学童保育の「おやつ」は、子どもの楽しみだけではありません。学童保育を構成する大事な要素の1つです。前編

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育事業の質的向上のためにぜひ、講演、セミナー等をご検討ください。

 昨日(10月19日)、X(旧ツイッター)で、学童保育のおやつについてツイートがありました。運営支援として、改めて学童保育のおやつについて考えてみました。運営の実践における、おやつの在り方(意義)と、具体的なおやつの取扱いの2点を考えました。育成支援におけるおやつの提供については、支援の実践家の方にぜひ考察をお願いしたいと考えます。

 まず、学童保育とおやつは、多くの人が「あって当たり前の関係」と思うのではないでしょうか。子どもにとって、いや大人の多くも「3時のおやつ」は楽しみですね。人は、おやつを食べることで、ほっと一息つけます。同時に、ちょっと小腹がすいたときにパワーを補給できます。この2点は、「心の活力の補給」と「エネルギー源の補給」ですが、学童保育のおやつはまさにこの2点のバランスの上に成り立っています。学童保育にとって、おやつは欠かせない存在です。

 学童保育、この場合は放課後児童クラブとしますが、まず「放課後児童クラブ運営指針」に、おやつについて記述されています。第3章「放課後児童クラブにおける育成支援の内容」の「1 育成支援の内容」に、以下の通り記載があります。
「子どもにとって放課後の時間帯に栄養面や活力面から必要とされるおやつを適切に提供する。
・発達過程にある子どもの成長にあわせて、放課後の時間帯に必要とされる栄養面や活力面を考慮して、おやつを適切に提供する。おやつの提供に当たっては、補食としての役割もあることから、昼食と夕食の時間帯等を考慮して提供時間や内容、量等を工夫する。
・おやつの提供に際しては、安全及び衛生に考慮するとともに、子どもが落ちついて食を楽しめるようにする。
・食物アレルギーのある子どもについては、配慮すべきことや緊急時の対応などについて事前に保護者と丁寧に連絡を取り合い、安全に配慮して提供する」

 指針は丁寧におやつを定義しています。おやつは「提供する」という書きぶりから、学童保育におやつは必要であるという立場を取っていることが分かります。義務(しなければならない。)という記述こそないものの、「提供して当然」という立場であることがうかがえます。
 なぜ、おやつが当然に提供されるべきなのかは「栄養面」と「活力面」の2点を挙げています。栄養面は、家庭での食事で完全に補えないカロリーや三大・五大栄養素を補助する役割を持たせています。これは、昨今の貧困世帯の増加においてさらにその重要性が増していると私は考えています。活力面は、カロリーの補給による面だけでなく心理的な要素も欠かせないと私は考えています。

 学童保育のおやつには、この「栄養面」「活力面」の2点において子どもの育ちに欠かせない役割が期待されています。その提供に関する具体的な考慮点に際しては、「時間帯への配慮」「調理配膳時における安全と衛生への対応」「提供環境における配慮」「アレルギー対応への配慮」が必要であると、指針で挙げられています。

 これらの要素をそれぞれ尊重しつつ、運営の具体的な状況において、各々の要素の最重点と妥協点(絶対に下回ってはならない水準を超える範囲内で)を考え、実際に提供するおやつの態様が決まっていくでしょう。

 考え方としては、次のようになるでしょうか。
・実際に提供する「おやつ」の完成←「基本となる考え方(栄養面、活力面)の達成」=「提供に関する具体的な対応水準(提供時間帯、安全、衛生、環境の程度)」×「運営上、考えなければならない条件(設備、予算、対応人数等)」

それでは、各要素について私なりに考察していきます。
・栄養面=特定の栄養素に偏った献立にならないように、おやつは数種類の献立としましょう。もしくは、まんべんなく栄養素を取り入れた1~2の提供にしましょう。かといって、栄養面だけに固執してしまうと子どもがおやつを楽しめなくなるメニューになる可能性が高いので、3品の提供があるのならうち1品は多くの子どもが楽しめる品にしましょう。
 おやつの素材について「添加物は一切、入っていないおやつにしてほしい」「日本産のおやつだけにしてほしい」と保護者から要望を受けることも多いですが、実際にそれが実現できる運営環境でない場合がほとんどです。よって、個々の世帯の具体的な要望に全て応じられることはできない旨、入所時点での了承事項としておきましょう。
 好き嫌いの問題で、「嫌いなおやつでも、残さず食べる」ことを掲げているクラブもありますが、私はそれは止めるべきだと考えます。「ひと口でも食べさせる」ことはギリギリ許容できる範囲かと思いますが、それも事前に、年度初めに保護者と話し合って了承を得ておきましょう。

