「子どもは育てたくない」若者が52%、という調査結果。放課後児童クラブに関わる2つの点があります。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。とても衝撃的な調査結果が報道されました。若者が抱える困難の実態に関する調査です。経済的な問題で今の若い人たちの半数以上は、もう子どもを育てたくない、という結果は極めて深刻です。この調査について、放課後児童クラブに関わる2つの点を弊会が指摘します。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<調査結果>
 この調査結果は3月21日16時5分にヤフーニュースで配信されました。提供元はTBS NEWS GIGです。記事の見出しは、「 「子どもは育てたくない」若者が52% 少子化対策は「働き方改革」へのニーズが高い傾向 若者対象の実態調査」です。(「子どもは育てたくない」若者が52% 少子化対策は「働き方改革」へのニーズが高い傾向 若者対象の実態調査(TBS NEWS DIG Powered by JNN) - Yahoo!ニュース

 記事を紹介します。
「若者が抱える困難の実態に関する調査で、15歳から39歳の男女の半数以上が「子どもは育てたくない」と回答したことがわかりました。」
「日本大学の末冨芳教授らの研究グループは先月、若者の困難の実態に関してオンライン上で調査を行い、全国の15歳から39歳までの男女およそ4000人から回答を得ました。」
「その結果、「子どもはおらず、子どもは育てたくない」と答えた人が52.0%に上ったことがわかりました。本人の年収が299万円未満、あるいは世帯年収が399万円未満の人ではおよそ6割に上りました。」
「また、「とても必要」あるいは「必要」と答えた少子化対策としては(複数回答)「ワークライフバランスの改善」が78.2%、「柔軟な働き方の拡大」が77.8%に対して、「高校授業料の無償化」は64.8%と、無償化政策よりも働き方改革が必要だという人がやや多い傾向にありました。」
(引用ここまで。引用部分が多くなったことにつき、申し訳ございません)

 非常に深刻で衝撃的です。それは私だけの感想ではなくて、ヤフーニュースのコメントが6,000を超えていることからしても、世間一般的にも衝撃的な内容だったのです。さて、私はこの調査結果に対して、さらに放課後児童クラブの現状を同時に考えました。

<年収がまさに放課後児童クラブの職員を直撃!>
 記事には、子どもがおらず、子どもを育てたくないと答えた人のうち、本人の年収が299万円未満、あるいは世帯年収が399万円未満の人ではおよそ6割、とあります。

 当ブログの読者様ならお気づきだと思います。つい先日も紹介した、児童クラブ職員の所得に関する調査です。
 令和3年度の児童クラブ職員の賃金は、次のようになっています。
「放課後児童クラブに従事する職員の1人当たり給与(手当・一時金込)は、月給払いの常勤雇用者が285.7万円(平均勤続年数6.1年)、月給払いの非常勤雇用者が146.1万円(平均勤続年数6.2年)、時給払いの常勤雇用者が129.3万円(平均勤続年数5.9年)、時給払いの非常勤雇用者が75.0万円(平均勤続年数4.5年)であった。」
(令和4年度子ども・子育て支援推進調査研究事業 放課後児童クラブの運営状況及び職員の処遇に関する調査)

 ほら、児童クラブの常勤職員の年収は285.7万円です。記事では299万円未満の年収の若者の6割が、子どもをあきらめた状態となっているのですが、児童クラブの年収はその299万円に届いていませんよ。

 この運営支援ブログを投稿し始めたごく初期のころ、2022年12月12日の投稿は、次のようなタイトルでした。
「学童に勤めた、子どもあきらめた」を見過ごしてはいけません!
 まさに今回の調査結果の中身そのものです。放課後児童クラブで働く人の中には、その低い収入から、自ら子どもを持って育てるという選択を捨てざるを得ない人だっている、これは直ちに改善されなければならないという危機感を、私は児童クラブの世界に関わってからずっと抱いてきていました。

 子育て支援の重要な社会インフラに従事している人が、現実に子育てをあきらめる、躊躇せざるを得ない、というのはブラックジョーク以上の醜悪さです。年収300万円未満の人は子育てをためらっていて、児童クラブの職員はまさにその子育てをためらっている年収300万円未満の人たちばかりです、だなんて、どんな悲劇ですか。こんなこと、絶対におかしい。あってはならない。

<放課後児童クラブはやっぱり必要でしょ!>
 調査結果の中で、<「とても必要」あるいは「必要」と答えた少子化対策としては(複数回答)「ワークライフバランスの改善」が78.2%>という部分、とても気になりませんか?
 ワークライフバランスの改善は、広い意味を含んでいると想像します。育児にもっと時間を充てられる働き方、育児にたくさんの時間を割いても生活できる所得の保障を含むと私は想像するのですが、「子育て」と「仕事」のバランスにおいて無理のない暮らしができれば、少子化対策になる、つまり出生率の改善につながる可能性が、この調査結果に示されていると私は考えました。

