「学童で、子どもが1人で遊んでいた」。放課後児童クラブで子どもがどう過ごしているか、気になりませんか?
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。先日、旧ツイッター(X)で、気になる投稿がありました。学童で子どもが1人で遊んでいるのを見た、という保護者の投稿です。150万を超えるものすごい反響があったようです。一般論に置き換えてみて考えてみるとして、私には、放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)側には職務として、保護者側には留意してほしい点として、いくつか伝えたいことがあります。
※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。
<放課後児童クラブ側の対応は?>
投稿から得らえる情報はほんの一握りです。学童で子どもが1人で鉄棒遊びをしていた、というもの。そこからはとても幅広い可能性が想像できます。(なお、投稿には、お子さんが他の子に遊ぼうと声をかけても避けられるという状況も言及されています)
・たまたまその日、その瞬間だけ、保護者が見かけた瞬間だけ、子どもが1人で遊んでいた?
・その子は、本心は他の子たちと交って遊びたいのに、いつもなかなか他の子と一緒に遊ぶことができていない?
・児童クラブ職員は、その日その時、その子が1人で鉄棒遊びをしているのに気が付いていた?いなかった?
いつもは他の子たちと仲良く遊んでいる、でもその日だけ、気分として1人で過ごしたくて、しかも鉄棒を使って遊びたかった、だからたまたま1人だったという可能性もあります。ありますが、これも私の勝手な想像ですが、保護者はいつも子どもを見ているからこそ、「これはいつも、きっとこうなのではないか」と不安を覚えたのではないでしょうか。
さて、このような状況、つまり「児童クラブにおいて、子どもが1人で過ごしている状況が発生した」ことについて一般的に考えてみます。私は運営支援という立場ですから、何より児童クラブ側の対応を重視します。先の事例で言えば見過ごせないことは「1人で鉄棒遊び」ですが、鉄棒のように、他の遊びよりけがをする可能性が高い遊びを1人でしていたことがまず問題です。鉄棒は、落下したり勢い余って鉄の棒による打撲をしたりと、けがをする可能性は他の遊具より高いといえます。1人で本を読んでいる、あるいは草花を摘んでいるという過ごし方より、はるかにけがをする可能性が高い。となると、児童クラブ職員は、鉄棒遊びをしている子のそばで一緒に過ごしていることが必要ですし、あるいは十分に様子が把握できる程度の距離(十数メートル程度離れた場所)でその子の様子をちらちらと眺め時には声掛けをしつつ、その子の遊ぶ様子をしっかりと把握しておくべきだと、私は考えます。
鉄棒以外にも、「うんてい」(あ、これも鉄棒の一種?)もそうですね。木登り(禁止しているところも多そうです)も。まして「戦いごっこ」(これも禁止が多いでしょうね)は、すぐけんかにエスカレートしがちなので、けがをする、トラブルを起こす可能性は高い遊び、よって職員がそばにいる、あるいは常時、視野に入れておく必要があります。
(投稿の例では、もしかすると、実は比較的そばに児童クラブ職員がいたのかも、しれませんが、投稿の雰囲気からして、比較的近い距離にクラブ職員はいなかったのだろうと、私は想像しています。あくまで想像ですが)
子どもが1人で遊んでいる(それは実のところ、当たり前のようにある)場合、そういう状態の子どもがいるということを児童クラブ側が把握していなかったとしたら、私は児童クラブの業務執行体制に合格点は付けられない。なぜなら、児童クラブ全員の行動の状態について職員は把握しておく必要があるからです。校庭で大勢の子どもがあちこちで遊んでいるとしたら、誰か1人が全体の把握、観察の役割を担うことがあるものですし、全体の把握を行う者を置かない、置けない場合は、数人で範囲や場所を決めて状況の把握を行うものです。死角になりそうなところには、子どもを行かせないようにする、という工夫もします。「まったく、子どもが何をしているのか知らない、把握していない」という状況を作らないように、子どもをしっかり視野に入れることが、当たり前だからです。「いや、それは無理。職員数が少ないから」という児童クラブ職員は工夫してください。少ない職員数で子どもたちを見られるように工夫する、職員数が少なくならないよう運営本部に強く要求することです。そしてその現場職員の要求を理解できない運営本部は、本当にダメです。児童クラブの経営、運営から撤退していただきたいですね。
(なお言わずもがな、子どもが児童クラブにいる間は、子どもの安全を守る義務が児童クラブにあります。子どもは児童クラブの管理監督のもとに置かれているからです。職員が足りなくて様子が見られず、その間に子どもがけがをしてしまった、というのは「じゃあ仕方ないね」とはなりません。より重い過失を問われます。まして、1人でも大丈夫だし、こんな状況ではケガが起こってもしょうがないよとクラブ側が考えて子どもを「放置」していたとしたら、重過失ではすまなくなる可能性すらあります)
