石破茂氏が首相就任へ。放課後児童クラブや子育て支援への理解は未知数。真に有効な「子育て支援」への「支援」を!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。自由民主党総裁選は有力候補だった石破茂氏が決選投票を勝ち抜いて総裁に就任しました。10月1日の臨時国会で内閣総理大臣に石破氏が選出されることになります。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)について新内閣にはぜひとも真に有効な支援を講じてほしいと願うものです。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<放課後児童クラブに言及するかどうか>
 報道を総合すると、石破総裁は10月1日の臨時国会で首相に選ばれた後、早いうちに衆議院を解散するようですね。産経新聞は11月10日が投開票になると観測記事を配信しています。また同紙によると、就任以降の想定される政治日程では次のようになっています。
10月4日     所信表明演説
10月7~9日   各党代表質問
10月15叉29日 衆院選公示
10月27日か11月10日 衆院選投開票

 この中で新首相の政治姿勢を確認できる機会は10月4日の所信表明演説ですが、まずここで「放課後児童クラブ」「学童保育」という単語が登場するかどうかをチェックしましょう。詳しい内容やああしたい、こうしたいという具体的内容まで触れることは内容のボリュームからしてまずありえないですが、石破氏が大事にしていきたい分野の例示として、児童クラブ関連が登場するかどうかは、気にしておくべきでしょう。

 その次は衆院選になるでしょうから、石破氏を含めて、すべての候補者が、児童クラブや放課後児童の福祉施策についてどのような公約、マニフェストを掲げるかを、有権者は確認しておくことが必要です。

 よほどのことが無い限り衆院選後も石破内閣は続きますから、その次は新年を迎えての年頭所感や記者会見での発言です。例えば岸田首相は令和5(2023)年1月4日の年頭記者会見で「学童保育や病児保育を含め、幼児教育や保育サービスの量・質両面からの強化を進めるとともに、伴走型支援、産後ケア、一時預かりなど、全ての子育て家庭を対象としたサービスの拡充を進めます。」と、学童保育の単語を用いて子育て支援の強化を掲げました。ここで使われたのが「異次元の少子化対策」という語句だったのですね。さて実態に具体的な効果を上げてきたのかどうかは評価が分かれるところですが、国の行政のトップである内閣総理大臣が、学童保育という文言を発言したことは大事なことです。
 石破氏は防衛、防災、農政の分野でのエキスパートとして知られていますが、子育て支援について私は印象的な石破氏の発言や見解を聞いたことがありません。聞き漏らしているだけかもしれませんが、子育て支援について精力的に意見を発信してきた印象は、もっていません。ぜひ新首相に就いてからは、子育て支援、なかんづく放課後児童クラブに関して見解や印象を発してもらいたいものです。

<あえて保守に物申す>
 放課後児童クラブに限らず子育て分野については、ほぼ国政では与野党対立や政党間の争いはありません。あの、こども性暴力防止法案、いわゆる日本版DBS法案についても、国民の基本的人権をかなり制限する画期的、いや急進的な内容だったにも関わらず全会一致で可決、成立しました。かつてなら「基本的人権を制限するとは問題だ」として反対する野党があっても不思議ではないと私は思うのですが。このことは、「こどもの最善の利益を守る」という、あえていえば「誰しもが表立って反対できない分野」だからだったかもしれませんが、正当のイデオロギーや党利党略とは関係なく子育て支援について拡充、充実しなければならないという理解が与野党問わず政治家の共通認識として育っているのかもしれませんね。それは喜ばしいことです。

