令和6年度の放課後児童クラブの実施状況調査が公表されました。その1:今回は、主な調査結果を紹介します。

 放課後児童クラブ(学童保育)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の実施状況(その年の5月1日時点の状況)が12月24日に公表されました。前日の23日午後からネットニュースで概要が報じられていましたが、それはニュース価値の高さを示しているでしょう。当運営支援ブログでは最新の実施状況について、その結果と運営支援独自の推察を数回に分けて投稿します。(24日13時10分に再度更新)
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<放課後児童クラブの人数は過去最高!>
 令和6年の放課後児童健全育成事業の実施状況は、こども家庭庁のホームページにて公表されています。
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/69799c33-85cb-44f6-8c70-08ed3a292ab5/de9d9a49/20241223_policies_kosodateshien_houkago-jidou_51.pdf
 この実施状況は毎年5月1日時点の状況を国が取りまとめて公表しているものです。今回の調査結果は2024年(令和6年)5月1日時点のデータとなります。

 注目点その1:過去最高の利用者数です!
 登録児童数は過去最高値を更新しました。151万9952人です。
 これは前年(2023年、令和5年)より6万2568人増えています。6万2500人というのは、支援の単位(=放課後児童クラブの数は、支援の単位という概念で数えます。1つの支援の単位は、おおむね40人の登録児童数となります)で考えると、増加人数を40人で割ると約1,500になります。これだけの支援の単位分の児童数が増えていることになりますね。(この点、下記に再度触れます)
 放課後児童クラブを必要とする児童の数は、ずっと増え続けていますよ!

 注目点その2:待機児童の人数も高い水準です!
 児童クラブを利用できなかった児童数(待機児童数)は、1万7686人となっています。報道では過去2番目の多さと伝えられましたが、この報道の仕方は誤解をやや招きますね。前年より1,410人も増えているのです。去年より待機児童数が増えているということは、待機児童を減らそうとしている国や地方自治体の取り組みが、まったく追い付いていないということです。待機児童がもともと多い地域では状況はさらに悪化しています。メディアの取り上げ方は、現実を軽視する連想を招きやすく、いささか問題です。
 なお待機児童数は令和元年(2019年)に1万8261人を記録しています。

 注目点その3:待機児童数ワーストは埼玉県と東京都が多く、兵庫と岡山も。
 実施状況では例年、待機児童数が50人以上の市区町村を公表しています。なお今回は待機児童数が多い自治体の取り組み状況が紹介されており、大変興味深い内容となっています。それについては次回以降に紹介します。今回はワースト20を紹介します。
埼玉県越谷市 395人(前年は328人でワースト4位、67人の増加)
埼玉県所沢市 392人(前年は337人でワースト2位、55人の増加)
東京都足立区 388人(前年は263人でワースト6位、125人の増加)
東京都葛飾区 383人(前年は328人でワースト4位、55人の増加)
東京都杉並区 371人(前年は257人でワースト7位、114人の増加)
兵庫県宝塚市 314人(前年は165人でワースト19位、149人の増加)
埼玉県さいたま市 288人(前年は329人でワースト3位、41人の減少!)
兵庫県尼崎市 269人(前年は205人でワースト10位、64人の増加)
東京都立川市 242人(前年は212人でワースト9位、30人の増加)
岡山県岡山市 236人(前年は193人でワースト11位、43人の増加)
山口県山口市 229人(前年は220人でワースト8位、9人の増加)
東京都中央区 226人(前年は257人でワースト7位、31人の減少!)
兵庫県姫路市 225人(前年は137人でワースト24位、88人の増加)
千葉県船橋市 219人(前年は338人でワースト1位、119人の減少!)
山口県下関市 217人(前年は96人でワースト40位、121人の増加)
東京都目黒区 214人(前年は114人でワースト33位、100人の増加)
千葉県市川市 205人(前年は183人でワースト15位、22人の増加)
静岡県浜松市 202人(前年は190人でワースト14位、12人の増加)
神奈川県茅ヶ崎市 200人(前年は192人でワースト12位、8人の増加)
埼玉県朝霞市 197人(前年は68人でワースト57位、129人の増加)

 概ね、これまで待機児童数が多い市区町村は引き続き増加傾向にあると言えます。その中でも、待機児童数を減らそうという試みがうまくいっている地域、例えば市川市やさいたま市、中央区の取り組みを注目していきたいと考えます。

<支援の単位数も過去最高!>
 注目点その1:3万8122の支援の単位数となりました。前年と比べて1,088、増えています。
 ここで留意が必要なのは、増えた支援の単位数が1,088ですが、増えた登録児童数は6万2568人ということです。仮に増えた支援の単位数を、支援の単位数を構成する児童の数(おおむね40人)を40人として計算すると、1,088掛ける40人=43,520人となります。が、現実に増えた登録児童数は6万2568人ということですね。

