放課後児童クラブで、またも、わいせつ行為による検挙事案の報道。このままではダメです。実践的な対応の導入を。
放課後児童クラブ(学童保育)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。大変残念なことに、沖縄県内の放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所の中核的な存在です)で、またも児童クラブ職員が検挙される事案が報道されました。本事案の問題点は、まったく抑止力が働いていないことです。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<報道から>
今回の事案を伝える報道を紹介します。まずNHKの「沖縄 NEWS WEB」12月4日5時30分に配信の「沖縄本島中部の学童施設学童支援員 不同意わいせつ容疑で逮捕」という見出しの記事を一部紹介します。
「先月、沖縄本島中部で、32歳の学童支援員がこの学童施設に通っている小学生の女児の下腹部をさわったとして、警察に不同意わいせつの疑いで逮捕されました。逮捕されたのは、浦添市に住む32歳の学童支援員です。警察によりますと、本島中部で、先月2日から4日にかけてのいずれかの時間に、この学童施設に通っている小学生の女児の下着に手を入れて下腹部をさわったとして不同意わいせつの疑いが持たれています。先月18日に、女児の話を聞いた親族から小学校に相談があり、教頭が警察に通報したということで、警察は、女児に話を聞くなどして捜査を進めていました。」(引用ここまで)
沖縄テレビ放送が12月4日13時17分に配信した、「女子児童の下腹部を触った疑い 学童支援員(32)を不同意わいせつの疑いで逮捕」という見出しの記事も一部紹介します。
「学童支援員の男は、11月2日から4日の間に、勤務先の放課後児童クラブとは別の本島中部の建物内で、女子児童の下腹部を触るなどのわいせつな行為をした疑いが持たれています。児童の親族から相談を受けた小学校の教頭が警察に通報したことで事件が発覚しました。県内では2024年10月にも放課後等デイサービスで男子児童にわいせつな行為をしたとして、当時、学習支援員だった男が逮捕されています。県は、2024年10月、各市町村に再発防止を求める通知を出し、11月には関係者が集まる場でも「職務倫理を自覚して不適切行為が無いように職務にあたる」ことを求めていました。県の子育て支援課は、「誠に遺憾で対応策を検討していく」とコメントしています。」(引用ここまで)
<何が問題か>
報道によると、被疑事実は今年11月2日から4日の間に行われたようです。ところで、沖縄の放課後児童クラブを巡っては、次のような事案も報道されていました。琉球新報は「元学童支援員の男を再逮捕 女児2人へのわいせつ疑い 沖縄県警」という記事を今年10月22日午前5時に公開しています。この事案は他のメディアでも報じられました。この事案は再逮捕でしたので、その前、今年9月30日に最初の逮捕について報道されています。NHKは「放課後児童クラブで児童にわいせつ行為の疑い 元支援員を逮捕」として記事を公開しています。
今年の9月末から10月半ばにかけて、放課後児童支援員による子どもへの性加害が報じられていた矢先の、今回の報道事案です。仮に報道されているように11月2日から数日の期間でわいせつ行為が行われたとしたら、今回、被疑者となっている人物はこうした報道のことをまったく知らなかったのでしょうか。その可能性はあります。残念なことに放課後児童クラブで働く方の多くは事件や政治などの報道やニュースを視聴する習慣があまり見られないようだということを、私は目の当たりにしてきました。
しかし、報道だけではありません。先の沖縄テレビ放送の記事に、「県は、2024年10月、各市町村に再発防止を求める通知を出し、11月には関係者が集まる場でも「職務倫理を自覚して不適切行為が無いように職務にあたる」ことを求めていました。」とあります。11月の、関係者が集まる場というのが、今回の報道にある11月2日からの被疑事実があったとされる日以降に設定されているでしょうが、少なくとも県は10月に各市町村に再発防止を求めています。それは遅滞なく、各市町村内の放課後児童クラブ事業者に伝えられているでしょう。その上で11月に、放課後児童クラブの関係者、この関係者がどういう人たちなのか不明ですが、業界関係者にも、再発防止に尽くすよう県から求められていたわけです。
児童クラブの運営事業者は、県から再発防止を求められた後、組織内で、いかにして不適切な行為の発生を防ぐために、どういう対応をしたのでしょうか。ただ話を聞いて終わりだったのでしょうか。ただ配られた資料を掲示するかメールで職員に配信する程度だったのでしょうか。本当に、いったい何をやっていたのか。また、児童クラブの職員たちは、いったい何をやっていたのか。
こういう不適切、というか非違行為、犯罪行為を行ったと疑いをもたれる者は全体のごくごく一部にしか過ぎないことは間違いないのですが、たとえそれが1人であっても、残る何千人、何万人ものまじめな放課後児童支援員、放課後児童クラブの職員全体に対する信頼を失墜させることの、想像ができないのでしょうか。
あえて言いますが、そういう想像ができない人たちは、この業界で大勢働いています。
もう1点の疑問があります。報道された事案では、放課後児童クラブではない別の場所で、わいせつな行為が行われたとされています。詳細はまったく不明ですが、今年11月2日は土曜日であり、3日は祝日、4日は振替休日です。児童クラブが開いていない日にちを含んでいます。ということはどこか別の場所で会っていたのでしょうが、職務外において児童クラブの職員が入所世帯の人と所外活動などで会うことがあっても、児童個人と会うことは異例です。このことについて、事業者は、あるいは被疑者の同僚は、何も知らなかった、気づかなかったのでしょうか。
多くの児童クラブの事業者は内部規定で、わざわざ職員が個人的に児童と面会することを禁止してはいないでしょうが、このような事案が相次ぐようでは、事業者が規定で職員の行動を制限する必要も生じますね。
