放課後児童クラブに関わる全ての人は必読! 「子どもを守る新常識 性被害 セーフティガイド」(東洋館出版社)
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。このたび弊会に、東洋館出版社(東京都千代田区神田錦町)様から、新刊「子どもを守る新常識 性被害 セーフティガイド」(著:キンバリー・キングさん、訳:栗田佳代さん)の献本を受けましたのでご紹介します。「放課後児童クラブの方にも読んでいただければ」ということでしたが、まさに放課後児童クラブにもぴったりとあてはまる内容です。断言します。放課後児童クラブに関わる全ての人、現場職員、運営する役員、保護者、行政の児童クラブ担当者さんは「必ず読んでほしい」と私は激推しします。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<書籍の紹介>
「子どもを守る新常識 性被害 セーフティガイド」(子どもを守る新常識 性被害 セーフティガイド – 東洋館出版社 定価1,800円、税込1,980円 実用書(子育て・性教育))は、本の帯に「3歳~10歳の子どもを育てる保護者へ」とのキャッチコピーがあります。ですので児童クラブの人がこの本を見かけたとき「保育所や幼稚園、よくて低学年向けかしら」と一瞬思ってしまうかもしれません。ええ、ここの部分、「子どもを育てる保護者、子どもに関わる全ての人へ」と言い換えたほうがいいよと私は言いたいほど、「児童クラブの子どもたちに対しても、全く違和感なくこの本で紹介されている事象があてはまる」内容になっています。
筆者のキングさんは、米国の方で、児童性被害のない世界の実現を目指す米国の非営利組織の認定ファシリテーターであり、現役の幼稚園教諭でもある、とのことです。小学6年生までの初等教育の教員免許も有していると記されています。キングさんの、その確固たる行動原理を支えるものは自身の過去にあるとして、そのことも著書では記されています。この時点で、この本がどこまで本気の覚悟を持っている本であるのかが、十分すぎるほど伝わってきます。
「本書は、子どもたちに日々愛情を注いでおられる皆さんのための本です。大事なお子さんを守るための入門書であると同時に、すぐに役立つ実践的なガイドブックともなっています」(12ページ目)とあります。まさにその通りです。この文章の続きに3歳~10歳を想定とありますが、私の印象では、支援者つまり子どもたちの支援、援助に従事する側としては小学生を対象に十二分に自身の知識、行動を考える極めて有効な内容であることと、保護者に対しては自身のお子さんが義務教育を終えるまでの間にこれも十二分に知っておいて役立つ内容ばかりであると、感じました。
あまり本の内容を紹介することはいたしません。ぜひとも購入して読んでほしいのですが、児童クラブに関わる方向けに少しだけ紹介させてください。
<「まさにそうでした!」と実感した内容>
第2章「危険信号に気づく」は極めて実践的な内容です。ここでは「グルーミング」という印象的な単語が頻繁に登場します。同書から引用しますと「グルーミングは、加害者が被害者を手なづけるためにおこなう行為を指します。」と説明されています。
このブログで私は、自身が属していた組織が雇用していた職員による性暴力について時折言及してきました。事案に対応する最高責任者として事案の端緒から検挙、公判、民事裁判に至るまで数年間ずっと関わってきた経験を有しています。そのような自身の経験からして、同書が紹介しているグルーミングの手法が、「まさにそうでした!その通りでした!」とすべからく同意することばかりなのが、この本の優れた内容を証明していると私自身には具体的に理解できました。
グルーミングの手口として、11態様におよぶ手口と、その対策が詳細につづられています。そのほとんどが、実際に、私が目の当たりにした、もっと正確に言えば「見抜けなかった」ことばかりです。当時、自分自身が事案の対応に向き合って専門家による第三者委員会による調査と改善の指摘を厳しい内容として受けましたが、その指摘の内容がまさに同書に記されている対策の内容に沿っていたこともまた、いかに同書が実用的であるかを私に確信させるに十分なものでした。
あえて申せば、これは「対子ども」というグルーミングの定義を超えるのですが、実際に実務で子どもへの支援、援助に従事している者への教訓となる視点を付け加えるとしたら、「同僚や仲間が自身に寄せる信頼を上手に欺き、利用する」という手口を付け加えてもいいのかな、と感じました。もっともこの点は、私自身が痛いほど体験したことですので、ぜひ弊会が行う「児童虐待・職員不正行為防止研修」のご利用をご検討ください。
<児童クラブの実務上、実に大事なことが沢山>
上記のグルーミングについては、「現実に子どもへの性暴力が進行している、進行しつつある中で被害を最小限に食い止める、早期発見に結び付ける」という効果が期待できますが、次に紹介する同書の内容は、「いかにして子どもへの性暴力を防ぐか」の観点から、極めて重要な内容だと私には理解できました。
第8章は「自分の感情を言葉にするー「からだの安全の守り方」の伝え方②」、です。ここは、育成支援の本質的な狙いとも関わってきます。詳細は同書で学んでほしいのですが、子どもの性被害はこども自身の自尊心の低い子ほど、その性被害を受け入れてしまうという記述は、極めて重要です。日本の、まっとうな児童クラブでは育成支援を事業の中核にしていますが、その育成支援は、子どもが主体的に育つ過程を職員が支援、援助することを含み、適切な育成支援を受けながら育った子どもは自身の自尊心、自己肯定感など、いわゆる社会で生きるための能力(社会性)を十分に備えていきます。
