「小1の壁」は、女性の活動、職業生活の充実を妨げる壁そのもの。この観点で小1の壁の解消を急げ!放課後児童クラブを整備して!
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした、人間ドラマであり成長ストーリー小説「がくどう、 序」がアマゾンで発売中です。ぜひ手に取ってみてください!
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例年、この時期は「小1の壁」がメディアで取りざたされます。小1の壁のうち、元来、この言葉が指し示してきた放課後児童クラブの待機児童はなかなか解消に向かいませんが、この児童クラブの待機児童は「子どもの安全安心な居場所が確保できない」問題、つまり子どもの平穏な日常を脅かす問題として認識されて言及されがちですが、重大な観点を見落としがちです。それは、保護者の職業生活への影響であり、すなわち女性の職業生活を時には中断、消滅させる極めて深刻な問題なのです。女性の社会進出と活動を阻む障壁の解消から、児童クラブの待機児童問題は一刻も早い解消が必要です。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<小1の壁について私が思うこと>
かつて小1の壁という語句が使われ始めたころは、放課後児童クラブの待機児童問題だけを意味していたものと私は記憶しています。平成26年(2014年)7月に国(文部科学省と厚生労働省)が出した「放課後子ども総合プラン」では、「保育所を利用する共働き家庭等においては、児童の小学校就学後も、その安全・安心な放課後等の居場所の確保という課題に直面します。いわゆる「小1の壁」を打破するためには、保育サービスの拡充のみならず、児童が放課後等を安全・安心に過ごすことができる居場所についても整備を進めていく必要があります。」と記され、子育て世帯の子どもが小学1年生になったときの居場所の不足のことを「小1の壁」としていたことが分かります。
そして平成30年(2018年)9月に公表された「新・放課後子ども総合プラン」の資料でも、「「待機児童」を解消し、「小1の壁」を打破するためには、放課後児童クラブの追加的な整備が不可欠となっている。」とあり、児童クラブの待機児童が小1の壁であり、その解消が重要な国の課題であるということがさらに明確となっていました。
もっとも、言葉、語句というものは時代に合わせて変わるものですから、この「小1の壁」という言葉が、子育て世帯の子どもが小学校に入学するにあたって、子育て世帯の保護者が直面する様々な問題、困難な課題を指すことに意味を広げていくのも何ら不思議ではありません。そもそも、児童クラブの待機児童は保護者の職業生活を直撃します。今まで通りの就業スタイルでは子どもが一人で留守番する時間が長くなってしまう、子どもだけで下校する間がとても不安だ、という色々な不安要素をぬぐえず、結果的に保護者が就業スタイルを変えざるを得ないことになります。
保護者が、自身の子どもが小学生になることを機に職業生活を変えることを余儀なくされることは、児童クラブの待機児童だけではないので、それら職業生活の変更を促す問題、課題をも小1の壁に含めて取り扱われるようになることは、ある意味、自然のことでしょう。その最たるものが、「朝の壁」、つまり、小学校への登校時刻と、保護者の出勤時刻との間の「ずれ」です。小学校に登校するのが午前8時である一方、保護者が出勤のために家を出る時刻が午前7時30分であれば、その30分間の「子どもの居場所」が、保護者の不安要素になるということです。
保育所は午前7時から開所していることがほとんどなので、つまり保育所は保育の必要がある場合に保護者の代わりに子どもの保育を行う場所ですから午前7時からの開所に不自然はないものの、小学校は保護者の保育を肩代わりする機関ではないので、朝の壁が生じるのは、ある意味、不思議ではないと言えるでしょう。もっとも、夏休みなど小学校の長期休業期間中は、放課後児童クラブが、この朝の壁に直面することになります。長期休業期間中における児童クラブの開所時刻が遅い問題は、児童クラブの待機児童と同じぐらいずっと昔から存在する問題で児童クラブを利用する保護者を悩ませてきた問題ですし、私自身もその解消に取り組んできた1人ですが、社会一般的に、ほとんど注目されてはいなかったですね。どちらかといえば、朝の壁は、その子育て世帯の個々の問題であって、特殊な事情であって一般化して論じる問題ではない、という暗黙の理解の方が、社会一般としての認識だったのではないかと、私は感じています。
とはいえ、子どもが小学1年生になるときに保護者の就労、職業生活に支障が出てくる問題は、どんな内容であれ解消されるべきものです。児童クラブの待機児童や、朝の登校時刻と親の出勤時刻のズレ、長期休業期間中の児童クラブの開所時間の問題など、保護者が直面する問題をひっくるめて社会、とりわけメディアが「それは解決されるべき問題だ」と認識して「小1の壁」と呼ぶようになったことは、私は歓迎するべきことだと考えています。
<報道では>
