梅雨、そして夏を迎える放課後児童クラブは、やるべきことがたくさんあります。事業者に必須の4点を紹介。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。間もなく日本列島の多くの地域で梅雨入り、そしてあっという間に真夏を迎えます。今年も猛暑が予想されています。運営支援の立場から、放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の心構えを示していきます。
 ※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。

<その1。食中毒>
 気温が高く、湿度も高くなるこの時期から食中毒が増えると言われています。私が言っても信ぴょう性がないよね、と思われるのがオチなので、NHKの記事を貼っておきます。「梅雨の時期は食中毒に注意 家庭で気をつけるポイントとは?」と題した記事です。
 https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20230622c.html

 運営支援の立場からは、こうした食中毒への対策、心構えを改めて運営事業者全体、それは経営者から現場の短期アルバイト職員に至るまで全ての者に周知徹底、そして実行を「させる」ことを、事業者に求めます。そのために、5~6月のうちに、地元の衛生関係者を招いてレクチャー、研修会を開催する必要があります。地元の保健所、あるいは行政に相談するなり地元の医師会に相談するなりすれば、講義をしてくれる人はすぐに見つかるでしょう。予算や場所の確保は事業者なら当然、事前に想定しておいて計上しておくべきコストであり、行動です。

 去年もやったからいいよね、ではありません。去年は食中毒の研修を受けた。今年は見送った。2年に1回でいいよね、という判断で。ところが、残念なことに児童クラブで提供した手作りおやつで、黄色ブドウ球菌による食中毒が起きてしまった。おやつ調理に関わった職員は今年採用された職員だった、ということになった場合、事業者は、管理運営に万全であったと主張することは到底できません。仮に、民事上の責任を追及されるような事態になったとき、食中毒に対する研修を行っていなかったということは、運営事業者としての管理責任に落ち度があったと裁判所に判断されかねません。むろん、大事なことは、子どもや職員に被害を及ぼすことを起こさないということが最優先事項ですが、組織の防衛、組織のリスクマネジメントとしても、子どもや職員を守るための行動は必要となるのです。それは以下、取り上げる全ての事項に共通します。

<その2。熱中症>
 言わずもがな、夏場において最も慎重かつ厳重な対応が必要なのは熱中症です。それは熱中症が容易に人命を落とす重篤な症状をもたらすからです。しかも、今年も猛暑の予測がされています。萩原が言っても重みがないでしょうから、リンクを貼っておきます。厚生労働省のサイトで、「熱中症予防のための情報・資料サイト」です。
(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/prevent.html)

 運営支援の立場では、日々の状況を把握する行動を習慣化するように求めます。運営本部は常に最新の気象情報を確認し、必要な対応を組織に向かって行うことです。現場クラブで勤務する職員は、現場の環境を常に把握し、子どもと職員の体調変化に最も敏感になる必要があります。そのために事業者は、気温と湿度から熱中症の危険度を測定できる「熱中症指数計」のような器具を購入し、現場で活用しましょう。購入の予算は当然ながら事業運営に必要なコストです。エアコンの効き具合を確認しましょう。このごろは、かつてエアコンは不要だった北海道なども猛暑続きです。過去は大丈夫だったから、ではありません。こと熱中症に関しては温暖化について急激な気候変動が起こってしまった現在、もう過去の経験値は無用です。

 これも食中毒と同じですが、熱中症対策をおろそかにして児童や職員に万が一の事態が起こったら、これはもう、安全管理義務を果たせなかったことですから、責任を問われることになるでしょう。

<その3。所外活動を計画するなら必ず下見とシミュレーション>
 夏休み期間中に、施設外に出かけて過ごす機会を持つことが多いでしょう。泊りがけのキャンプから、半日程度の映画鑑賞や博物館見学、プラネタリウムなど、様々な所外の活動の態様があります。それら所外活動を計画する際は、「事前の下見」と「机上演習(シミュレーション)」を、絶対に欠かさず行いましょう。これも、萩原がただ言っているだけでは真実味が欠けるきらいがあるので、滋賀県甲賀市(こうか・し)教育委員会の「青少年の自然体験活動における安全対策マニュアル」を紹介します。(https://www.city.koka.lg.jp/secure/5203/anzen.pdf)

 所外保育の下見が重要なのは、現地にどのようなリスクが生じやすいかを把握する目的があるためです。往復の経路上の状況を確認することで、乗り換えに必要な時間だったり、子どもの急なトイレ需要にどこでどう対応できるかを事前に想定できることができます。長い時間を過ごすことになる目的地の様子、状況は当然ながら詳しく把握しておくことが必要です。昼食を食べる場所はどこか、お弁当が食べられるのか、それとも現地の食堂やレストランを利用できるのかどうか、団体料金は適用できるのかなど、確認しておくべき点は多数ありますね。

 さらに重要なことは、下見で得られた情報を基に、クラブ在籍児童の情報を加味して行う机上演習、すなわちシミュレーションです。これは特にプールや川下り、ハイキングといった体力的に負荷をかける所外活動においては必須となります。昨年夏のプール死亡事故は痛ましい記憶ですが、あのような絶対的かつ最終的な悲劇を起こさぬように、想定は万全にしておくことです。映画館に行くとしても、最寄りの駅まで徒歩で向かう場合、あの子たちは歩くスピードはこのぐらいだろうとか、晴天の下で歩ける距離はこのぐらいだろうとか、クラブ職員はいろいろと考えて想定しておくべきです。そのための時間はもちろん勤務時間ですから、その時間を確保することも必要です。

