「クマ対策になぜこども家庭庁は入らない?」と「不登校に放課後児童クラブ(学童保育所)ができること」の2題。
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする社労士「あい和社会保険労務士事務所」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
今回は2つのテーマ。1つは深刻な災害となっている「クマ対策」のこと。もう1つは文部科学省が2025年10月29日に公表した「問題行動・不登校調査」について、引き続き運営支援の持論である「不登校のこどもと、不登校のこどもがいる保護者の支援、援助に放課後児童クラブを積極的に活用するようにするべきだ」を訴えます。。
(※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
<クマ対策の関係会議>
クマによる被害が深刻となり、秋田県は自衛隊の支援を求める事態になりました。政府の対応について新たな動きが報じられました。ヤフーニュースに2025年10月30日0時11分に配信された、共同通信の「政府、クマ対策閣僚会議に格上げ 全国の学校安全対策も促す」との見出しの記事から一部引用して紹介します。
「木原稔官房長官は29日の記者会見で、クマによる被害の深刻化を受け、30日に開催を予定していた関係省庁の連絡会議を閣僚会議に格上げすると発表した。これまで連絡会議は、警察庁や農林水産省、国土交通省、環境省、林野庁の5省庁で構成されていた。新たに文部科学、防衛、総務3省を追加する。」
「文科省は、クマに対応した学校内の安全管理や登下校の留意点をまとめ、近く全国の教育委員会に通知する方針。」
「学校が防犯や防災のために定める「学校危機管理マニュアル」に盛り込むよう促す。」
(引用ここまで)
つまりクマによる被害を防ごうと、これまで5つの省庁(うちクマそのものは環境省の所管のようですね)で対応していたものが、文部科学省、防衛省、総務省の3つの省庁を追加する、というニュースです。自衛隊が災害出動する防衛省は当然ですし、引用したように、学校内や登下校時のこどもの安全を守るために文科省も加わることは必要な措置でしょう。
運営支援はクマ対策閣僚会議に、こども家庭庁が含まれていないことが疑問です。「保育所やこども園、放課後児童クラブにおいて、こどもと職員、送迎の保護者の安全対策を至急講じる必要がある」のにです。
ヤフーニュースに10月29日15時配信となった、テレビユー山形の記事の見出しは「【地図あり】近くに学童保育所も 山形市松原でクマ1頭目撃 市が注意呼びかけ(山形)」です。
同じくヤフーニュースに10月29日16時6分配信となった、山陰中央新報の記事の見出しは「益田市美都町でクマ 都茂保育所から20メートルの空き地」です。
同じくヤフーニュースに10月29日18時45分配信となった、FNNプライムオンラインの記事の見出しは「「ウォー!とクマが向かってきた」こども園近くに親子クマ 福井初の緊急銃猟で駆除 園児をホールに集め「音が聞こえないように」読み聞かせ」です。
青森朝日放送は10月22日18時45分に「青森市 保育園の園庭にクマ 「怖い」泣く子も…外遊び控えて対応」との見出しの記事を配信しています。園庭にまでクマが入り込んだまさに危機一髪ではないですか。
また、北海道テレビ放送は10月27日17時51分に「「逃げろ!逃げろ!!」札幌・中央区 幼稚園でクマ出没対応訓練 近くでクマ目撃多数」との見出しの記事を配信しています。
こども家庭庁が所管する施設においても、クマ被害発生防止の緊急かつ厳重な対応が迫られています。なのに、対策閣僚会議に、こども家庭庁は入っていないの? ちなみに10月30日午前8時時点で、こども家庭庁のホームページに、クマ被害対策に関する動きなどを知らせる広報資料は掲載されていません。
<こどもまんなか社会の意識が政府、政権に薄い?>
対策閣僚会議に呼ばれなくても、その会議からすべての省庁や地方自治体に通達、通知は届くでしょう。だから問題ないのだ、とは運営支援は考えません。単純に考えて、「学校と同じように、こどもたちが集まる、職員が大勢勤務している施設を所管する省庁が呼ばれないのは何故?」という疑問です。
よもや、未就学児が利用する保育所やこども園、小学生でも任意の事業である放課後児童クラブは、対策閣僚会議に関しておそらくいろいろと考える官邸の方々には、視野に入っていなかったのではあるまいな。そうわたくし萩原には感じられ、残念です。この国は、こどもまんなか社会を掲げているのではなかったのですか。こども家庭庁、黄川田仁志こども政策担当大臣が、「ちょっと、うちも入れてくれよ。こどもたちを守るのは私たちだ!」と官邸に申し出たのかどうかまったく分かりませんが、なんとしてでも対策閣僚会議に入り込むだけの気概を国民に見せてほしかったと残念です。
これで、保育所やこども園、児童クラブのこどもや職員、保護者にクマによる被害者が出たら、こども家庭庁はかつてないほどの世論からの猛烈な批判を浴びますよ。「ムダな省庁だ!」という意見に押しつぶされますよ。「対策閣僚会議に入っていなくても政府として一致して対応している」という、会議に入ろうが入らまいが実質的な対策の優劣は生じないと反論をしたとしても「対策閣僚会議に、こども家庭庁が入っていなかった」という分かりやすい図式の前に、効果を持ちません。
放課後児童クラブならではの独自の対応に関しても、こども家庭庁の調整や判断が必要です。例えば小学校がクマの影響で臨時に休校、あるいは繰り上げ下校となったときに、こどもたちを児童クラブでそのまま受け入れるのかどうか、その際の経費の負担はどうするのか。児童の登所に関する安全確保はスムーズに関係機関の連携のもとに実施できるのか。児童クラブの職員に、よもや、登所ルートの安全確保を単純に任せるだけで済ますことはあってはなりません。児童クラブの職員は当たり前ですが、クマの襲撃からこどもたちを守れません。こども家庭庁が閣僚会議に入らないで、こういう課題に速やかに対応、調整や決定ができますか?
