「放課後児童クラブ(学童保育所」)用語辞典・運営支援版です。
放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援が独自の解釈で紹介する、放課後児童クラブ(学童保育所)用語辞典のページです。随時、加筆修正します。なお、このページで紹介している用語辞典ですが、「知られざる学童保育の世界」にも掲載しています。ぜひ、お買い求めください。
※2025年10月20日時点
※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。
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【頭おかしい条例(あたまおかしいじょうれい)】こどもだけの登下校や留守番、公園で遊ぶことを児童虐待だとする埼玉県の条例改正案に対して全国的に盛り上がった反対運動のキーワードとしてメディアで取りざたされた用語。「留守番禁止条例」ともども、インパクトの強さからあちこちで使われたが、「頭おかしい」という差別的な用語に疑問を持たない提唱者やメディアの姿勢は、運営支援としては大いに批判されるべきだと考える。この用語の意味するところは「頭がおかしい(人たちが作った)条例改正案」であろう。では、こどもの前で普通の大人は、「あの人は、頭がおかしい」と発言できますか? あの人とは考え方が違う、あの人の考え方は間違っているとは言えても、「あの人は頭がおかしい」という侮蔑的な言葉遣いは断じて行うべきではないと運営支援は思う。この用語を使って平気な人は、人間の尊厳、人権を守ることが絶対的に必要だ、という感覚が本当は備わっていないとすら運営支援には思える。こどもの前で使いたくない、こどもに使ってほしくない言葉づかいを大人が行って得意気にいることが、よほど「おかしな状況」であろう。
【育成支援(いくせいしえん)】放課後児童クラブ運営指針に定義された放課後児童クラブの事業目的。こどもが安心して過ごせる場所において、こどもが主体的な遊びや生活が可能となるよう、その自主性や社会性、創造性の向上と基本的な生活習慣の確立を図ること、及びその支援、援助を行う。放課後児童クラブの職員はこの育成支援が業務内容となる。
【運営指針(うんえいししん)】厚生労働省が定めた放課後児童クラブ運営指針のこと。全国の放課後児童クラブを望ましい方向に導いていくための統一的な標準仕様としての位置付けとされる。指針なので法的に強制力はなく守らなくても罰則はないが、放課後児童クラブはこの指針に沿った運営が求められる。放課後児童クラブの運営者と職員は指針の内容を完全に理解して実践することが必要であるが、現実は心もとない。
【運営主体(うんえいしゅたい)】放課後児童クラブを運営する組織、事業者のこと。主に放課後児童クラブの議論の場合に使われる。市区町村や営利法人、非営利法人、任意団体(保護者会、地域運営委員会)、もしくは個人。
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【会計年度任用職員(かいけいねんどにんようしょくいん)】2020年4月から導入された制度で、非正規の公務員の地位を安定させる目的があるとされる。一定以上の勤務条件で期末手当や地方公務員等共済組合保険への加入、退職手当の支給対象となる。一方で、月額賃金の引き下げや雇い止めが問題となっている。最低賃金とほぼ同額で雇用される場合が多く、官製ワーキングプアの温床という指摘も根強い。
【官製ワーキングプア(かんせいわーきんぐぷあ)】公営の放課後児童クラブで働く職員(おおむね、会計年度任用職員)の多くは低賃金で、毎月の手取りが10万円をやや上回る程度しかない場合もある。官公庁がワーキングプアの目安となる年収200万円程度の条件で職員を働かせる不正義は、児童クラブの世界から早急に解消されねばならない。
【虐待禁止条例改正案騒動(ぎゃくたいきんしじょうれいかいせいあんそうどう)】「頭おかしい条例」で触れた騒動。埼玉県議会の自由民主党議員団が、2023年10月4日に埼玉県議会に提案した埼玉県虐待禁止条例の一部を改正する条例案について、こどもだけの登下校や公園で遊ぶことを含む外出や留守番をさせた保護者を、児童放置による虐待とする内容が含まれていたことから、「やむを得ずそうせざるを得ない状況に置かれた保護者を条例違反とすることは不条理」と猛反対が巻き起こった。反対運動を受け、同議員団は同月13日の本会議で議案を撤回した。改正案が目指す世界の実現には放課後児童クラブはじめ多くの子育て支援設備が同時に整うべきであり、子育て当事者の状況や意見を聴かずに性急に改正案の作成に及んだことなど、一連の過程には大いに問題があったが、「こどもだけの状況をなるべく作らない」という考え方そのものは、運営支援としてはいずれ実現するべきだと思う。行政の早急な取り組みが望まれる。それほど、今はこどもだけで過ごす時間の安全が確保しづらい時代なのだ。
