「学童でこどもに土下座させた」報道に思うこと。放課後児童クラブの運営組織が内向き運営になっていては滅びよう。
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
福岡県久留米市の学童保育所(当地では「学童保育所」の名称が使われているようです。いわずもがな、放課後児童クラブです。)において、職員がこどもに土下座をさせたことを同市が虐待とみなした、という報道がありました。こどもに土下座を強要させるとは、児童クラブではありえません。甚だ遺憾です。わたくし萩原は、この報道を勝手に深読みしました。そこには児童クラブ運営事業者の、公の事業を営むにあたっての甘さ、認識の薄さがあるのではないかと、勝手に想像したのです。
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(※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
<報道から>
なんとも、沈痛な気持ちになってしまう報道でした。ヤフーニュースに2026年3月19日10時34分に配信された、読売新聞オンラインの「男子児童2人の頭を押さえつけ土下座で女子児童に謝罪させる…学童保育所職員の行為、市が「虐待」判断」の見出しの記事です。この記事へのコメントですが、3月21日午前9時35分時点で1997もの数になっています。それだけ興味関心を招いたのでしょう。もっともその多くが「言うことを聞かないこどもを謝罪させるのは当然」とか「家庭のしつけがなっていないからだ。学童は悪くない」という、これもまたこどもの権利、人権についてこの日本社会の理解の底の浅さを見せつける残念な内容ばかりです。いくらネットの匿名性を利用して、ひごろのうっぷんを晴らしたいのか過激なコメント投稿でストレス解消につなげているとしても、人権についてはなはだ理解も共感も薄いこの社会では、そりゃいじめや会社内部の公益通報者へのむごい仕打ちなどなかなか無くならないだろうな、とがっかりしますね。ではこの報道を一部引用して紹介します。
「福岡県久留米市は18日、市内の学童保育所で昨年11月に職員が男子児童2人の頭を他の児童の前で押さえつけ、土下座させるなどの行為があったと明らかにした。身体的・心理的虐待に該当すると判断し、運営法人に再発防止策の実施などを求めたとしている。」
「市子ども政策課によると、昨年11月5日午後3時半頃、学童保育所の保育室で、学校で起きた児童間のトラブルを知った職員が2人の頭を押さえつけ、土下座で女子児童に謝罪をさせた。2人がすぐに土下座しないため、背中もたたいたという。」
「保育室には別に職員2人もおり、市は状況を知りながら止めなかったとして、ネグレクトに当たると判定した。」
(引用ここまで)
なおヤフーニュースには、末冨芳・日本大学教授のコメントが掲載されています。まったくその通りだとわたくしは同感です。
NHKの2026年3月16日午後5時3分配信の「学童保育所で職員が児童に土下座を強要 久留米市が虐待認定」の見出しの記事も一部引用します。
「久留米市によりますと、去年11月上旬、市内の学童保育所で、児童どうしのトラブルが起きた際、学童保育所の職員が男子児童2人に対し、背中をたたいたり頭を押さえたりしたうえで、相手の女子児童への土下座を強要したということです。翌日、児童の保護者から学童保育所を運営する一般社団法人に連絡があり発覚しました。この職員はその後、退職したということです。」(引用ここまで)
さて、久留米市のホームページには3月21日午前10時時点で、この報道に関する市からの発表は見当たりません。同市のHPには、児童クラブの運営事業者について次のように記されています。
「久留米市の学童保育所には、市が一般社団法人学童保育くるめへ運営を委託して実施している施設と、民間施設等が市に届け出をして実施している施設があります。
令和7年7月1日から「久留米市学童保育所連合会」は、法人化して「一般社団法人学童保育くるめ」になりました。
なお、事務所所在地、電話・FAX番号の変更はありません。」
