「週5日の学童利用」に考える、放課後児童クラブの役割と使命。子どもと保護者をできる限り支えていくこと。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)について、週5日の利用ができた、できなかったという投稿が旧ツイッター(X)で時折見られます。週5日の学童利用には、それぞれの立場を踏まえた考え方や取り組みが必要だと私は考えています。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<週5日の学童>
 旧ツイッターで見かける投稿には、「子どもは週5日の学童。最近行きたがらなくて仕事ができなくなる」とか、「週5日の学童でも楽しんで行っている。本当に助かる」という、両極端の内容の投稿がそれぞれごく普通にあります。そういう投稿を見た他の方から、「週5日も学童利用だなんて子どもがかわいそう」、また「子どもの気持ちを考えれば週5の学童はありえない」、「学童利用を進めるより親が仕事の時間を短くできるような社会にするべきだ」という意見が多く投稿されています。

 SNSにおける投稿について、明確に違法行為をそそのかす、あるいは投稿そのものが違法行為である場合をのぞいて、「それは正しい」「それは間違っている」と客観的に判定できるものではありませんし、する必要もない。私には、個人的に、主観として「それはどうかなあ、違うと思うな」と判断する投稿はあっても、そもそもSNSはそれぞれの投稿者の気持ちや思いを投稿するものですから、「そういう考えをする人もいるんだ」で、それ以上でも以下でもないと考えて利用しています。さらに、他者を根拠なしに乱暴や品位の欠ける言葉づかいで批判したり他人をあざけるような投稿をして悦に入っている投稿者に対しては、それが匿名の誰かさんであっても、そういう投稿を行った人物に対して「残念な人間だなあ」と思うだけです。そういう残念な投稿を行った人が例えば保育士や教員、放課後児童支援員であると職業の属性が示されている場合には、その投稿者が働いている業界に対して私自身の抱く評価や親近感が低下するだけです。それは投稿者個人への評価を超えて、そうした職業であることを明かしている以上、その職業全体に関わるものだと「私自身が個人的に」判断しているだけです。そう思わない人だっていて当然でしょう。
 表現の自由は極めて重要ですが、自由とは何をやっても自由だけではなく自身が自由に振るまったその行動の結果も当然、背負うということは社会人なら理解しておくべきでしょう。

 さて週5日の学童です。いや月~土曜日なら週6日間、児童クラブを利用する子どもだって決して少なくありません。多数ではないですが、めったにいないわけでもない。私はこの「週5日の学童」というのは、ある1つの状況を示す表現として理解できると考えています。それは、「子どもが放課後において家庭で保護者と一緒に過ごす、あるいは留守番であっても自宅等で過ごすより長い時間、児童クラブで過ごすこと」という現象を指しているということです。この状況についてSNSで見られる反応を踏まえて立場ごとに考えてみます。

<子ども>
 週5日の学童で「子どもは楽しんでいた」「子どもが嫌がった」という投稿は多いですが、「子どもはこう思っていた」という投稿はほとんど見かけていません。私は、子ども「だけ」の意見で放課後児童クラブに関するいろいろな考え方を決めるべきではないと考えていますが、子どもの意見や気持ちを「最初に聞く、把握してそこから考えを組み立てる」ことは重要だと考えています。なお、子どもの最善の利益について、かなりの児童福祉関係の人は「それは大人の最善の利益になっている」と指摘、批判する場合がありますが、そういう人の中には「子どものことだけ、考えている。保護者の事情は一段と低く考えている」ということが見られると私は感じています。

 100人の子どもがいれば100通りの人格があって100通りの児童クラブへの印象、感じ方があるのは言うまでも無く、「学童なんか行きたくない」という子どもがいれば「学童が楽しい。友達や先生(※学童職員、支援員や補助員のことをとりあえずまとめて示す単語。先生呼称ではなく子どもが職員をあだ名、ニックネームで呼ぶクラブも多いですが、便宜上、先生と表記しているだけです)と遊べて楽しい」という子どもだっています。

