学童保育の「小1の壁」をどう乗り越えるか。小1の壁問題の対策、解消を提案。壁は1つじゃない!(後編)

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育事業の質的向上のためにぜひ、講演、セミナー等をご検討ください。

 学童保育に入りたくても入れない待機児童、すなわち小1の壁の問題。この対策を紹介しています。前日のブログ記事では、
・通勤圏に待機児童がない地域があれば、そこに転居する
・児童館やファミリーサポートの利用を検討、準備する
・民間学童保育所(学習支援系学童保育)の利用を検討する
・同じ境遇の保護者と連携して子どもの居場所を準備する
ことを紹介しました。
 また前々日のブログ記事では
・居住地の学童保育所に待機児童が出ているか、どうか
・入所先となる学童保育所の種別を確認する
・夏休みだけ学童が必要な場合でも4月入所を考える
ことを紹介しました。

 今回は、小1の壁以外にもある「学童の壁」を紹介します。そして最後に「放課後や夏休みの子どもの過ごし方は、子どもの考えも聞いてみて」ということをお伝えします。

 「学童の壁」とは、入所や利用に関して保護者(利用側)に立ちはだかる障害や困難のことを指します。なお、これらは私が実務経験から目の当たりにしてきたものばかりです。ざっと列記してみましょう。
・小1の壁=学童保育所に入所できない状況そのもの。入所をしても新1年生の保護者にとって仕事と学童保育所の利用の並立が難しい種々の状況を指すこともあり、最近ではこちらの使用法が増えている。
・小4の壁=新1年生を入所させるために、おおむね小4、小3になると、事実上、学童保育所の退所を迫られること。
・お弁当の壁=小学校の長期休業中に持参が必要な子どもの弁当作りに伴う負担。今後、解消に向かう可能性が増えてきた。
・夏休みの壁=夏休みなど長期休業中のみ学童保育所が必要な世帯に、夏休みの学童保育利用ができないこと。
・開所時間の壁=長期休業中や学校独自の休業(開校記念日等)の際、朝の学童保育所の開所時刻が午前8時ごろの施設が多いため、保護者の出勤が間に合わない状況。実はかなり深刻。
・閉所時間の壁=学童保育所の閉所時刻が午後6時台の施設では、保護者の迎えが間に合わない。午後7時閉所の施設が増えていても、延長料金として別途、費用負担が必要なことも。開所時間の壁と合わせ、働く側にとっても負担が大きい困難な問題。
・登校時間の壁=2023年度に注目されるようになった。普段の学校登校日の朝の時間に学童保育が必要でも受け入れができない状況。保護者の出勤時刻の方が、子どもの登校時刻より早い場合の学童保育ニーズは、現状、対応がほぼ考えられていない。
・役員、係の壁(保護者会の壁)=学童保育所によっては、保護者会(父母会)があり、役員や係を務める必要がある。本来、保護者会は学童保育所において子どもの過ごしやすい環境を整えるために活動するが、最近は保護者会の存続のための役員や係の仕事になっている場合が多い。
・運営負担の壁=学童保育所によっては、学童保育事業の運営を保護者が分担して行う場合がある。夜間や休日を返上して事業運営に関する書類の作成を行うことになる。子どもを受け入れて行う公共児童福祉サービスの事業運営なので責任は重大であり、法的にも運営責任を負っているのだが、その認識は極めて薄いことは重大な問題点。
・行き渋りの壁=せっかく学童保育所に入所できても、子どもが学童保育所の環境になじめない、受け入れられない等の理由で学童保育所の登所を嫌がること。学童に行きたくないことが小学校の不登校につながることも多い。この理由で学童保育所を退所する世帯は、実は相当多い。

 学童保育所の利用について、保護者の立場から見た「壁」を紹介しました。学童保育は公共の児童福祉サービスであるなら、多くの保護者にとって利用ができる制度であることが必要です。一方で、世帯ごとに学童保育に対するニーズ、要望は異なることが当たり前であって、世帯1つ1つのニーズに対応することは不可能です。ある程度のサービス水準を維持して、各世帯も利用できるように工夫してもらうことが欠かせません。上記の壁は、その「ある程度のサービス」に制度や施設側が、まだまだ到達していないことを示しているでしょう。
 これらの壁の解消には、職員の人数を増やすことが効果的です。よって国が、施設運営に必要な経費をしっかり補助金として支出することが必要です。

 さて、最後の「行き渋りの壁」こそ、働く保護者にとって対応が難しいのです。保護者は「学童に行ってくれないと困る」と子どもに言えば言うほど、子どものストレスは悪化していきます。不登校になったり体調に異変が生じたりすることもあります。この壁の対策は、学童保育所職員と連携して子どもが学童保育所を受け入れられない理由の除去に努めることが欠かせませんが、そもそも、子どもが「どのような場所が好きか」を、保護者はしっかり把握することが必要です。

 子どもの意見表明が大事と言われますが、子どもがどのような場所で過ごしたいか、どのような環境が好きなのかについて子どもの話をしっかりと聞くことが、小学生になった子どもの居場所を保護者が考えるにおいては重要です。場合によっては、学童保育所ではない場所が、自分の子どもに居心地が良い場所になる可能性もあります。

 また、子どもが自分自身で考えられるように、学童保育所の見学をぜひ行ってください。保育所や幼稚園、こども園で知っているお友達が学童保育所にいたら、それて安心することもあるでしょう。4月になっていきなり連れていかれ、不安いっぱいで過ごすよりも、事前に見学して子どもの目に学童保育所を見せることで、安心させることも大事です。子どもが目で見て「私はあまり行きたくない」ということだってあるでしょう。その場合は、保護者さんには、どのような場所なら子どもが安全安心の環境で過ごせるかを考えてほしいのです。

 保護者の就労を続けることはもちろん大事で最優先にするべきですが、子どもの気持ちも踏まえて、保護者は子どもの居場所を考えていただきたいと私は思います。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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