AI(人工知能)が放課後児童クラブ(学童保育所)を進化発展させる。AIを活用した児童クラブの時代が来る。
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「運営支援」を行っている「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台に、新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く、成長ストーリーであり人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
AIの時代になりましたが恥ずかしながらわたくし萩原はAIやICやITにめっぽう弱いので、AIの仕組みがほとんどわからないのですが、いろいろな分野で活用されて社会の進歩発展に貢献していることは理解しています。ただ、人が人を支援、援助する仕組みの放課後児童クラブではAI活用といっても限定的だろうかなと思っていたところ、「いやいや、AIこそ学童保育を進化させますよ」という考え方を聞いて、目から鱗が落ちた次第です。今回の運営支援ブログはAIが切り開く児童クラブについて、AIを活用した児童クラブ業務を提唱している行政書士の佐久間彩子氏にお伺いした話を紹介いたします。わたくしの能力の限界からごく表面的なことしか記載できないので、学童とAIについて興味関心のある方は、イオリツ行政書士事務所(https://office-iolite.com/)(神奈川県横浜市中区蓬莱町2丁目6−3 Koyo関内ビル406)の佐久間彩子氏にぜひとも連絡してくださいませ。
(※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
<育成支援とAI>
放課後児童クラブは「放課後児童健全育成事業」が行われる場所で、その事業の中核こそ「育成支援」です。育成支援とは「放課後児童クラブにおけるこどもの健全な育成と遊び及び生活の支援」であって、児童クラブにおいては、こどもの成長を支える業務です。この育成支援の分野に、AIが活用できると佐久間氏は説きます。
放課後児童クラブ運営指針解説書に、育成支援についてこう記載があります。「放課後児童クラブにおける育成支援を行うに当たっては、こども一人ひとりの発達の状況が異なることを踏まえた関わりを考え、遊びや生活の中でそれぞれのこどもの感情や意思を尊重することが求められます。そのためには、こども一人ひとりが放課後児童クラブでの過ごし方について共通の理解を持ち、見通しを持って過ごせるように工夫することが望まれます。」(16ページ)
児童クラブの職員は、こどもひとりひとりの状況を把握し、児童クラブで過ごす時間帯において起こりうる様々な場面を想定して、こどもの状況に適合した関わり合いを持つ、つまり「援助」することが重要な任務です。それは、こども自身が自分の考え方や判断において、自分が児童クラブでどう過ごすことが自分にとって最適なのか、常に最善の選択ができるようになる環境を、児童クラブ職員が整えるということだと、わたくしは考えています。
そこに、AIの活用ができると佐久間氏は考えているのです。私も説明を聞いて素晴らしい考え方だと感じました。では具体的にどういう活用なのか。一例を紹介します。
児童クラブでは当然、こども個人またはこどもの集団(当然、様々な属性の集団となる)の現状を把握したうえで、「どのような援助、関わりが必要かを考える」ことが大切です。例えば、自分の意見を押し通しがちで周囲から距離を徐々に広げられている小学3年生の男児Aさんがいるクラブのとします。支援員はAさんが我を押し通そうとした場面においてどのような働きかけ、声掛けを行っていくのかを考え、互いに意見を出し合ってクラブの職員集団としての方向性を決めていきます。これをわたくしは「育成支援討議」と呼んでいます(拙著「がくどう、 序」にも育成支援討議のシーンがたびたび描かれています)。この育成支援討議で、「Aさんが自分の意見を曲げない局面になったら、職員はこのように関わっていこう」というアイデアを職員が出し合う中で、AIが活用できます。討議に参加する職員は各々の育成支援に関する理解や経験値によって「このような方針で関わってみたらどうだろうか」「こういう言葉を使ってAさんに伝えてみてはどうだろうか」という意見やプランを出し合い、それを討議参加者で協議検討して、クラブとしての関わり合い方を決めていくのですが、その意見の1つとしてAIが示す意見を活用できる、ということです。
わたくしは、育成支援の方針を考えて相談しあう場面においてAIが示す意見は、とても有益であると理解しました。というのは、育成支援討議で参加職員が示す意見やプランは、もちろん個々の職員の育成支援に対する価値観に基づいた内容になりますが同時に同じクラブで同じ討議に参加している職員との関係性(上司や先輩、後輩という位置関係や、好き嫌いという感情)によって影響されることは避けられません。本音はそう思っていなくても、つい、育成支援のキャリアが長い職員の意見に常に従ってしまったり同意してしまったりすることがままあるようです。もちろんAIは(意図的に学ばせればそうなるでしょうが)それまでに学んだことから方針やプランを提示するにあたってそのような外部の影響力を極力排除した内容を提示できます。