同市のHPに掲載されている児童クラブの連絡先は、同法人運営のクラブが45か所あり、民間学童保育施設(=放課後児童健全育成事業の届出をしているので正確には「民設民営放課後児童クラブ」に該当するでしょう)が2か所あります。つまり、圧倒的多数の児童クラブを、同法人が運営しており、その同法人は2025年7月1日に、連合会という任意団体から法人化した、ということが分かります。この形態からすると、保護者運営組織の任意団体が法人化したと読み取れます。おそらくは保護者あるいはかつて児童クラブを利用していた保護者、いわゆる保護者OBと、職員、そして有志で運営に参画したい方々から成る、いわゆる保護者運営系の児童クラブ運営事業者であるように、わたくしには見受けられます。
<報道から思い浮かぶ疑問点>
まず、報道からは分からない点があまりに多いのですが、報道で知る限りにおいて、運営支援が疑問に思う点を列記します。
(1)法人が事案に関わった職員を退職させたのはなぜか。退職はどのような形態だったのか。諭旨解雇(退職勧奨)なのか、それとも「居づらい雰囲気」を組織として打ち出したことによる退職への追い込みだったのか。
(2)事案に関わった職員の、この事案に関する責任の所在は明確にしたのか。組織として何らかの処分をしたのかどうか。
(3)法人から行政にはいつごろ、どのような形で報告されたのか。
(4)土下座をさせたことが翌日、保護者から指摘されたというが、この法人の職員およびその様子を目撃していたような2人の職員は、「児童クラブの職員がこどもを土下座させたこと」について、児童クラブに関する基準省令・同市の条例や、放課後児童クラブ運営指針など児童クラブの関連法令等が求める内容と乖離していないと考えていたのか。
(5)こどもへの虐待、不適切な育成支援について法人としてどれだけ教育研修を職員、役員に対して実施してきたのか。
(6)同法人の役員、また組織の責任者はどう考えているのか。社会に向けてどう説明するのか。今の時点で法人として説明が行われていない合理的な理由があるのか。
(7)行政は「しっかり指導する」とあるが、どのような指導を考えているのか。
<運営支援は、はっきりと申し上げる。ダメすぎます>
上記の疑問以外にも細かい点ではもっと首をかしげる点があります。わたくしははっきりと申し上げますが、こどもを土下座させるという行為、すなわち「謝罪を強制させる行為」について、それはこどもの健全育成の範疇にまったく入らない行為である、という認識をこの法人の児童クラブ職員が理解していたのかどうか、かなり疑わしいということです。土下座を指せた者1人だけではなくそれを見ていたとされる別の2人の職員も、土下座をさせたことを疑問に感じて運営組織のしかるべき部署に相談していなかったことを鑑みると、この法人の職員の相当数がもしかすると「悪いことをしたこどもを謝罪させることは問題ないことだ」と理解していた可能性すらあると、私は想像してしまうのです。
まともな児童クラブ職員なら、どのような背景があっても、こどもを無理やり謝罪させることは無意味だと承知しています。それは解決どころかさらにトラブルを深刻化させるだけです。そんなことは、真面目に児童クラブ職員として半年も過ごせば痛いほど理解できることです。まして、社会通念上、その行為をさせることは強要罪を構成する可能性もある土下座という行為を無理やりさせるだなんて、一般的な法令順守研修(コンプライアンス研修)すらも、この法人は職員に受講させていなかったのかと、わたくしははなはだ疑問です。もし法令順守研修を毎年やっていたのであれば、このような事態を招いたということがすなわちその実施してきた法令順守研修が全く意味が無かったもの、ピントがズレまくっていた法令順守研修だったと私は断言します。少なくともわたくしが講師で行う法令順守研修は、当然ながらこどもへの強要はさせてはならないと説明しますし、土下座などもってのほかだ、と必ず強調します。