・活力面=エネルギー源としてのカロリーを補給するだけでなく、「心の栄養=楽しい時間を過ごすことにより心理面での充足を図る」ことも重要です。その点において、提供環境の整備は重要です。味覚として美味しいおやつも、食べる環境が劣悪であれば、その効果は半減してしまうからです。おやつを楽しみながら食べることで子どもたちの心の安定を確保しつつ、子どもたちが遊びながら食べる行為にまで発展しないように、職員は子どもたちのそばにいて、周囲に気を配りながら、一緒におやつを食べましょう。
 量の問題は、子どもの体格や成長具合によっても異なります。子どもの要望、意見を聞いて配膳時に配慮しましょう。

・栄養面と活力面の双方=昨今の貧困世帯増加で、家庭での食の貧困が懸念されています。そのような世帯が多く学童保育所に在籍している場合は、学童のおやつが、子どもの成長にとって極めて重要であることを意識し、おやつの量や、栄養バランスを配慮するべきです。

・提供時間帯=意外に難問。保護者の多くから「おやつのせいで家の夕食をあまり食べない。もっと量を考えてください」とおしかりを受けることがあります。かといって、高学年は登所時刻が遅くなるので、おやつ提供が午後5時ぐらいになる場合も。これについては、年度初めに、自クラブにおけるおやつ提供方針を保護者に丁寧に説明しておくことで多少は回避できるでしょう。

・安全面=誤飲や窒息を防ぐため、のどにつまりやすい食品の提供は絶対に行ってはなりません。食品とまぎらわしい物品を、おやつ時に子どものそばに置くこともダメです。窒息の危険を避けるため、「一気食べ」のような「遊び食べ」を防止する注意義務を職員は背負っていることを認識しましょう。家庭菜園で収穫した食べ物には注意しましょう。ジャガイモによるソラニン食中毒には特に気を付けましょう。キノコ、野草は、学童保育所で収穫して食べることは避けましょう。
 手作りおやつの調理時において、子どもが調理作業における種々の作業によってけがをしないようにすることが必要です。調理時、子どもが調理場に立ち入らないようにしましょう。それを子どもに理解させることも、育成支援です。おやつの配膳時には、特に熱のある水分の多い品を提供する場合に、子どもがやけどしないよう、配膳には注意しましょう。

・衛生面=食中毒への対応は最優先事項です。手作りおやつの場合、調理過程におけるミスで食中毒の可能性が高まります。調理場は常に清潔に、食材の状態は常に確認しましょう。また、消費期限、賞味期限の確認は毎日、必ず行いましょう。
 なお「検食」を職員は必ず行ってください。手作りおやつはもちろん、購入した袋菓子であっても、当日に提供する品を職員が事前に食べてみることです。世の中に「絶対大丈夫」はありません。購入した菓子類でも、異物が混入していたり品質が変化していたりする可能性はゼロではありません。まして、購入してしばらく期間が過ぎた菓子類を提供する機会が多いでしょうから、必ず検食してください。

・環境の程度=おやつを食べる時間における、その場の雰囲気や周りの状況です。先にも記しましたが、どんなに食べておいしいはずの品でも、食べるときの雰囲気が最悪なら、美味しく感じられません。落ち着かない状況であわてて食べても同じですし、窒息の可能性もあります。おやつを楽しく味わいながら食べられるために、支援員は最善を尽くしてください。育成支援の支援技術の優劣が環境面を整える大きな要因になります。
 よくありがちなのが「おやつの前に、子どもたちに伝えたいことを伝える」パターンです。全員がそろうから都合がいいのですが、えてして、その時間が「お説教タイム」になりがちです。食べる前に、グチグチお説教を聞かされては、子どもたちのおやつへの楽しみは消失します。しかも、1分程度ならまだしも、5分や10分もかかったら、もう最悪です。また、「静かに食べなさい!」と職員が怒鳴ったり威圧したりしながら過ごすおやつタイムも、絶対にやめてください。おやつの時間は、会話が弾んで当然です。「全員、静かにしないと、おやつが始まらないよ」とはあちこちのクラブでよく聞きますが、それが本当に正しいのか、私はやや疑問です。

 なお、「〇〇しなかったから、おやつはなし」と、おやつを子どもの行動の条件にすることをしていたならば、それは絶対に許されないことです。不適切な育成支援です。法律上にも問題があります(債務の不完全履行)。逆に、「〇〇をしてくれたから、おやつの量を増やすね」も、適切ではありません。善い行いをしたことによる利益の獲得は人間にとって大事ですし、そういうことがあることを学ぶことは人生において大事ですが、学童保育所で、おやつという「すべての子どもに公平に提供されるべきもの」を使って、損得勘定を刺激することには私は反対です。

 いろいろ書いていたら長くなりました。続きは次回としましょう。

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 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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