民間事業者による放課後児童クラブ(学童保育所)参入はさらに勢いを増す模様。状況の整理と今後の予想。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
 放課後児童クラブの世界はこれから民間事業者の参入がさらに勢いを増すでしょう。それをうかがわせる報道もありました。民間事業者の放課後児童クラブ業界について運営支援の視点で説明します。
 ※2026年2月25日(水曜日)から27日(金曜日)の運営支援ブログは投稿を行いません。他、予告なく投稿を休む場合があります。ご承知おきください。
 (※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)

<大手事業者が積極参入を表明>
 2026年2月半ばに日本経済新聞などのメディアで、保育業界大手の企業が、2030年までに運営する学童保育施設を倍増の200か所にする、と報じました。これまでにもいろいろな民間事業者が放課後児童クラブへの参入を表明しています。保育所については少子化の影響で入所するこどもの人数が減っていることから企業主導型の小規模な保育所を中心に「こども誰でも通園制度」などに将来の事業の可能性を託す動きが出ていますが、児童クラブについてはまだまだ待機児童数も多いことで新規事業展開の可能性が高いと、生き馬の目を抜くビジネス界では認識されているのでしょう。

<民間事業者による児童クラブ業界への参入とは>
 状況を整理しましょう。児童クラブ事業を考えるには「設置主体」と「運営主体」の面での考察と、事業内容の面からの考察、この2方面が肝心です。
 設置主体とは、児童クラブの施設を設置しているのはだれか、ということです。市町村や地方公共団体に含まれる組合が設置している場合と、それ以外の民間団体の設置の、2つに区分できます。前者の場合は「公設」「公立」と呼ばれ、後者の場合は「民設」「民立」と呼ばれます。
 運営主体とは、児童クラブの施設を用いて実際にこどもを受け入れる事業を行う(=運営する)のはだれか、ということです。市町村や地方公共団体に含まれる組合が運営する場合は「公営」と呼ばれます。それ以外はすべて「民営」となります。勘違いされやすいのですが、保護者による任意団体(保護者会、父母会)や、保護者や地域の人たちで構成される「(地域)運営委員会」による運営は、民間の団体ですから民営です。市町村の外郭団体のような位置づけをされやすい社会福祉協議会や、その地域の自治体が構成に加わっている福祉事業団、また公営財団法人のシルバー人材センターによる運営も、民営となります。社協の場合は職員は「準公務員」のような印象を持たれますが、民間団体による運営ですから民営です。

 今回のブログでも主に考える、民間事業者による児童クラブへの事業進出は、この「民営」において間違いはありません。ですが設置主体を考えると、「公設民営」による運営を目指すのか、また「民設民営」による運営を目指すのかで、その事業内容は大きく異なります。ここをしっかり分けて考える必要があります。

<余談ですが>
 インターネットで児童クラブの民間進出の内容を検索すると、いろいろな事業者が解説しているページがわんさかでてきます。それらすべてに目を通しているわけではありませんが、例えば「グーグル」でわたくしが検索すると上位に表示される、児童クラブの民間進出について解説するページは、内容がいい加減なものが結構あります。例えば、「学童保育には放課後児童クラブ、放課後子供教室、民間学童保育所がある」と解説しているウェブサイトがあります。完全に間違えているとは言いにくい部分はあります。学童保育は一般的な名称として広く使用されており、世間一般の人々の理解では、放課後のこどもが過ごす場所全てを学童保育、として受け止めているからです。いわゆる「広義」の学童保育なら、まあ百歩譲ってそういう表現もいいでしょう。しかし、事業進出について説明するページにおいては不適切です。なぜなら放課後児童クラブは放課後児童健全育成事業という法定事業を行っている場所でありその事業そのものを指す場合がありますが、放課後子供教室や民間学童保育所は放課後児童健全育成事業では基本的に異なるからです。
 こういう、正確さをやや欠くような表現が、民間事業者向けに児童クラブ進出を説明するウェブサイトに多いので、事業者の方はご注意ください。

<事業形態別で考える民間事業者の進出・公設民営>
 公設民営の児童クラブにおいて、民間事業者は盛んに進出しています。最も典型的な例は、当運営支援ブログが「補助金ビジネス」と呼んでいる、自治体からの委託や指定管理者として、児童クラブ運営を任される形態の事業です。この形態で、本社拠点以外の地域で児童クラブ運営を行っている民間事業者を、当運営支援ブログは「広域展開事業者」と呼んでいます。東京都渋谷区に本拠地がある事業者がさいたま市や横浜市で児童クラブを運営している場合です。
 そのような事業者は、営利法人すなわち株式会社等に限られません。非営利法人である社会福祉法人やNPO法人などもあります。営利であろうと非営利であろうと、広域展開事業者はたくさんあります。

