人手不足に苦しむ学童保育の世界。人手不足を解消するには構造的な問題に取り組まなければなりません。その4

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。

 学童保育(本稿では、放課後児童クラブのことを指します)の世界は継続的に慢性的な人手不足状態です。低賃金ゆえなかなか働き手が確保できない。働き手が少ないことや、学童保育の仕事は(なかなか知られていませんが)とても業務量が多いので、働き手が少ないと当然、長時間労働に迫られます。待遇が良くないので離職者も多いです。また、これは言いにくいことですが、低賃金ゆえ質の高い人材の確保が難しく、事業の質の向上もまた難しい。人手不足が、学童保育の世界を長年にわたって厳しい業界、つまりブラック業界に追い込み続けているのです。

 前回のブログでは、自治体が学童保育所職員の賃金を一定額以上にすることを保証するための「賃金条項付きの公契約条例の制定」と、「育成支援事業の質の担保のため就業時間の見直し、常勤職員の無期雇用を業務委託や指定管理の条件とする」ことが必要だと訴えました。

 ここまでのところは、
・国が示す、補助金と保護者の負担の割合を現行の5割ずつから、補助金の負担割合を多くすること
・国:都道府県:市区町村が3分の1ずつである補助金負担割合を市区町村と都道府県が6分の1、国が3分の2とすること
・児童福祉法を改正し、放課後児童クラブを地域子ども子育て支援事業から児童福祉施設に位置付けを変えること
・公契約条例を制定し、学童保育の職員の賃金を保証する
・育成支援の質を担保するに必要な就業時間の設定と、常勤職員の無期雇用を契約で盛り込む

 5点になりましたが、これでもう、大丈夫でしょうか?

 実は、まだまだ私は不安です。事業主(公設公営なら自治体、民営なら民間企業)の組織運営方針によっては、人手不足解消に至らない可能性があります。それは何でしょう?

 それは、「学童保育事業、すなわち育成支援事業は、子どもの育ちを支える専門分野であること。よって従事する職員は専門職であり、それに見合った待遇が必要であること。人数も、就業時間も、その専門分野が成り立つために必要な数や時間を確保することが必要なこと。それが事業としての利益であり、経営者や運営者の経済的な利益を最優先しては成り立たないこと」を、経営者や運営者が、「理念、哲学」として確実に保持できるかどうかが不安なのです。

 これは思考、考え方の問題です。自治体で学童保育事業について権限や裁量を持っている担当者や、民間企業の経営者に、この考え方を強制させることはできません。当然ですが、誰に対しても思想の強制はできません。では、「性善説」の立場で、「学童保育に携わる人であれば、きっと、子どもの最善の利益を最優先にしてくれるでしょう」と構えていればいいのでしょうか? もちろん、それも間違いです。すでに現在、職員の数もそろえず、給与は低額にしたままで人件費を抑えることで利益を稼ごうとする、つまり事業主の最善の利益を優先している実態が、はびこっています。

 よって、最終的には、誰もが従わざるを得ない「法令」で、学童保育の事業主が従わざるを得ない仕組みを作り、その仕組みを実施することで、否(いや)が応でも、結果として子どもたちの最善の利益が実現されていく、ということにならなければなりません。

 これを実現できるのは、法律であれば国会、つまり政治です。こども家庭庁からの通達、つまり命令であれば行政です。政治も行政も、いずれも、「社会の意向」つまり世論で、その動きが影響されます。

 つまり、この社会が、世論が、「学童保育の仕事は専門性が高い。そこで働く人にはしっかりとした処遇が必要だ。人数が足りていないなら、賃金が足りないなら、もっと補助金を増やさなければならない。保護者の負担額も、少しは増やす必要がある。それでこそ、子どもの日々の育ちが守られる」という理解に達しなければならないのです。
 世論がそのような意識になっていくことで、例えば法令として、「補助金として交付される運営費の過度な他分野への流用を制限する仕組み」だったり、「学童保育所の職員の最低限必要な就業時間確保の目安を設定」したり、「総支出額の事業に使用される割合の下限を設定する(つまり運営企業本体への利益吸い上げを制限する)」ような仕組みを政治や行政がちゅうちょなく定めることが可能になるのです。さらには、学童保育事業が社会の利益になるように営まれているかどうかを行政や第三者機関が「抜き打ち監査」等で常に監視できる仕組みも合わせて構築することも欠かせません。

 世論が学童保育を評価するようになれば、そのようなことが可能になるのです。世論が学童保育を評価するためには、「日々の、学童保育所で行われる育成支援の優れた実践で、保護者が学童保育を高く評価すること」で学童保育に対する認識が個々の保護者を通じて積み重ねられていくことと「問題点を正確に伝えるメディア、有識者が、常に学童保育の事を社会に訴えていくこと」、この双方が必要なのです。

 繰り返します。学童保育の人手不足を解消するには、構造的な仕組みを変えることが絶対に必要です。しかし、それだけではないのです。現在の学童保育を「変えなきゃいけない」と社会が認識することと、「学童保育には本当に感謝している。子どもの育ちを支える専門分野だね」と社会が評価すること、つまり社会が学童保育を正しく理解し評価することで、構造的な仕組みを変えられることにつながるのです。

 普段から子どもを怒鳴りつけるとか「お盆なんだから学童保育じゃなくて家にいろよ」と広言するとか、子どもの育ちを支える立場として恥ずかしい言動をさらしているような学童保育関係者がこの世に存在する限り、学童保育への評価向上は永遠にやってこないと、学童保育の関係者は肝に銘じるべきでしょう。

 社会から評価される学童保育になることを、忘れてはなりません。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の世界の発展と質的な向上のために種々の提案を発信しています。積極的に学童保育の現状や理想について社会に発信をしていきます。また、育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供できます。学童保育業界が抱える種々の問題や課題について、具体的な提案を行っています。学童保育所の運営について生じる大小さまざまな問題について、取り組み方に関する種々の具体的対応法の助言が可能です。個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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