わたくしの思い過ごしであるのは分かっていますが、こども政策、こどもを守っていく社会の意識が政府、政権に薄いようでは困ります。そういうところが、とりわけ制度的に基盤が確立されていない放課後児童クラブにはもっと影響を及ぼしかねないと運営支援には懸念があるのです。一事が万事、国として「こどもたちをあらゆる被害、災害から守る」という強い姿勢を示してください。その分かりやすい例とわたくしには思えたので、今回のブログで苦言を呈した次第です。
<不登校のこどもが最多との報道>
2024年度の小中学生の不登校は最多となったと報道されています。手元の毎日新聞朝刊1面の「カタ」(左上)に掲載されています。文部科学省が10月29日に公表した「問題行動・不登校調査」の結果を報じているものです。その記事によると、不登校とされた小中学生は35万3970人で前年度より7488人(2.2%)増えて過去最多を更新した、と伝えられています。増加は12年連続とのことです。
NHKはこの調査を別の切り口で報じていますので紹介します。NHK ONE(勝手な文句ですがリニューアルしてONEになってからニュース記事へのアクセスが不便になりました。改悪ですね)の10月29日午後6時9分更新の「不登校の小中学生35万人超で過去最多 急増の要因は?【Q&A】」の見出しの特集記事に、次のように書かれています。引用して紹介します。
「特に小学校低学年は、10年前に比べおよそ7倍に増えていて、専門家は「コロナ禍で幼稚園などの活動が制限され、発達や対人関係に影響した可能性がある」と指摘しています。」
「さらに小学生を学年別でみると、
▽5年生、6年生は10年前に比べておよそ4倍なのに対し
▽1年生と2年生は、およそ7倍
になっていて、低学年の児童が急増しています。」
省庁や行政が発表した資料を基にする記事を「発表モノ」と新聞業界で呼んでいましたが、同じ発表モノでも、記者やディレクターの問題意識によって、記事の内容ががらっと変わることがよく分かる例です。
まあそれはともかくまとめると、不登校の小学生児童は依然として増えていること。特に低学年は急増していること、という点が重要です。
運営支援はかねて、不登校のこどもの援助、支援に関して放課後児童クラブという社会資源を活用するべきだと訴えています。現状、放課後児童クラブは、就労等で家庭を留守にするなどこどもの監護に十分関われない世帯の小学生児童に対して健全育成事業を行う仕組みなので、不登校のこどもを受け入れることに、放課後児童健全育成事業の補助金は活用できません。残念ですが制度上、そうなっています。
こども家庭庁のFAQにも掲載されています。令和7年4月1日現在の「放課後児童健全育成事業に係るQ&A」の、8番目です。問いが「放課後児童クラブにおいて、不登校児を午前中に受け入れることを検討しているが、放課後児童健全育成事業として扱ってよいか。」で、これに対して「不登校児の受入を目的とすることは児童福祉法で定める放課後児童健全育成事業の定義を超えているため、放課後児童健全育成事業として扱うことはできない。ただし、不登校児童の居場所確保のために、平日の午前中等の放課後児童健全育成事業に差し支えのない時間帯において、事業所(クラブの施設設備)を利活用することまでは妨げておらず、児童の福祉の観点から有効活用されると考え、Q&A No.7から財産処分は不要である。」という回答が掲載されています。これは新規に掲載された事項です。市区町村から国に問い合わせがあったのでしょう。もしかしたら、運営支援ブログを読んでくださった市区町村の担当者さんが思い立ったのかもしれませんね。
さて先ほどのNHKの特集記事に、神奈川県内の40代の女性に関する取材内容が掲載されています。一部引用しますと、「小学校低学年で不登校になった子どもの受け入れ先が見つからず、保護者が仕事を休まざるを得ないケースもあります。神奈川県内に住む40代の女性は、ことし5月、突然、小学2年生の息子が学校に通いたくないと言い始めました。女性や教員がたずねても理由が分からない中、学校に相談しても受け入れ先が見つからなかったため、女性は、仕事を休み、みずから息子に勉強を教えていたということです。その後、息子はほぼ完全に学校に通うことができなくなり、10月から、当面の間、仕事を休職することにしたということです。」とあります。
<法律や制度は変えられるんだから変えればいいだけだ!>