 この「公設民営」の形態における民間事業者の進出はこれまでもそうでしたが、今後も大いに盛んとなるでしょう。児童クラブは社会インフラとして、まして待機児童があちらこちらで生じている現在、公設の児童クラブがそう簡単に急減することは考えにくいことがひとつ。ふたつ目は、公営クラブの民営化がどんどん進行しているからです。理由としては「サービスの充実」を挙げる自治体ばかりですが、本音は「職員数も足りない中で、手間ひまがかかる児童クラブは、もう運営したくない」からでしょう。民営化すると予算が節約できるとは限りません。公営を民営化する自治体では民営化に合わせて予算を増やす自治体が一般的です。「カネはかかっても民間に運営をやってもらいたい。とにかく役所の作業量を減らしたい」というのが本音です。
 この、公設民営に進出する民間事業者はすでに沢山ありますが、今後も増えるでしょう。そうすると、3年や5年間隔で運営事業者を決め直す「公募型プロポーザル」や「指定管理者の選定」を勝ち抜いて、運営権を手中に収める必要が出てきます。
 新規参入をもくろむ事業者にとっては、ここが大変でしょう。なんといっても、すでに全国各地で1000を超えるクラブ(正確には「支援の単位」)を運営している広域展開事業者もあります。それら先行事業者は公募や選定で「勝ち抜けるコツ」の経験の蓄積がたくさんあります。先行していることで、既存の運営施設との人的資源の融通をアピールできることは、審査における得点獲得でとても有利です。

 それでも、公設民営に関して新規参入する事業者は増えるでしょう。なんといっても「勝ち抜けさえすれば、3年や5年の安定した事業運営がほぼ約束される。そこでよほどひどい運営をし萎えれば、次の競争の場で有利となる」からです。事業を運営する立場、経営者の立場になるとよく分かるのですが、「定期的に、安定して、まとまったカネが口座に振り込まれる」という安心感ほど、事業経営者、企業経営担当者にとってうれしいことはありません。公設民営の児童クラブ運営は、その地域における「独占事業」であることがほとんどなので、いったん、運営の権利を手中に収めると、よほどひどい運営をしない限り、薄利(正確には、損益差額をほぼ正確に計算できる程度の剰余分)ではありますが安定した事業運営を継続できるのです。
 これは、浮き沈みのある事業で胃をキリキリと痛める経験をしてきた事業者にとっては魅力的です。
(なお、安定した事業運営に到達するには1つや2つのクラブ運営では程遠く、少なくとも20や30以上の支援の単位を手中に収めることが求められます。)

 公設民営の児童クラブに進出するメリットとして、保護者運営系の民営クラブから運営権を取ることができます。保護者運営系の民営クラブとは、保護者会や運営委員会と言った任意団体や、保護者会や運営委員会を母体に発展、法人化した事業者があります。NPO法人や一般社団法人が多いですが、株式会社や合同会社もあります。これら保護者運営系の民営クラブは、「ビジネスのしきたり」とは関係なく児童クラブ事業を営んできていることが多いといえます。事業経営のプロ、事業運営のプロが児童クラブ運営に関わっているという例は非常に少ないのです。それゆで、事業の経営における行政からの信頼度が今一つ高くならなかったり、財政基盤がぜい弱であったり、より高度に複雑化した放課後児童クラブ運営事業への対応の困難さや法令への対応度の点で劣る点があったりで、児童クラブ運営事業を任せるにあたって果たして本当に信頼できる事業者であるのか、について行政からの評価がかなり厳しくなってきています。
 かつて(2000年代から2010年代前半まで)は、「まあ保護者さんたちが忙しい中、ボランティアでこどもたちを見てくれている」と、いろいろな点での不備に目をつぶっていた行政も、補助金がうんと増えてきて、守らねばならない法令もどんどん増えてきている中では、きっちりとした運営を児童クラブ事業者に求めざるを得ません。
 まして、2026年12月からは、あのいわゆる日本版DBS制度が始まります。こうした法令への対応については、ボランティア感覚での児童クラブ運営は難しくなります。そうなると、法務も労務も財務も総務もしっかりとしている、規模の大きな事業者の出番になるわけです。

 公設民営の児童クラブへの民間事業者の進出は、「公営クラブの運営の受け皿」として、そして「保護者運営系の民営クラブのより信頼感を増した事業運営の実現としての担い手」として、規模の大きな事業者の出番と、なっているわけです。デメリットは「補助金ビジネスを事業の柱としている広域展開事業者も複数あり、常に競争にさらされている」ということがいえるでしょう。