 ところが地方自治に目を転じると様相が異なります。いまだに、はなはだ残念な状況がまだ残っています。歴史的に放課後児童クラブを推進、応援してきたのは共産党や無党派の議員が多かったのですが、今なおその状態が続いていると現況を見誤って、児童クラブや学童に関することに予算を増やす、補助金を新たに導入することに慎重、反対の立場にいる議員が残っています。およそ年長の保守系議員に多いですね。「保守」といっても、その保守は国政における保守というものよりも「土着の利益、利権構造を維持したい」観点での「土着保守」です。しかもそうした土着保守の議員は、家族観についてもこれまた化石と化したような「子どもは母親が育てる。母親は家にいて家庭を守り、妻として夫の仕事を支える」という呆れた内容を大事にしていることが多い。
 政治家としておよそ適性があるとは言えない種類の政治屋ですが、私が直面した例で、こんなことがありました。
 放課後児童支援員の配置が参酌化(さんしゃくか。つまり「参考にしなさい。義務とはしません」という意味)されたときのこと。国の省令では参酌化となったものの市区町村が設けている条例で引き続き配置を義務のままですることができます。私は運営団体の長として行政担当課と水面下で協議し、行政は条例を変えることはない、という内容を確認していました。ところが議会で某会派が、参酌化に反対する請願を提出したのです。その内容はもちろん児童クラブにとって好ましいものなのですが、行政執行部が条例を変える意向がないのですからわざわざ請願を出す必要性はないのです。ですがその会派は、実際に事業を行っている事業者に何の相談も打診もなく、行政にも事前に説明なく突然、請願を出したのですね。すると地方議会によくあることですが、「あの会派の出すこと、提案には、すべて反対」という行動原理が作動し、多数会派によってその請願は不採択となりました。
 それはつまり、参酌化とすることを意味します。もう、呆れてモノが言えませんでした。その後、行政執行部は参酌化以外において必要な改正部分を盛り込んだ条例改正案を提案しましたがもちろん参酌化については変えていません。なら多数会派はその条例改正案に反対したのでしょうか?いいえ、反対しませんでした。
 つまり、対抗する会派のやることなすことには理由はどうあれ反対。そういう低次元の行動がいまだに地方議会では見られるのですね。子育て支援だからといって、すべての議員が賛成してくれるわけではない。その理由は、内容を判断してというよりも、そもそもの属性、例えば「それを提案したのが対立会派、対立議員だから」とか、「そもそも学童は共産党の支持基盤だから」という根も葉もない誤解に基づくものです。

 あえて地方の保守系の議員や候補者に私は言いたい。あなたたち、少なくとも保守を標ぼうするなら、子育てを支えることこそ、保守の基本的な姿勢であるはずだ、と。あなたたちは従来からの家族観、国家観を守ることを掲げている、それは保守だからだ。子は家族のもとで、家庭で育つ。しかし保護者が働いている時は留守家庭になってしまうので、第二の家庭として生まれたのが学童保育であり、それを「家庭の代わり」として国が制度化したのが「放課後児童クラブ」であるのですよ。保守系のあなたたちが大事にしたい家族、家庭は、放課後児童クラブ、学童保育にこそ存在するのです。家族を大事に、家庭を大事にしたいのであれば、児童クラブの充実はもっとも理に適うことですよ。まして、児童クラブがあってそこで安全安心に過ごすことで、その子は地域に絶大な信頼感を安心感を育む。それは地域を愛する観念を育てます。それこそ、本来の保守ではありませんか?
 かつて一定の政治勢力が学童保育を支えたのは、裏返せば、土着の保守どもが、児童クラブ、学童保育の重要性をろくすっぽ理解せず脊髄反射的に反対したから、その反対の度合いを深めれば深めるほどその対抗勢力が関与の度合いを深めていっただけの話ですよ。(もちろん、1970年代や80年代に学童保育を自ら作って運営していた働く保護者世帯に労働組合関係の人が多かった等の事情はあるでしょうが)
 地方議会で、未だに放課後児童クラブの重要性をろくに理解できていない議員は、有権者がしっかりと判断を突き付けるべきです。

 なお、先の私が直面した事例でいえば、請願を出した特定の会派も極めて遺憾です。むしろ、児童クラブを勝手に自分たちの会派、党派の影響力の下にあると勘違いして振るまっており、言語道断です。そのような姿勢は児童クラブにとって害悪でしかない。これもはっきりいえば、もうそのような会派、党派は児童クラブを勢力下にある、支援してくれる業界だと思わないでいただきたい。迷惑千万この上ない。過去は過去。これに関しては業界団体も猛省が必要です。いまだに国政選挙の際には団体の関係者に特定候補への投票を呼び掛ける活動を団体の活動を通じてられた情報を利用して行っているようであれば、そのような団体は、社会インフラとして多額の補助金が交付されている児童クラブに関わるべきではありません。政治活動はきっぱり縁を絶つべきですし、それができない団体であれば早急に消滅していただきたい。