ここで、1つの報道を紹介します。NHKの「首都圏 NEWS WEB」が2025年3月27日18時33分に配信した、「埼玉県「小1の壁」調査 保護者5人に1人が“働き方変えた”」との見出しの記事です。(埼玉県「小1の壁」調査 保護者5人に1人が“働き方変えた”|NHK 首都圏のニュース)
一部を引用します。
「子どもが小学生になると預ける場所に困り、仕事と育児の両立が難しくなるいわゆる「小1の壁」について埼玉県が小学生の保護者を対象に実態調査を行ったところ、子どもの登校時間に合わせるために「働き方を変えた」と答えた人が5人に1人にのぼることがわかりました。」
「子どもの登校時間に合わせるために「働き方を変えた」と答えた人は6047人と21.1%で回答した人の5人に1人にのぼりました。」
(引用ここまで)
この記事では、子どもが小学1年生になった子育て世帯の、職業生活への影響への調査結果を報じています。子どもの登校時間、つまり朝の壁のことも取り上げられています。
なぜ、朝の子どもの居場所問題がここ数年で急激にクローズアップされるようになったのか、これはぜひとも研究者の調査を待ちたいところですね。先にも記しましたが、長期休業期間中において児童クラブの開所時刻が遅いので保護者が困る、というのはあまり知られていないだけで当事者の間では深刻な問題でした。ただ、学校の登校日においても子どもの居場所の不安から保護者が出勤時刻の調整を余儀なくされたということは、この1~2年で報道が相次ぐようになった、新しい課題だと私は感じています。
勝手に想像するに、「保育園落ちた日本〇〇」の影響で保育所が急増して保育所が利用できるようになった世代が小学生になり、保育所の利用経験のある人が以前より増えていること、その増えた保育所利用経験のある子育て世帯が、今までと同じような感覚で子どもを預けて働きたいのに小学校は保育所ほど早く開校しないので、子どもが居場所を失った、ということがあるでしょう。また、教職員の働き方改革で以前ほど小学校が早く開門しなくなったということもあるでしょう。
<結局、働き方を変えるのは女性になるのでは>
待機児童にしろ、朝の出勤時刻の問題にしろ、働きながら子育てをする世代は、子どもが児童クラブに入れなかった、あるいは朝の時間の子どもの安全対策に不安があることにしろ、子育て支援の仕組みや施設が充実していない場合、結局は、保護者がその就業のスタイルを変更することで対応することしかありません。
児童クラブに入れなかったら、保護者が、子どもの下校時刻に間に合うように、あるいは留守番時間が短くなるように早く退勤できる仕事に変える、あるいは仕事を辞める。子どもの登校時刻、あるいは児童クラブの開所時刻に合わせていたら保護者の出勤時刻が間に合わない場合は、遅い時刻の出勤で済む仕事に変える、あるいは社内で配置転換を希望する、という具合です。
この場合、夫婦で協力してできればいいのですが、世の中の現実はなかなか、そうはいかないようです。インターネットで小1の壁、女性の就業について検索すると、いろいろな報道や調査が見つかります。かつては結婚を迎えた女性が「寿退職」する、ということがあり、それも女性の就業の障壁でしたが、今も出産や育児によって退職する、あるいは正規職から非正規職への転換を余儀なくされる女性が多く、その職業生活への影響はかなり大きなものがあります。
方や、国や社会は女性の社会進出、経済活動への変わらぬ参画を求めているわけですから、子育てをしながら就業を続けることは当然に重要なことです。育児期間中は短時間就業にしたとしても女性へのキャリアへの影響は最小限にとどめられるべきものであるのは言うまでもありません。
ところが、児童クラブの待機児童を象徴に、種々の小1の壁は、どうしても子育てと仕事の両立を阻む障壁として、特に女性の職業生活に影響を与えてしまうのです。
私は児童クラブの世界に身を置く(と信じている)ので待機児童について言いたいのですが、これまでの児童クラブの待機児童は子育て世帯への深刻な影響であってだからこそ待機児童解消は必要だと国も社会も児童クラブの世界もずっと言い続けてきたその中身には、「子どもの居場所があれば保護者は仕事を続けられる」ということと「子どもの安全安心な居場所を確保することは子どもの人権問題に関わる」という、大きくこの2つの視点だったのは間違いないでしょう。
それはそれで当然だと思いますが、「保護者は仕事を続けられる」のことをもっと突き詰めて考えれば、それは、結局のところ、子育てや子供の面倒を見るのが多くの場合は女性の役割であるという、これまでのそして暗黙の理解が多くの人々の意識の根底にあって、だからこそ、女性、つまり母親側が、仕事を辞めたり非正規職になったり、あるいは社内、職場内でも出退勤時刻に余裕がある職場(=えてしてそれはいわゆる「出世コース」ではない)に配置換えを希望する、希望せざるを得ない状況に、追い込まれてしまうのです。自分の身の回りだけでも、そのような例をたくさん見かけてきました。児童クラブの保護者会、父母会に出席するのが母親が多いというのはまさに「子育ては女性の仕事」といういまだなお根強く残る社会全体の意識の表面化、といえるのではないでしょうか。