さらに重要なのは、複数のクラブを運営している事業者において、さまざまな場面におけるこどもとの関わり合い方についての方針や意見やプランをAIに学ばせておけば、1つのクラブだけで適用しがちな方針や意見やプランだけでなく、複数のクラブで同様の局面において論じられたことを踏まえたデータをもって、AIが方針や意見やプランを示すことができることです。1つのクラブだけでは思いつくことができない、広い視野や考え方に基づいて、こどもとの関わり合いに関する方針や意見やプランをAIが出せるということです。1つのクラブ内で行われる育成支援討議に参加する職員だけでは思いつかなかった考え方や方向性を、AIが示すことで、育成支援討議に広がりも深みも、与えられるということです。
先の例では、Aさんの行動に対してそのクラブで行ってきた関わり合い方、言葉の掛け方ではなかなか事態が改善しなかったことでも、他のクラブ(つまり他のクラブの職員たちが実践してきたこと)での育成支援への考え方を学んだAIにも意見を出させる(意見を「吐かせる」という表現が似合うのでしょうか)ことで、職員にとって「新たな気づき」をもたらすことができる、ということです。そして今までなら思い至らなかった「見立て」を持つことができ、「新たな手立てを知る」ことができる、ということです。
AIが育成支援の質を上げることに寄与することになります。わたくしはもうこれだけで、児童クラブはAIを育成支援に活用できる最も重要な理由であると確信します。そしてAIが学ぶことができる事例が増えれば増えるほど、AIが示す方針や意見やプランはさらに精度を磨いていくことでしょう。
もちろんわたくは育成支援の方針を全部、AIに出させるべきだとは絶対に言いません。最終的にはこどもと直接に関わっているその場の職員たちが決めることになりますが、その決めるための有力な1つの方針等をAIが出す、それをまた活用して職員たちが討議できる、ということです。
<周辺業務、手続き業務はまさにAI>
児童クラブの仕事はパターンが決まった業務や手続き的な単純業務も多いものです。この点においてAIを活用することは、職員の業務における効率を上げます。生産性が向上するのです。全体の業務に欠ける時間を10としたら、3が周辺業務、7が育成支援業務としたとき、AIの活用で周辺業務に必要な時間を2にすることができれば8の時間を育成支援に使えるということです。また7の育成支援業務ですでに質が十分に確保されているならば、減った1を職員の休憩や休日捻出に充てることもできます。
佐久間氏がわたくしに例示したのは「おたより作成」におけるAIの活用です。おたよりは大きく分けて「伝えねばならない情報、インフォメーション的な部分」と、「こどもの育ちの様子を保護者に知ってもらうための部分」の2つに分けられます。このうち、前者のインフォメーション的な部分を伝える記事はそれこそAIに「吐き出させる」ことができるでしょう。それだけでも、おたより作成にかかる手間ひまを効率化できます。
おたよりは、分かりやすいものでなければ、保護者が確実に目を通すものにはなりません。なにせ忙しいですから保護者は、ちょっと見て「これは時間を食いそうだ。分かりにくそうだ」というものであれば後回しにされ、そのまま目を通されずになってしまうこともあります。それをAI活用で変えられます。「分かりやすい文章、分かりやすいレイアウト」をAIに考えさせれば良いのです。
また、育成支援の様子を保護者に伝えるとしても、こどもがこういうことをしています、こういうことがありましたということを、上手に文章で伝えることは難しいものです。それをAIを使って分かりやすい文章に整える。もっといえば、「この子に関するこの部分を、しっかりと保護者に伝えるにはどのような文章やどのような記事構成にすればいいか」もまたAIに手伝ってもらうことができるでしょう。この運営支援ブログのように、ただダラダラと筆者の主張を伝えるだけの「おたより」ではなくて、読み手(=忙しい保護者)にとって興味関心をひきつける文章を、AIを活用して作成することができるでしょう。レイアウトだって同じでしょう。
他にもAIが活用できそうな周辺業務や手続き業務は数多くありそうですね。
<市区町村の児童クラブ担当課でも>
AIが活用できそうな場面は行政にもありそうです。その最たるものが児童クラブの入所申請でしょう。入所申請にあたっては多くの自治体で「審査基準」を設けています。とりわけ待機児童が出そう、あるいは出ている自治体においては、保護者の状況に点数を付けてその点数を基に入所の可否を判定しています。大前提として待機児童を生じることが問題であって審査基準で判定しなくても児童クラブを必要とする世帯は児童クラブを利用できるようにすることこそ最も重要であるのですが、現状において何らかの審査が必要な局面であれば、AIの活用が可能です。