 児童クラブにはいろいろな性格があります。管理型、自主型。プログラムが決まっていてその中で子どもが過ごすクラブ、職員の働きかけてその日その日の行動を子どもたちがある程度決められるクラブ。外遊びが大好きなクラブ。映像をたくさん見せるクラブ。本がたくさんあるクラブ。漫画が1冊も無いクラブ。10代や20代の元気いっぱいな非常勤職員が一緒に遊びまわってくれるクラブ。シニア層が伝承あそびや将棋、囲碁を丁寧に教えてくれるクラブ。宿題の時間であっても子ども達だけに任せているクラブ。ホームラーニングで勉強をきっちり行うクラブ。行事に保護者が参加して子どもたちと過ごせるクラブ。職員だけでイベントを行うクラブ。職員がいつもピリピリしておっかないクラブ。
 さまざまなクラブがある中で、100人いる子どもはそれぞれに自身の感性に合う、合わないがあります。こればかりはなかなかどうしようもない。理想を言えば、小学校の学区内にいろいろな種類の子どもの過ごす場があって、児童クラブも例えば遊び重視、学習重視があって、児童館もあって、ファミサポも充実して、その多彩な選択肢の中から、子どもの考えを基に居場所を選べるという、子どもの居場所の提供が最善です。そのような社会を目指しているのが、こども家庭庁なのだと私は期待しています。

 さて注意したいのは、本当では児童クラブに行きたくはないけれど、「行きたくないと言ったらパパやママが困るから」として本音をぐっと飲みこんでいる子どもだって当然いる、という前提を忘れてはいけないということです。すべての子どもが本音を隠して振るまっているものでもないとは思いますが、親のことを、当の親自身が思うよりももっと深く心配して気を使って生きている子どもたちは少なくないと私は感じてきました。

 子どもがクラブに行きたがらなくなったときは、その嫌がる理由を丁寧に子どもから教えてもらうことが必要です。いじめがある、クラブの環境が自分に合わない、嫌な職員がいる、知的好奇心を満たせないという子どもにとって否定的な要因でクラブに行きたくないのか、あるいは「クラブはクラブで楽しいけれども、もっと他に自分にはやりたいことが見つかった」からクラブに行きたくないという子どもの成長の証なのかは、親とクラブ側がしっかりと把握することが必要でしょう。

<保護者>
 仕事を続けるため、あるいは勉強や介護、看護を続けるために児童クラブを利用したいとしたとき、子どもがクラブに行きたがらないと生活がお手上げ状態になります。我が子に児童クラブが必要だと保護者が保護者なりの理由で判断している期間中に、子どもがクラブへ行きたがらないとなった、つまり「行き渋り」状態に陥ったときはパニックになって当然です。何度も記してきましたが、行き渋りになったら、まずは子どもから丁寧に本心を聞き出す、話してもらうこと。そして児童クラブの職員に連絡を取って、クラブにおける子どもの様子を確認し、クラブにいるときの子どもの気持ちを知ることが大事です。

 「あなたが学童に行ってくれないとパパもママも困るの!」とは言わないでください。子どもを追い詰めるだけです。当分、嫌々ながら児童クラブに行ってくれるでしょうが、子どもが自分自身に無理を重ねる、過度のストレスを背負い込んでいると、そう遠くない日に、子ども自身の心理状況が極度に悪化して児童クラブだけでなく小学校への不登校状態につながりかねません。

 現状において児童クラブは、「保護者が無理やり、子どもを行かせる場所」になっています。もちろんその後、児童クラブを受け入れた子どもは、進んで児童クラブに行きたくなるということになりますし、児童クラブ側はそのようにする、つまり子どもが進んで児童クラブに通うために必要な支援、援助を子どもに行うこととなっています。ほとんどの場合は、親の都合で行かせているということを決して忘れてはなりません。子どもがクラブに行きたくなくなったのを子どもだけの責任にしないことです。

<児童クラブ>
 自らの役割、使命をしっかり認識しましょう。子育て中の保護者が社会活動を続けるうえで、不安要素となる「子どもが安全に、無事に過ごせているかな」を除去する役割が1つ。突き詰めれば、就労や就学など何らかの理由で放課後の子どもと一緒に過ごせない保護者が存在するからこそ、放課後児童クラブや、放課後児童クラブで働く職員にも存在理由が生じるのです。そして、子どもを受け入れているその時間、家庭に代わって、つまり保護者に代わって、子どもの成長を支えることを行うことがクラブ職員の任務です。遊びを通じて子ども自身の成長を後押ししたり、子どもに生活習慣や社会で過ごす上でのルールを身につけさせていくことなどです。