【キャンプ(きゃんぷ)】学童キャンプとも。保護者(会)が運営に参加している、活動歴が長い放課後児童クラブには、夏のお楽しみとして学童キャンプを実施してきたことが多い。こどもたちにとっては楽しみだが職員、まして保護者にはその準備のための集まりや、出費のために歓迎されないことも多く、近年は実施する児童クラブは随分減ったようだ。しかしキャンプに参加すると保護者同士、保護者と職員の仲が一気に親密となる効果はあり、かねて「現役の役員が、来年の役員の目星を付ける」絶好の機会となっていた。
【公営(こうえい)】市区町村等が直接、放課後児童クラブを運営すること。
【高学年だから(こうがくねんだから)】放課後児童クラブの職員や保護者がよく使う言葉で、「高学年だから退所する(させる)」「高学年なのだからしっかりしなさい」という文脈で使われることが多い。高学年(小学5年生以上)の児童クラブ利用児童は、こども自身が他にやりたいことがある、留守番ができる、習い事に本腰を入れるなどの理由で急減するが、もちろん、高学年になったからといって児童クラブを退所する必要はない。高学年のこどもが低学年の子どもたちを相手にリーダーシップを発揮して取りまとめている姿は、運営が安定している児童クラブならではの望ましい光景である。
【公設(こうせつ)】市区町村(ごくまれに、地方自治体である組合)が放課後児童クラブ等を設置すること。
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【サンイチ(さんいち)】三分の一。放課後児童クラブに関する国の補助金は、国と都道府県と市区町村が三分の一ずつ負担することが多い。この通称。
【支援の単位(しえんのたんい)】こどもの集団の規模を表すもの。国の補助金はこの単位ごとに設定される。おおむね1つのクラブと考えてもよいが、大規模学童保育所では1つのクラブの中に複数の単位を持つ場合(名簿上の単位)もあるので注意が必要。この場合は1つのクラスが1つの支援の単位となっていることが多い。
【指定管理者制度(していかんりしゃせいど)】公共の施設の運営を指定管理者制度のもとに、民間の組織や団体に任せる(代行させる)こと。地方自治法に規定されている。放課後児童クラブでもこの制度の適用が増えているが、3~5年ごとに公募による選考が必要であり、事業の継続性から保護者や職員には不安の声が根強い。一部地域では公募ではなく随意契約で指定を受けている運営主体がある。
【指導員(しどういん)】放課後児童クラブで働く職員を指す一般的な名称。放課後児童支援員という資格ができるまで、放課後児童クラブには法令上、資格者の配置が必要なかったが、国は「放課後児童指導員」として、任用資格である「児童の遊びを指導する者」の配置が望ましいとしていた。学童指導員とも言う。
【指導員だけは嫌(しどういんだけはいや)】女性の働き手が多い放課後児童クラブの業界だが、その低い賃金水準を身に染みて分かっているために、女性児童クラブ職員の多くは結婚相手として「指導員だけは嫌」という考えの人は珍しくない。地区の担当の市区町村職員と結婚する例がままある。一方、全体からみて少数派である男性児童クラブ職員の結婚相手は同じ職員であることが多い。というか、仕事が忙しすぎて、外の世界に交際相手、結婚相手を見つける余裕もない。
【自腹(じばら)】公営や、株式会社系の放課後児童クラブでは、職員が専門的知識を学ぶための研修参加費などを支給しない例があり、そのような場合、職員は自費で研修に参加したり必要な資料を買いそろえたりする。児童クラブで使う教材や工作の材料、イベントの材料もその費用が支給されないと、職員が自腹で購入することもある。児童クラブの世界は、職員の給与が低いうえに、こうした自腹購入による出費もばかにならない。早急に改善されるべき悪弊である。
【障害児受入事業(しょうがいじうけいれじぎょう)】国の補助金の一つ。障害のあるこどもの受け入れを推進するために、必要な専門的知識等を備えた放課後児童支援員などを配置するために設定されている補助金。およそ年間200万円超。なお、障害のあるこどもの受け入れ人数によって配置ができる職員数に変動がある。この事業で配置されている職員を「加配職員」と呼ぶことがある。