保護者のいろいろな状況に付けられた配点や入所申請書類に記載された状況をもとに、審査においてAIを活用するということです。このことは担当職員の業務における負担、とりわけ心理的な負担を軽減することに寄与するでしょう。単純に基準点に及ばなければ入所ができないということを確認するだけでも、人の子である自治体職員には負担です。それがAI活用で負担を減らせるという可能性が大いにあります。審査判定そのものを民間事業者に委ねていることもあるでしょうが、同じことで、その事業者の担当者の負担を減らすことができるのです。
<AIに任せるのではなく、活用です>
AIは全く何もないところから新たな発想やアイデアを示すものではないとわたくしは理解しています。いろいろなデータを検討して1つの新たな発想やアイデアを生み出すものと理解しています。
そうであれば、児童クラブにおいてはうってつけであるのではないでしょうか。児童クラブのとりわけ育成支援においては過去の経験則、経験値が参考になります。こどもはもちろん誰1人として同じ人間はいませんが、1人のこどもより、10人のこども、100人のこどもと関わった児童クラブ職員の、「こういう場合はこういう対応をしたら、こうなった」という過去の記録は、それが増えれば増えるほど、「では次に起きた場合はこうしてみよう」という方針を、AIが示しやすくなるのではないでしょうか。別に1つの方針だけをAIに求めるのではなくて複数の方針を、なるべく具体的な条件において適合するように吐き出させればいいのです。
そのためにも、AIに「どれだけ多くの過去の事例を食わせるか」が重要になるとわたくしは考えました。この点においても、少数のクラブを運営する小さな事業者より、多数のクラブを運営する大きな事業者を目指すことの方がAI時代の児童クラブ事業者のあり方としては、望ましいかもしれませんね。となると、何百、1000以上の支援の単位を擁する広域展開事業者は、AI活用次第では、幅広く奥行きのある育成支援の「手立て」を提供できる可能性を秘めているといえなくもないでしょう。
AI活用は時代の流れとして児童クラブでもいずれ広まるでしょうが、仮に、なかなか浸透しないとしたら原因は、わたくし萩原のようなAIになかなかついていけない職員が、児童クラブで幅を利かせている、児童クラブ運営方針において決定権を握っているというような状況でしょう。それはAIの活用するしない以前の問題で深刻であり除去しなければならない状況ですが、ICT化の波も「そんなことより、登所してきたこどもの顔を直接見て会話をしたほうがいいのよ!」と吠えるベテラン職員によって児童クラブのICT化がなかなか進まないという現実もありました。ここはだいぶ改善されているようですが、それでも時折弊会に「ICで入退室管理をしたくてもベテランが拒否して話が進まない」という嘆きの声が寄せられています。
ましてAIともなると、「そんなの信用できるか! こどもと関わってこその学童です!」と拒否反応が強まるのだろうと想像します。ただただ昔からの「手慣れた」業務のやり方にこだわっているようではダメです。幸いにそのようなわたくしのような化石化した頭の固い職員がいない児童クラブでは、ぜひともAI活用を行ってほしいですね。そしてその実践結果をどんどん世間に広めてほしいです。わたくしにお寄せいただければ、どんどんこの運営支援ブログで公開いたします。幸いにもこの運営支援ブログ、それなりに多くの児童クラブ関係者(特に自治体の児童クラブ担当者)に読まれているようですので、現状を広めるにはうってつけですよ。
忘れてはならないのは、AIはあくまでも「児童クラブ職員が活用すること」です。児童クラブ職員に取って代わることではありません。ましてこどもとの関わり合いの方針全てをAIが決める、判断する、指し示すというものでは絶対にありません。こどもの育ちを支える専門職である児童クラブ職員が、その専門性発揮する一助としてAIを活用すると、より全体の業務の効率が向上する、という話しです。もちろん、専門性が直接に寄与しない周辺業務や手続き業務に関してはAIに任せる範囲は広がるのは当然です。
国もICT補助金のように、いずれAI活用に関して補助金を作るかもしれませんね。もしも突然、AI活用補助金が創設されたら、すぐにでも「うちは取り組んでいます!」と補助金対象として適切であると名乗り出ることができるように、AI担当者を決めて準備を始めることを、運営支援はお勧めします。
児童クラブのAI活用については、現役の児童クラブ保護者で運営にも関わっている行政書士の佐久間彩子氏にぜひともご相談ください。「イオリツ行政書士事務所」で検索してくださいね。(なお言わずもがな、あらゆる事業体においてAIの活用は可能ということで、佐久間氏は児童クラブに限らずどの業界でも事業経営におけるAI導入を支援していますので、児童クラブ以外の事業者さまも興味関心がございましたらぜひともイオリツ行政書士事務所までご相談ください)
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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