間もなく終わる夏休み。放課後児童クラブは、夏休み明けに学校に行けなくなった子どもが過ごせる場になればいいな

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。地域によって差はありますが、間もなく夏休みが終わります。夏休み明けは、学校に行けない子どもが多くなるといいます。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の役割として、そうした子どもたちが過ごせる場としての機能を持つようになればいいなと私は期待します。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<休み明けの不登校、無理に行かせないで>
 夏休みが終わって次の学期が始まるときに、不登校状態になる子どもが多いと言われています。私が勝手に言っているのではなくて、インターネットで検索すればいくらでもその理由や背景を説明している記事や特集サイトを見つけられます。不登校状態になった子どもを無理やり登校させる愚は先日も東京都板橋区の事例で取り沙汰されましたね。いろいろな理由に基づく心理的な不安が過度になり、行動となって現れるのが不登校状態であるとしたら、子どもが苦しんでいる心理的な不安を、ゆっくりと丁寧に除去したり安心感で補ったりすることが必要ですね。

 不登校状態の子どもが、どの場所でなら安全地帯として過ごせるのかは、100人の子どもがいたら100通りの希望があるでしょう。学校の教室は無理だけど保健室なら大丈夫、という子どもがいれば、自分の部屋でなければ不安で押しつぶされそうという子どもだっているでしょう。その中でも、「いつも自分の事を気にかけて話しかけてくれる、学童の先生が、そばにいてくれるとうれしい」という子どもが、いるかもしれません。いや、きっといるでしょう。

 そういう子ども達が、自分の安全地帯として仮に放課後児童クラブを望むなら、私は子育て支援の仕組みとして、児童クラブは積極的に対応していくべきだということをかねて繰り返し訴えています。

<国は前向きに対応するべきです>
 もちろん、現状では、例えば午前中から不登校状態の子どもを受け入れるための準備や態勢が児童クラブに整っているわけではありません。そういう事態に対応することが想定されていないので当然です。しかし、現実にはおそらく間違いなく、児童クラブであれば行ける、行きたいという不登校状態の子どもがいる。その子たちに安心できる居場所を提供し、それによって保護者の不安を軽減し、児童クラブが保護者、小学校と連携を取りつつ、不登校状態の子どもと、その保護者の生活を支援、援助していくことは、社会的にきわめて意義のある活動だと私は確信しています。

 児童クラブの側にしても、放課後児童健全育成事業だけでなく、不登校状態の子どもの支援、援助が法的に定められた正式な任務、業務とすることが、充分恩恵のあることと理解するべきです。不登校状態への子どもへの支援が、さらなる子育て支援の仕組みとして児童クラブの任務に付与されることで社会における存立基盤がさらに拡大するわけです。より社会から必要とされる度合いが高まる、ということになるでしょうか。

 私は、児童クラブの意義は、児童クラブに入所している子どもと保護者への支援、援助だけに限定されないと考えています。児童クラブに入所していない子どもと保護者に直接的な支援、援助は当然できませんし契約上もその義務はありませんが、児童クラブに属していない子どもたち、子育て世帯を含めて、地域全体の子ども、子育て世帯への関りを常に念頭に置いておくべきだと考えています。支援、援助はむしろ児童クラブの側からも積極的に外部に投げかけていく方向に将来的には向かっていくべきだと考えています。いまはそのような任務はまったく考えられていないので態勢もできていませんが、「地域における子育て支援の拠点」において、その数の多さと、子どもの育ちを支える専門職として位置づけられている(その専門性の充実度には議論があるのは承知の上で)有資格者が存在するという利点を生かして、地域に密着した子育て支援の拠点として機能するべきだと、私は考えています。

 不登校状態の子どもの支援、援助もその一環です。むしろ当然、支援するべきです。児童クラブに入所していない子どもであったとしても、その子が、その子の望む過ごし方で元気になり、その子なりの生き方を確立するまで、支援、援助ができる法的な根拠を国は早急に付与するべきでしょう。これは、児童福祉法に定められた放課後児童健全育成事業という事業の根本的な考え方から再検討を迫ることにもなるでしょう。いまは、就労等による留守家庭児童の子どもを対象としている仕組みですが、これに不登校状態など何らかの問題に直面した子どもたちへの支援をも事業に加えるということです。国が議論して決めていくべき問題です。

