冷静に考えれば、子どもだけで過ごす時間は減らすべきでしょう。学童保育が果たせる役割がそこにあります。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育事業の質的向上のためにぜひ、講演、セミナー等をご検討ください。

 引き続き、全国的に取りざたされている、埼玉県の虐待禁止条例の改正案を取り上げます。「留守番禁止条例」や「登下校禁止条例」とネーミングもされ、センセーショナルな内容で、今もSNSでは活発に意見が投稿されています。さいたま市のPTAも改正案反対の署名活動を始めたとのことです。

 わたくしのこの改正案に関する考えは次の通りです。
・現状では、子どもだけで過ごさざるを得ない状況がごく普通に存在する。
・現状がそのまま条例違反となってしまうことは、あってはならない。
・放課後児童クラブや児童館、ファミリーサポートなど子育て支援の制度、施設の充実を先行する。
・ひとり親や子育て世帯の時短勤務を可能とする補助制度を創設する。
・地域コミュニティの活動を支援し、地域で子どもの活動を見守る仕組みを後押しする。
・上記の方策を実現した後、あるいは実現を確約して、条例の改正案を審議採決するべきだ。

 条例の改正案は、「ゴミ出しの間の留守番もアウト」など、かなり極端な内容です。しかし、この条例改正案には、「子どもの安全を守る」という、それ自体は当然すぎる正しい内容が含まれています。これに対しては「子どもが、子ども自身で過ごす時間を決めることも、子どもの権利である。子どもたちだけで過ごす時間も子どもの成長に必要である。よって、常に大人が見守っている監視下に子どもを置くべきではない」という意見が出ています。

 それは、現実を知らない者の意見です。子どものそれらの権利を守るためには、子どものすぐそばに大人がいる形での見守りではなく、大人が子どものそばにいなくても、子どもたちが過ごしている地域の場が、安全に保たれているという形でもいい訳です。いわゆる「遠くで、そっと子どもたちの活動を意識し、気にしている」大人たち、地域社会が存在すればいいのです。その地域の治安が保たれ、子どもたちも、障害のある人も、高齢の人も、どんな人でも、地域の温かい関心とまなざしがあれば、不安なく、権利を侵害されることがなく、過ごすことができるのです。
 もっとも、条例改正案には、この「広い空間、範囲において子どもを総合的に守ればよい」という観念が欠けているのが、残念なことであるのですが。

 今回の条例改正案には、提案側が自民党で、公明党も賛成していることから、内容を考えずに、「自民と公明だから、ろくなことをしない」という感情面で反対している人もいるようにうかがえます。私に言わせれば、本質的なところを考えず、表面的な事象だけですべてを判断する、ちょっと困った風潮がこの国に蔓延しているようで、はなはだ残念です。

 確かに、ごみ捨ての間の子どもの留守番が条例違反というのは、あまりにも現実の生活にそぐいません。もっと現実的な内容に修正する必要がありますし、そもそも子育て支援の環境を整えないままでの性急な条例改正そのものが問題ではあります。

 ただし、「子どもだけで過ごす時間を極力減らす」という考え方は、私は決して間違っていないと思います。自公が後押ししている内容はすべてダメ、では冷静な思考ではありません。子どもだけでの登下校も、子どもだけで公園で遊ぶことにも、大人の見守りが本来は必要です。その見守りは、常に大人が付きそうという直接的なものでなくとも、地域の目で、あるいは地域のボランティア団体が見守る、それが行政でも構いません。大人が包括的に見守っている、という形で良いのです。子どもが公園で遊んでいるとして、その場に大人が付きそう形ではなく、同じように地域社会で意識を向けていればいいのです。つまり「社会全体で子どもを育てる、子どもに意識を向けることを忘れない」ということです。

 放課後児童クラブは、まさにその形の1つです。学童で子どもたちは、自分たちの主体性を大事にして過ごします。何でもかんでも支援員が付き添って物事を決めているわけではありません。「ずっと付き添ってはいない。離れたところで子どもを見ている場合もあるし、むしろその方が多い。支援員が駆け付けられる距離にいるという形で子どもたちの安全安心は守られている。その中で子どもたちは、自分たちでいろいろな経験を重ねつつ、成長していく」。この形を地域社会全体に拡大すれば、それこそ、こどもまんなか社会の到来です。地域の子どもが地域で育つことが、こどもまんなか社会です。社会全体が子どもを育てる。

 学童保育所で見られる子どもの育ちの支援は、こどもまんなか社会における「社会全体で子どもを育てていく」その考えに共通するものだと私は考えます。この条例改正案騒動は、稚拙な進め方は大変残念ですが、こどもを社会で育てていくという形での条例に再修正して提案すればよいのではないでしょうか。

 なお、こどもまんなか社会において、治安が保たれていることは大前提です。この、治安の悪化は、軽視するべきではありません。その治安の悪化は、住民1人1人の「他者への無関心」「地域への無関心」と関係しています。過去も、子どもだけでの登下校で、子どもが事件や事故に巻き込まれたことが、たくさんあります。私も、下校中の小学生女児が卑劣な犯罪に巻き込まれてしまった事案に関して対応したこともあります。絶対数では少数派としても、子どもだけの時間に、子どもが犯罪や事故に巻き込まれてしまった経験がある保護者からすれば、「大人の見守りや、大人の関りがあったほうがよい」と思う気持ちが、あることを理解しましょう。

 さて、結論としては、県は、この条例が改正されようが、されまいが、こどもまんなか社会を作るために、放課後児童クラブのさらなる拡充に、予算を大幅に増額して投入するべきです。学童業界も、放課後の子どもたち、夏休みなどの子どもたちの安全安心は学童が守る、という意識で事業拡大に取り組むべきです。もちろん放課後児童クラブだけでなく、児童館、ファミサポ、冒険あそび場など、子育て支援の事業をさらに発展、整備することが、国と自治体には必要です。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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