児童クラブ側が、その子が鉄棒遊びを1人でしていたことを職員の誰かが見て把握していた、となれば、保護者に説明ができるでしょう。いつものことなのか、たまたまその日、その時だけだったのかを含めて。もちろん、「いつものこと」であれば、児童クラブ側は対応を講じていなければなりません。職員が間に入って他の子と「自然に」遊べるように工夫することが支援員のプロの仕事です。「ねえみんな、〇〇ちゃんとも遊んであげてね」なんて声を他の子どもにかけるような支援員は失格です。
児童クラブ側は、子どもがクラブで過ごしている状況を把握し、その様子を保護者に報告することが当然です。子どもがなかなか他の子どもたちとなじめず、あるいは他の子どもたちの集団遊びの中に入れない状況があって、それを児童クラブ側が把握しているなら、そういう状況について保護者に知らせているはず。そのような状態にあれば、多くの保護者は、たとえある日、子どもを迎えに行った時に子どもが1人で遊んでいることを目撃しても、解決に向かって進んでいる途中の1つの場面として理解することだってできます。
もし、児童クラブ側と保護者との情報の共有がなかった場合は、「なんでうちの子は1人ぼっちで過ごしているのかしら」と保護者が不安に思うのは当然でしょう。
児童クラブ側の不利な条件は重々承知。物理的に限界があることもあります。職員数3人で70人の子どもの遊ぶ様子を把握せよというのは、職員が指示した遊び(それを遊びといえるかどうかといえば、本来は言えない)を行うことでしか把握できないでしょう。しかし、けがをしやすい遊びを1人で子どもがしていたという状況は、起こしてはならないのです。仮にけがをしたら、その状況を保護者や医療機関に説明できない。それは、あってはならないのです。
なにより児童クラブ側は、子どもが進んで児童クラブを利用するような気持ちになるように子どもを援助することが求められています(放課後児童クラブ運営指針)。子どもがぽつんと1人で遊んでいるという状況は、子どもが「明日も学童に行きたい」という気持ちを損ねる可能性が大いにあります。
要は、「児童クラブ側はその不利な環境にあることがあっても、子どもの様子を欠かさず把握すること」が求められているということです。子どもが1人で遊んでいた状況を保護者が目撃したと思われるなら、「きょうは、こういう理由で、こうして1人で過ごしていたんですよ」としっかり説明できるだけの情報を把握していなければならない、ということです。
<保護者側に必要なこと>
子どもの成長は当たり前ですが保護者の責任によります。児童クラブで過ごしている子どもの様子も、保護者であれば当然、把握していることが求められます。その点において誤解がありますが、児童クラブは子どもを受け入れている間の生命身体について損害がないよう守る義務があっても保護者の果たす責任のすべてを肩代わりするものではありません。児童クラブで過ごしている間の子どもの様子や気持ちを保護者は児童クラブ側から伝えられることによって情報を共有し、それももとにして普段の子育てをするのです。
ですので、保護者は遠慮せず積極的に、普段どのように子どもが児童クラブで過ごしているかを、児童クラブに情報を伝えるよう求めてください。むしろ、情報を求めなければダメです。児童クラブ側は保護者に子どもの様子を伝えることが職務になっています。子どものうちは複雑な人間関係を上手に、あるいは巧みに処理できるだけの能力や経験値がありませんから、児童クラブでは子ども同士のトラブル、いざこざは当然あります。子ども全員が年中、いつもみんな仲よしこよしなんてのはそうそうあり得ません。基本的に全員、仲が良くても、局面局面でトラブルはあります。(上手く運営しているクラブや育成支援の能力が高い支援員がいるクラブは、そうしたトラブルを素早く上手に収拾解決し、後に影響を残すことがない、ということです)
よって、誰かといざこざになった、けんかをした、あるいはけがをしたといった、児童クラブで起きるであろう様々なことについて、保護者は必ず、児童クラブ側に情報を求めてください。きょう、何があったかを聞いてください。「きょう、うちの子、どうだった?」の一言でいいのです。(それに対して職員は、簡潔に、要領よく情報を伝えてください。児童クラブの世界にありがちな、本題を伝える前に前提を長々とそれも周辺の状況からの説明から始めるということは絶対にやめましょう。慌ただしいお迎え時の1分ですら貴重ですから)
いつもは児童クラブでの子どもの様子に関心がなく、気にもしていない保護者は大勢います。それが、児童クラブへの絶対的な安心に基づいて「すべてお任せ」なら、(これもダメなことなんですが)百歩譲って仕方ないと思うとしても、いざ、何かあった時に猛烈な勢いで「いったい、どうしてくれるんですか!」と食ってかかられても、児童クラブ側もそりゃ困ります。まして全く無関心であった保護者が、子どもが何かトラブルに巻き込まれたときに「訴えますからね!」と敵愾心をむき出しにするのは、率直に言って呆れます。(もっとも、児童クラブ側も保護者の無関心に乗じてクラブでの状況を何も伝えていなかった、伝えようと試みていなかったならば、言語道断です)
児童クラブ側には確かに子どもの安全安心を守る義務があります。子どもが児童クラブを積極的に利用したくなるように援助をする必要があります。その業務を怠った結果、子どもが児童クラブを利用できなくなり保護者の生活に重大な影響を及ぼす事態になった場合、法的な争いに発展する可能性はゼロではありません。そのような最悪な事態を避けることは保護者にとっても必要です。そうならないように、保護者は常に児童クラブ側と情報を共有するようにしてください。