NHKの記事が不登校による影響を分かりやすく報じているのです。こどもの不登校は親の就労に影響する、ということです。それは単に「保護者が就労できなくなる」ということではなく、「休職や退職による収入減が及ぼす生活の変化」であり、つまりは家庭での生活が苦しくなるということ。そしてこの記事での40代の女性の家庭がひとり親かどうかは分かりませんが、こどもが不登校になると、仕事を休んだり替えたり退職したりするのは夫婦の場合、たいていが女性、母親です。女性のキャリア形成に深刻な影響を及ぼしますし、女性の人生すら無理やりに変えざるをえない状態になるのです。
放課後児童健全育成事業は、こどもを安全安心な場所にて、あそびと生活を通じて健全な育成を図る事業ですね。その結果の果実は、こどもの健やかな成長と、保護者の社会経済活動の保障です。であれば、不登校の小学生児童については、放課後児童クラブの守備範囲を広げるだけで、こどもの援助、支援と、保護者の社会経済活動を支えることができるのです。国が、法律を変えてやろうとしないだけです。
もちろん現実的には大きな壁があります。午前中から不登校のこどもを受け入れるのに対応できるだけの余力、資源が放課後児童クラブ側には備わっていません。不登校のこどもの援助、支援に関する専門的な知識を放課後児童支援員と補助員は体系的に学んでいません。個別の支援は今も行われているでしょうが、業務の1つとして受け入れるだけの準備が整っていません。
ですが、そんなものは、制度として確立されれば必然的に備わっていくものです。つまり不登校のこどもを受け入れる社会資源としての活用が決まれば、そこに補助金が付くでしょう。そうすれば児童クラブ側も新たに人員を、専門的な知識を得た人材を確保できますし、現時点で児童クラブにて従事している職員に不登校のこどもの援助、支援について学ぶ研修と教育の機会を確保もできましょう。学校側との連携についても制度が整うでしょう。
NHKの記事では、保育所などで集団で過ごす機会を新型コロナウイルス流行のために十分に得られなかった世代のこどもたちに不登校が急増とあります。ということは、その子たちが高学年になっていく今後数年間は同様の傾向になる可能性が高いのではないでしょうか。小学生の健全育成は放課後児童クラブの守備範囲ですよ。不登校の小学生のこどもたちの援助、支援とそして保護者の就労等の支援による生活の質の低下をできる限り防ぐために、すでにある社会インフラたる児童クラブの活用こそ、不登校で一番つらい思いをしているこどもたちを支えることができる有力な1つの方策になりえるのです。児童クラブですべての不登校のこどもを支えることはもちろんできませんが、少しでも不登校の有力な対策となりえる可能性が高いのは間違いないので、ぜひとも国、そして地方自治体含めて、真剣になっていただきたい。「制度上、無理だから」ではなくて「どうしたら児童クラブに対して、不登校のこどもとその家庭を支える機能を持たせることができるようになるか」、前向きな姿勢で「できることを探っていく」方向性を持つことを、運営支援は政府と地方自治体に求めたい。
不登校のこどもを支えることは、もちろん「こどものため」です。ですがさらにいえば、日本の少子化は止まりませんよ。労働力の不足はなお深刻になりますよ。すこしでもキャリア、能力のある人員をやむなく離職させるような事態は避けるべきですよね。分かりますよね? 不登校の家庭って案外、保護者が高スキルや専門職である場合も多いんですよ。高収入の世帯です。分かりますよね? 「うちの自治体は不登校のこどもと保護者を積極的に支えます。国の制度はどうあれ、独自の施策で、児童クラブや児童館で不登校のこどもの登所、来館を受け入れます。学校と連携してこどもをサポートします。保護者さんとも緊密に連携しますので、保護者さんはできる限り就労を続けていて大丈夫ですよ」となれば、自治体として存在価値をさらに高められると思いませんか?
不登校のこどもたちを助けるためにまずは地方議会でも国会でも、議員、政治家が声を上げて法改正と制度の見直しを訴えてほしいのですね。児童クラブ側も意識改革が必要です。「そんな面倒な仕事を増やしたくない」と思っているなら、そんな思いの輩は児童クラブの世界から退場していただきたい。「今はとても手が回らないが、費用や人員の確保にめどがつくなら、不登校のこどもを支えたい」という考えになっていただきたい。こどもを支える使命感を再認識していただきたい。運営支援はこの件、機会あるごとに何度でも繰り返して訴え続けます。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)


