放課後児童クラブでは、どうして「スキマバイト」は好ましくないのですか?

 放課後児童クラブ(児童福祉法に規定されている放課後児童健全育成事業を実施する施設のこと。学童保育所もその多くが該当します)は、クラブに在籍している子どもたちの安全安心を守りつつ、子どもの成長を支えるという事業を行っています。そうすることで、保護者が安心して仕事をしたり学校に行けたりするのです。大事なことは、「子どもをただ預かって見守っているだけ」ではないことです。

 仮に、クラブに来ている子どもたちの様子を監視し、見守っているだけであれば、いわばプールの監視者と同じことであって、従事する者に必要な技能は、事故や事件が起こりそうな状況になったときに未然に防止する、ということが主なものになります。敷地の外に飛び出さないように見張る、飛び出そうとしている子がいたら制止する、あるいは棒や尖ったものを持って走り回っている子どもがいるなら制止し、持っている物を取り上げる、ということです。

 これでしたら、初めてその日、そのクラブに来た人物でも、現実的には業務を行うことができるでしょう。つまり、児童クラブにおけるスキマバイトの役割として子どもの監視、見守りということが期待されるのであれば、です。

 ところが、児童クラブにおいては、無資格のアルバイト職員などが分類される「補助員」も含めて、放課後児童支援員である職員と一緒に、継続的に子どもの育ちに関わり、適切な支援、援助を行うことが求められています。そのために、児童クラブの職員はこれも継続的にクラブの児童について情報を共有し、子ども1人1人に適した支援、援助(=育成支援)を行うことが、放課後児童クラブ運営指針にて求められています。

 これは、その日に単発で事業場に配属されたスキマバイトでは、到底なしえないことです。

 またクラブ運営事業者の責務として、従事する者が児童や保護者の支援、援助に関して適切な素質があるかどうかを把握したうえで業務に従事させることが必要です。労働安全衛生法では、事業者は、雇い入れるすべての者に「安全衛生教育」を行うことを義務づけています。(第59条)。臨時に屋取り入れるスキマバイトでは派遣元の事業者にその責務が課せられますが、現実的に派遣元の事業者が児童クラブにおける複雑な業務について安全衛生教育を行うことは不可能ですから、受け入れ側の児童クラブ側でも同様の安全衛生教育を行うことが必要です。
 その日に急にやってきたスキマバイトの者が、1人1人に個性があり、それぞれの家庭環境や成育環境の背景を持ち、その子その子に適した育成支援を実施するには、とてもスキマバイトではその責務を果たせません。安全衛生教育も、子どもの個性に応じた適切な支援、援助も、「資格があるから大丈夫」「補助員だから資格も不要だし、大丈夫」「スキマバイトの事業者で誓約書を用意して署名させたから大丈夫」では、ありません。

 児童クラブに属する側も、自らの事業内容を正確に理解していればスキマバイトの配置がクラブにおける育成支援に不適切であるかどうかはすぐに理解できるはずですが、そうなっていないことは極めて残念であり、育成支援の本質を実は理解していないことの証左でしょう。

 なお、児童クラブにおいても例えば監視員的な役割のみが期待されるような業務、例えば所外活動における安全監視担当など、求められる業務の内容においてスキマバイトであっても対応できると判断できる業務内容はあるでしょう。要は、子どもと関わる業務においては適切であると考えられない、子どもと関わらない業務(例えば調理場での皿洗い要員、監視員的な業務)においては場合によってスキマバイトでも問題は少ない、という判断はできるでしょう。

 なお、当然ですが通常時から職員を継続的に雇用して子どもと保護者の支援、援助を行うことがクラブ運営事業者に求められる姿勢です。人件費を節約しようと低めの賃金を設定しているためになかなか職員を雇用できず、急場しのぎにスキマバイトに頼ればいいという運営姿勢であるならばそれは厳しく批判されるべきです。行政は、事業者が申し出た必要最小限の人件費の積算に応じて補助金を算定しているわけですから、その人件費をさらに節約して事業者の利益をさらに増やそうとした結果、常時雇用する職員が足りなくなり、その不足分を補うためのスキマバイト雇用は補助金交付の趣旨からしても許されません。行政の徹底した管理、監督が必要でしょう。

(運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)