よって、第8章にて紹介されている内容は、実は育成支援にとっても重要なことであり、児童クラブの場でしっかりと展開されているはずである、とも言えます。特に、第8章で紹介されている「取り組み2」「取り組み3」は、児童クラブの職員や運営者が意識して、職員に必要なスキルとして会得してほしいと私は考えます。
第9章は「同意についてー「からだの安全の守り方」の伝え方③」、です。これは、子どもの意見表明の重要さを伝える内容となっています。2025年4月から、放課後児童クラブ運営指針が一部改訂され、子どもの意見表明の重要性がより強調されていますが、この第9章においてもその点の重要性がしっかりと指摘されています。
特に156ページ目にある、「「いやだ」を言える・受けとめる」は、日本の児童クラブの構造的な欠陥である「人数の多さ(大規模化)」によって、職員が子ども集団の統制の困難さを克服するために、ややもすると職員側の指示・強制が一般的な子どもとの関係性を固定する要因となっている点に関係する内容であると私には感じられました。大規模状態や、あるいは「子どもは大人の意見に従って学んでいくものだ」という固定観念が根付いた児童クラブにおいて、子どもからの意見、意思を職員側、運営側がしっかりと受け止められるのか、あるいは子どもにとって自身の意見や意思を表明する機会を奪われてしまうことにならないか、という懸念に対する、児童クラブ側の軌道修正を意識させる内容となっていると、私には感じられました。
以上は、同書のほんの一部分に過ぎませんが、いかに児童クラブで重要な内容ということが理解できるでしょう。児童クラブの正規職員や運営責任者であれば1冊を買ってほしいですし、また1つの児童クラブに1冊、常置しておいてほしいです。
そして保護者の方にもぜひ、知っておいてほしい内容ばかりです。残念ながら児童クラブを舞台にした子どもへの性暴力は、この世の中に「絶対大丈夫」ということが存在しない以上、ごくわずかであっても存在する可能性があるものです。誰だって、子どもを保育する立場の者が子どもの水筒に尿を入れるなんて想像しませんよね。ですが、現実にそういう呆れた行為をした者がこの世の中に存在するのです。性犯罪というものは自身の感情、欲望によって誘発される性質である以上、どのような運営形態の児童クラブでも、絶対に起きないとは断言できません。であれば、保護者として我が子を守るために求められる、保護者の目が届かない時間帯において子どもがどのような状況に置かれているのかを見抜くための手法、あるいは見抜くために必要な考え方や行動のお手本がたくさん盛り込まれたこの本は、ぜひ読んでおくべき1冊と私は自信を持って推薦します。
児童クラブの運営者側は、同書をはじめとして、他にも有効な資料や教材、あるいは専門的知識を有する方を招くなどの活用によって、子どもを卑劣な犯罪行為から守るための努力を尽くさねばなりません。子どもだけではありません。今の大人たちもまた自己肯定感が極度に低い人が多い中で、そのような人たちが児童クラブの職員として業務に従事している実態を認識し、子どものみならず大人の職員であっても、同僚や上の立場の者から性暴力の被害にさらされている可能性を念頭において、労働環境の適正な整備に努める必要があります。その際の基礎的な考え方としても、この本は示唆に富む1冊であると私は感じました。
結びに、素晴らしい本を弊会に献本してくださった東洋館出版社様のご厚情に厚く御礼申し上げます。私もまた、しっかりと熟読して学びを深めていきます。ありがとうございました。
<おわりに:PR>
弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。
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弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。
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放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。
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「リアルを越えたフィクション。これが児童クラブの、ありのままの真の実態なのか?」 そんなおどろおどろしいキャッチコピーが似合う、放課後児童クラブを舞台にした小説を完成させました。「がくどう、序」というタイトルで、2025年3月中旬に、POD出版(アマゾンで注文すると、印刷された書籍が配送される仕組み)での発売となります。現在、静岡県湖西市の出版社に依頼して作業を進めております。
埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子ども達の生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった、元新聞記者である筆者だからこそ描ける「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作にも十分、活用できる内容だと確信しています。ご期待ください。
20万字ほどの超大作になってしまったので、注文を受けてから印刷するという仕組みの設定上、価格が2000円以上になってしまいます。気軽に買える値段ではないのですが、それでも、損はさせません!という気合を込めて、お願いします。ぜひ、手に取ってください!
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「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)