<徹底的に、実務に即した「早期発見行動」の導入が必要だ>
今回の事案は、同種事案の報道がされていても、あるいは行政機構が再発防止を求めても、残念ながら検挙されるような事案が放課後児童クラブではいまだに起こりうる、ということを明確にしました。いくら報道されても、報道に触れない限りは意味がありません。私も運営支援ブログで警鐘を鳴らしていますが、このブログの存在などまったく知らない児童クラブ関係者の方が圧倒的に多数です。無視している人たちも同様に多いですが。報道や警告は、届かなければ効果が発揮できません。
まして事業者を集めて再発防止を求めても効果がないのでは、どうしようもありませんね。
まずは緊張感が必要です。放課後児童クラブ職員が起こした違法な行為について起訴されて有罪が確定したということになれば、その事業者には、例えば次年度以降のクラブ運営を任せない、あるいは競争で事業者を選ぶときには減点をする、というペナルティが必要です。公の事業の事業者をどうやって選ぶのかは市区町村が決めればいいだけの話ですから、市区町村がルールを設ければいいのです。そうすれば、事業者は緊張感をもって再発防止策に力を入れるでしょう。
仮にそのようになれば、事業者は、児童クラブを続けていきたいという意欲があるのであれば、その組織内において、いかにして不適切な事案の発生を防止するのか、真剣に向き合うことでしょう。そのときこそ、児童クラブの事業者は、従事する者が違法な行為を起こさないように十分な制度を整えることができる機会となります。その時に導入するべきなのが、運営支援が唱えている「早期発見行動」です。
早期発見行動については過去になんども当ブログで紹介しています。2024年10月30日付のブログなどです。ぜひご確認ください。 https://aiwagakudou.com/放課後児童クラブ内で犯罪行為を起こさない防/(新しいタブで開く)
大まかな内容としては、環境面の整備と、職員の取るべき行動を定めています。その双方を徹底することで、当然ながら実施しているコンプライアンス研修や児童虐待研修の場で触れる緊張感が更に強調されていきます。
もっと重要なことは、根拠のない性善説の打破です。児童クラブの世界には、「子どもが好きな人、子どもを支えたいと思っている人は善人。悪い人はいない」という根拠のない考えが広がっています。「子どもの権利を守りたいと言う人は信頼できる」という人に何人も出会ったことがあります。また、「他人を疑いたくない。子どもを信じる仕事に就いているのだから、人を信頼していきたい」という人も、結構いますね。
残念ですが、あえて言わせてください。「そんな甘い考えで、人を支える仕事に就くもんじゃない。そんな考えしか持てないんなら、別の仕事に就きなさい」。
子どもを守りたいなら、徹底して不適切な行為、犯罪行為を起こさないための取り組みを徹底して実践しなさい。同じ職場で働く人、それが先輩だろうが後輩だろうが、仕事上の技術、スキルに尊敬や敬意を持っていたとしても「あれ、その行動は、果たしてどうなのだろうか?」という疑問や点検の意識を常に持って置け、ということです。人柄がとてもよくて仲が良く頼りになる同僚、先輩、上司、後輩であっても、例えばその人がいつも同じ子どもとばかり関わっている、時々2人で別室や倉庫に入る、といった行動をしていることに気が付いたら、そこに「何があるのか」という疑問を抱き、その中身を確認する作業に入りなさい、ということです。そういう意識をもって常に他の人を見ていたとしても、それは別に裏切りでも不信感でもなんでもない。人間が、他人を守るために必要な基本的な行動の1つに過ぎません。
子どもだけが対象ではありませんよ。人が人に行う不適切な行為は児童クラブにおいては子どもだけが対象とは限りません。職員同士だって、職員と保護者の関係だって同じことです。
人を守りたい、支えたいと思うなら、「その先の行動に、何が隠されているのだろう。その行動は、どういう動機で行われているのだろうか」と、常に考えることです。そのことが不適切な行為を未然に防ぐ、あるいは早期に見いだせる。「早期発見行動」とは、児童クラブに必ず必要な行動です。報道でも事業者の指示でも個々の職員に届かないのであれば、事業者(この場合の事業者とは、運営組織そのもの)が、組織に関わる人すべて(つまり、職員も役員も)に、早期発見行動を義務づけることが、必要なのです。
このことを徹底的に実践しない限り、児童クラブにおける不適切な行為はなかなか減らないでしょう。早期発見行動をぜひ、運営支援から学んでください。「えっ、そんなことまでするんですか?人間不信になりそうです」と思うような、甘ったれた意識では、人を守り支える事業を営む、従事する資質はありません。わたくしは、どこにでも説明に参りますよ。
<おわりに:PR>
弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。
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放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。
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現在、放課後児童クラブを舞台にした小説を執筆中で、ほぼ完成しました。とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子ども達の生き生きと遊ぶ姿や様子だけを描いた作品ではありません。例えるならば「大人も放課後児童クラブで育っていく」であり、そのようなテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。出版にご興味、ご関心ある方はぜひ弊会までご連絡ください。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ぜひご連絡、お待ちしております。
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)