放課後児童クラブ(学童保育所)に、よく似合う光景。けん玉、一輪車、プラ板、たくさんの本と漫画。笑顔と喧騒。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブはあまりにも多種多様で、全国共通で「これがなければ、児童クラブではない」というものは実はありませんが、比較的多くのクラブに置いてあったり見かけたりするものは、いくつかあるでしょう。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<けん玉>
 児童クラブの壁に、けん玉の上達度を示す張り紙があるのを見かけた保護者さんはいますか? けん玉は、児童クラブ、学童にとてもなじみのある遊具です。紅白歌合戦より、学童保育所こそけん玉が似合うと私は常々思っています。「けん玉名人」と称される児童クラブの職員、支援員がいて、子どもたちにけん玉の楽しさや奥深さを伝えているクラブも、きっとあることでしょう。
 2012年秋にさいたま市で行われた「全国学童保育研究集会」では、埼玉の児童クラブの子どもたちが、曲(確かあのときは、ライジング・サンでした)に合わせてけん玉を披露する「けん玉ダンス」を披露していました。とても素晴らしいものでした。
 遊びとしても奥深いですし、瞬発力や体幹の強さも鍛えられるのではと思っています。けん玉を振り回して誰かに当たって痛い!というのも、学童あるある、でしょうか。

<一輪車>
 クラブの外に設置されたラックに、一輪車が架けてある光景も、児童クラブが児童クラブらしく見える光景の一つと、私は感じます。いやもう、もしかすると、一輪車を遊びとして受け入れているのは児童クラブぐらいではないでしょうか。小学2年生や3年生、とりわけ女子が、それこそ名人芸を披露してくれるものです。最初はおっかなびっくり、やがて段々と乗れる距離が長くなっていく。挑戦と失敗、繰り返し繰り返しの継続して挑む意欲、そして成功と喜び。児童クラブの一輪車は子どもの成長、特に自己肯定感の育みを手助けする素晴らしい遊具だと私は思います。
 経営の立場では、現場クラブからの「普通の一輪車でもいいんですが、できればノーパンクタイヤ一輪車を購入してほしい」という要望をかなえるか、それとも価格がぐんと跳ね上がるので予算とにらめっことして「ごめん、普通ので我慢して」と返答するか、悩ましい局面もありました。

<たくさんの本、漫画>
 児童クラブは体を使った遊びだけを重視しているものではありません。インドア派という言葉がありますが、子どもだって100人いれば100通りの好きな過ごし方があります。室内で読書をして過ごしたい子どもだって大勢います。天気が悪い日、最近では熱中症の危険が高い日はクラブ室内で過ごすことになるので、子どもたちの知的好奇心、興味をくすぐる本は大事ですし、その時間を楽しく過ごす漫画(雑誌)もまた大切だと私は考えます。
 児童クラブの職員の中には「漫画は、歴史まんが、科学まんが以外は絶対に置きません」という主義の人もいるかもしれませんね。クラブの運営方針はそれぞれ深い討議を経て決定されていることでしょうから今ここであれこれ言いませんが。
 活字の多い書籍は敬遠されることでしょう。自治体の図書館から時折、購入して年月が経過した本を児童福祉施設に配る、ということはありませんか?図書館側から「子どもたちにお勧めですよ」として紹介される書籍は、活字が多く、その大きさが小さくなるほど、クラブの職員は手に取ることがなくなり、いつまでも残ってしまいます。(実は当の職員自身も活字の多い本は読んでいないという現実も)。なんとか、本の世界の楽しさを伝えられる機会があるといいですね。
 漫画では描写の程度が議論になることがありませんか?性的描写の多い作品は職員がチェックしてクラブ内に持ち込まれることはないでしょうが、暴力描写はあまりにも多く、かつ、それがエンターテインメントとして読者の興奮や好奇心を掻き立てるので、判断が難しいものでしょう。私も「こうした方がいい」という結論はだしません。よほどひどい(その判断基準が難しいのですが)暴力、残虐な描写は子どもたちに触れさせたくはないですが、昨今の人気作品は得てして暴力、残虐な描写がエンタメ化しています。だからといって一様に排除するのではなくそこから派生する感情や遊びについて職員が子どもたちと一緒に考えていくことにつなげていけばいいのでしょうかね。
 他にもたくさんありますね。子どもたちが作った工作。プラ板で作ったポケモンのキャラクター。ビーズ、折り紙。レゴブロックの作品。塗り絵。それぞれに、手掛けた子どもたちの思いが詰まっています。