 保護者が何らかの事情で留守にしている時間があれば、その時間、子ども達へ支援、援助をして、保護者の子育て生活を支えること。保護者が子育てについて悩んでいる、戸惑っていることがあればその保護者も支えることです。週5日の学童利用を求める保護者に、「そんな長い時間、学童を利用するのはおかしい」と思うことは、自らの職業の専門性を貶めることになります。児童クラブ職員は血縁や身分関係を含めて完全に保護者の代わりにはなれませんが、子どもの育ちを支えるという分野においては保護者と同等でなければならない、というのが私の考えです。

 週5日の学童利用を必要とする保護者全員が、家計が苦しくて労働を必要としている訳ではない。
 週5日の学童利用を必要とする保護者全員が、勤め先において休日を確保できないわけではない。
 週5日の学童利用を必要とする保護者の中には、自らの専門性を発揮した職業で社会にとって企業にとって欠かせない存在になっている場合があるし、保護者個人の意志で「働くことで社会に貢献したい」「働くことが自分のアイデンティティ」と認識している人だっている。その人に「仕事と子育て、どっちが大事?」と児童クラブが選択を迫る必要性はない。

 もちろん私も社会の仕組み(それは法制度と、国民の意識の双方が基盤)として、育児期間中、とりわけ児童手当の支給される期間においては保護者が育児時短勤務を「ごく当たり前に」選択して行使できる社会になることが一日も早く実現してほしいと願っています。大幅な所得減を伴うことは無く、子どもと過ごせる時間を安心して確保できるようになれば、長時間の児童クラブ利用の必要性は大幅に減るでしょう。子育てがしやすいというよりも「子育てが楽しい社会」にしなければ、人口減を食い止めたいという狙いや期待うんぬんを別にして、国家や社会の存在意義がありません。子育てが楽しくない世界にあっては、当の子どもが生きにくい、過ごしにくい社会でもあるということです。
 むろん、育児時短勤務が労働者の当然の勤務となってだれでも気楽にどの規模の企業であっても行使できる、子育てに思う存分、時間を確保できる時代になったとしても、専門性を発揮して社会で活躍したいという保護者にとっては週5、週6日の児童クラブ利用はあるでしょうし、そのためにも児童クラブは存在しなければなりません。

 踏み込んで言えば、児童クラブ側には、週3日の利用で午後5時までの利用であろうが、週6日の利用で午後7時までの利用であろうが、分け隔てなく、全力で、「児童クラブにいる間の子どもは、私たちに任せろ!」と堂々と言い切ってほしいのです。むしろ、子育てがなかなかうまくできない、うまくいかない保護者が増えていると想像できる中で、「子どもの育ちを支えることは、保護者だけではもう難しい時代になった。だからプロの我々がしっかり関与する、あるいは代わりができる場面には代わりろなる」とさえ、言い切ってほしいですし、法令による放課後児童健全育成事業の位置付けを、留守家庭に限定せずに広げるべきだと、私は考えています。そうなった時代の児童クラブは、まさに、子育ての専門的な支援、援助を行う存在になりますし、児童館やファミリーサポートなど各種の仕組みと連携して社会全体における子育てを支える極めて重要な存在になります。それもまた児童クラブ職員の評価と待遇を向上させることにもなります。

 長時間、長期間の児童クラブ利用には、子どもも保護者もどこか不安や後悔の気持ちを抱えるもの。その不安や公開の気持ちを雲散霧消させる、力強くて温かい子育て支援を児童クラブが発揮してほしいと、私は期待していますし、そうであってほしい。それが当たり前となった時代の児童クラブは、より社会インフラとして強固な地位を築き、その社会的な評価はさらに高まって、懸案の報酬等の低水準も解消に向かうだろうと、(楽観的な)期待をしています。

 <おわりに:PR>
 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。1,900円(税込みでは2,000円程度)です。注文は出版社「寿郎社」さんへ直接メールで、または書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。お近くに書店がない方は、ネット書店が便利です。寿郎社さんへメールで注文の方は「萩原から勧められた」とメールにぜひご記載ください。出版社さんが驚くぐらいの注文があればと、かすかに期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。
(関東の方は萩原から直接お渡しでも大丈夫です。なにせ手元に300冊届くので!書店購入より1冊100円、お得に購入できます!私の運営支援の活動資金にもなります!大口注文、大歓迎です。どうかぜひ、ご検討ください!また、事業運営資金に困っている非営利の児童クラブ運営事業者さんはぜひご相談ください。運営支援として、この書籍を活用したご提案ができます。)

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

 (このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)