<事業形態別で考える民間事業者の進出・民設民営>
 児童クラブを収益事業の1つとして考える際は、やはり公設民営での進出が利益の確保の点では優位なので、公設民営の方が民設民営よりも盛んです。国が毎年まとめている放課後児童クラブの実施状況をみれば分かります。最新版(令和7年5月1日時点)は2025年12月下旬に公表されていますが、株式会社の運営する児童クラブの数を比較しましょう。令和7年の全クラブは25,928クラブです。(なお実施状況では公立、民立の用語を使用しています)
 公設民営の株式会社運営クラブ数 4,299 (全体の16.6%)、前年度より745クラブの増加
 民設民営の株式会社運営クラブ数  664 (全体の2.6%)、前年度より73クラブの増加

 広域展開事業者では代表的な株式会社の運営クラブが増えていること、それも公設民営のクラブ(つまり、補助金ビジネス)が中心であることが分かります。
 ちなみに公設公営は5,800 (全体の22.4%)で、まだまだかなりの割合ですが前年度より376クラブ、減少しています。

 どうして民設民営より公設民営のクラブの方を、株式会社など民間事業者が狙うのかは単純な理由です。
「施設が用意されている」ことと「職員を前の事業者からある程度は引き継げる」ことで、事業運営を危ぶませる危険要素が少ないからです。回収を考えねばならない新規投資が最小で済むからです。
 民設民営はつまりそのメリットがデメリットとなるのです。まず、施設は民間事業者が用意しなければなりません。これは大変です。こどもを40人程度受け入れる施設を確保するのが困難です。広さ的にはごく普通のコンビニエンスストアをイメージしてください。そうそう、そんなテナントや賃貸物件はありません。あっても賃料が高いですね。工場や倉庫をリフォームすることも多いですが、国からの補助は最大でも1,300万円程度。それも確実にいただけるとは限りませんし、児童クラブに求められる設備を用意するには1,000万円では、とても足りません。
 ハコの用意が大変なら、もっと大変なのが職員の確保です。放課後児童クラブの解説であれば、ほぼ通常は「放課後児童支援員」という児童クラブ固有の有資格者を確保せねばなりません。公設民営の、運営権の横滑りなら有資格者の確保も雇用労働条件次第ですが、新たに民設民営クラブを設置するとなると、求人広告費をたくさんかけて有資格者を集めねばなりません。この人手不足の折、とても大変です。
 なぜ大変か。児童クラブではそれほど人件費を多く確保できません。よって職員1人あたりの報酬額もさほど高くありません。というか、低すぎです。なので良質な人材がなかなか集まらないのです。
 なぜそれほど人件費が多く確保できないのか。収益の構造です。

 民設民営児童クラブでも、公設民営と同じように、国からの交付金、いわゆる補助金を頼みにできます。できますが、民設民営クラブの場合、公設民営と違って「必ず交付金を自治体が出してくれるか」は、自治体の判断によるからです。なお児童クラブの補助金は多くの場合、国と、都道府県と、市区町村が、3分の1ずつ負担します。財政負担を嫌う自治体が「民設民営にはカネを出さない」と決めたら、放課後児童健全育成事業を丁寧に行っている民設民営児童クラブでも、交付金をもらえない可能性があります。実際、欲しくてももらえていない事業者は全国にいくつもあります。
 「カネをもらえるかもらえないかは自治体次第」。そういうあやふやな点は、民間事業者にとっては真っ先に避けたいところですね。

 ですので、民設民営児童クラブに新規参入をするには、「公設クラブの整備はあきらめて、民設クラブに任せた」という自治体が行う公募に参加するのが一番です。公募の場合は間違いなく交付金の交付対象としてもらえます。しかし、公設民営の委託期間や指定管理期間の満了に伴う新事業者の選定の機会に比べると、民設民営事業者の公募の機会は、まだまだ多くはありません。が、徐々に増えている印象をわたくし萩原は感じています。

 公募に頼らないで、民間事業者が新たに民設民営児童クラブを設置、開設して運営するのは、よほど他の事業目的が強固にある場合をのぞくと、事業運営的には危険といえます。他の事業目的があるとは、例えば学習塾の事業者が「低学年は児童クラブに入所してもらって、3年生や4年生になったら徐々に学習塾に移行してもらう」という、本業の事業との相乗効果を狙うものです。経営学で言うところの「範囲の経済の拡大」です。
 また、何らかの条件に絶対的な利点がある場合は、国からの補助金に頼らずとも利用者からの利用料収入だけで運営ができるとして、民設民営児童クラブの開設に踏み切ることもあるでしょう。例えば鉄道会社が駅に児童クラブを設置開所する場合です。この場合、鉄道利用の保護者であれば、帰路に駅でこどもを引き取って帰宅できます。その利便性は最強です。であれば、月5万円の利用料でも鉄道駅内児童クラブの利用ニーズを掘り起こすことができるでしょう。

