放課後児童クラブ(学童保育所)事業者を悩ます「責任を負いたくない」職員の存在。責任を嫌がる人が増加中

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の仕事に限らず、今の時代、どのような仕事であっても、特に若い人に「仕事の責任でストレスを感じる」「仕事の責任は背負いたくない」という人が増えています。厚生労働省の調査による「令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)」には、次のようなデータが紹介されています。

 現在の仕事で強い不安や悩み、ストレスとなっていると感じる事柄がある労働者は全体の82.2%に達しています。ストレスと感じる主な内容として、最多は「仕事の量」が36.3%、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」が35.9%となっています。つまり3人に1人以上は、働いている上で感じるストレスの原因に、仕事が失敗したらどうしよう、嫌だなぁとか、責任を背負って仕事をすることにストレスを感じている、ということが示されています。

 私もかつて児童クラブの運営に携わっていたとき、多くの職員が、仕事上の責任を負いたくない、だから役職者になるのは避けたい、という意向を持っていることを目の当たりにしました。もちろん、もっと仕事の幅を広げたい、責任を持って業務の質を上げていきたいという人(これをキャリア志向といえば、そうなのでしょう)もいましたが、絶対的に少数でした。こうした、責任が重い地位につきたくない、という気持ちをもって学童での仕事に就いている人は、私はまったく珍しくないと思っています。子どもが大好き、こどもと関わりたいという素直で素朴な気持ちが強い一方、主任だ、施設長だ、マネジャーだ、ナントカ長だ、という役職については、世間で言うところの「出世」「昇進」は魅力的ではないのでしょう。(これには、役職についてもさほど手当が増えない、仕事の責任の重さと賃金が釣り合わないという現実的な見方も影響している可能性はゼロではないのでしょうが)

 しかし当たり前ですが、児童クラブの仕事にも、他のどの仕事と同じように、責任がついてまわります。その責任は2つの種類がありますね。1つは利用している子どもたちに関わること。つまり、子どもの生命身体の安全、子どもの権利を守るという点における責任。もう1つは、児童クラブの仕事を提供している事業者、運営主体の「組織を支える責任、円滑に事業が実施できるために組織の一員として果たすべき責任」です。

 私がみてきた限りこの2つの責任とも、「できるならば忌避したい」という人がそれなりにいました。前者の責任は、正規職員ならずとも、たとえ数日しか勤務しないアルバイト職員でも等しく背負っているものですし、児童クラブで働く限りにおいて必ず背負わねばならない責任ですが、その責任を意識していない人が多いように感じてきました。これは事業主が、しっかりと採用後の研修で教え込まねばならないことです。その意味においてそれほど難しいものではありません。この責任すら嫌がるようでは、児童クラブのお仕事は遠慮してもらうほうが良いですね。

 もう1つ、組織の中において背負っていかねばならない責任。これがどうにも、特に児童クラブで「子どものために頑張りたい」と素朴に考えている人ほど、ストレスになったり重荷になったりするようです。精根が優しすぎるのでしょうか。もちろん、役職ポストには限りがありますから誰しもがかなり重い責任を背負う地位に就くわけではありませんが、1つのクラブに1人は必要な施設長や主任といった、組織全体からすると実はさほど重くはないポスト、地位であっても「荷が重い」「クラブの職員がうまくいっていないのは施設長の私がダメだからだ」と、自分を責めて追い込んでしまう、まじめな人が大勢います。ある意味、世間慣れしていないともいえますね。

 これでは、組織は順調に発展しません。やはり組織が職員の研修を重ねることで、「責任を負っていくことは職業人生において、むしろ当たり前の事」という感覚を植え付けていくことが大事です。
・地位、役職があがることは責任が重くなるのだが、その分、児童クラブのため、育成支援のために個人の才能や才覚を反映させたり織り込んでいったりすることができる機会も増える。つまり自分の知見を業務に反映させることがより幅広い局面で、できるようになる。その結果、児童クラブで過ごす子どもや、利用する保護者がさらに満足するようなら、それこそ素晴らしいことなのだ。

 ということをしっかりと職員に理解させることが必要です。決して、「大事な役職なんだから、ミスはしないでほしい」というプレッシャー、圧力だけを意識させてはなりません。要は、責任ある地位、役職に抜擢した人がその後、能力を発揮して従事できるかどうかもまた、組織の「人材開発能力・人材育成能力」に、かかっているのです。抜擢した人が相次いで責任の重さでつぶれてしまう、メンタルヘルスに不調をきたしてしまうのであれば、それはその地位に就いた人の問題ではなくてむしろ組織が管理職を育てることに失敗している、と理解しましょう。

 この人手不足の時代、有能な人が組織のヘマで潰れてしまっては大損失です。現場の最前線でずっと頑張る職員は大事、でも組織運営に取り組む職員も当然大事。それぞれの分野で活躍できる職員を育て、その能力を発揮することができるよう、まずは児童クラブの運営組織自体が、職員の能力を育てることに秀でることが欠かせません。資質を見抜いたり必要な外部研修に送り込んだり、職員の能力を「見抜くチカラ」を児童クラブの運営組織は身に付けましょう。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。

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