小4の壁は、放課後児童クラブ(学童保育所)の本質と弱点を明確に示す大問題。国と自治体は解消に本気を見せて。
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士でもあります。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
子育て、とりわけ小学生の子育てにはいろいろな「壁」があります。放課後児童クラブに関して、運営支援が重要視しているのは「小4の壁」。この問題について世間に訴えるメディアの取材に協力しました。本日のブログは小4の壁がなぜ重大な問題なのかを改めて解説します。
(※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
<小4の壁を取り扱った記事が出ました>
小4の壁とは何でしょうか。児童クラブの世界でいえば、小学4年生になると児童クラブに入所できなくなる現象を指します。なぜ小学4年生になると児童クラブに入所できなくなるのか理由があります。
理由その1:児童クラブを利用したいのは小学1年生が最多ですが、児童クラブに入所できる人数は施設の広さなどの理由で上限があります。そうすると、小学1年生を入所させるために、高学年のこどもの入所を断って小学1年生や低学年を優先して入所させる措置が一般的に講じられています。よって小学4年生が中心に、児童クラブ入所ができず、「壁」が生じるのです。
理由その2:そもそも小学4年生以上の高学年を、児童クラブの入所可能な学年と設定していない地域が、ごくわずかですが存在しています。児童クラブは、児童福祉法に基づく放課後児童健全育成事業を行っている場所を示していますが、この放課後児童健全育成事業は2015年になるまで、児童福祉法においては「おおむね10歳」のこどもを対象としていました。なお児童福祉法は2012年に改正され、2015年度から小学生が対象となりました。小4以上のこどもがそもそも児童クラブに入所できなければ当然、「壁」が生じます。しかも東京都内に小学4年生以上のこどもを受け入れない地域がまだ残っているのです。
2026年2月11日に、小4の壁を扱った2つの記事がウェブメディア「AERA with Kids+」(アエラキッズプラス)で公開されました。ヤフーニュースにも2月11日と12日に1本ずつ、記事が配信されています。ぜひみなさまにもお勧めします。読んでみてください。
AERA with Kids+での記事のURLを貼り付けます。検索では「アエラキッズプラス 小4の壁」で記事が見つかるでしょう。
「学童保育「小4の壁」とは? 「民間学童に17日で約9万円払った」ケースも」
(https://dot.asahi.com/aerakids/articles/-/274537)
「学童は低学年だけのものじゃない!「高学年が進んで通う」理想の学童とは? 専門家が見た現場」
(https://dot.asahi.com/aerakids/articles/-/274549)
<小4の壁がなぜ深刻なのか>
放課後児童クラブは当然ながら、就労など何らかの理由があって自宅でこどもを監護できない保護者が利用する仕組みです。こどもの生命身体の安全安心を確保するために必要な場所であり、こどもを受け入れている時間にこどもの健全育成を実施する児童福祉の仕組みです。
よって、必要とする子育て世帯が利用できなければ意味がありません。しかし、利用したくてもできないという現実がいまだに社会において存在しているのは許しがたい事態なのです。児童クラブにおいて、利用できなくてもできない状態は「待機児童」という形で可視化されますし、憎らしいことに「隠れ待機児童」といって闇に隠されてしまう待機児童の状態すら存在します。
小4の壁も、新1年生が児童クラブに入所できない小1の壁も、ともに深刻です。児童クラブを利用したくても利用できない状態が大問題なのですから。とりわけ小4の壁の悲惨さは、「4年生ぐらいになればもう留守番したって大丈夫でしょう。整備が追い付かないけど、なんとか過ごせるわけだし、我慢してもらうしかないよ」という大人社会側の身勝手な論理がその壁を構築しているからです。
小学4年だろうが1年だろうが6年だろうが、保護者とこどもが双方またはどちらかでも児童クラブを必要としているなら、児童クラブに入る仕組みを社会は整える責務があるのに、「まあ高学年はしょうがないよ」という大人社会側の勝手な決めつけで、こどもたちの最善の利益がないがしろにされているというのです。この社会の論理こそ大問題。こどもまんなか社会がまったく根付いていない。こどもの中で優先される対象が明確にランク付けさせられているのです。