【省令基準(しょうれいきじゅん)】厚生労働省が2014年4月に公布した省令である「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」のこと。省令に基づいて市区町村は放課後児童クラブ運営に関する最低基準となる条例を定めた。当初は、放課後児童支援員の資格と配置は「従うべき基準」とされ市区町村の条例にそのまま盛り込むこととされていたが、2019年5月に地方分権一括法によって緩和され、2020年4月1日から「参酌すべき基準」(参考とする基準)に緩和されてしまった。
【処遇改善等事業(しょぐうかいぜんとうじぎょう)】2015年度から始まった放課後児童クラブ職員の人件費に対する補助の仕組み。職員の賃金を改善した場合や、賃金改善に加えて地域との連携や協力を行う職員や常勤職員を配置した場合に、人件費が補助される。最大で約168万円の場合と、約316万円の場合がある。低賃金に悩む放課後児童クラブの職員の賃金を引き上げるための仕組みだが、全国すべての自治体がこの補助制度を利用しておらず、職員の待遇改善に問題が残る。もちろん、放課後児童クラブではない施設には適用されない。
【全員静かになるまで(ぜんいんしずかになるまで】放課後児童クラブの職員なら一度は口にしたことがあろうせりふ。おやつの前、外遊びの前などに、「全員静かにしないと、いただきますができないよ、外に出られないよ」と、こどもたちの注意を促すために多用される。しかし、その効果はほとんどありません。職員がこのせりふを繰り返すたびに、おやつはどんどん冷めていき、日はどんどんと暮れていきます。
【全国学童保育連絡協議会(ぜんこくがくどうほいくれんらくきょうぎかい)】通称は全国連協。1967年結成。学童保育の普及と発展、内容の充実のために結成された民間団体。学童保育の質的向上や専門性の研究、職員の雇用状況改善を求めて活動を続けており、日本の学童保育を長らく支えている団体。
【専用区画(せんようくかく)】厚生労働省令や自治体の条例による設備及び運営に関する基準で、こどもの遊び及び生活の場として機能する、また静養のための機能を備えた区画のこと。部屋や間仕切りで区切られていることが原則。
【卒所式(そつしょしき)】小学6年生の最後まで在籍していたこどもたちを送り出すイベント。卒所式に出たいがために、あまり登所しなくても在籍だけはしているこどももいます。放課後児童クラブで過ごした日々を写真などで振り返ったり出し物を披露したりで、普段は「別に~」とそっけないこどもも、この時ばかりは涙を見せることも。職員も、保護者も、そしてこどもたちにとっても感動の時間。このタイミングで特別なお出かけの「卒所旅行」を行う施設もあります。
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【大規模問題(だいきぼもんだい)】1つの支援の単位の放課後児童クラブにおいて限度を超えた児童数が入所している状態。かつては71人以上が目安とされ、現在も71人以上の児童数では補助金が大きく減額される。放課後児童クラブは、こども1人あたりの面積はおおむね1.65平方メートルとなっているので、この面積を下回るこども1人あたりの面積しか確保できない施設を、「大規模状態にある放課後児童クラブ」と呼ぶべきであろう。
【地域運営委員会(ちいきうんえいいいんかい)】放課後児童クラブを運営するにあたって、保護者や地域の有力者(校長や自治会長等)が参加して構成された組織。おおむね任意団体。実際の運営は保護者主体の場合が多いが、地域の実力者が口を出してまとまるものもまとまらない、という悲惨な事例もある。
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【2分の1(にぶんのいち)】国は、放課後児童クラブの運営費用について、利用者(保護者)と補助金の負担が5割ずつ、つまり2分の1となるように求めている。これが問題なのは、この理屈に従うと、補助金の額を増やすと保護者負担額も増えるから。もっと問題なのは、主に公営児童クラブにおいて、保護者の負担額を抑えた結果、それに対応して補助金の額も少なくなり、結果として運営費が足りずに職員の給与が極めて低い額に抑えられる恐れがあること。
【日本の学童ほいく(にほんのがくどうほいく)】全国学童保育連絡協議会が発刊している月刊誌。学童保育に関する情報や、有識者、運営に関わる保護者、学童保育所職員からの寄稿が掲載されている。日本で唯一の学童保育に関する専門誌。