(なお私個人のことを申せば、児童クラブではなく保育所での問題でしたが、子どもを保育所を利用しながらも生活するには、夫婦ともマスコミ関係という時間が不定期かつ長時間拘束の業種でしたから非常に困難でした。結果として、私が社内においてシフト制の職場である部署への配置転換を人事に希望し、社内的にそれなりに騒ぎになりました。いまだかつて育児を理由に取材記者を辞めるという申し出がなかったということで、大反対を受けました。最終的には「二度と取材には戻さないぞ」と言われても臆することなくシフト制の部署への異動が実現し、子育てと仕事の両立が可能にあんりました。なお数年後、子どもが比較的大きくなって時間的に余裕が出てきたこと、ファミリーサポートが利用できるようになった幸運もあって、また取材現場に戻されました)
児童クラブの待機児童については、この1~2年の急激な少子化進行から「あと数年我慢すれば小学生児童は減る。だから待機児童が出ていても、ギュウギュウ詰めの待機児童でも、あと数年、このままでいれば施設に余裕が出てくるだろう」と、半ば黙殺を決め込んでいる自治体もあるでしょう。しかし、そのような自治体は、大事なことを忘れています。それは、住民、有権者たる保護者が、その職業生活において不利益を被っている状態を自治体は何ら救おうとしなかった、という事実を住民、有権者たる保護者が嫌というほど認識しているということです。まして、女性の社会における活動を半ば閉ざしているということに手を貸している、ということです。
それはもちろん、その地域の自治体に対する信頼、好感度の高低に直結します。ひどい場合には機を見て転出してしまうでしょうし、転出はできないまでも自治体に対する信頼や好感度の低さは、地域における種々の活動や協力、ひいては選挙における投票行動にも影響するでしょう。「自分の街が嫌いな住民」を増やすことに徳がありますか?
ことさらにジェンダー問題を訴えるつもりはありませんが、仕事や職業生活に男女の差は当然ながら全くないはずで、しかし一方で女性が現実的に職業生活において不利益を被ることが多い、小1の壁の問題は、可及的速やかに解消されるべきなのです。女性のキャリアを容易に閉ざすことにつながる小1の壁、なかでも待機児童問題や、朝の児童クラブの開所時刻の遅さは、早急に解決されるべきです。自治体は、その観点から、児童クラブの整備や、児童クラブ運営事業者への働きかけを行う必要があるでしょう。
政治家、議員は、この観点でぜひ児童クラブの整備を進めてほしいですし、研究者、学会もぜひ、強く訴えてほしいですし、メディアもどんどん報道してほしいと願っています。
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弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。
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放課後児童クラブを舞台にした、萩原の第1作目となる小説「がくどう、序」が発売となりました。アマゾンにてお買い求めできます。定価は2,080円(税込み2,288円)です。埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員・笠井志援が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。リアルを越えたフィクションと自負しています。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、群像劇であり、低収入でハードな長時間労働など、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子どもたちの生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。素人作品ではありますが、児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描けた「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作に向いている素材だと確信しています。商業出版についてもご提案、お待ちしております。
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弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。
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放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。
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「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)