 放課後児童クラブは、働きながら子育てをする人のワークライフバランスの改善に、まさに役立つ仕組みです。育児短時間勤務が当たり前の世の中になっても、社会人として仕事をする人は、時間の長短はあれど、放課後児童クラブを利用する機会が多いでしょう。まして小学校の長期休業期間中は児童クラブの仕組みが必要となるでしょう。
 また、働きながら子育てをする人たちには、自らの仕事の専門性や責任を鑑みて、以前と変わらない労働時間を積極的に選択する人だって相当いるでしょう。働きながら子育てをする夫婦のすべてが「子育て中は育児の時間をたくさん確保したい」と願っているわけではありません。育児の時間も欲しいけれど仕事の時間もまた大切、それは収入を得るためだけではなくて仕事に関わっている責任感や充実感、社会への貢献に対する自らのプライドを大事にしている、という人だって、それなりに大勢いるでしょう。そのような人たちにとって、放課後児童クラブは欠かせない子育て支援の仕組みです。まさに社会インフラです。
 (こういうことを調査してほしいのですね。放課後児童クラブを利用する保護者の意識調査。弊会がもし財政的に余裕があれば、こういう調査をして分析する研究者の方に資金を提供、差し上げたいのです)

 放課後児童クラブはまさにワークライフバランスを支える重要な社会インフラ。放課後児童クラブの充実は、少子化対策において必要な施策の1つであるのです。少子化だから児童クラブは不要ですよ、新たに増やさなくていいですよ、今はギュウギュウ詰めだけれどいずれ子どもが減るんだから投資は見送りだ、と考えている政治家や行政パーソンの方々には、猛省が必要です。児童クラブの整備こそ、少子化対策に、ワークライフバランスの改善に必要です。

<つまり、国と自治体は、児童クラブを充実させよ>
 少子化を避けたい、という前提に立っての話になりますが(→少子化であっても生活の質の維持ができるでしょう、だから少子化を恐れることはない、という考え方や意見があるのは承知しています)、少子化の進行はもう最悪の危機的状況です。報道では、2024年に生まれた子どもの数(外国人を含む、出生数)は72万人と、9年連続で減り、過去最少となったと伝えられました。国の予測では77万9000人だったので、大幅に下回ってしまいました。

 少子化による人口の急激な現象による様々な影響を避けるためにも少子化対策は必要でしょう。ところが、若者の5割以上は子どもを育てたくない、年収300万円未満にいたっては6割の人が子どもをあきらめている。児童クラブにて従事する人は年収300万円未満が平均的。子どもを育てたくない人の不安は、働きながら子育てをすることへの不安が大きいと思われる。

 これはもう、児童クラブへの本格的な取り組みが必要です。児童クラブの仕組み、構造、制度を変えることが必要です。ずばり、国がもっとカネを出すことと、地方自治体は児童クラブに関する予算の優先順位を上げることです。「子育ては大事な」なんだと言って児童クラブの補助金をカットするような愛知県岡崎市のような姿勢は、最悪ということです。

 弊会は提言します。
・児童クラブへの補助金を大幅に増額し、児童クラブで従事する人に十分な報酬が届くようにする。
・児童クラブを運営する民間事業者に対しては、補助金増額の趣旨を踏まえて必要以上に事業者の利益を生み出すことを許さず、法令や契約によって利益への転嫁に対して一定の上限を課すこと。
・児童クラブの運営に関する補助金の交付要件を緩和し、働きながら子育てをする人が余裕をもって児童クラブを利用できるために児童クラブの利便性向上に役立てる補助金が確実に交付されるようにする。
・待機児童は絶対に出さない。同時に、子どもが安心して児童クラブの利用を続けたいと思うためにも過密化、大規模状態の児童クラブは早急に解消する。以上のことから、児童クラブの整備についてはさらに加速させる。
・児童クラブで働きたいと思う人を増やすために、報酬の底上げはもちろんだが、放課後児童支援員の資格の専門性を向上させるなど、児童クラブが子育て支援の専門施設として社会に認知され、評価されるための施策を実施する。これが、優秀な人材を児童クラブに呼び集める大きな原動力となる。

 国や行政、政治家の皆さんは、かつてない速度で進む少子化への対策の1つとして、ぜひとも放課後児童クラブの整備、充実の必要性に気付いてください。もっと理解を深めてください。そして、重要な子育て支援の社会インフラである児童クラブで従事している人こそ、まさにワーキングプア状態で、子どもをあきらめざるを得ない方々も大勢生み出しかねない状況にあるということを解消するために、可及的速やかに対策が必要である理解を、ぜひとももってください。
 マスコミ、メディアの方々も、少子化対策が求められます、という紋切り型の報道ではなくて、対策に必要な具体的な施策はこれだ、という観点で報道を続けてください。

<おわりに:PR>
 弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
 放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。

 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。

 放課後児童クラブを舞台にした小説「がくどう、序」を出版します。3月10日の発売を予定しています。埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。リアルを越えたフィクションと自負しています。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子どもたちの生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描けた「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ご期待ください。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)