<子どもは本当のことを話してくれるとは限らない>
子どもに話を聞くことは絶対に必要です。ですが、そこについて2つの可能性を常に考えおくべきです。1つは、「保護者のことを気遣って本当のことを言わない」ということ。自分が児童クラブに行きたくないといえば親は困る。親を困らせたくないから、本当は児童クラブでいつも仲間外れで嫌だけど、親から「どう?学童は楽しい?」と聞かれても「うん、楽しいよ」と、答えてしまうということです。
子どもは、大人、親が考えるよりずっと真面目に真剣に生活のこと、親のこと、自分のことを考えています。瞬間的に起こった他の子どもとのトラブルについてうまく感情に折り合いを付けられずトラブルが悪化することはあっても、親のことについては親が思う以上に、親を気遣うことが多いのです。
だから、子どもが言う「学童、楽しいよ」は、うのみにしてはダメ、ということです。児童クラブの職員に状況を聞いて、「ええ、いつも笑顔で笑い転げながら遊んでいますし、宿題も時間内にさっと終わらせていますよ」という話が合わせて聞けるなら、子どもの話すことは間違っていないだろうと初めてそこで思える、ということです。
まして「学童はどう?あんたが学童に行かないと、私は仕事できなくなって困っちゃうんだかr楽しくしててよ」なんて親の状況を付け加えるような言動があったら、そりゃもう、子どもは、「学童行きたくない」なんて、なかなか言えません。それも、本当に優しくて素敵なお子さんであればあるほど、です。
で、実はもう1つは全く正反対の「学童でこんなひどいことがあった!最悪!」と、まったくの架空のことだったり、小さいことを「盛りすぎて」伝えるということもまた、子どもにはあります。特に、「学童に行きたくない」と本心では思っている子どもには、ままあります。家でゲームしたいとか、仲良しが学童っ子ではないのでその子と遊ぶ時間が欲しい、でも親は学童を休むのを許してくれない場合に、ひょっとするとあり得るのですね。これもまた、児童クラブの職員と情報共有をしていれば、ある程度は子どもの言っていることが正しいか、あるいは盛りすぎているか、あるいは本当に架空のことなのか、判断をしやすくなるでしょう。「学童に行きたくないなら、行きたくないって気にせず言ってごらん」と、子どもの本音を引き出す努力はやはり必要です。子どもが児童クラブに行きたくない理由が、児童クラブ側の協力を得られれば改善できるのであれば児童クラブ側に相談してほしいのです。
行きたくない理由が、子どもが他に明確に取り組みたいことがあるというのであれば、それは子ども自身の成長発達の1つの過程ですから、それが実現できるように考えるのもまた、保護者には必要です。ゲーム三昧というのはナシとしても、もっと英語を習いたいとかサッカースクールに行きたいとかピアノを習いたいとか、その子自身が明確に自分の意思でやりたいことができたときは、それこそ児童クラブが任務としている社会性や自主性の発達について成長がみられた、ということです。もちろん、防犯面の不安から習い事より児童クラブに行かせたいという判断はあるでしょう。そうしたことを含めて、親子で、しっかり対話をしましょう。児童クラブ側も入って3者で話すことだって当然ありです。
いずれにせよ、児童クラブと保護者側は、子どもに関して情報を常に一緒に共有しておくことが必要です。共有のための手段、手法、ツールはどうでもいい。それもまた、児童クラブ側と保護者側とで相談していけばいいことでしょう。夏休みになると、児童クラブで過ごす時間が長くなります。子どもにもいろいろなストレスがかかります。夏休みの「行き渋り」を防ぐためにも、児童クラブで過ごす子どもの様子に保護者は関心をもってください。児童クラブ側は丁寧に(簡潔に)子どもの様子を伝えましょう。
<おわりに:PR>
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放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されます。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。1,900円(税込みでは2,000円程度)になる予定です。注文は出版社「寿郎社」さんへ直接メールで、または書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。アマゾンでは予約注文が可能になりました!お近くに書店がない方は、アマゾンが便利です。寿郎社さんへメールで注文の方は「萩原から勧められた」とメールにぜひご記載ください。出版社さんが驚くぐらいの注文があればと、かすかに期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。
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「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)