小学4年生だから大丈夫というのはまったく根拠がありません。それをいうなら、小1だって小4、小6だって、大人が留守番を余儀なくさせれば留守番するしかありません。結果的に親が帰宅するまで無事に生きていることがほとんどなので「大丈夫」と思われているだけの結果論の積み重ねでしかありえないことです。それを平常、日常と大人側は考えているだけの話です。実際、まさかの事態、犯罪者がこどもを狙って留守番中の家の中に押し入って来るとか、帰宅途中のこどもを誘拐するか、あるいは暴走する車に跳ね飛ばされるとか、そういうことは「めったに」起こりません。めったに起こりませんが、ときたま起こるので年に数回、ニュースになりますね。皆無ではないのです。そしてその「めったに」が、「まあ大丈夫でしょう」とたかをくくっている地域社会の中で発生するかもしれないのです。小4だから大丈夫ではありません。
小4の壁は、単に入所できる能力の不足、つまり数や量的整備の問題ですが、児童クラブを利用したいこどもが利用できないという状況がずっと固定化されているという点で、こどもの最善の利益を社会が保障しようという意識が希薄なことを示していると運営支援は考えます。そこに、こどもを社会全体で育てていこうという理念の欠如を感じます。こども政策、子育て支援政策の質に欠陥があると運営支援は考えるのです。これこそ小4の壁の深刻さそのものです。この国の社会に、こどもの分断が平然と横たわっている。小さい子は大事のされるのだけれど育ってきた子どもは脇に置かれてしまっている。
<隠れ小4の壁>
都内には明確に小学3年生までの児童クラブ受け入れを示している自治体があります。早急に小学全学年の受け入れを可能にするための整備、量的な整備を進めてほしいのですが、都内に限らず全国で、隠れ小4の壁が存在しています。それは、「児童クラブの対象は小学生まで。ただし低学年を優先することがあります」という趣旨の断りを付けくわえている市区町村が実に多いことです。小学生であれば児童クラブに入所できるものの現実は大勢いる小学1年生など低学年を優先させねば待機児童が生じてしまうことで、小4や小3になると、「もうお家で留守番できませんかね?」とやんわりと児童クラブの運営事業者や保護者会などから、有形無形の圧力が加わることがあります。小学1年と小学4年、待機児童となって自宅で留守番する状況がどちらかに必ず生じるなら、小1を児童クラブに入れて小4は家で留守番してね、ということです。
この圧力を感じて「そうね、うちも小1のときは児童クラブに助けられたのだから、こんどの新入生が児童クラブで過ごせるようにしなきゃね」と、自主的に児童クラブへの入所申請をしなければ、それは本質的には待機児童ですが統計上は待機児童になりません。こういう構図は保育所の待機児童が大変多かった時代にも問題視されていましたが、今なおまったく解消していない構図です。
ここで令和7年の放課後児童クラブ実施状況で、待機児童数の状況を確認しておきましょう。
小1 1,966 (全体の12.0%)
小2 1,805 (全体の11.1%)
小3 3,305 (全体の20.2%)
小4 5,589 (全体の34.2%)
小5 2,644 (全体の16.2%)
小6 1,021 (全体の6.3%)
合計 16,330 (100.0%) 前年度より1,356人減少
これは公式に待機児童として把握されたこどもの人数です。隠れ待機は把握されていません。公式発表で小4や小3の待機児童数が多いですね。小5だって小1や小2より多い。これは何を意味していますか? すぐ2つのことをわたくし萩原は想像します。1つは「小学生の高学年でも、児童クラブの利用ニーズは高い」ということ、もう1つは「公式の待機児童で高学年の人数はこれだけ多いということは隠れ待機を考えると、はるかに多くのこどもと保護者が、児童クラブを利用したくても利用できない状況に置かれているのであろう」ということです。小3の待機児童数がかなり多いことにも留意が必要でしょう。小4の壁は小3の壁を合わせて「小3&小4の壁」となってより険しく分厚くなっているということです。
<経済的にも深刻な影響>
今回のAERA with Kids+の記事では、小4の壁のために民間の施設を利用したら17日間で約8万6000円を支払った、という事例が紹介されています。約9万円を支払えたから居場所を用意できたものの、それだけの金銭を用意できなければ、自宅で留守番させるしかないですね。家計にとって大ダメージです。それだけの金銭を用意できる子育て世帯と、用立てできない世帯都では、こどもの過ごし方に差がついてしまう。経済的に恵まれているかいないか家庭ごとの差が生じているのは、それ自体、どうしようもないことではありますが、こどもにとってより良い成長の環境を社会ができるだけ準備するのは児童福祉の観点では重要なこと。貧富の差はしょうがないけれども、こどもの安全安心が脅かされる環境を放置して良いとは、わたくしには思えません。
待機児童は経済的に深刻な影響を子育て世帯にもたらすことがうかがえる資料があります。厚生労働省による「令和7年版 別冊 厚生労働白書」です。若い世代向けに社会保障の重要性を説明する内容ですが、この7ページに気になる情報が紹介されていますので引用して紹介します。
「 女性が出産した後に正社員で働き続けるのと、退職するのでは、一生の世帯の所得は約1.7億円違ってくるという試算がある!
