放課後児童支援員の役割は?
一言で言えば、「子どもの育成支援を行う」です。育成支援とは、子どもが主体的に育っていく過程を支え、援助することを指す概念です。その中に、種々の具体的な行動が含まれます。また、子どもの育ちを支えることで保護者の子育てを支援するということも役割です。子どもへの支援、援助には、児童虐待を含む子どもにとって不利益な状態になっていること、あるいはなろうとする状況を排除することも含みます。
ところが残念ながら、次のような説明を持って放課後児童支援員の役割としている解説があります。
「子どもたちが放課後に安心して勉強したり遊んだりする場所を提供する。 子どもたちに勉強を教えたり、一緒におやつを食べたり、遊び相手になったりする」
まったく違います。まず、放課後に安心して勉強したり遊んだりする場所を提供するのは放課後児童支援員の役割ではなく、市区町村の責務です。提供された場が、子どもの生活及び遊びの場として機能するように子どもたちの集団をまとめ、維持していくのが放課後児童支援員の役割です。むろん、施設の維持管理、整備も当然、施設に勤務する者の仕事にはなります。
そして「遊び相手になったり」という表現からすると、この文章を書いた者が放課後児童支援員の専門性をどこまで理解しているのか疑問です。放課後児童支援員が子どもの遊び相手になることはあってもそれが目的ではなく、子どもたちが自分たちで遊びを考えたり組み立てたり遊びという行動に取り組むことが子どもたちだけで自発的かつ円滑に事が進むようになるよう、放課後児童支援員は子どもたちの取り組みを支えることが役割です。遊び相手になる、という状態そのものが役割なのではありません。子どもたちが自分たちで遊びを行えるようになるよううまく状況を観察、制御しつつ、他の場所で過ごしている子どもたちの安全、安否の確認を常に怠らない。これが放課後児童支援員の役割です。
勉強を教えたりおやつを食べたりというのも、あくまで表面上の現象です。勉強なら、どうやって子どもたちが自主的に取り組もうとすることができるか、子どもたちに働きかけることが中心的な役割です。勉強を教えたり勉強を強制させたりするようなことは、やむを得ず行う付随的な行動です。子どもたちの自主性や主体性を育てながらということが、実に難しいのです。
なお、勉強を教えることを事業の中心して掲げている児童クラブもあります。それはその事業者の方針です。一般的に、こども家庭庁の管轄下にある放課後児童クラブとは状況を異にします。
もちろん、クラブの場所で意図的に他者に迷惑や危害を加えようとする、あるいは場を意図的に乱し続けるような行動を取る子どもに厳しく接することもあります。それもまた子どもたちの健全育成のために必要な行動です。子どもたちの自主性を育てるということと子どもたちが好き勝手にやっているのを放課後児童支援員は黙認または追認するということもありません。それとは正反対に、一方的に行動規範を押し付けて個人の自由な行動を許さないような過ごし方を強制するような放課後児童支援員もまた、正しい役割を認識していないことになります。
(運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)
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