人件費増と物価高で、学童保育含め公営事業のアウトソーシングのビジネスモデルに影響が出る可能性があります。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性、学童保育のあらゆる問題の解決を訴えています。

 この数日間、全国各地の学校や公共施設の食堂を運営している広島県の企業が運営の破たんに直面し、事業を停止した結果、影響が広がっているというニュースが伝えられています。2023年9月6日20時48分配信のNHKニュースを一部引用します。
「食事を提供している広島市の「ホーユー」は、食材費や光熱費の高騰などを受けて経営環境が悪化したことなどを理由に、広島地方裁判所に破産手続きを申請する検討を進めていることがわかりました。」
「学校の給食や学生寮、官公庁の食堂の業務などを手がけてきましたが、今月に入ってから各地の高校や特別支援学校、警察学校などで給食や食事が提供できなくなる事態となっています」
「食材費や光熱費の高騰などを受けて経営環境が悪化したことなどを理由に、広島地方裁判所に破産手続きを申請する検討を進めている」
「中国地方と四国に加え、九州や近畿、東海、関東、それに東北の合わせて22か所に営業所があり、令和2年4月現在でパート従業員を含め586人の従業員が働いている」

 また、テレビ新広島が9月6日にネット配信した記事には、同社の経営者のコメントとして、「値上げの申請に行くと『わかった値上げしよう』という学校や役所はゼロ。食材、電気、最低賃金上がるが値上げできない。安定的な経営ができる環境を作っていかないと我々と同じことが再度行われていくだろう。この先、給食・学食・寮食は無くなっていくかな」と伝える一方、自治体側からの「担当者から『現在の給食費の単価で工夫しながら食事の提供を継続していくので補助申請は行わない』と回答を頂いている」とのコメントも紹介されています。

 報道の限りでは、もちろん、広島の企業の経営行き詰まりの原因について確たるものは分かりません。同社側は運営コストの上昇を理由にしていますが、それが決定的な理由だったのかどうかも、分かりません。ただ、経営環境の悪化の要因に物価高があることは間違いないと私は思います。

 これは、公営学童保育所を民間企業にアウトソーシングしている地域、あるいは民営学童保育所が多い地域において、非常に心配な事態です。学童保育所は全体の7割を超える単位数で民営となっています。そのほとんどが放課後児童クラブとして補助金を受けていると想定され、つまり、補助金と保護者からの徴収分で運営をしている学童保育所とみてよいでしょう。ご存じのように、補助金の額は十分な額が交付されているとはいえない状況です。

 そしてこの数年の急激な最低賃金の上昇、円安や原油価格上昇による食品や電気ガス料金の値上げなどで、運営に必要な経費が急激に上昇しています。一方で、補助金=行政側から交付される額は、そうそう増えることはありません。結果的に、運営がますます苦しくなり、それが限度を超えると運営破たんになります。学童保育所が突然、閉鎖されてしまうという悲劇が、現実に起こっても不思議ではない状況です。

 公営学童の民営移管を、アウトソーシングで獲得した株式会社は、当然ながら利益を上げなければなりません。決して多くない収入から、企業本体が必要とする利益分を差し引いて、残りを運営費に充てるスタイルです。あらゆるモノの値段の上昇で、運営が窮地に追い込まれることは言うまでもありません。利益分をゼロにすることは株式会社としてはできませんから、そういう状況が続くようでは、いつ撤退に踏み切られても不思議ではないのです。
 また非営利団体によるアウトソーシングも厳しい状況です。保護者からの徴収額を急に増やすことは現実的に不可能です。住民からの苦情を受ける立場の行政側がストップをかけることがほとんどだからです。非営利団体はもともと財政基盤が脆弱であり、物価高、運営コストの上昇に対応することがもともと困難です。

 学童保育の世界で、いつなんどき、急に運営業者が学童運営から撤退するという事態が、すぐそこに迫っていると考えてください。「今、そこにある危機」なのです。
 2008年10月末に、関東圏で学童保育所、保育所を運営した企業が破たんし、突然、施設が閉鎖された事案があり、社会に衝撃を与えました。いわゆる「ハッピースマイル事件」です。運営母体の株式会社の経営難に端を発したと言われています。社会的に重要な施設、子育て支援インフラが、急に閉鎖されるという事態は、子育て世帯に重大な影響を及ぼします。あのハッピースマイル事件のようなことは、二度と起こしてはなりません。

 急激な経済状況の変化で、学童保育所を運営する事業者に致命的な悪影響が及ぼされることがないよう、行政は適切な対応を取っていただきたいと弊会は訴えます。むろん、事業者の放漫経営による経営難については、常時の管理監督でその異変をすばやく見抜き、事業者のチェンジなどの早急な対応も要望します。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の安定的な運営について、種々の意見提言を行っています。学童保育の運営に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った運営の方策についてその設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

 (このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば、当ブログの引用はご自由になさってください)