退職についても疑問です。まるで「臭いものにふた」と同じようにわたくしには感じられます。もしも、行政への報告前にこの職員を退職させていたなら、それは完全に「とかげのしっぽ切り」とわたくしは言います。職員がそのようなあまりにも不適切な行為をしたのは、それは「組織がしっかりと職員を教育研修していなかった」ことであって組織自体もその不適切な行為が起きたことに責任を取り、真摯に反省して再発防止に努めねばならないところ、職員だけを退職させることが適切な対処方法なのか、わたくしは大いに疑問です。あえていえば、この土下座行為をさせた職員について、わたくしなら退職させません。本人が退職したいと思わせるような雰囲気にもさせません。強要したことはもしかすると違法行為に該当するであろう、しかし比較して例えば明確に傷害を負わせた、金品を盗んだということと比べるとその後の教育研修で矯正、是正できる可能があります。組織内で処分はしっかりと行うとして(例えば減給、降格など)、改めて法令などをしっかり学び、育成支援を基礎の基礎からしっかり学ぶことで、失敗を教訓にして、いずれは立派な放課後児童支援員になる可能性はゼロではないと、わたくしは考えます。
退職させた(あるいは、退職に至ってしまった)ことは、組織の在り方として、未熟すぎると言わざるを得ません。
<情報公開がまったくなっていない>
この法人、運営するクラブ数はかなり多いですね。となると予算規模も5億円を超える規模でしょうし、8億円~10億円規模になるやもしれません。2025年7月に法人化したとありますが、この法人のウェブサイト、ホームページは本日3月21日時点で確認できません。誰が代表なのかも、法人が作成したウェブサイトでは情報提供されていません。
それでいいと関係者や久留米市の方々は考えているのでしょうか。だとしたら、そもそもそこが、この残念な土下座事案の遠因とわたくしには感じられます。児童クラブは公の事業であり、まして補助金が交付されているとしたら、公のお金つまり税金が多額に交付されていることになり、公金を使った事業には、その事業内容が納税者たる国民に逐一、公開されて当然です。補助金を受けて事業をしている児童クラブの方々、あなたたちが使っているお金は、半分近くが保護者からの徴収金、残りが補助金でしょうが、それらは、「あなたたちの才覚で集めたお金」ではありませんよ。「子育てしながら生きていくにはやむなく必要だから児童クラブを利用せざるを得ない」保護者が払っているお金であり、子育ては国家社会も支えることだからと税金が投入されていることであって、あなたたちが児童クラブ運営事業に勤しんでいるとしてもそれが誰がやっても同じことです。「おれたち、わたしたちが、この地域の児童クラブを支えているんだ」とゆめゆめ思い違いをしないでください。あなたたちは、単に「大事な保護者からのお金と、大事な税金」の使用を代行しているだけであるということです。
補助金を受けている児童クラブにおいては、児童クラブがどのようにお金を使ったか、どのくらいのお金をどこからもらっているかは、広く社会に公表されてしかるべきです。どのようにお金を使ったのかについては、教育研修の中身もそれに該当します。ある年度には、こういう研修を、誰を招いて実施した、ということも本来は世間に公表されてしかるべきです。当然、予算決算については、大項目だけではなく詳細な使い道、使い方について公表されるべきなのです。
それなのに、今回報道された当地の法人はどうやら自前のウェブサイトもないのでしょうか。インスタはあるよ、では適切な情報公開とはいえないと私は考えます。ただわたくしの検索技術が未熟ゆえ見つからないのであればいいのですが。もし情報公開にまったく手を付けていなかったとしたら、その意識がまさに、公の事業を営んでいるという責任感の理解への欠如であり、それはすなわち、職員への徹底した育成支援、こどもの人権への教育研修の欠如です。
だいたいですね、わたくしが提唱している「早期発見行動」がしっかりなされていれば、こんな土下座事案、すぐに発覚しますよ。「あれ! こどもを土下座させちゃったよあの先生!」と、目撃した職員はすぐに運営本部など適切な窓口に報告したでしょう。保護者から「これはいったいどういうことですか?」と指弾されるより前に保護者に対して謝罪し、「以後は教育研修を徹底させます」と丁寧に説明すれば、また違った展開にもなったでしょう。
