放課後児童クラブで働く人の悩みは何ですか?

 放課後児童クラブ(放課後児童健全育成事業を行っている施設であり、いわゆる学童保育所)で働いている職員は、低賃金と過重な業務で常に悩まされているといえます。これらは福祉業界では共通する悩みですが、児童福祉の世界では、保育士への待遇改善がかなり進む一方で、放課後児童クラブにおいてはまだまだ改善の途上にあります。

 低賃金ですが、放課後児童クラブで働く、いわゆる正規職員(常勤職員とも)においては賞与込みの年収が200万円台が通常で、キャリアを十数年重ねてようやく300万円台になる、ということが一般的です。さらには、公営のクラブや、大手の広域展開事業者(複数の都道府県でクラブ運営を手掛けている事業者)においては非正規雇用が一般的であり、数年間契約の契約職員も正規職員(常勤職員)として扱われています。このような雇用形態では賞与もなかったり低額だったりするので、年収はさらに低下します。
 もちろん、キャリア20年以上で年収500万円台を保障する事業者もありますが、ごく少数です。一般的には、児童クラブの世界は「ワーキングプア」か、それに近い状態です。

 この低賃金に見合わない職責の重さが児童クラブ職員の悩みの種です。当然、受け入れる子どもの安全安心を確保しますが、児童クラブの仕事は、ただ単に子どもを預かるのではありません。子どもの成長を支える仕事です。子どもが自らの育つ力を駆使して日々、成長していくところをつぶさに把握し、必要に応じて助言したり支えたり、時には教え諭し、叱ったりします。単純に、あれをしなさい、これをしなさい、ではありません。(単純にああしろ、こうしろと言うばかりの児童クラブ職員も残念ながら存在していますが)

 この難しい仕事に、賃金が釣り合わないのです。さらにまして、保護者との関係の難しさも児童クラブ職員を悩ませます。いわゆるカスタマーハラスメントです。利用者の立場が常に優越する近年の一般的な傾向において、児童クラブ職員にとっては受け入れ難い要求を一方的に押し付ける保護者に嫌気がさして退職する児童クラブ職員は多いのです。他にも、厳しい職場環境の改善に取り組もうとしない事業者や設置主体(市区町村)の姿勢にも幻滅して退職を選ぶ児童クラブ職員も多いのです。

 多くの児童クラブ職員は、放課後児童健全育成事業の価値と、育成支援の専門性と意義を社会に理解してほしいと願っています。それが実現すれば児童クラブおよび児童クラブで働く者への社会的な評価が向上し、賃金も上昇すると考えているからです。それがなかなか実現しないことが、実は一番の、児童クラブ職員の苦悩かもしれません。

(運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)