「安全・安心な子どもの居場所」として重要な児童館。「児童館の基礎知識と現実、子どもへの思い」を伝えます!
放課後児童クラブ(学童保育)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所の中核的存在)の待機児童数が増え続け、大規模化もさらに進行していることは、子どもの居場所としての放課後児童クラブの整備が進んでいないことを示しています。国は、児童クラブ以外の子どもの居場所づくりに本腰を入れているようですが、運営支援はこのような状況こそ、児童館の価値を再評価するべきだと考えています。今回は、ある児童館で長らく館長を務めているベテラン館長さんから、児童館の現状や魅力を発信してもらうべく、寄稿をいただきました。ぜひご覧ください!
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
※今回の寄稿は、萩原の質問に答える形で文章をお寄せいただきました。当ブログでは匿名でご紹介しますが、子育て支援関係者で、「参考としたいのでもっと詳しく知りたい、話を聞きたい」という方は萩原までご連絡ください。こちらから、館長に確認をしましてその後の対応、連絡等についてお伝えいたします。
<児童館とは、そもそもどういう役割の施設ですか?>
児童福祉法第40条に定められた児童厚生施設です。遊びを通した健全育成を目的とし、地域の実情に応じて、地域組織活動の支援やボランティア育成、子育て支援など多岐にわたります。地域の子育て子育ち環境の整備も大きな役割です。
子どもの権利条約や児童福祉法に則り、こどもたちの健やかな成長、発達、自立、が図られることを地域の中で具現化する施設だととらえています。
また近年は、こどもの「第3の居場所」としても期待されている施設です。
<児童館を利用できる児童の対象は?>
0〜18歳の児童です。
(萩原より追記:児童福祉法第4条では、「この法律で、児童とは、満十八歳に満たない者をいい、児童を左のように分ける。一 乳児 満一歳に満たない者 二 幼児 満一歳から、小学校就学の始期に達するまでの者 三 少年 小学校就学の始期から、満十八歳に達するまでの者」となっています。つまり乳児から少年まで、全ての児童を対象とした児童福祉の仕組みが、児童館です)
<児童館で勤務している職員は、どういう資格の人で、どういう任務がありますか?>
児童厚生員、教員、保育士、社会福祉士が当館にはおります。児童厚生員は(できることなら)すべての児童館職員に取得してもらいたい資格ですが、無資格者も勤務している館もあります。
児童厚生員は「児童の遊びを指導する者」として位置付けられており、放課後児童クラブも以前はこの資格でしたが、より取得しやすい放課後支援員に変わりました。
児童厚生員は2級、1級、特別1級、健全育成指導士の4種類があり、1級以上はソーシャルワーカー的な立ち位置となっています。1級以上は試験があり、パスしないと取得できませんが、2級は研修のみで取得可能です。1級は大学で取得できるところもあります。
(萩原より追記:児童厚生員とは、一般財団法人児童健全育成推進財団が独自に認定している資格で、同財団では「認定児童厚生員資格」と紹介しています。詳細は、同財団のHP 資格制度 | 児童健全育成推進財団 をご覧ください)
<児童館で過ごす子どもたちに対して、児童館は、どのように接しているのですか? どういう結果を期待していますか?>
各年代によって違いますが、まずは環境整備かと思います。それぞれの学年が過ごしやすく、安全にあそびを展開できるように環境を整えています。
職員は児童に対して、上下の関係ではなく横またはナナメの関係を築きます。雑談などを通して課題を発見することも大事な役割ですので、「話したい」相手であることを意識しています。かなり砕いて言うと、大人にとっての「行きつけの店」のような存在であると思っています。
ひとつひとつの遊びや過ごし方を共に考え、ルールメイクしていくことも職員が大切にしているところです。
こどもの権利条約に則り、こどもと伴走しながら発達を促していく役割が大きいかと思います。
そして、地域の中に児童館があることによって安心し、地域に愛着を持ち、自ら育つまた育ち合う環境が整っていくこと、児童館で過ごしたこども時代を通して、自らの意見が尊重されることを体験し、自分の存在への肯定を高めることなどを期待しています。
<児童館で働いている人の待遇はどうですか?>
常勤は月給制ですが、わたしの場合、115.000円が基本給です。ボーナスはありません。非常勤は時給制で最低賃金です。もちろんボーナスはありません。それでも年間359日、9:00〜19:00の開館を計5名で支え、出張児童館も行い、子育て支援も行うとなると、かなりの激務となっています。
(萩原より追記:館長がいる児童館は、指定管理者によって企業が運営する児童館です)
<児童館をめぐる行政の動きで困ったことはありますか?>
施設数を減らしていく、大規模修繕を実施しない、年間予算の減額など言い出したらキリがありませんが、一番は地方自治体が児童館の機能を理解していないことが困りごととして大きいです。
指定管理で運営されていることもありますが、コストカットにだけ目が行き、機能や役割、ガイドラインへの理解などが低く、指定管理の選定にも疑問が多いです。
<これからの「こどもまんなか」で、児童館に積極的に期待されることを教えてください>
児童館職員の子どもの権利への深い理解と、地域福祉としての児童館を確立していく館長の力量、単なる「館」というハコモノではなく、人材としての機能を広く波及させていき、児童館のない地域にも、こどもたちの安心な居場所を整備していくコーディネーター的な役割も期待されるものだと思っています。
以上です。ありがとうございました。また機会を頂いて、児童館の日常や、子どもへの支援、援助について印象的なエピソードなども寄稿をいただこうと考えています。
また、子育て支援、児童福祉の世界に従事されている方で、仕事の内容や仕事にかける思いを発信されたい方は、ぜひ当ブログにご寄稿ください。保育園、認定こども園、幼稚園、児童発達支援施設、放課後等デイサービス、こども食堂など、ぜひぜひ多方面の方々に思いを発信していただければ、とてもうれしいです。もちろん児童クラブ、放課後子供教室、放課後全児童対策事業といったズバリ小学生児童対象の支援に従事されている方、運営を担っている方、保護者の方、行政関係者の方も、どんどんご寄稿ください。
<おわりに:PR>
弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。
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弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。
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放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。書籍の注文は、まずは萩原まで直接お寄せください。あなたの購入が運営支援の活動を支える資金になります! 書店購入より1冊100円、お得に購入できます! 大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。
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放課後児童クラブを舞台にした小説を完成させました。いまのところ、「おとなの、がくどうものがたり。序」と仮のタイトルを付けています。これは、埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子ども達の生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ご期待ください。
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「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)