 ごく少ない例外として、公設公営が多い地域や、公設民営が主流の地域でもまだまだ児童クラブの入所ニーズが高止まりしそうな場合であって自治体が公設クラブの量的な整備に及び腰の場合、広域展開事業者を中心に、自腹を切って民設民営児童クラブを設置開設、運営することがあります。事業の実績を作っておいて、いずれやってくるであろう公募や指定管理者の募集の際に少しでも有利になるように、という計算があります。
 なお民設民営児童クラブであっても交付金をもらえるということは、「放課後児童健全育成事業を行っている」ことに関して、それが業務委託だったり、事業実施補助だったりということで自治体が認めているということです。放課後児童健全育成事業そのものは「届出制」なので、放課後児童健全育成事業に求められる法令上の基準をクリアしていて届出をすれば、その届出をした事業は、放課後児童健全育成事業となります。ただ交付金の交付対象事業者となるかどうかは別問題、ということです。

 「いやいや、補助金はあてにしない。うちは、独自の理念で事業継続を考えたい」という方向性での、民設民営児童クラブの事業展開を考えている事業者もいるでしょう。その場合は次に紹介する民間学童保育所と基本的に同じ取り組み方となります。
 民設民営の児童クラブへの民間事業者の進出は、「公営クラブでは引き受けきれない児童クラブ利用ニーズ尾解消」として自治体が公募する場合は、公設民営への参入とほぼ同等のメリットが期待できます。ただし公募に頼らず独自で事業を展開する場合は、どうやって収益を確保するのかが大問題であり最難関の課題です。メリットとしては、事業者独自の理念や理想に基づいた事業展開ができる(交付金を受けないので自由気ままに事業ができる)ことがいえるでしょう。

<事業形態別で考える民間事業者の進出・民間学童保育所>
 民間学童保育所というのは、放課後児童健全育成事業ではなく、こどもを受け入れて過ごさせている施設や事業のことです。学習塾やスポーツクラブとの境は、こどもの利用日数と施設内で過ごす時間の長短ぐらいの差になります。もちろん、民間学童保育所であっても、放課後児童健全育成事業の事業内容を実施している事業者も多くあります。放課後児童健全育成事業の事業の核心を「育成支援」と呼んでいますが、民間学童保育所は、何も勉強やスポーツや英会話や各種アクティビティだけをこどもに提供しているのではなくて、育成支援を踏まえた事業展開を行っている事業者もあります。

 特徴としては、公設民営の児童クラブではなかなか踏み切れない多種多様なサービスの展開です。それは、公設民営の児童クラブではどうしても「育成支援」の充実が最優先となるので、現実的に保護者が期待する「お勉強の時間の充実」や「英会話の時間の確保」などはまず不可能ですし、対応できる職員も雇用できません。ところが民間学童保育所や、補助金に頼らずに運営する民設民営児童クラブはそのような公設民営ではできない各種サービスを打ち出すことで差別化をアピールし、利用者を集めています。というか、そうしなければ事業が成り立ちません。公設民営クラブや、補助金を受けている民設民営児童クラブではできない各種サービスを打ち出して相対的に高めの利用料を設定することが、収入の大事な要素となるからです。

 公設民営の児童クラブや、民設民営児童クラブでも利用料が公設民営と同等の設定である場合は、基本的に(おかねがそんなにかからない)育成支援を中心とした事業内容、サービス内容になります。それは得られる収入がさほどではないので、カネのかかる各種のサービスがなかなか実施できないからですし、カネがあったとしても、もっと育成支援を充実させるために職員数を増やしたいし職員の給料も上げたいとして、どんどん人件費に予算をぶち込むからです。
 また、それなりに規模が大きくなってくると、手薄だったバックオフィス、つまり組織運営にかける間接経費にも予算を振り向けることが必要になるのですが、伝統的な児童クラブ業界はそこを軽視してさらに現場の人件費に予算をぶち込みがちです。運営するクラブが10を超えるようになると専従の本部運営管理者がいないと、日常的に起きる諸問題に対応できかねるのですが、いかんせん、そこまで考慮しない(あるいは、したくでもできない)公設民営児童クラブ運営事業者が実に多いのです。それがもとで、事業組織の経営自体がぜい弱である、ともいえ、結果的に公募や指定管理者の競争で企業に劣るのです。
(しかも伝統的な児童クラブ業界はこのサービスという単語を毛嫌いしています。「商売じゃなくて福祉なんだ!」という偏った思い込みが強いのですが、福祉であっても対価を得て提供する役務はサービスです。そのことが理解できないことが、伝統的な児童クラブ業界の担い手が児童クラブ運営においてもはや事業者としては資質が無い、素質が無いということの証左です)
(また、補助金を受けている民設民営児童クラブでも、利用者が別途、オプションとして追加料金を支払うことで各種のサービスを利用できるようにしていることが通例です。そうして利益を確保しています。受入時間を午後8時ごろまで伸ばしたり夕食を提供したり、高度な学習支援などのサービスを行うという具合です。)

