児童クラブの問題点はなんですか

 児童クラブに関わる立場ごとに問題点を考えてみると、多くの問題点が存在することが分かります。
・子どもの立場から
 (1)リラックスして過ごせる環境の施設が少ない。いわゆる「大規模児童クラブ」では施設内に人がギュウギュウ詰めで、室内の音も大きく、落ち着いて過ごせる環境にありません。そのような大規模状態のクラブは非常に多く存在しています。人口の少ない地域なら児童クラブがゆったりしているということはありません。そのような地域は小学校の統廃合で学校数が少なくなった分、在籍している児童数が増えたことでかえって児童クラブの利用者数も増加し、1施設に100人以上の子どもが在籍していることは珍しくない。
 (2)職員の離職が多く、安心して信頼関係を築ける大人の職員が少ない。
 (3)最近は曜日ごとに決まったプログラムを行うクラブが多く、子どもの自由意志で何かをできる日が少なくなり、「学校の延長」のような施設が増えている。結果として、児童クラブでは「学校からの解放」という意識を感じられにくくなってしまっている。また、そのようなプログラムを行うことが「子どもに豊かな放課後をもたらす」と大人が勝手に認識している。

・保護者の立場から
 (1)待機児童の問題がある。いわゆる小1の壁。待機児童になると保護者が仕事を辞めたり勤務時間を変えたりすることが求められる。しかも往々にしてそれは女性(母親)に押し付けられる。結果、女性の社会におけるキャリアの断絶を招く。正規職を辞めるとのちほど正規で復帰できる可能性が減り非正規雇用を余儀なくされかねない。仕事を辞める、変えることで世帯の所得減少を招く。
 (2)児童クラブにおける子どもの過ごす環境に問題があると「行き渋り」の問題が起こり、結果として待機児童の結果、直面するのと同じ問題が降りかかってくる。
 (3)弁当の壁。弁当を作る負担感がある。
 (4)開所・閉所時間の壁。保育所と比較すると、朝の開所時刻が遅く、夜の閉所時刻が早いことが多い。これも仕事を変える原因となりかねない。使い勝手が悪い。
 (5)保護者会の壁。保護者運営のクラブでは強制的にクラブ運営側の立場に組み込まれ、事業責任や使用者責任を課せられる立場になりうる。保護者運営でなくても強制的に保護者会に加入させられることはまだまだ多い。

・事業者と職員の立場から
 (1)低賃金かつ長時間労働。最低賃金水準の給与額が多い。
 (2)雇用が不安定。人件費を抑えて事業者の利益を確保するため、有期雇用の形態(契約職員、非常勤職員)が多い。結果、所得が少なくなる。クラブ事業者が期間限定でクラブを運営する契約(業務委託、指定管理者)であれば事業の確実な継続性が保障できないことでなおさら職員の無期雇用は難しくなり、雇用の不安定さを助長する。
 (3)利用者(主に保護者)からの過度な要求が多い。いわゆるカスタマーハラスメント問題。
 (4)補助金にしろ、利用料にしろ、事業を営むに充分なだけの予算が確保できない。
 (5)制度が不安定かつ脆弱。特に資格面の貧弱さは児童クラブで働く者への評価向上を妨げている。
 (6)子どもと保護者の支援、援助という職務の専門性が十分に深められていない。
 (7)投じられる予算の不足から、古い施設を使うことを余儀なくされたり、設備や備品が壊れてもすぐに復旧できない。

 このほか、制度上の問題としては、保育所と違って市区町村が必ず設置しなければならない施設と位置付けられていない問題があります。保育所は、保育を必要とする住民のために市区町村が設置しなければなりませんが、児童クラブは、児童クラブを必要としている住民がいても市区町村は児童クラブを設置する義務はありません。地域の実情に応じて対応は任されています。その結果、地域ごとの児童クラブの内容は千差万別で、児童福祉サービスとして全国で平準的なサービスの提供が実施されていません。

 (運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)