学童保育に関係する法律を教えてください

 まず「学童保育」という文言ですが、これは法律に定められた文言ではありません。学童保育は、親が働いていたり学校に通っていたり、介護や看病をしていたりして、その間に小学生の子どもと一緒に過ごすことができない(これを「留守家庭」といいます)場合、留守家庭の小学生に居場所を用意し、そこを生活の場と遊びの場として、留守家庭の小学生が成長していく仕組みです。この仕組みを行う場所を「学童保育所」と通称しているのです。

 この仕組みのことを、児童福祉法で「放課後児童健全育成事業」と定義しています。そしてこの放課後児童健全育成事業を行う場所が「放課後児童クラブ」と、主に行政の世界で使われます。よって、学童保育所の世界の中に、放課後児童クラブが含まれるという理解でいいでしょう。放課後児童クラブではない学童保育所も、もちろんあります。

 つまり学童保育に関係する法律で最も重要なのは「児童福祉法」といえます。児童福祉法で、放課後児童クラブは市町村が地域の実情に応じて任意に行う事業と定められています。このため、放課後児童クラブが存在しない自治体もありますし、小学3年生までしか受け入れない地域もあります。ちなみに児童福祉法で放課後児童健全育成事業は小学生を対象とするとなっているので、本来は小学4年や5年でクラブを退所することになるのは、おかしな話です。なお、学童保育として呼ばれる仕組みは1960年代から広まり始め、1980年代には全国各地に広まっていましたが、児童福祉法に学童保育の仕組みが規定されたのは1997年(施行は翌年)からです。その時点でようやく「放課後児童健全育成事業」が誕生したともいえますし、その時点より前は放課後児童クラブという概念は存在せず、すべて学童保育(所)であったとも言えます。ただし法律上の根拠はまったくなかった「アウトロー」の存在でもありました。

 2023年4月から施行された「こども基本法」は、こどもに関する基本的な施策の方向を定めた重要な法律です。その他、「子ども・子育て支援法」によって放課後児童クラブは「地域子ども・子育て支援事業」と定められています。また「社会福祉法」という法律で、この放課後児童健全育成事業は「第2種社会福祉事業」と位置付けられています。

 放課後児童クラブに関して一定程度の基準を定めている決まりとして、厚生労働省が発した「省令」があります。正式には「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」といいます。法令の「令」の部分にあたります。これは実務上において極めて重要です。全国の市区町村は、この省令を基本として独自の条例を制定しています。
 また、法令ではありませんが、国が定めた「放課後児童クラブ運営指針」は、放課後児童クラブにおいて行われる子どもや保護者への支援、援助について具体的に内容を示すもので、強制力はありませんがその内容を参考にして児童クラブを運営するようにと位置付けられています。

 その他、日本国憲法、「子どもの権利条約」もまた、直接に放課後児童クラブのことを指してはいませんが、児童福祉を考える上では重要な存在です。

 なお、市区町村は独自に「要綱」「基準」などで、その地域だけに通用する決まり、ルールを設けることができます。それによって、「学童保育所」という名称を使用することと決めている場合も普通にあります。全国の市区町村では、「学童保育所」「放課後児童クラブ」「学童クラブ」「放課後育成室」など様々な名称がありますが、これもまた法律で「こう呼ばねばならない」という決まりがないので、市区町村の自由に任されているともいえます。

(運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)