<最後に言いたい>
ヤフーニュースへのコメントは、「こどもが悪い」「悪いことをしたこどもを謝らせるのは当然だ」「家庭がだらしないから学童が苦労する」などの趣旨であふれています。あまりにも表面的で短絡的な見方ばかりで、愕然とします。
非があるほうが謝罪するのは当然です。その当然から出発して児童クラブは物事を考えます。丁寧に、どういう背景があったのかを踏まえて当事者のこどもたちにアプローチします。謝罪しようとしないこどもたちがいたなら、なぜ謝罪しようとしないのかについても考えるのが児童クラブの職員の仕事です。単に頭を下げさせる=その典型例が土下座=だけでトラブル全体は解決しません。トラブルの根っこには何があったのかを踏まえてそこからこどもたちにアプローチしないと、本当の謝罪にはならないのです。
まっとうな児童クラブ職員はそれを分かっています。ただ、職員数不足や時間の問題などでその場では理想の問題解決様式に持ち込むことはできないことが多いとしても、本質は理解しています。
ですがヤフコメにあるようなことが仮に世間一般の理解であるとしたら、結局のところ、世間一般には「児童クラブの本質的な役割」が理解されておらず、「単なるこどもの預かり場」という理解に留まっているのだろうと、わたくしは思わざるを得ません。単なる預かり場であって、こどもの育ちに関わる必要が無いということであれば、おわびもできないこどもに育ったのは家庭の責任だ! という言葉もそりゃ出てくるでしょう。
やはり児童クラブのことをもっともっと正しく世間に知っていただく必要があると、わたくし自身の思いを強くしたのが、この事案の報道でした。「土下座させた? 学童の先生が? それって学童の先生の選択肢にはないよね!」という批判ばかりでしたら、大歓迎でした。なぜなら、児童クラブの育成支援について世間様が理解していることをうかがわせるから。「悪いことをしたこどもを謝罪させて当然だ」では、こどもまんなか社会も、こどもの、いやひとりひとりのひとそのものの人権に対する理解もまた、まったく及んでいない残念な社会構造であると、言わざるを得ないのですから。
まずは児童クラブの運営事業者から、徹底的に学ばねばなりません。公に奉仕するということ、こどもの育ちに関わっているということの重要性を知らないと、雇っている職員がそれらを理解することに及びません。そして、公の事業に関わっていることの責任感と、国民への情報公開に対する意識が希薄なままでは、それらを上手に見せるテクニックに長けている、広域展開事業者との競争は太刀打ちできませんよ。公募型プロポーザルや指定管理者選定の競争で、勝てる要素が見つけられません。保護者が運営関わっていればこどもに対する良い育成支援ができるわけではない、ということが実は他の世界からは当たり前に分かることですが、残念ながら内部の世界からはそう見えていないようですね。ですから情報公開にもその必要性が理解できないのでしょう。こどもに丁寧に関わりたいと運営をしているだけでは、児童クラブの運営権を巡る競争に、普通に当たり前に企業化(=つまり合理化されていること)されている事業者にはとても勝てないということもまた、改めて指摘しておきます。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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New! 日本版DBS制度について相談したい事業者さんにぜひともお勧めします。さいたま市南区の「エリーネ行政書士事務所」(https://www.eri-ne.com/)さんのご紹介です。行政書士の入澤えりな先生が、日本版DBS制度を中心に児童福祉施設や児童福祉の事業者様からのご相談に対応してくださいます。日本版DBS制度以外にも遺言作成・相続、介護タクシー等をメインにご相談に応じているとのことです。営業時間は平日9:30~17:00で、土日祝は応相談とのこと。ぜひ、困り事がありましたら頼ってくださいね。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)


