放課後児童クラブに保護者会があります。役員決めが上手くいく方法はありますか?

 放課後児童クラブ(児童福祉法に規定されている放課後児童健全育成事業を実施する施設のこと。学童保育所もその多くが該当します)に、保護者会があることは珍しくありません。運営自体を担っている場合(つまり、保護者が経営者になる)もあれば、運営そのものは法人、市区町村であっても保護者会が部分的に事業運営業務を担ったり、あるいは事業運営には関与しなくてもクラブで行われるイベントの企画や運営を担ったりすることで保護者会が設けられている場合があります。

 大前提として「うちのクラブにある保護者会は、本当に存在が必要な合理的な理由があるのか」を常に保護者1人1人が問いかけていくことが重要ですが、それはいったん置いておいて、いま存在している保護者会の役員をどうやって決めるのかは、とても難しい問題です。

 立候補で、あるいは普段からの声がけ、スカウト活動で、来年度の役員がすんなり決まればいいのですが、「会長だけは見つからない」とか、「何をするのか全く分からない渉外(例えば、連絡協議会などに参加する役割)部門に、やってくれる人が見つからない」というのは、よく聞く話です。そのような場合は、くじ引きや、ポイント制による選出で機械的に選ぶという場合もあると聞きます。

 くじ引きで決めなければならないほど、やってくれる人がいない立場は、「誰もが重要性を認識していない」か、「責任や業務量が多すぎて、必要なのは分かるけれどとても務まらない」ということが考えられます。前者の場合は、廃止してしまえばいいですし、後者の場合は、業務量の削減や分担を、保護者会全体で検討することから始めましょう。

 なお、「会長」という立場、つまりトップの立場は、責任を減らすことは不可能です。責任の無いトップは、トップではありません。誰もが責任を負わない組織は無責任であり、それこそ存在するだけ害悪です。会長を増やすということもしばしば行われるようですが、会長を3人にしたところで会長1人1人の責任が3分の1になるわけではなく、会長の責任を負う立場が3人になるだけです。つまり、会長1人の責任を仮に100としたとき、4人の会長を選出したから1人の責任が25になるのではなく、100の責任を負う人が4人になった、つまり400の責任ができるだけです。

 会長など、なかなか引き受け手が見つからない保護者会と、その役員には、まず「保護者会の棚卸し」をしましょう。棚卸しとは、「保護者会で今までになってきた業務、やってきたことの全ての洗い出し、可視化」です。それを行ったうえで、「その業務、やってきたことは、子どもの育ちを支えること、職員の業務を支援すること、保護者の子育てを支援すること、クラブで行われる育成支援の事業に、本当に有益なのか。それは保護者会でなければできないことか。保護者会で行うには不適切な業務は含まれていないか」と、ゼロベース、つまりまっさらの白紙の状態で改めて1つ1つ、確認することです。

 その上で、「これはどうしても必要な任務であり、業務であるから、担当者を置かざるを得ない」となれば、「できる人が、できる範囲で、無理のないように行う」ことを絶対的な約束事項として、保護者全員に投げかけることです。それでも誰も引き受けない、やれないということであれば、それはもう不要な役職として消滅させるべきでしょう。それが会長であれば保護者会の解散となりますし、保護者会が児童クラブを運営しているのであれば、その運営を取りやめることです。
 その結果、運営事業者がなくなることで児童クラブが消滅しても、それは保護者の皆さんが最終的に選択した結論です。また、運営を行政に委ねることを求めることも当然、その後の選択肢になるでしょう。その結果、例えば、営利だけを目的にしている企業や非営利法人の仮面をかぶった利益確保至上主義の団体が児童クラブの運営を引き受けることになっても、それは致し方ありません。もちろん、そうではない事業者が運営を引き継ぐことだって可能性はゼロではありません。児童クラブの業界は、保護者による運営がその負担の限界ゆえ運営を手放すという状況が各地で起こっているのを当の昔に承知しているのですから、そのようなクラブの運営の受け皿となる組織、団体、企業を育てることが必要です。もっとも、そのようなことには全く関心も無いようですし重要性も認識してはいないようですが。

 くじびき、じゃんけんは、結果的に、責任を負えない人が役職に就くことになるので、やるべきでありません。責任が負えない組織ほど恐ろしいものはありません。誰もが係や役員をやらない組織は、そもそも、存在意義がない、すでに役割を終えた、使命を終えた組織であると考えればいいのです。

 (運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)