<次元の異なる少子化対策で放課後児童クラブに必要な支援>
 次元の異なる少子化対策は、拙著「知られざる学童保育の世界」でも触れましたが、あくまで国力を維持するための政策でしょう。つまり経済活動を停滞させないために子育て世帯が引き続き社会で活動できるための施策を充実させることが本来の目的であるというのが私の考えです。その目的が国民の所得を向上させて子育てしながら働く子育て世帯を支援することであるとしてもそれは国家経営としては当然でしょうし、その目的のために講じられる手段が、例えば児童クラブの充実であるなら、それはそれで歓迎です。

 ただ、児童クラブに関しては、小1の壁に象徴される待機児童や、昼食の壁に象徴される児童クラブ利用の保護者の負担軽減に焦点が当てられがちですが、本当に必要なのは、業界としての「体力」を付けることです。

 ぜひ、新内閣、石破新首相には「放課後児童クラブを充実させることは、その世界で働く人たちへの投資が必要だ」ということを理解していただきたい。現状は、放課後児童クラブの事業者に届くカネ、つまり予算はとても十分な待遇を職員、労働者に届けることができません。それがどのような悪影響を及ぼすか。
(1)人件費にまわせる予算が少ないので、そもそも本来は満足して事業を行うだけの職員数を雇用できない
(2)しかも予算の少なさゆえ雇用する人数が少なくても報酬は最低賃金レベルに留まる
(3)職員人が少ないので1人あたりの業務量が大きく過重労働になる、それで給料が安いのだから人が定着するわけはない
(4)何よりも「子どもと保護者を支える」という重要な仕事で責任が極めて重い専門職なのにそれにまったく見合わない低賃金なので、慢性的に人手不足である
(5)低賃金の重労働という劣悪な雇用労働条件ゆえ、児童クラブで十分に職務を果たせる能力の高い人材も不足

 児童クラブは上記の構造的な負の要因で、もう倒壊寸前です。その構造の土台には「法による制度設計の不備」や「資格制度の貧弱さ」、そして相次ぐ企業参入でますます盛んとなっている補助金ビジネスの蔓延、つまり税金からなる補助金の多くが事業運営に使われることなく企業の利益に化けてしまうという悪しき現状があります。

 新内閣、新政権に、私は、子育て支援は福祉政策でありながら景気対策でもあるといいたい。児童クラブに関わる業界はクラブ職員だけではありません。事業活動を通じて多くの業界とも取引、関りがあります。児童クラブにしっかりとした補助金を交付すれば、その使われ方が事業運営以外に充てられることを防ぐ策を講じた上であるならば、それもまた地域経済の活性化につながるのです。そういえば、石破氏はたしか、初代の地方創生大臣でしたね。

 児童クラブに手厚い補助を講じる、制度をさらに向上させることは児童福祉のみならず、経済の活性化にも、地方経済を支えることにもなります。ぜひ、新時代の児童クラブ政策を講じていただきたいと切に期待します。

<おわりに:PR>
 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。1,900円(税込みでは2,000円程度)です。注文は出版社「寿郎社」さんへ直接メールで、または書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。お近くに書店がない方は、ネット書店が便利です。寿郎社さんへメールで注文の方は「萩原から勧められた」とメールにぜひご記載ください。出版社さんが驚くぐらいの注文があればと、かすかに期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。
(関東の方は萩原から直接お渡しでも大丈夫です。なにせ手元に300冊届くので!書店購入より1冊100円、お得に購入できます!私の運営支援の活動資金にもなります!大口注文、大歓迎です。どうかぜひ、ご検討ください!また、事業運営資金に困っている非営利の児童クラブ運営事業者さんはぜひご相談ください。運営支援として、この書籍を活用したご提案ができます。)

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

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