 民間学童保育所と、補助金に頼らず運営する民設民営児童クラブは、その事業内容が事業継続の運命を左右します。通例は公設民営クラブや補助金を受けている民設民営児童クラブと、価格面ではまったく太刀打ちできません。公設クラブは毎月数千円の利用料のところ、民間学童保育所や補助金を受けない民設民営児童クラブは毎月5万円(5万でも安いほうで、8万~10万円は請求したいところです)では、もう勝負になりません。
 ではどこで勝負するか。かぎは提供するサービスの質です。「月8万円でも10万円でも、放課後のこどもの居場所として魅力的であるという事業内容をアピールできるかどうか」です。公設は確かに安いけれど、こどもの人数がギュウギュウ詰めでけんかも多いらしいし、職員がしっかり見てくれているかどうか不安がある。でも新しくできた民設民営児童クラブは高いけれど、こどもとていねいに関わってくれる、こどもに体験、経験してほしいことを提供してくれている、という評価を保護者に植え付けることがどれだけできるか、でしょう。ですので、多彩で質の高い各種サービスを展開できるかどうかが、事業成功のかぎとなります。

 可能であれば、とりわけ待機児童が出ているか、あるいは常に児童クラブ利用ニーズが高止まりしている地域において、自治体が待機児童の発生を防ぐために、民設民営児童クラブに対して補助金を出すように事業者から粘り強く説得して、交付金の交付対象としてもらえる努力は続けるべきでしょう。その結果として、本来なら月8万円の利用料を請求したいところが月5万円で済む、ことになります。

<数字だけではない利益を評価することも>
 あまり例は多くないでしょうが、「原則として自社の職員の福利厚生のため」に児童クラブを設置開設し、その余力を地域住民にも開放することで、「企業価値の上昇」や「事業グループ全体の評価の向上」、「地域社会の健全な発展に寄与」を期待して、民間事業者が児童クラブ事業を手掛ける例もあるでしょう。本体がとても大きな企業、大企業や大規模な病院などにみられます。こういう例が増えてくることを運営支援は期待したいですね。
 児童クラブ単体で利益計上できる金額で一喜一憂するのではなくて事業者グループ全体の価値、利益の向上というプライスレスな部分に投資する価値を児童クラブに見出す事業者が、もっと増えてもいいのにとは、わたくしは思いますが、まあそれでも事業者グループ全体としても利益に結び付かない施設の場合は、それは事業としては失敗なわけですから、それこそ福祉に対する公共の責任として自治体がしっかり面倒を見てほしいとも考えます。

 今後ますます増えるであろう児童クラブへの民間事業者の参入。主戦場は「公設民営における運営権を巡る競争」でしょうし、「民設民営の公募案件における競争」でしょう。これは結果的に保護者運営系や保護者運営系の理念を受け継いだ事業者にとっては、児童クラブ運営権をめぐって勝つか負けるかの大競争時代がいよいよ大詰めになってきた、といえます。
 しかし運営支援は、民間事業者の独自の進出による民設民営放課後児童クラブの増加を期待します。既存の放課後児童クラブでは対応ができない、サービス提供ができない部分を実施して、こどもと保護者の「放課後に過ごすとしたら、どの場所がいいだろう」という選択肢において選べる先を1つでも増やしたいと考えるからです。やたらめったら遊ぶクラブも、工作に熱心なクラブも、勉強を楽しく頑張るクラブも、英語で海外のこどもと交流するクラブも、芸術やスポーツを楽しむクラブも、プログラミングやロボットに力を入れるクラブも、どれもあっていいのです。こどもと保護者が、期待感をもって放課後や夏休みなどに過ごせる場所を選べる時代が早くきてほしい。それが、こどもまんなか社会の一つの姿だと、運営支援は考えるのです。

(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

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萩原和也