<児童クラブの側も積極的に>
 今は人手不足、待機児童も出ていて施設に余裕がない。不登校の子どもと対応する職員に人件費の補助がない。子ども達が下校してきたときにどうする?いろいろな疑問、問題があるでしょう。「だから無理」とか、「意義は分かるけれど、国が決めてからの話」ではないのです。児童クラブの側は、不登校状態の子どもの支援に意義を感じていないのでしょうか。子どもを支えるということでは児童クラブの入っている、いないで差がついているのはあまり意味がありません。

 子どもの育ちと、子育ての保護者を支えるということを事業の軸であるという理解があれば、不登校状態の子どもの支援にも意義があり、そこに児童クラブが乗り出すことの意義もまた、児童クラブの方々にはきっと理解されるであろうと期待しています。今はできない、無理だというのはその通りですが、制度を整えつつ、「できるところから」始められるところはぜひ始めてほしいと考えます。午前中から受け入れて学校に登校した子どもがクラブに登所してくるまで受け入れるとか、小学校や行政と仮に受け入れるとしたらどのような情報共有体制が必要か、ということの検討から始めるとか、いろいろ、手を付けられることがあるでしょう。

 私がもっとも嫌なのは、「児童クラブの任務は、クラブにいる子どもたちへの支援です」と、凝り固まった固定観念のままその他の考え方を排除する姿勢です。そのような姿勢では、限られた社会資源への支援の原資を割り当てるにはふさわしくない、費用対効果に劣る存在だと社会全体に見なされる可能性がありますよ。「だったら民間企業にどんどん任せよう」と、それこそ、高額な費用を企業に支払って不登校状態の子どもの受け入れとその解決を民間の商業ベースで解決、対応させようとすることが不登校状態の子どもと家庭の支援として、国が標準的な制度として設定していく(それを「市場化」と呼びます)ことになりかねません。すでに放課後児童クラブそのものは、そうなっていますよね。どんどん営利企業が「儲かるから」といって参入していますよね。不登校状態の子どもと保護者の支援もまた同じ道をたどる可能性が大いにあります。

 まず、出来ることからやってみてはいかがですか。例えば、児童クラブに在籍している子どもや保護者を対象にするだけでも、アンケート調査を行ってみる。「学校に行きたくないとき児童クラブなら行けるということが考えられる?」とか、「夏休みや春休みが終わった時、子どもが学校に行くのを嫌がるようなことがありましたか?」「子どもが学校に行けない状況になったとき児童クラブで受け入れることができるようになることに対してどう思いますか?」など、意識調査から始めてみる。クラブ単独でも、連絡協議会単位でもいいでしょう。また、職員同士で不登校状態の子どもにどのような支援、援助、かかわりを持つことができるか、その際の克服が必要な課題、問題は何か、どのような効果が期待できるか、広くなんでも話し合ってみる機会を持ってみてはいかがでしょうか。その小さな動きがやがて社会に大きく広がっていくことになるかもしれませんから。

 <おわりに:PR>
 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。1,900円(税込みでは2,000円程度)です。注文は出版社「寿郎社」さんへ直接メールで、または書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。お近くに書店がない方は、ネット書店が便利です。寿郎社さんへメールで注文の方は「萩原から勧められた」とメールにぜひご記載ください。出版社さんが驚くぐらいの注文があればと、かすかに期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。
(関東の方は萩原から直接お渡しでも大丈夫です。なにせ手元に300冊届くので!書店購入より1冊100円、お得に購入できます!私の運営支援の活動資金にもなります!大口注文、大歓迎です。どうかぜひ、ご検討ください!また、事業運営資金に困っている非営利の児童クラブ運営事業者さんはぜひご相談ください。運営支援として、この書籍を活用したご提案ができます。)

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

 (このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)