 自然界に存在しているリスクへの備え(川で流される、山で登山道で転ぶ、足を滑らせて滑落する、ハチに刺される、最近はクマとの遭遇もあるでしょう)を軽視すると、そのしっぺ返しは極めて深刻です。本来はリスク管理が容易であるはずのプールでも、リスクを軽視すると死亡事故が起こるのです。夏休みの間の心理的な要因(ウキウキしてしまう、はしゃいでしまう)ということも踏まえて、「事故は徹底的に防ぐ、かといって子どもの楽しい気持ちを無残にも削ぎ落さない」というバランスを考えて、安全かつ楽しい所外活動を実施できるよう、その備えから万全に向き合ってください。

<その4。クラブの労働力確保に努める>
 夏休みはほとんどの児童クラブで朝(8時前後)から夕方~夜にかけて、子どもを受け入れます。ということは多くの職員、働き手が必要です。当然、もう多くのクラブで夏休みの非常勤職員(アルバイト、パート)の募集に取り掛かっているでしょう。これはもう、あの手この手で人材確保に乗り出さないといけません。今年の春休みにアルバイトをしてくれた学生が「夏休みもぜひアルバイトしたいです」と言っていたから大丈夫、ではありません。他に興味が移ったり高い時給が提示されたりなどで、「他にアルバイトを決めてしまいました!」ということは、ごく普通にあることです。人の心ほど、うつろいやすいものはないのですから。過去の口約束は全く頼りにしないで、1人でも多くの働き手を確保しましょう。

 当然、事業者は、夏休み期間に働いてくれる人を確保するために時給を上げる環境整備に尽くさねばなりません。また多くの手段を使って求人情報が世間に広まるように工夫しなければなりません。それは現場職員ではどうしもうないことです。児童クラブの事業者の経営、運営にあたる者、運営本部や事務局と呼ばれるようなところで勤務する者が行う必要な業務ですから、人材確保には全力を投入してください。もちろん現場は、「うちはあと何人必要です」とか「水曜日と金曜日の午後がどうしても人材配置が不十分です。その時間を手厚くできる人材が必要です」と具体的な情報を運営側に提供しましょう。

 クラブで業務に従事する者が少ないと、所外保育の実行の可否を左右しますし、熱中症など子どもの異変に気付くことができる機会も減ります。なにより子ども集団の安全を保つという児童クラブの存在意義が脅かされます。「人手不足だからなかなか人がこないんだよ」で済ませてはダメです。人がこないような運営をしている己の無能さを反省しなさい。

<これらすべてのこと、保護者運営や、非常勤役員で構成する非営利法人でも当然のことですよ>
 上記に記したことは、子どもの命を絶対に確保しなければならない放課後児童クラブにおいて当然なことです。そしてその実行を完全にするには、児童クラブの運営事業者を統括する立場の者が常に状況を把握して必要な指示を出すことで実現できます。ということは、保護者運営あるいは保護者出身役員の顔ぶれが毎年変わる非営利法人で、保護者が月に1回集まるだけ、日々の運営は現場の職員任せであるという運営事業者においては、完遂することは難しいものです。しかし、専従の役員、常勤職員がいる児童クラブ運営事業者と、専従や常勤の者がいない児童クラブ運営事業者に何か差があるかといえば、ありません。保護者が無報酬で務めているから管理運営責任が軽くなることはありません。

 夏場は他の時期に比べて熱中症や所外活動などで子ども、職員がけがをする、体調を崩すという危険性が高まります。それが不可抗力によるものならともかく、管理運営において不備がなければ生じることがなかったというのであれば、最終的には経営・運営担当者の責任問題に発展します。保護者運営の仕組みの事業者で、理事や監事、代表理事や理事長を引き受けた保護者は、事業の運営責任を担っている、万が一の時は自ら訴訟の当事者に立たされる、あるいは賠償も覚悟するということを認識しましょう。保護者役員は有限責任だから大丈夫、ではありません。法人が課せられた損害賠償において、その法人が、負わせられた賠償について保護者役員(理事、監事)が善管注意義務に劣っていたからだということであれば、法人がその役員に対して賠償を求める訴えができるのです。よって保護者で児童クラブの運営に従事する、あるいはそうせざるをえない人は、しっかりと夏場の児童クラブ運営に気を引き締めて取り組んでください。「私(たち)は上手に運営しているよね、よかった。他の人にもアドバイスしてあげよう」なんて軽い気持ちで取り組める立場ではないはずです。そんな余裕があるなら自ら属する組織の運営に万全を期すべきです。

<おわりに:PR>
 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、6月下旬にも寿郎社(札幌市)さんから出版されます。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 親と事業者の悩みに向き合う」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。およそ2,000円になる予定です。正式な情報は随時、お伝えしますが、注文は書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。特に埼玉近辺の方で、まとまった部数をお買い求めいただける方は、萩原まで直接、ご相談ください。その方が個人的にもありがたい(なにせ、ある程度のまとまった部数が手元に届くので)です。発売まで、あと1か月です。どうぞよろしくお願いいたします。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

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