 これは、おおむね40人の適正とされる児童数より多い児童数が1つの支援の単位に登録されているということにほかなりません。つまり、児童クラブの大規模化が確実に進行しているということを意味しています。大規模化は児童の育成支援の環境に百害あって一利なしですから、児童の成育環境としての放課後児童クラブはその質の低下傾向にある、ということです。これは由々しき問題ですね。

(追加更新)実施状況調査には支援の単位の児童数も対象となっています。ここに、上記の大規模化の深刻な現状が明確になっています。71人以上の大規模クラブは、1,518単位となっており、これは前年より169も増えています。児童数41~50人の、適正とされる児童数(実はこれでも本当は子どもの過ごす環境としては、決して歓迎できないのですが!)の支援の単位数は9,037で、708も増えました。支援の単位を増やすには施設を増やすことしかありませんが、児童クラブの利用を希望する児童数よりも施設を増やす努力が追い付かず、71人以上の大規模状態のクラブが増えてしまっています。
(注:かつて、2015年に子ども子育て支援新制度が始まる前は、70人を境に児童クラブの人数を分けて考えていました。71人以上が大規模状態として補助金が大幅に減らされていました。2015年以降、支援の単位、という概念が導入され、おおむね40人が1つの支援の単位として望ましいこととなりました。よって現在は、この40人という数字が大きな意味を持っています。といっても、40人の子どもの人数は決して少なくありません。子どもにとって過ごしやすい児童クラブにするには30人程度が望ましいと一般的に言われています。)

注目点その2:放課後児童クラブの数は減っている?
 クラブの施設数は2万5635か所となり、前年に比べて172か所、減っています。支援の単位が大幅に増えていますがクラブ数が減るってどういうこと? これは前年度に引き続き、市区町村の、放課後児童クラブの「数え方」の修正によるものです。プレスリリースには、「クラブ数減少の大きな要因は、昨年度まで支援の単位数をクラブ数として報告していた自治体があり、当該自治体がその是正を図ったため。」とあります。前年度も同じような注釈がありました。いまだに市区町村の中に、児童クラブの支援の単位と、クラブの施設数の数の数え方を間違っていた自治体があった、ということです。これはすなわち、いかに放課後児童クラブ、放課後児童福祉行政が現場に周知されていないということの現れですね。本当に残念です。いい加減すぎます。

<株式会社の大躍進が続く!圧倒的です>
 注目点その1:株式会社運営のクラブが圧倒的に増えています。
 株式会社が運営する、公立民営の児童クラブは3,554となり、全体の13.9%を占めています。これは前年と比較すると、なんと445クラブも増えています。運営委員会と保護者会による運営、つまり保護者による運営のクラブは2,552で172クラブも減りました。NPO法人運営のクラブも1,713で40減っていますが、株式会社運営クラブは圧倒的に増えています。
 このことをどう受け取りますか? 保護者運営や、保護者が運営に参画できる形態の児童クラブは風前の灯火である、と言わざるを得ない時代が確実にすぐそこに迫っているということです。

 注目点その2:公営クラブは急減です。
 公立公営、つまりお役所の直営クラブは6,176クラブで531クラブも減りました。減った多くの分が株式会社運営のクラブになったということです。公営クラブは安心感や料金の低さで保護者に人気ですし、何より、保護者が運営に参画しないで済む点で保護者からも、また安定した雇用を求める職員たちからも人気ですが、公営クラブは基本的に今後はごく一部の地域を除いて無くなっていくと思ったほうがよいでしょう。ごく一部の地域というのは、企業にとってうま味が無い人口の過疎地域です。

 他にもいろいろ注目点があります。次回以降に取り上げます。

<年末年始のブログ更新について>
 12月29日が最終更新日です。なお、12月31日は年末のご挨拶を掲載します。2025年1月1日は年始のご挨拶を掲載します。通常のブログ更新は1月4日からとなります。ご了承ください。なお、放課後児童クラブ(学童保育)に関するご相談、お問い合わせ、本の購入相談、取材対応は年末年始も関係なくお引き受けいたします。
 連絡はメール、info@aiwagakudou.com または旧ツイッター(X)の萩原和也アカウント(@kazuyamachin)のダイレクトメール、または萩原の番号(090 1981 9504)へお願いいたします。お急ぎの場合、または確実に連絡を取りたい場合は、旧ツイッターのダイレクトメールか、携帯番号へお願いいたします。パソコンのメールの場合は半日程度、確認が遅れる場合がございます。

<おわりに:PR>
 弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
 放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。

 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。

 放課後児童クラブを舞台にした小説を完成させました。いまのところ、「おとなの、がくどうものがたり。序」と仮のタイトルを付けています。これは、埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子ども達の生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。出版にご興味、ご関心ある方はぜひ弊会までご連絡ください。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ぜひご連絡、お待ちしております。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)