情報公開、情報提供はとてもおざなりにされていると感じます。おやつに関してどのような提供をしているかについて詳細に情報を公開している自治体はめったにありません。むしろ記載がないことのほうがほとんどです。
設置主体が、おやつの意義を理解していないことと証左であるといえます。大変残念です。おやつに関する業務を設置主体または運営主体が、利用者たる保護者の団体に業務を代行させている、というか丸投げしているケースも珍しくなく、おやつは保護者、または現場職員に一任しているので詳細な情報を設置主体、運営主体すら把握していない可能性も大いにあるでしょう。
それほど、おやつは軽視されているようにわたくしには感じられます。なんというか、世間からあまり注目されないというか「こどもを預かる場所」という表面的な理解にとどまっている児童クラブがあって、その児童クラブを設置している側からも「こどものお楽しみの時間でしょ」という表面的な理解にとどまっているのが、児童クラブのおやつ、という縮図になっているようにわたくしには思えますね。
ですが、おやつは大事ですよ。本当に。手作りでも市販品でもいいんですが、児童クラブでは、おやつを必ず出していただきたいですね。アレルギー等で、児童クラブで用意するおやつを食べられないこどもも少なくありませんが、みんなで食べるおやつの時間を、ぜひとも児童クラブ業界は大事にしていきましょう。そして行政は、おやつの重要性を積極的に評価してくださいませ。
<報道がありました>
児童クラブではないですが、おやつに関するミスが報道されました。ということは児童クラブでも、おやつに関する失態があると報道される可能性があるということでもありますね。さてご紹介する報道は、幼稚園で食べたケーキに食品サンプルが交っていたというものです。ヤフーニュースに2025年12月19日午前9時15分に配信された、テレ朝NEWSの「園児133人、幼稚園でプラスチック製チョコ誤食 クリスマスケーキに使用」という見出しの記事です。一部引用して紹介します。
「10日午前、3歳から5歳の園児133人と職員がクリスマスケーキを作り食べました。午後になって園長らがケーキを食べたところ、食用ではないチョコレートを模したプラスチック製品が使われていたことが分かりました。 」
「幼稚園の職員が、例年購入していた通販サイトとは別のサイトで発注したため、プラスチックと気付かなかったということです。」
(引用ここまで)
飾りつけでまぶすことがある小さな粒々がどうやらチョコレートではなくてプラスチックだったみたいですね。手作りのおやつを食べることはとても有意義な経験ができる機会ですが、より慎重な対応が必要です。今回は、いつもの通販サイトとは違うサイトで入手したという、これまでの経験で知った手順と違った行動を取り入れたことも失敗の原因の1つになったかもしれません。
<陥りがちな点>
おやつは典型ですが、児童クラブで毎日、職員が行う業務、所作は、毎日のことなのでその業務や行動が習慣化していきます。いわゆるルーティン業務です。ご存じ、ルーティンと化した業務は、緊張感が失われます。「いつも無事にこなしている」という安心感から、危機管理面でのゆるみが生じがちなのは、ご理解できるでしょう。そしてそういうときに、ミスが生まれるのです。送迎バスでバス車内にこどもを取り残すということは、ルーティン業務で緊張感を失った職員による、あってはならない失態です。
おやつも、手作りだろうが市販品の購入だろうが、おやつの選定から提供、こどもの摂食まで、一連の業務がルーティン化してしまうと、重大なミスを起こしうるのです。食べて人体の中にモノが入り込むのですから、非常に慎重な取り組みが必要な業務にもかかわらず、毎日の業務で緊張感が失われた中では、思わぬ事故、事案を引き起こすことがあるのです。
児童クラブ側は、おやつはとても大事だ!と訴えるならば、「だからこそ、わたしたちはおやつで、絶対といえるぐらい厳密におやつ業務に取り組み、事故や事件をださない覚悟です」と胸を張りましょう。「児童クラブさんは何かといろいろあるので、安心して、こどもに何かを食べさせる時間を設けるのが、ウチとしても怖いんですよ。だからおやつは無しで」と行政側に言わせないようにしましょう。
<こんな失敗が>
おやつで失敗を出さない、事故を起こさないためには、過去の失敗から学ぶことが大事です。おやつに限らず、前例の失敗を知ることで失敗を避けることができます。失敗学こそ、日々の業務が多い児童クラブに必要な考え方です。
ということでわたくしが直面した、おやつの失敗例を紹介します。
1 アレルゲンの誤提供
これは絶対に起こしてはならない、最悪の失敗事例です。実は複数回、直面しました。こどもの命をとりとめることができたのは単なる幸運でした。いずれも事後に調査検討を行ったのは当然です。あるケースでは、おやつのアレルゲンを把握していた職員が事務作業にかかりきりでおやつ提供時にその業務に関わらなかったことでアレルゲン情報がおやつ業務に関わっていた職員に行き届いていなかったという原因がありました。もう1つは職員自身の能力によるもので、当日、こどもが登所する前に行った直前ミーティングでおやつに含まれるアレルゲンを自ら読み上げて他の職員に注意を喚起していた立場でありながら、おやつ提供直前に起きた児童同士のトラブルに気を取られてしまい、アレルゲンのことは思考の中からすっぽりと抜け落ちていた、というものです。このケースについては複数事象の同時並行処理が難しいという職員の個々の特質が確認できたことから、育成支援業務とは別の業務を行わせるようにして再発防止措置を講じました。いずれも児童クラブで起こりうる形態のミスです。情報が共有されないままの状態で肝心の情報を持っている職員が他の業務に夢中になってしまっていること、そして何らかの情報処理能力に影響を持っている職員が、同時複数の事象を処理しなければならない、つまりマルチタスク能力が何より求められる児童クラブの職員として従事していることが大いにあり得る、ということです。