※ 女性の職業生活における活躍推進プロジェクトチーム(第4回)内閣府政策統括官(経済財政分析担当)提出資料より 」(引用ここまで)
小学生のこどもが待機児童になったことで保護者が仕事の形態を変えることがよくあります。その場合、就業の状態を変えるのはほとんどが女性です。女性のキャリア形成の中断をもたらすこと自体が深刻ですが、仮に正社員をあきらめてしまうと、世帯の所得が1.7億円ちがってくるという試算があるというのですから、こどもが児童クラブの待機児童になってしまったことで女性保護者が正規の仕事を辞めると、この別冊白書に紹介されている額に及ばずとも多少なりとも所得の減少を招くことになるでしょう。これはもちろん、こどもの教育や体験に使える金額が減るということです。
待機児童は、単に、「いまのこどもの安全安心な居場所が確保できない」だけではなくて、「その後のこどもの成長に関して使える資金が減ることによる様々な機会の喪失」にも影響するということです。
<国と自治体はすぐに小4の壁解消に本気を出してください>
百害あって一利なしですからね、児童クラブの待機児童。すぐに国と自治体は小4の壁は当然、児童クラブを利用したいすべてのこどもが児童クラブを利用できるような児童クラブの整備に、本気を出して取り組んでください。「なあに、いずれ少子化になるから、今程度の量的な整備ができていれば待機児童も難なく吸収できるさ」では、ダメです。いま時点のこどもと保護者も救ってください。
「まず、小4や小3までしか受け入れない児童クラブを設置している自治体に放課後児童健全育成事業の本旨に従うよう強い指導をする」
「公設の施設整備が遅れるなら民間の活力を積極的に導入する。具体的には民間事業者による児童クラブ施設の新設に使える補助金を創設する。その際は、少子化による閉鎖の可能性を鑑み、児童クラブ以外にも使える用途を含んだ補助金交付とする」
この2つだけでも実現すれば局面は変えられます。定員超過による弾力的な受け入れによる運営費の優遇措置が令和8年度から実施されることは歓迎です。やればできるのですから、どんどん、小4の壁解消につながる、本質的な施策を国と自治体に実施してほしいと切に願います。
<高学年に、児童クラブを>
最後に改めて伝えたい。高学年になれば児童クラブ、学童保育は絶対的に必要ではないという見方に断固反対です。なぜそういう捉え方が世間にあるのか。それは児童クラブが「こどもの預かり場」という認識が根底に根付いているからでしょう。高学年になれば、預けられる必要が無いのだから自宅で留守番させてもいいじゃないか、ということです。
違います。高学年だろうが低学年だろうが、児童クラブを必要としない環境のこどももいます。高学年だから児童クラブが不必要ではありません。児童クラブは「こどもが、人間として育っていく場所」です。生活の場であり、あそびを通じて人として必要な能力をじっくり身につけている場所です。高学年には高学年なりの児童クラブで得られる体験、経験、ものの見方、思考の仕方が、たくさんあるのです。
児童クラブで高学年がリーダーとなって低学年を含めたこどものまとまりを率いている姿を見てほしい。それをみると、児童クラブがいかにして、人の成長に役立つ場面をたくさん備えているかが分かるでしょう。
高学年にこそ児童クラブでの過ごしをこの社会が用意するべきです。もちろん、児童クラブとは違う場所で過ごすことを望む高学年には、その希望に沿った過ごし方が提供できるような社会でもあるべきです。「児童クラブを必要とするこどもに、児童クラブが利用できるように」ということ、それに尽きるのです。それは大人社会が背負う、こどもへの責務だと運営支援は考えていますし、今後も訴え続けます。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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New! いわゆる日本版DBS制度を専門分野の1つとして事業者の取り組みを支えたいと事業活動を始めた新進気鋭の行政書士さんをご紹介します。「行政書士窪田法務事務所」の窪田洋之さんです。なんと、事務所がわたくしと同じ町内でして、わたくしの自宅から徒歩5分程度に事務所を構えられておられるという奇跡的なご縁です。窪田さんは、日本版DBS制度の認定支援とIT・AI活用サポートを中心に、幅広く事業所の活動を支えていくとのことです。「子どもを守り、あなあたの事業も守る。」と名刺に記載されていて、とても心強いです。ぜひ、ご相談されてみてはいかがでしょうか。お問い合わせは「日本版DBS導入支援センター | 行政書士窪田法務事務所」へどうぞ。
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