【日本版DBS(にほんばんでぃーびーえす)】子どもを性犯罪から守る仕組みとしてイギリスで導入されたDBS(前歴開示・前歴者就業制限機構)にちなんだ制度が、「こども性暴力防止法」(通称)によって、2026年12月25日から日本でも施行されることになった。放課後児童クラブは、この制度の義務ではなく、「認定事業者」となることで制度の実施が可能となる。こどもに対する犯罪を過去に行った者の再就職先として、資格制度が有名無実である学童保育の世界が選択されがちであるため、この制度の導入は長らく望まれていた一方で、児童クラブの事業処理能力や、こどもに関わらない職場が無いなどの実態から、実務上、児童クラブでの実施が困難であるとの懸念がある。
<は行>
【配置基準(はいちきじゅん)】放課後児童クラブにおいて必要な職員配置。法令上は最低限度として、支援の単位ごとに放課後児童支援員2人以上の配置が必要とされているが、その1人を除き補助員に代えることができる。なお2024年度から、放課後児童支援員の常勤職員2人を配置する場合の補助金が創設された。
【放課後児童支援員(ほうかごじどうしえんいん)】放課後児童クラブに配置が求められている公的な資格と、その資格を持っている人。2015年度からスタートした新しい資格。都道府県知事が認定し、全国どの地域でも有効。名称独占資格。この資格を得るには、都道府県等が行う認定資格研修を受講することが必要。受講ができる条件、すなわち基礎資格として、保育士や各種教員、社会福祉士の資格を持っていることや実務経験などが必要となる。
【保護者運営(ほごしゃうんえい)】保護者で構成する保護者会(任意団体)が、放課後児童クラブを運営すること。運営にあたっては自治体から事業の委託を受けたり補助を受けたりするが、補助金が出ない場合もある。保護者が定期的に役員に就任しているNPO法人等による運営も、事実上は保護者運営といえる。
【保護者会(ほごしゃかい)】父母会とも。放課後児童クラブを利用する保護者の連携組織。クラブにおけるこどもの育ちやイベントを職員交えて定期的に話し合う。イベントを主催することもある。かつては保護者会が児童クラブの運営基盤だったが、保護者の活動に対する負担感から保護者会を設けないクラブも増えている。運営を保護者会が担う児童クラブは年々、減少している。出席する保護者の人数が少ないことが悩みの種である場合が多い。
【補助員(ほじょいん)】放課後児童クラブにおいて、放課後児童支援員の資格を有していない職員。フルタイムで働く常勤職員でも、放課後児童支援員の資格がないと補助員扱いとなる。
【補助金ビジネス(ほじょきんびじねす)】放課後児童クラブに株式会社が乗り出す事例が急増している。公営事業のアウトソーシングだが、定期的に運営に関する費用が入金される事業は好不況の波に影響されにくく、安定した事業展開が可能である。国の補助金単価が年々、上昇していることで株式会社にとって「オイシイ」事業となっている。大手メディア企業や新聞社も参入しており、今後さらに拡大する見込み。一方、運営企業が利益を確保するために人件費を抑制する傾向にあるため職員の雇用労働条件は低水準なことが多く、ワーキングプアを助長している面は否定できない。
<ま行>
【民営(みんえい)】民間事業者(株式会社や各種法人、任意団体)が放課後児童クラブを運営すること。
【民設(みんせつ)】民間事業者(株式会社や各種法人、任意団体)が放課後児童クラブを設置すること。
【面積基準(めんせききじゅん)】厚生労働省令や自治体の条例による設備及び運営に関する基準で、児童1人につき、専用区画に対しておおむね1.65平方メートルの面積を確保するよう求められている。この面積が確保できていない放課後児童クラブは大規模問題にあるといえる。
<や行>
【役員決め(やくいんぎめ)】保護者会がある放課後児童クラブを利用する保護者にとっては恐怖。会長、副会長、会計などその役職は通常よくある団体と変わらないが、仕事と子育てで忙しい保護者にとって、さらに保護者会の役員まで背負うとなると、それだけで精神的に参ってしまい、児童クラブを退所する理由にもなる。実際、役員を逃れられそうにない状況を敏感に察知して退所する保護者は珍しくない。まして、保護者会運営児童クラブになると、事業の管理運営責任まで背負うことにもなる。
<ら行>
【連絡協議会(れんらくきょうぎかい)】通称は連協。放課後児童クラブに関わる保護者や職員、運営従事者などが、児童クラブの業界の発展や充実のために連携して活動する、都道府県や市区町村など地域ごとの民間団体。主に任意団体だが法人格を取得している場合も。ただし全国的には存在しない地域が多い。