2 賞味期限切れのおやつ提供
これはもう、恥ずかしながら本当に数度となく繰り返してしまいました。これこそまさにルーティン業務の落とし穴。「毎日毎日、おやつごとに、おやつのお菓子を確認するときも、こどもに配る直前にも、何度でも日付を確認しましょう」と呼びかけ、マニュアルに記載していても、時々、「賞味期限が切れたおやつを提供してしまいました」と現場から連絡が入ってきたものです。確認したはずでも、実は「確認したつもり」になっていることで賞味期限切れの品物の提供が繰り返されます。
なお、「賞味期限切れの商品を食べさせても影響はない。食品ロスを考えたことがあるのか」という反論をいただくことがありますが、「私」と「公」を混同した議論であり、馬鹿げています。取り合う時間がムダです。わたくしとて、家では、わたくし自身が食べるものには賞味期限切れの食品を普通に食べます。それはわたくしのカネで買ってわたくしが食べるものです。児童クラブは、公の場です。保護者のみなさんから徴収したお金で購入した食材や食品を、クラブにいる数十人のこどもと、職員に提供するのです。自己の責任が及ばない人にまで自己の判断で賞味期限切れの商品を提供することは、ありえません。なお、提供した商品や食材の賞味期限内であれば安心ということでもありませんよね。保管状態が悪ければ腐敗したり痛むことがあります。賞味期限内で判断してはいません。提供したおやつ、昼食が、人体にとって無害であるかどうかが問われるのです。賞味期限内だから安全だ、というのは、「その食品食材が本当に大丈夫か、安全かどうか」という当たり前に確認すべき意識への注力をないがしろにするものです。
さて賞味期限切れおやつの提供事案で、「これは参った」と思ったケースがありました。とある日に提供しようと思ったおやつ。クラブ内の在庫を確認したら、その日の予想登所人数に足りなかったので追加注文しました。ところが、当初に提供しようとした日は急に別のおやつを提供することになったので延期しました。そして延期した日に、追加注文して数を揃えたおやつを出しました。職員は、おやつの包装に印字された賞味期限を確認して「大丈夫」として提供しました。ここまで読んでいただいた人にはもうお分かりになった人もいるでしょう。そうです。職員が確認したのは、追加注文で後日に届いたおやつの賞味期限でした。以前から在庫であったものは、賞味期限が切れてしまっていたのです。こういうことがあるんですね。「購入して届いたおやつの商品の賞味期限の日を確認して管理すること」を命じていた中で起きた事例でした。改善策は「届いたおやつは、使いきってください。チマチマ残して節約しようとしないでください」でした。過大発注にならないような注文の仕方も必要ですね。
3 知らなかった!
知らないで食べてしまったら、「それは食べないんだよ」と指摘が出たケースです。ありますよね、そういう食べ物。わたくしが直面したのは「カステラについている白い紙」でした。わたくしはカステラ大好きで、そりゃもう長崎の〇〇屋のカステラは大好物です。カステラに付いているあの紙に、ざらめがつくことがあるので、こどものころ、ペロペロ舐めては母親に「みっともないことするんじゃない!」とよく叱られたものです。まあ、カステラの白い紙は食べない、舐めない、という知識でわたくしは育ちました。
ところがカステラの白い紙も食べるものだという知識があったので、とあるクラブの正規職員がそのまま付けたままだして、こどもに食べさせたことがありました。あとで別の非常勤職員から「あれは、食べるものではないのでは?」と疑問が出て、事が発覚したという次第です。ところで、ボンタンアメの紙は食べていいんでしたっけ。
4 購入時にはすでに異物が混入
これは児童クラブではなかなか対応が難しいですが、必ず「視認」で異物のチェックは行いましょう。わたくしがいたときには「検食」を義務化しました。それでも、異物が混入していることは珍しいことですがたまに起こります。だいたい、こどもが口に入れて噛んでいるときに気づくので、驚いて飲み込んでしまうこともあります。
金属片、プラスチック片、あるいは変色などがありました。これは都度、製造業者に連絡して確認を求めてきました。保護者にも丁寧に説明します。なおどんな原因でも、おやつなど提供した飲食物に不適切な事例があった場合には即座に保護者に情報を知らせて謝罪、原因究明そして再発防止策の構築は、すべて必ず行ってきました。どんなに恥ずかしい理由で起こした事案であっても、です。
最後に、これはわたくしは直面したことがありませんが、おやつや昼食を食べている最中の窒息事故は最も恐ろしい事故の1つです。窒息事故だけは、これだけはもう絶対に起こさないぞ、との覚悟や意識は児童クラブ組織内全部に必要です。のどにつまりやすい食品、メニューは出さない、パンなど遊び食べはさせない、水分を吸収しやすい食物は小さくして提供する、いろいろな注意を重ねることが肝心ですね。児童クラブで「もち」を提供する機会はほとんどないでしょうが、いまは年末年始が近い時節柄ですね、もしも児童クラブで、おもちを提供する際は、細心の注意が必要です。
児童クラブのおやつは、でもやっぱりこどもの楽しみ。職員だって同じです。楽しいおやつで悔しい思いをしないように、ルーティン化によって生じがちな失態という落とし穴を埋め戻しながら、こどもの育ちをおやつで支えましょう。わたくしはS君が得意とする手作りおやつ「肉ニラ丼」が大好きでしてね。こどもたちにも、保護者にも大人気の、補食系おやつです。児童クラブの「手作りおやつ文化」をのちのちにも伝えられる場があり続けてほしいと願っています。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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