<タブレット、動画視聴>
 いずれはどの児童クラブでも子どもたちがタブレットを手に、思い思いの動画を見ている光景が児童クラブでも展開されるのでしょうか。様々な情報を伝える手段として書籍があった。それが動画に替わっただけの話だとしたら、タブレットやノートパソコン、学童専用スマホを手に子どもたちが動画を見て時間を過ごす、という時代がやってくるのかもしれません。私は別に嫌とは思いません。書籍と同じように、小学生児童に触れさせるには早すぎる程度の描写の動画をフィルターでせき止めて、あとは子どもたちが興味関心のある分野の動画を見て過ごす時間だって、これからの児童クラブにあってよいものだと、私は考えます。

<いずれにしても、必要なことは>
 時間と空間。そしてその時間と空間を現実化する資金、つまり予算です。けん玉を子どもたちが楽しむには、十分な児童クラブの広さが必要です。ギュウギュウ詰めで足の踏み場もない大規模状態ではとてもけん玉をダイナミックに楽しめることができません。失敗と挑戦がつきもののけん玉ですから、分刻みのスケジュールで決められた時間だけ、というのは不完全燃焼になりませんか?既定のプログラムでがんじがらめのスケジュールでは、心行くまで楽しめることができないでしょう。逆に、「今日はけん玉を1時間」と事前に決めておいても、人間ですから「今日は気乗りしない」として5分経たずにほかの遊びをしたくなるときだってあります。「決められて従う」遊びは「遊び」ではなくて「作業」である。このことを一般の児童クラブ支援員なら理解しているはずです。

 一輪車にしても同様。昨今は待機児童解消でとにかく児童クラブの施設数を増やさなければならない状況の地域では、子どもたちが遊べる庭の有無にこだわっていられないこともごく普通でしょう。とても一輪車で遊べる環境がない、都市型児童クラブも多いことでしょう。立地条件や環境によって、外遊びができない状況にあることは致し方ありません。自治体が積極的に学校施設の活用に取り組んでいれば、少しは状況も変わるのでしょうが。

 とかく地方自治体は、ごく一部の自治体(特別区など)を除いて、財政状況が極めて厳しく、児童クラブに対しては付ける予算の優先順位が低くなってしまうことが往々にしてあります。以前、当ブログでも紹介した愛知県岡崎市の、突然の補助金カットの事案は2月6日に地元のテレビ局が報道で取り上げたようですが(【学童料金を値上げへ】なぜ補助金削減…署名活動も 愛知・岡崎市)、まさに児童クラブの優先順位の低さから補助金が削られそうになっている、という典型的な事例です。
 しかし、当たり前ですが、児童クラブで行われる育成支援の質は、予算の額と表裏一体、トレードオフです。児童クラブへの予算を減らして職員を減らして遊具に使える予算も本の購入の予算も減らしてしまえば、そこで子どもたちは、いったい何をして過ごせというのですか?
 「子育て支援に力を入れています!」と自治体がアピールするのであればその本気度を確認するのは簡単です。児童クラブを見ればいいのですよ。児童クラブが疲弊していたり、画一的なプログラムを行う事業者に丸投げしているような自治体は、「口だけの子育て支援」の嘘つき自治体と考えてよいでしょう。 

<ぜひ、クラブの中に入っていこう。積極的に招き入れよう>
 お子さんが児童クラブを利用している保護者さんは、子どものお迎えの時に児童クラブの部屋の中にどのくらい入っていますか? 冬場ですと、感染症のリスクや、あるいは母親であるならブーツを脱ぐのが大変ということもあって、出入り口やエントランス付近で立ったまま子どもが帰り支度を終えるのを待つ、ということが多いでしょうかね。管理上の問題から、児童クラブの室内に保護者を入れることを認めていないクラブもあるでしょう。

 児童クラブの中に入って、その場の様子を見る、見てもらうことは運営支援は重要なことと考えています。子どもにとって過ごしやすい児童クラブを運営できているなら、事業者とて、中を見せない、隠したくなる理由は生まれないはずです。堂々と児童クラブの「中身」を見せてください。子どもも、そして職員も「うちは素晴らしい児童クラブ」だと胸を張って言えるのであれば、「ぜひぜひ、中に入って様子を見てください」と言えますよね?
 保護者も遠慮なく、児童クラブの中の様子を見ていきましょう。児童クラブ側が例え隠したいことがあっても、子どもの様子を見ればそのうち気付くことがあるでしょう。他者の監視がない行動は、いずれ、堕落するものです。子どもたちが過ごす場の質が低下してやいないか、を見抜くことができるのは、保護者ならではです。ぜひ、週に数日でいいので、児童クラブの中に入って「どんな世界が繰り広げられているか」を確認してみてください。

<おわりに:PR>
 弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
 放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。

 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。

 放課後児童クラブを舞台にした小説を完成させました。いまのところ、「がくどう、序」とタイトルを付けています。これは、埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子ども達の生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ご期待ください。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)