<運営支援ブログミニ・22>放課後児童クラブ(学童保育所)の人手不足対策として基礎資格の拡充ですって? 喝!
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
本日(2025年11月27日)は、わたくし萩原の所用のため、運営支援ブログはミニ版です。本当にミニ版です。また、あす28日と、あさって29日の運営支援ブログは休載(投稿なし)いたします。ご承知おきください。
(※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
<職員の質の確保で?>
こども家庭庁は、「こども家庭審議会こどもの居場所部会」で、「児童厚生施設及び放課後児童クラブに関する専門委員会」を設置して、児童クラブのことをいろいろ話し合っています。本日11月27日は、その第5回の会議が開かれるとなっています。
こども家庭庁はホームページで会議の資料を公開しています。とても良いですね。第5回の会議の資料を見ていたら、「放課後児童クラブの「事業の質と職員の確保」への対応について」という資料をHPに掲載していました。児童クラブはずっとずっと昔から人手不足。職員の確保にどんな有効な方策を検討しているのだろうと期待をもって資料を見ました。
するとですね、事業の質と職員の確保、ということが「放課後児童支援員認定資格の基準のあり方について」という項目で検討されるようでして、そこには「人手不足が深刻である中、放課後児童支援員の量及び質を確保するため、基礎資格について「大学・大学院卒業者において、一定の従事経験をもつ者」を追加したいと考えるが、適当な条件にはどのようなものが考えられるか。」とあります。
さらに「基礎資格要件と類似であり、かつ、同等以上の資格を新たに基礎資格に追加することとしてはどうか。」と続いていて、「公認心理師や臨床心理士を加える等」と提案されています。
えっ?えっえっ? 本気で提案するのですか? 「エッホエッホ、放課後児童支援員の基礎資格に公認心理師や臨床心理士も含まれそうだって心理職界隈に伝えなきゃ、エッホエッホ」ってことですか。
放課後児童支援員の資格を得るより、はるかに難度が高い公認心理師や臨床心理士さんが、業務上の必要性があれば放課後児童支援員資格を取得することはあるかもしれません(制度をよく知る等)が、「放課後児童クラブで働くために、その資格を利用する、あるいは取得する」ことは、わたくしにはまったく考えられません。
こども家庭庁とこの専門委員会のメンバーさんは、本気で、「公認心理師や臨床心理士を基礎資格に加えれば、少しであっても放課後児童クラブの人手不足の解消に寄与するでしょう」と考えているのでしょうか。だとしたら、はっきり言います、そんな専門委員会を開くコストが無駄。その分を児童クラブの運営費の予算に上乗せしてください。それ、「会議をやっている感、意見を出しているポーズ」を示しているだけでしょう。
児童クラブの人手が足りないことで、これまでも制度が改悪されてきました。その最たるものが、いわゆる省令基準における「参酌化」ですね。2020年から放課後児童支援員の児童クラブへの配置は義務ではなくなりました。最も、きわめて多くの市区町村が条例で有資格者の配置を義務としているので、現場に近いところでは有資格者の配置義務が大事だと実感しているのでしょう。
児童クラブで働いてくれる人が足りないから、配置の義務をやめたり、放課後児童支援員になれる可能性を広げたりというのは、本質的な解決策ではありません。そんなん、誰だってわかっています。国だってわかっているはずです。当たり前です。児童クラブにおける労働力の不足、労働力の需給バランスの問題は、「働きたいと思う人が増えない」からです。「児童クラブで働いてみたものの、割に合わない」と多くの人が思うからです。断言しますよ。わたくし自身、法人で雇った人が、「暮らせません」と言って辞めていった多くのケースに直面してきましたから。
児童クラブの人手不足を解消し、さらには有能な職員を増やす人材不足の解消につなげるには、「児童クラブで使える人件費を増やす」ことだけです。つまり、カネです。カネの話をすると下世話と言われますが、わたくしは何度でも言います。「児童クラブは、職員に渡すカネが少ないからずっと人手不足なんだ。カネをよこしなさい」と。
児童クラブで使える人件費を増やすのは、補助金額を増やすことです。今の額の2倍にしてごらんなさい。眼に見えて人手不足は緩和され、3倍になると、人手不足はほぼ解消するでしょう。人件費を増やすと、職員1人1人の賃金、報酬が増えますし、増えた人件費で人を多く雇うことができ、職員1人あたりの業務負担が軽減されます。児童クラブのこども10人未満で職員1人の配置を義務とすれば、いまよりぐっと職員の仕事が楽になりますよ。そして大規模は解消して適正規模を「おおむね30人」とすれば、より丁寧な育成支援が実施できて、こどもも、こどもの集団も落ち着きがちになって、職員もじっくりとこどもと関われますよ。
臨床心理士などを基礎資格に加えても、何の意味もありません。そういう人が年収200万円程度の児童クラブの仕事に応募するわけがありません。
児童クラブの人手不足を解消するには「カネ」をもっと出すこと。それだけです。分かり切ったことですが「カネ」が出せないからなんとか小手先の工夫をしようとしているのでしょう。それがダメなんです。出せないのではなくて出すように努力するんです。中央省庁なんですから頑張りなさい。
忘れずに付け加えますが、補助金の単価額を大幅に増加するだけではなくて、「職員に届くように」する仕組みも同時に整えねばなりません。つまり補助金ビジネスの広域展開事業者をさらに潤わせてはならないということです。十分な質を確保した児童クラブ事業を行ったうえでさらに剰余金が出たならそれは利益として収めていいですよ、ということです。
なお、資料にはもう1点、「(5)基礎資格取得見込み者(大学4年生等)の扱いについて」として、「 現在、在学最終年度の学生を対象としているが、これを拡げることについてどのように考えるか」とあります。なんのことでしょう。思いつきません。大学や短大、専門学校の在学中に放課後児童支援員資格を取得できるようにすればいいでしょう。
もっとも本来は、放課後児童支援員の資格の高難度化が必要です。運営支援はかねて「児童育成支援士」という新たな国家資格を創設すること、児童育成支援士は高度な専門知識を求める難易度の高い資格であることを求めています。現状の、放課後児童支援員は試験制度無しでもいいので5年程度の間隔で再取得を義務付けることです。くれぐれも「学童保育士」なんていう、育成支援を無視する名称の資格に国は興味を示さないようにしてほしいですね。資格が難しくなる=専門性が高まるということになればおのずと報酬額は上がっていくものです。
資格を難しくするには制度を変えることと合わせて業界の実態もまた変わることが欠かせません。専門性を業界として理解できているかどうかが問われるということです。こどもをいつも怒鳴ったり、その日の気分で優しくしたり怒ったりといい加減に仕事をしている児童クラブの職員ではダメだよ、っていうことです。
なんか、がっかりしますね。児童クラブの雇用労働環境が厳しいのは、児童クラブのあらゆる環境がなかなか充実しないのは、児童クラブに投じられるカネが足りないからという当たり前の解消に誰も挑まないことが、残念です。国は児童クラブを当たり前にカネを出せる制度に変えて、社会インフラたる児童クラブの充実を目指してください。委員会や審議会に参加する方々も、「もっとカネを出そうよ」という当たり前のことを訴えてください。期待します。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)
